天皇記『崇神天皇』

崇神天皇

崇神天皇

気が付くと、世は10代 崇神天皇すじんてんのうの時代になっていた。

崇神天皇

崇神天皇

あれっ!?もう俺の番なの??

しかし、10代目にもなれば、天皇もさぞかし安定した生活を送っていることだろう。と、思いきや。崇神が天皇になってからというもの、一日たりとも気の休まる日は無かった。 というのも、国中が原因不明の疫病に犯され、町には誰ともわからない死体で溢れかえっていたのだ。

崇神天皇

崇神天皇

やばいな ・ ・ ・ このままじゃ、日本から国民がいなくなっちゃうんじゃないか??

と危機を感じた崇神は、神床かむとこ神託しんたくを仰ぐことにした。神床とは困った時などに神様からアドバイスを貰うために天皇が眠る寝室のことだ。神託はそのアドバイスのこと。

しかし、いくら寝ても神様は現れず、崇神は何日も何日も一人淋しく神床に引きこもっていた。

崇神天皇

崇神天皇

あぁ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ もう嫌だ。天皇辞めたい。

こうして、10代目にして日本の天皇制はピンチを迎える。

崇神天皇

崇神天皇

つーか、神床って何なんだよ。拷問部屋か??女連れ込んじゃいけないなんて、酷すぎるだろ。日本の神には慈悲が無いのかっ!?もぉ、俺、何日間一人で寝てると思ってんの??

崇神すじんの独り言は止まらない。

崇神天皇

崇神天皇

だいたい疫病なんて、絶対、俺のせいじゃないし!何でみんな天皇ならなんでも出来ると思ってるわけ??俺だって出来ることと出来ないことがあるんだよ!!

崇神天皇

崇神天皇

つーか、俺、神様なんか見たことないしアマテラスと血ぃ繋がってるとか、本当なのかよっ??

オオモノヌシ

オオモノヌシ

繋がっておるぞ。

崇神天皇

崇神天皇

うわっ!?何っ!?誰っっ!

てっきり一人きりだと思っていた崇神すじんは驚きと恥ずかしさで飛び起きた。

オオモノヌシ

オオモノヌシ

うむ、ワシはオオモノヌシだ。

声の方に振り向くと、神棚の下で初老のオジサンがあぐらをかいている。

崇神天皇

崇神天皇

えっ!?いつの間にっ!?ていうか ・ ・ ・

崇神天皇

崇神天皇

・ ・ ・ ・ ・ ・ オオモノヌシって、神様の?

オオモノヌシ

オオモノヌシ

いかにも。

崇神天皇

崇神天皇

うわ、すげぇ ・ ・ ・ 本当に神、出てきた ・ ・ ・

崇神天皇

崇神天皇

でも、オオモノヌシって、ホトに刺さった変態だよな?? ・ ・ ・ イケメンって聞いてたのに ・ ・ ・ ・ ・ ・

オオモノヌシ

オオモノヌシ

う" っ!

うぅむ ・ ・ ・ 神にだって若気の至りくらいあるわ。

オオモノヌシ

オオモノヌシ

それに容姿に関しては幾つかの姿を持っておるのだ。ワシは美男で名高いオオクニヌシの分身でもあるからな。

オオモノヌシ

オオモノヌシ

まぁ、分身と言えど、あんな病的な女好きはないが。

崇神天皇

崇神天皇

へぇ~ ・ ・ ・ 神スゲェ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。

オオモノヌシ

オオモノヌシ

そんなことは、ともかく。

と、オオモノヌシは早速、本題に入った。

オオモノヌシ

オオモノヌシ

お主、疫病に悩んでおるな?

崇神天皇

崇神天皇

あっ、そうなんだ!!よかった。もう事情、全部知ってますみたいなキャラなんだな。

崇神天皇

崇神天皇

今、謎の伝染病でうじゃうじゃ死人が出ててさ ・ ・ ・

映画化できるんじゃないかってほど、感染列島と化してるんだよ。あんた、神だろ?何か解決法とか知らないか??

オオモノヌシ

オオモノヌシ

うむ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 実は、あれ、ワシのせいなのだ。

崇神天皇

崇神天皇

はぁ??どーいうことっ!?

オオモノヌシは、都合が悪そうにあごを掻くと、事態の説明をはじめる。

オオモノヌシ

オオモノヌシ

ワシが以前、オオクニヌシによって奈良の三輪山に祀られた話は聞いておるか?

崇神天皇

崇神天皇

あぁ、それなら聞いたことある。出雲の国造り神話だろ??

オオモノヌシ

オオモノヌシ

うむ。しかし、もうだいぶ前の話しでな。社も朽ち果ててしまい、力がうまく調節できなくなってしまったのだ。

崇神天皇

崇神天皇

え、じゃあそれが、国民に悪影響を与えてるってこと??

オオモノヌシ

オオモノヌシ

そうだ。

崇神天皇

崇神天皇

おぉー!!ってことは、社を建て替えればイイ感じに収まるってことかっ!!

オオモノヌシ

オオモノヌシ

うむ。それと、『オオタタネコ』という名前の人物がおるから、彼を神主にするといい。

崇神天皇

崇神天皇

わかった!!明日すぐにオオタタネコさんのところに遣いを送るよ!!

疫病鎮火の糸口が見え、崇神すじんは喜んで承諾する。

オオモノヌシ

オオモノヌシ

うむ。

と、オオモノヌシが満足げにうなずいたかと思うと、次の瞬間には彼は消えており、いつの間にか朝になっていた。

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早速、崇神すじんは四方八方に早馬を送ってオオタタネコを探させた。すると大阪の八尾市で見つかったとの報告があったので、すぐに呼び寄せる。

彼に、事情を説明すると『それで疫病が収まるなら!』と快く引き受けてくれた。話によると、オオタタネコは、オオモノヌシの5代孫らしい。オオモノヌシは、自分の子孫を神主に指名したのだ。

崇神天皇

崇神天皇

よかったぁー!!
オオモノヌシの子孫なら安心だよ。これで国が平和になって、国民も豊かになるなっ!!

崇神が喜んでいると、オオタタネコは嬉しそうに神と人との馴れ初めを語ってくれた。

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オオモノヌシ

オオタタネコのひぃひぃひぃひぃひぃおばあちゃん、イクタマヨリビメは、とても綺麗な人だったそうだ。しかしその美しさから両親は、過度の心配性になっていた。 夜這いがナチュラルに行われていた時代に、どこの誰かも分からないような男に娘が寝取られないよう、彼女の部屋には厳重な鍵がかけられていてのだ。

そんなある日。イクタマがそろそろ寝ようと寝室に入ると、ガッチリと鍵がかけられているはずの部屋の中に男がいた。イクタマは、一瞬驚いたが、スタイルも身なりも美しく、いままで見たことの無いくらい綺麗な顔立ちに見とれてしまう。

???

???

・ ・ ・ ・ ・ ・

イクタマヨリビメ

イクタマヨリビメ

何このイケメンっっ!!まさか、これが世にいう夜這っっ ・ ・ ・ !!??

イクタマはテンションが上がった。そしてそのまま見ず知らずの男に身を委ねてしまう。

それからというもの、彼は毎晩のように彼女の部屋にやって来た。

???

???

・ ・ ・ ・ ・ ・

イクタマヨリビメ

イクタマヨリビメ

今日も来てくれた ・ ・ ・ 鍵、チェックしたのにな。

部屋の鍵は相変わらずガッチリとかかっているのに、何の前触れもなく入って来れることが不思議でしょうがない。

イクタマヨリビメ

イクタマヨリビメ

でも ・ ・ ・ 触れるし、オバケではないよね??

しかし、彼と一緒にいられることが何よりも幸せになっていったイクタマにとって、そんなことは、どうでも良くなった。

そうこうしているうちに、彼女は身ごもってしまう。最初は何とか隠していたが、数ヶ月もすると、さすがに隠しきれず両親にもバレてしまった。

父親

父親

一体どういうことなんだっ!?ちゃんと説明するんだ!!

箱入りで育てたはずの娘の裏切りとも言える行為に父親は激怒する。

イクタマヨリビメ

イクタマヨリビメ

いや ・ ・ ・ ・ ・ ・ えっと ・ ・ ・ 実は名前も知らない人で ・ ・ ・ でも、すごいイケメンなのよ??

イクタマヨリビメ

イクタマヨリビメ

それで、毎晩一緒に過ごしてたら、いつの間にか妊娠しちゃって・ ・ ・ ・ ・ ・

父親

父親

なんだとっ!?お前をそんな娘に育てた覚えはないっ!!

イクタマヨリビメ

イクタマヨリビメ

うわぁ ・ ・ ・ ドラマでしか聞いたことないセリフっ!!

カゴの中の鳥のように育ったイクタマは、不謹慎ながらも、この展開にテンションが上がってしまう。

父親

父親

聞いているのかイクタマっ!!

イクタマヨリビメ

イクタマヨリビメ

はいっ!!ごめんなさいっ!!

そんな2人を見兼ねた母親が横から口を出した。

母親

母親

でもお父さん、あれだけ厳重に鍵を掛けている部屋に入れるなんて ・ ・ ・ おかしいと思いませんか?

父親

父親

・ ・ ・ ・ ・ ・ どういう意味だ?

母親

母親

誰か ・ ・ ・ 特別な方かもしれないっていう意味です。

父親

父親

特別って ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

母親

母親

・ ・ ・ ねぇ、イクタマ、あなた本当に自分で鍵を開けたわけじゃないんでしょう?

イクタマヨリビメ

イクタマヨリビメ

もちろん!私、鍵がどこにあるかも知らないもの。

母親

母親

わかったわ ・ ・ ・ それなら、次に彼が来たら着物の裾に糸巻きの糸をこっそり刺しなさい。きっと彼のところまで糸が導いてくれます。

母親

母親

・ ・ ・ あなただって、自分が誰の子を産むのか知りたいでしょう?

イクタマヨリビメ

イクタマヨリビメ

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ うぅん ・ ・ ・

その夜も、いつものように彼は部屋にやって来た。イクタマは、彼の正体を明かすことを躊躇しながらも、母親に言われた通り、彼の着物の裾に針で糸を通す。

???

???

・ ・ ・ ・

イクタマヨリビメ

イクタマヨリビメ

・ ・ ・ 気づかれませんように。

すると、翌朝不思議な現象が起きていた。糸は扉からではなく、鍵穴を通って外に出ていたのだ。

早速、両親と共にその糸を辿ると、糸はオオモノヌシが祀られる山まで繫がっていた。オオモノヌシは蛇神とも言われている。それであの小さな鍵穴も抜けることができたのだろう。

この時、糸巻きの糸が三巻きしか残らなかったので、その山は「三輪山みわやま」と呼ばれるようになった。

両親は娘が神の子を身籠ったと喜んだ。その様子をオオモノヌシは山の陰から静かに見つめる。

???

オオモノヌシ

はぁ ・ ・ ・ ワシが神だと気付かれてしまったか。

???

オオモノヌシ

惜しいのう ・ ・ ・

その日以来、彼がイクタマの部屋に来てくれることは無くなってしまったそうだ。

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そして話しは現在に戻る。

崇神すじんはすぐにオオモノヌシを三輪山に祀り直し、オオタタネコを神主にした。すると、たちまち疫病が収まり、天下は穏やかになった。

崇神天皇

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