天皇記『反正天皇の活躍』

反正天皇の活躍

反正天皇の活躍

履中りちゅう天皇と阿知あち石上神宮いそのかみじんぐうに逃げてしばらくすると、後を追うようにして来客があった。彼は玄関先で立ち止まると急に大きな声で叫び出す。

反正

反正

兄者ぁぁぁーーー!!!こちらにおりますかぁぁぁーー!!!履中の兄者ぁぁぁぁーーー!!!!

その声に、部屋でくつろいでいた履中りちゅうは、ビクッと身じろぐ。

履中天皇

履中天皇

ヒッ!このデカイ声、反正だっ!!!

三男の反正はんぜいは、なんと身長が9尺2寸半(金尺で約280cm)もある巨人だった。ピチーっと綺麗に整った歯は長さ1寸(約3cm)もあり、幅は2分(約0.6cm)。笑うとギランと光る。

しかし、せっかくの弟の訪問にも関わらず、履中りちゅうは不信感丸出しで、

履中天皇

履中天皇

やだ。無理。怖い。信じらんない。帰って。

と部屋の端っこでうずくまってしまった。その様子を見ていた阿知は、はぁ。と小さく溜息をつく。

阿知直

阿知直

分かりました。なら、そう伝えて来ますね。

そして、玄関先まで伝言を届けに行った。するとまた反正はんぜいの大声が聞こえてくる。

反正

反正

兄者ーーー!!!ワシを信じて部屋に入れてくださいっ!!!今後について語り合いましょうぞーー!!!

そのデカすぎる声に履中りちゅうが恐怖で「ヒィッ!」と小さく声を上げて、布団にくるまると、阿知が部屋を覗きに来た。

阿知直

阿知直

・ ・ ・ ・ ・ つってますけど、どうします?

履中天皇

履中天皇

いやいや無理無理無理!!!めっちゃ怖いんですけどっ!!!だって、今のご時世『ワシ』なんて一人称の弟いる?いないでしょ??絶対、墨江と同じこと考えてるよっ!!反正となんか、語り合えないっっ!!!

阿知直

阿知直

はぁ ・ ・ ・ ・ ・ じゃあ、そう伝えますね。

阿知がまた玄関に向かいしばらくすると、またまた大声が聞こえてくる。

反正

反正

兄者ーーー!!!ワシは穢れた心など持っておりませぬーー!!!墨江とは違いますぞーーっっ!!!!

すると、またしばらくして阿知が部屋を覗く。

阿知直

阿知直

・ ・ ・ ・ つってますけど。

履中天皇

履中天皇

そんなの、本当かどうかなんて、分からないじゃないか。

履中天皇

履中天皇

信じて欲しいなら、今から難波に帰って墨江のこと殺してきてよ。そしたら反正のこと信じて、絶対に会って話してあげるから。

阿知直

阿知直

はいはい。

そしてしばらくすると、またあの声が聞こえてくる。

反正

反正

承知しましたぞ、兄者っっ!!!それなら墨江の首を持って反逆心など無いことを証明して見せましょうっっっっ!!!!

履中天皇

履中天皇

ぎゃあぁぁぁっっ!!!!!

履中天皇

履中天皇

首なんか持って来ないでっっ!!怖いからっっっ!!!弟の生首なんて見たくないからっっっ!!!!

履中は思わず大声を上げる。その声を聞くと、反正はんぜいは安心した様子で意気揚々と難波へ戻って行った。

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そんな見た目がイカツくて恐そうな印象の反正はんぜいだが、彼はとても思慮深く誠実で道義どうぎを大切にする人だった。

反正

反正

兄者がお元気そうで安心した。だがしかし、これから墨江を殺さねばならんのか。

反正

反正

履中の兄者を裏切った墨江は許せぬが、兄弟を手にかけるなど、道義に反するのではないだろうか ・ ・ ・ ・

そこで考えた反正はんぜいは難波に帰るとすぐに、墨江の側近をしている隼人出身のソバカリという男を呼び出し、嘘の提案を持ちかけた。

反正

反正

のぅ、ソバカリよ。もしも汝がワシの心に従うのであれば、ワシが天皇となり、汝を大臣にして天下を治めようと思うのだが、どう思うか。

すると、ソバカリはパアッと目を輝かせて、

ソバカリ

ソバカリ

反正様の仰せのままにっっ!!!

と、即答してきた。

反正

反正

なんと ・ ・ ・ ・ こんなにも早く自分の主人を裏切ろうとは、道義に反する男だ。

反正

反正

しかし、こやつであれば、モノですぐに釣れよう。

そこで反正はんぜいはソバカリに、たくさんの褒美ほうびをに与えて

反正

反正

ならば汝の主人を殺せ。

と言った。ソバカリはその宝の山を見ると、嬉しそうに自分の矛を持って、墨江の屋敷へと向かって行った。

そして、もはや古事記では定番の暗殺の場所となってしまったかわや(トイレ)で待ち伏せをして、墨江が厠に入るとすぐに、矛でグサッと刺し殺してしまう。

反正

反正

なんと ・ ・ ・ もう殺してきたのか。

ソバカリ

ソバカリ

はいっ!

反正

反正

そうか。ソバカリよ、よくぞ大事を成した。では、共に大和へ向かおう。

こうしてアッサリと墨江の暗殺に成功した反正はんぜい一行は、ソバカリをひきいて履中のいる大和へと向かう。

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やがて、一行が大坂の山の入口付近に着くと、反正はんぜいはふと思った。

反正

反正

ソバカリは、ワシのためには大きな功績こうせきを収めたが、簡単に自分の主人を殺すなど、道義に反しておる。

反正

反正

しかし、その功績をたたえなくば、ワシが信義しんぎを欠いてしまう。それは道義に反する。

反正

反正

しかし、だからと言って大臣にしてしまったら何をするかわからん男だ。信じることなどできん。うぅむ。どうしたものか ・ ・ ・ ・

そこでイロイロ考えた反正は、大和に向かう道中で自分の家来を集めて、ソバカリのために即席の豊楽とよのあかりの宴を開くことにした。

反正

反正

ソバカリよ、此度のお主の活躍見事であった!!!!

ソバカリ

ソバカリ

はっ!!ありがとうございます。

反正

反正

今日はここで宴を開いて宿泊し、大和へは『明日』行こう。

この一言で、ここは『近つ飛鳥』(河内の飛鳥)と呼ばれることになるのだが、それはさておき。

ソバカリ

ソバカリ

はい。 ・ ・ ・ しかし何でまたこんなところで宴会を??

反正

反正

うむ。実は汝にサプライズを用意しておるのだっっ!!!!

パンパンッ!!と、反正が手を叩くと家来が次々とソバカリの元へ寄ってくる。

ソバカリ

ソバカリ

へっ!?なっっ ・ ・ ・ ・ ・ ・ なんですか??

反正

反正

汝を大臣として任命するっ!!!

その『大臣』という言葉を聞くと、ソバカリはパァァ~っと目を輝かせ

ソバカリ

ソバカリ

わぁっ!!ありがとうございます!!ありがとうございますっっ!!

と大喜びした。

反正が家来にソバカリを敬うよう指示すると、彼らは次々と「おめでとうございます」と言って頭を下げてくる。

ソバカリ

ソバカリ

あぁ!誇り高き隼人とは言え、貴族でもなんでもない自分がこうして大臣になれたなんて ・ ・ ・ ・ ・ 反正様のおかげで望みが叶いました!!

反正

反正

そうか。ワシもこうして、早々にお主との約束を果たせ安心した。

ソバカリ

ソバカリ

ありがとうございますっ!!!

反正

反正

うむ。今日はめでたき日だ。ワシは大臣と同じ酒を飲もう。

反正は金属製で高級感のある、大きな大きなさかづきを用意すると、トクトクと酒を注いだ。

反正

反正

では、ワシから。

そう言って半分ほど飲むと、ソバカリに盃を回す。巨体の反正はその盃を片手で持っていたが、普通サイズのソバカリは両手でないと持てないくらい大きいし重い。

ソバカリ

ソバカリ

わわっ ・ ・ ・ ・ いただきます!!

ソバカリが酒を飲み干そうと盃を傾けると、彼の顔はすっぽりと隠れてしまった。

その瞬間。

ザクッ!!!

ソバカリの首が天高く飛んだ。座席に敷かれたムシロの下に隠しておいた剣で、反正がソバカリの首をねたのだ。

 

超ひどい。

 

反正

反正

うむ。これでソバカリを大臣にするという信義も果たせ、道義に反した身も滅ぼせた。

しかし、反正の中ではちゃんと道義は守られたようだ。ソバカリも首だけにはなってしまったが、それでもなんだか幸せそうだった。

翌日、反正は大和に辿り着くと考えた。

反正

反正

このまま進めば、本日中に石上神宮へ辿り着けるだろうが、人を殺して穢れた身では参拝できんな。

反正

反正

今日はここに泊まり禊をして、『明日』参り出て神宮を拝もう。

この一言で、ここは『遠つ飛鳥』(大和の飛鳥)と呼ばれることになる。

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そして、翌日。石上神宮いそのかみじんぐうにはまたあのデカイ声が響く。

反正

反正

兄者ーー!!!兄者のおっしゃる通りに墨江を殺し、平定して参りましたぞぉぉー!!!

それから数秒後、阿知が履中りちゅうの部屋を覗いた。

阿知直

阿知直

・ ・ ・ ・ つってますけど。

履中天皇

履中天皇

墨江 ・ ・ ・ ・ そっか ・ ・ ・ ・ ・ ・

阿知直

阿知直

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 履中様?

履中天皇

履中天皇

あっ、ごめん。反正のこと部屋に通して。これからどうするか話さなくちゃ。

阿知直

阿知直

分かりました。じゃあそう伝えますね。

履中天皇

履中天皇

あっ、あと、アチ。

阿知直

阿知直

なんすか?

履中天皇

履中天皇

今度、新しく都を作ったらね、個人的な財産を管理するのに『蔵部』って部署を作ろうとしてるんだけど、アチ、そこで蔵官になってよ。

阿知直

阿知直

えっ ・ ・ ・ ・ もしかして、大出世?

履中天皇

履中天皇

うん、大出世。

阿知直

阿知直

わーぉ。履中様にも天皇みたいな権限あったんすね。

履中天皇

履中天皇

いや、僕、ちゃんとした天皇だから。

阿知直

阿知直

そっかそっか、そう言えばそんな設定ありましたね。

履中天皇

履中天皇

うぅ ・ ・ ・ ・ なんだよ。敬意が感じられない。アチにはたくさん助けてもらったし、お礼に田地もあげようと思ってたけど、その態度じゃ、やめよっかな。

阿知直

阿知直

なっ!!履中陛下万歳!!!!!

こうして、履中は反正を部屋にまねくと、これからのことをゆっくりと語り合った。

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そして、履中は奈良県の磯城郡に都を作ると、阿知を蔵官につけ、田地を授けた。

奥さんは4人いて、そのうち黒姫との子供が3人。

市邊忍歯イチノベノオシハ

市邊忍歯

市邊忍歯

影薄いけど、また一瞬出てきますー。

御馬王ミマノミコ

御馬王

御馬王

自分はもう出ませーん。日本書紀だと安康天皇の時代に殺されまてーす。゚(゚^ω^゚)゚。

飯豊郎女イイトヨノイラツメ

飯豊姫

飯豊郎女

私は後でまた一瞬出まーす。日本書紀には、男性との経験が1回しかないとか、私のプライベート情報が勝手にさらされていまーす。情報源どこだよ。ほっといてくれ。

やがて、履中は大した実績も無く64歳で亡くなった。

履中天皇

履中天皇

え、僕の時代、もう終わり??

御陵は仁徳と同じく大阪の堺市にあるらしい。

続いて反正はんぜいが天皇になり、大阪の南河内郡に都を置くと、特に何の実績も無く、60歳で亡くなった。

反正

反正

なんと。

反正の御陵も堺市にある。

反正天皇

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