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ゆかりの地巡り
投稿日:2022/09/22 最終編集日:2022/09/19
昔、むかし。神代の昔。
瓊瓊杵尊と木花開耶姫の子である山幸彦は、兄の海幸彦から借りた釣り針で釣りをしていたところ、釣り針を無くしてしまいます。海幸彦は謝っても許してくれませんでした。
途方に暮れる山幸彦に、とある老人の姿をした神が近づいてきてこう言います。
「ワシが竹籠を隙間無く編み込み、潜水艦をつくります。あなたはそこに入るのです。そしてワシがその籠を潮に流します。朝になる頃には、ワダツミ様の宮殿に着くでしょう。」
老人はさらに続けてこう言います。
「宮殿の外に桂の木があります。そこから泉が見えるので、まずは様子をうかがってください。ワダツミ様の娘がいるので、彼女に話を通してもらうと良いでしょう。」
こんな助言をした神の名は 塩土老翁神(シオツチノオジ) と言うのだとか・・・。
(意訳などについては諸説あると思いますが、簡単なまとめ書きまで。ご容赦ください。)
さて、このあとどうなってしまったでしょうか。作戦は成功するのでしょうか.
続きが気になる方は、ラノベ風古事記の 日本神話『山幸彦と海幸彦』 まで。よかったらどうぞ。
https://kojiki.co/nihonshinwa/episode34.html
こんにちは。ぴちょんさんです。
今回は塩土老翁神を主祭神とする宮城の鹽竈神社(しおがまじんじゃ)と、同じ境内にある志波彦神社(しわひこじんじゃ)の話。宮城の仙台と、松尾芭蕉で有名な松島のある松島町とのちょうど中間あたりにある、塩竃市にある神社です。
▼もくじ
鹽竈神社・志波彦神社
神社名 鹽竈神社
御祭神 塩土老翁神(しおつちのおじ【以下“シオツチ神”記載】)
武甕槌神(たけみかづちのかみ)
経津主神(ふつぬしのかみ)
神社名 志波彦神社
御祭神 志波彦大神
所在 宮城県塩竈市森山
HP http://www.shiogamajinja.jp/index.html
仙台市内の渋滞を抜け、松尾芭蕉の句にも有名な松島方面に向かうと、仙台郊外の住宅地の中に雰囲気の良い山が見えました。そして、表参道から絶望にも見える果てしない段数の石段が見えました。
バイクの駐輪場は裏手にあることを知り、山をぐるっと周って駐輪場にバイクを停めると、広く美しいおおよそ公園のような境内と、比較的緩やかな坂に安堵することができました。
参拝者に加えて、地域の子供たちの遊ぶ姿やお散歩をする近所の方の姿も見え、地域の方に親しまれる綺麗な神社の印象を受けました。
鹽竈神社と志波彦神社の御朱印は、鹽竈神社でいただくことができました。両方の御朱印を同時にいただいたため、見開きで1つとなるような形で構成されています。右には志波彦神社、左には鹽竈神社の印となっています。
墨書きには、「奉拝 陸奥國 一之宮」と書かれています。印の「神社」の文字は旧字体で「示申 示土」の表記となっています。古来、こちらの文字のほうが正式なのだとか。とても達筆でありながら全体的に丸みをもった文字で構成され、地域に愛される優しい雰囲気を感じました。(平成29年8月時点の情報)
天孫降臨の説話において、日向の高千穂の峰に天降ったニニギが笠狭崎に至った時に事勝国勝長狭神が登場し、ニニギに自分の国を奉っている場面があるそうです。一書では、事勝国勝長狭神の別名がシオツチ神で、イザナギの子であるとされているそうです。
笠狭崎と言いますと、現代の鹿児島県のさつま市あたりだとされているそうです。記事冒頭の山幸彦神話の地だと言われるのは宮崎県。また下記に書くお話や、鹽竈神社のある地は東北地方となっています。色々な地に分散して話が残っているというのも面白いですね。
古事記ではなく、この神社に伝わる社伝としてです。
武甕槌神(たけみかづちのかみ:茨城県鹿島神宮の主祭神)・経津主神(ふつぬしのかみ:千葉県香取神宮の主祭神)は共に高天の原での随一の武の神として国譲りに登場し、国土平定の業をなした神とされています。鹽竈神社の社伝によれば、東北地方を平定する役目を担った武甕槌神・経津主神を道案内されたのがシオツチ神であるとされています。またこの話から、鹽竈神社には武甕槌神・経津主神が祭神としてお祭りされていることも納得できますね。
日本書紀の本文において、神武東征の記述では、シオツチ神が「東に良い土地がある」と言ったことから神武天皇は東征を決意した、とあるそうです。
このように冒頭の山幸彦の話から神武東征や東北平定まで助言をし、そしてそのすべてが後にうまくいっている、というのもすごいですね。これは私の考えですが、助言の天才と言っていいのかも知れません。またもしかしたら、未来を見通すような能力があったのかもしれません。身近な味方や上司にいてくれたらすごく助かるタイプですよね。
志波彦神社は、もとは現在の仙台市にあったとされ、明治~昭和の工事をもって鹽竈神社と同じ地に遷座されたそうです。
また、志波彦大神は古事記や日本書紀には登場しない、謎の多い神だとされているようです。ただし、名前である「シワ」とは「物の端」を表す言葉であったようで、まだ東北の全体が朝廷の傘下ではなかった時代に「朝廷が納めている国の端」であったのではないか、という説があるそうです。
この土地には志波彦大神は、農耕守護・殖産・国土開発の神としての信仰が伝わっており、東北地方を開拓し、国土を広げていく人々の守護神だったのだと考えられるのだとか。
鹽竈神社の祭神のシオツチ神は、製塩または塩の神様とも言われているそうです。そんなこともあってか、鹽竈神社では御神塩をいただくことができます。
リンク:鹽竈神社HP 御神塩http://www.shiogamajinja.jp/charm/p_charm08.html
そしてなんと、普通の食塩に同じく料理にも使えるということです!私は買わずに帰ってきてしまいましたが、もしかしたら普通のお塩よりもお肉や野菜の旨味がアップしたり?!しないかな??自分も試してみればよかったという思いがあります。盛り塩や正月の神棚のお供え料理に使ってみたり。使い方は色々考えられますね。
境内にある文治神燈は、文治3年(1187年)に藤原忠衡が義経を守るという誓いを込めて寄進したことから、文治神燈と呼ばれるそうです。しかしその後、忠衡は最期まで義経を守ろうとしましたが殺害されてしまいます。そのおよそ500年後、松尾芭蕉は「おくのほそ道」で「彼は勇義忠孝の士也」と讃えたと伝えられているそうです。
記紀好きの皆さんには、おくのほそ道や義経の物語なども好きな方も多いのではないでしょうか?一緒に楽しめるスポットだと思います。
ご存じの通り日本は江戸時代に鎖国を行っていました。他国との関係を断ち、しかしながら測量や建築は進化を続け、数学は必ず必要となっていました。そこで日本独自に発達した数学を「和算」と呼びます。
また、この「和算」の問題を絵馬に書き神社に奉納する文化があったようで、数学の問題が書かれた絵馬は「算額」と呼ばれ、今も日本全国に千ほどが残っていると言われています。これは想像ですが、現代では難しく面白い問題ができたらインターネットに書き込んで多くの人に見てもらうようにするのと同じく、多くの人が行き来する神社に問題を書いて置いておく、ということなのだろうと思っています。
この鹽竈神社では博物館にこの算額が納められており、見ることができます。理系や数学好きなら一見の価値ありです!
和算の説明によく用いられる「鶴亀算」を下に示します。
小学校で習ったような方法と、和算の計算手法の違いを見てみてください。
※オマケとして「下記:はしがき」に別の和算問題を記載しております。ご興味あればどうぞチャレンジしてみてください!
あとがき:「小学校で習った x,y を使った方法」と書いていますが、連立方程式は中学校の範囲みたいです。ただし、小学校で習う代入法などでも十分解ける問題ですので、小学校で習ったという表記にさせていただいております。
さて今回紹介した鹽竈神社・志和彦神社、興味を持っていただけましたでしょうか。
シオツチ神は助言をする役割として記紀に登場し、また製塩や漁業を伝えたと言われるような神様で、塩竃という名前もそれを表す通りです。人の生活がはじまった縄文時代から塩に関連して信仰されていたという説もあるほど、古くから人々に大切にされていた神様だと言われています。 記紀とは少し違いますが、奥州藤原氏の影響が強い世界遺産でもある「平泉」なども東北の地であるように、古代に思いを馳せるには東北にも多くの魅力が詰まっています。
ここまで読んでいただいた貴方が、いつか訪れるきっかけになれば嬉しいです。
ぴちょ的指数
歴史・見どころ | 歴史深く史跡や展示品も多く「おくのほそ道」にも登場する |
ご利益 | 勝負運、縁結び、子宝祈願などと言われている |
パワースポット | 宮城・東北随一のパワースポットなどと多く紹介されている |
アクセス | JR本塩釜駅より徒歩15分。無料駐車場複数あり。アクセス良好 |
お買い物・グルメ | 上に紹介した御神塩などの名物あり。他の名産物などは駅の近くがおすすめ |
はしがきに 記紀に関連した興味は幅が広い!今回はオマケの和算の問題!
記紀を読んだり、神社を調べたり訪れたりしていくと、関連して色々なものに興味を持つ方がいます。例えば御朱印集めや写真撮影などが分かりやすいと思いますが、他には、神社の建築形式、古代の服装、古墳巡りやハニワなどにも興味を持つ方はいます。
私は、どの部分に興味を持つか、そしてその楽しみ方は(地元や各施設にご迷惑がかからない範囲で)自由であると思いますし、もっと自由であるべきだと思っています。
正直に言うと、最近はこんな記事などを書いておりますが、筆者は大学などゴリゴリの理系でして。「記紀の物語・歴史探訪」などの文系方面はそれほど得意でなかったりします。笑
実は今回の記事に関連して紹介した「和算・算額」は、鹽竈神社で出会ってから私の楽しみの1つでございまして、他の神社でも展示品などにないか探してみたりしています。そして(それほど多くはないですが)実際に見つけたりしたこともあって。またそれはいつか記事で書くかもしれませんが、おそらく「和算・算額」を神社で見つけるのが楽しみ、という方はそれほどいないと思うんですよね。
でも想像してみてください。「電卓もエクセルも、義務教育もなかった時代に作られた200年か300年前の問題を、現代の自分がウンウン唸りながら考える。」すごくロマンを感じませんか?私はそこにとてもロマンを感じますし、なによりも楽しいんですよね、実際。
ここまで読んでいただけた貴方も、記紀や神社に興味があったら是非その地へ行ってみてください。もちろん、その気が私の記事でちょっとでも大きくなってもらえたのなら、ライター冥利に尽きるというものですが。そしてまた、貴方なりの楽しみにいつかどこかで出会うことができることを私は楽しみにしております。
下記は、鶴亀算のように和算の例題としてよく紹介される問題です。なお、鹽竈神社で展示されている算額は、図形の問題などがあり、もっと難しい問題だそうです。興味があればチャレンジしてみてください。
今回は鹽竈神社・志和彦神社とシオツチ神について書かせていただきました。
ここまで読んでいただけた貴方が、いつか訪れるきっかけになれば嬉しいです。
今日はここまで。
貴方にも善い神縁がありますように。 — ぴちょんさん —
(今回は写真に無料で引用の提示の必要のない画像を文中に使用しております。)
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