天皇記『大長谷王子の挙兵』

大長谷王子の挙兵

大長谷王子おおはつせのみこの挙兵

安康天皇系図4

オオハツセは皇居に戻ると、この短時間で一斉いっせいに職を失った、安康とクロヒコとシロヒコの兵士達に呼びかけた。

大長谷命

大長谷命

おい、テメェらっ!!今から天皇の仇討かたきうちだっっ!!!この俺様に付いてこいっっ!!!!

経緯けいいは兎も角、なんか、もぅ、かっこいい。

おお!

その場のノリで、兵士達はオオハツセの後に続いた。

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こうしてついに自分の軍をおこしたオオハツセは、ツブラの家を囲む。

一方、ツブラの方も軍をおこして待っていたようだ。数はこっちより少ないけど、なんだか、めちゃめちゃ強そう ・ ・ ・ ・ ・

オオハツセの軍はその威圧感に足を止めた。

 

しかし、大将のオオハツセは物怖じしない。

 

大長谷命

大長谷命

ふぁぁぁ ・ ・ ・ っっ!!!

 

むしろ、なんだか楽しそう。

 

大長谷命

大長谷命

おいっ!!テメェら、行くぞっ!!!!俺様に続けっっ!!!!

オオハツセは威勢いせいよく叫ぶと、ほこを振りかざし先陣を切って駆け出した。

うおお!

兵士達はオオハツセにかれるように、後に続く。

お互いに打ち合った矢が、まるであしの花が飛び散るように飛び交う中、オオハツセは自ら先頭に立ち、興奮気味に敵をバッサバッサなぎ倒していった。その姿に士気も上がり、こちらが徐々に押していくのが分かる。

 

これはイケるっっ!!!

 

兵士達の期待が高まる中、オオハツセは敵をぎ倒しながら戦場の中心まで来た。そして、自分に降り注ぐ矢をほこでザッと振り払い、杖のように『ガツンッ』と地面に突き刺す。

まるで、もう勝利したかのようだ。

大長谷命

大長谷命

オイッ!!ツブラっっ!!!聞こえるかっ!!!!

都夫良

都夫良

はっ!!

その声を聞いたツブラが即座そくざに返事をする。今の今まで戦闘をしていた両軍の兵士達は、ピタリと止まった。

オオハツセは立ち止まったまま、また叫ぶ。

大長谷命

大長谷命

この前、俺と言い交わしたの女が、その家にいるはずだ。このまま殺るにはしい!!

都夫良

都夫良

はっ!少々お待ちください。その件、直接お話いたしましょう!!

そう答えると、ツブラは屋敷の外に出て、自らオオハツセの前まで出向き、身につけていた武装を解いた。

そして、目の前で8回も丁寧ていねいなお辞儀じぎをする。

大長谷命

大長谷命

・ ・ ・ ・ ・

都夫良

都夫良

オオハツセ様 ・ ・ ・ ・ ・ あなたが先ほど問われた乙女は、私の娘のカラヒメです。彼女はオオハツセ様につかえさせましょう。

大長谷命

大長谷命

そうか。

ツブラの軍は降参を覚悟しながら、複雑な想いで2人の会話を見守った。

都夫良

都夫良

また、カラヒメと共に5箇所の屯宅みやけもおそなえ致します。もちろん、食物庫という意味ではなく、その畑と、仕える人々を含めてという意味でございます。

その言葉に、『これまでか』といったあきらめムードがただよう。

大長谷命

大長谷命

フンッ!降参ってワケか。わかった。したら、さっさとマヨワも引き渡してもらおうか。

しかし、ツブラの答えは予想外のものだった。

都夫良

都夫良

いえ、申し訳ございません。マヨワ様を引き渡し、私自身がそちらにはお仕えすることはできません。

大長谷命

大長谷命

ああ?

都夫良

都夫良

理由を申しますと、私どもはいにしえより王に仕えて参りました。しかし、家臣が王の宮に隠れるという話は聞いても、王子が家臣の家に隠れるなどという話は、聞いたこともございません。

大長谷命

大長谷命

・ ・ ・ ・ ・

都夫良

都夫良

このことから至った結論ですが 、私めはマヨワ様のために全力を尽くし、最後まで戦わせていただく所存です。

大長谷命

大長谷命

ほう?

都夫良

都夫良

もちろん、オオハツセ様に勝つ見込みが無いことは、重々承知しております。

都夫良

都夫良

しかしながら、私を頼ってくださり、今も私の家で待つマヨワ様のことは、この命に代えても見捨てるわけにはいかないのです。

大長谷命

大長谷命

・ ・ ・ ・ ・ そうか。

大長谷命

大長谷命

わかった。もういい、下がれ。

都夫良

都夫良

はっ。失礼いたします。

そう言うと、ツブラはまた武具を取り自分の陣へと帰っていく。

大長谷命

大長谷命

・ ・ ・ ・ ・ ふっ、かっけぇな。

都夫良

都夫良

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

大長谷命

大長谷命

おい、ツブラ。負けんのが分かってるからって手加減すんなよ?

都夫良

都夫良

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ もちろんです。

大長谷命

大長谷命

はっ!そりゃ、いい。

都夫良

都夫良

我が軍は、神功皇后じんぐうこうごうと共に新羅討伐しらぎとうばつで活躍した誇り高き軍の血を引きます。オオハツセ様も足元をすくわれぬよう、お気をつけください。

大長谷命

大長谷命

はーん?

都夫良

都夫良

数ではおとっても我らは強いですよ?

大長谷命

大長谷命

はっっ!!!いいな、そーゆう武士道っぽいやつ!俺、好きだぜ??

都夫良

都夫良

ありがとうございます。では。

 

オオハツセはツブラを背後から攻めることも無く、黙って見送る。

 

 

大長谷命

大長谷命

殺るには、惜しいな ・ ・ ・

 

 

そしてツブラの戦闘態勢が整うと、また笑みを浮かべた。

 

 

 

 

大長谷命

大長谷命

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ でも殺す。

 

 

 

 

オオハツセは嬉しそうに戦闘再開の合図を掲げた。

大長谷命

大長谷命

行くぞっ!!!こっから一気に負かすっっ!!!!

おお!

勢いに乗ったオオハツセ軍が、武器を掲げて走り出す。しかし、ツブラの軍も負けてはいない。

都夫良

都夫良

行けっ!!我々は、最期の時までマヨワ様をお守りする!!

おお!

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戦闘は双方ゆずらず、泥沼化した。

 

 

やがてお互いの体力も無くなり、矢も底を尽きると、オオハツセ軍しか立っている兵士が見当たらなくなった。

 

 

オオハツセ軍の勝利だ。

大長谷命

大長谷命

はぁ ・ ・ はぁ ・ ・ ・ ・ ・ やったか。

家臣

家臣

はっ!

大長谷命

大長谷命

くっそ、コッチもだいぶ殺られたな ・ ・ ・ ・ ツブラはまだ生きてるか?

辺りを見渡すと、家に向かって歩くツブラと目が合った。どうやら、かなり深手を負っている様子だ。

都夫良

都夫良

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

ツブラはペコリとこちらに頭を下げると、家の中に入っていく。

家臣

家臣

・ ・ ・ ・ ・ ・ 追いますか?

大長谷命

大長谷命

いや、いい。

家臣

家臣

はぁ。

大長谷命

大長谷命

あとは任せた。生きてるのがいたら、ツブラの兵も拾っとけ。

大長谷命

大長谷命

俺は疲れた。帰って寝る。

家臣

家臣

え?あっ、はっ ・ ・ ・ ・ はい、わかりました。

勝ちが決まると、オオハツセはさっさとその場を引き上げた。

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家に入ったツブラは、足を引き摺りながらマヨワのひかえる部屋へと向かった。

扉を開くと、7才とは思えない大人びた表情でこちらを見られ、足が止まる。

都夫良

都夫良

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

目弱王

目弱王

ツブラ、ご苦労様です。

都夫良

都夫良

ああ ・ ・ ・ ・ 目元がオオクサカ様によく似ていらっしゃる。

ツブラは、膝をついて戦況せんきょうを報告をした。

都夫良

都夫良

マヨワ様、ご報告致します。我々の軍は壊滅かいめつ。矢も尽きました。

目弱王

目弱王

そうですか。であれば、もうこれ以上できることはありませんね。

都夫良

都夫良

はっ、申し訳ございません。

目弱王

目弱王

いいえ。ツブラ、最後までありがとうございました。

そういうと、マヨワはツブラの元に駆け寄って抱きついてきた。

怖いのか、震えている。

都夫良

都夫良

小さいな ・ ・ ・ ・ ・ ・ まだ7つか。

目弱王

目弱王

ツブラ、ごめんなさい。ボクがここに来なければ、みんな死ななかったのに ・ ・ ・ ・ ・

都夫良

都夫良

・ ・ ・ いいえ、マヨワ様が葛城かつらぎを頼ってくださって、私は嬉しかったですよ。

目弱王

目弱王

ごめんなさい ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

マヨワはしばらく押し黙った。

 

都夫良

都夫良

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

彼が何を言おうとしているのか分かったツブラは、黙って待つ。

 

目弱王

目弱王

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ふー ・ ・ ・

 

深く深呼吸をすると、マヨワはツブラの耳元で静かに最期の指示を出した。

 

目弱王

目弱王

ツブラ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ここでボクを殺してください。

 

都夫良

都夫良

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ わかりました。

都夫良

都夫良

私もすぐに参ります。ご安心ください。

 

ツブラは刀を持ってマヨワを刺し殺すと、すぐに自分も首を切って自害した。

 

大長谷王子系図


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