高御産巣日神(タカミムスビノカミ)
高御産巣日神(たかみむすびのかみ)は、日本でに2番目に生まれた神です。(アメノミナカヌシの次。)名前が長いからか、「高木神(たかぎのかみ)」とも呼ばれてます。
ぶっちゃけ、ミナカヌシよりいっぱい出番あるし、アマテラスにも頼られてるし、実質この人が最高神なんじゃ・・・って思っちゃうようなカミサマです。実際に、タカミムスビ最高神説もありますが、一般的には、高天原の最高神がアマテラスで、最高指令神がタカミムスビだと言われています。
最初に生まれた3柱の神様を「造化三神(ぞうかのさんしん)」、プラスその後に生まれた2柱を「別天つ神(ことあまつかみ)」と呼ぶので、タカミムスビも、そのうちの1柱。
別天つ神はみんな「独神(ひとりがみ)」ってっゆう、性別の無い神様なのですが、タカミムスビは男神の属性を持っています。カムムスビを女神として、男女対の神として考えられてきたようです。
なので、「タカミムスビ」と「カムムスビ」の「ムスビ」を男女の「結び」とする考え方もあります。
名前の由来
「古事記」だと高御産巣日神、「日本書紀」だと高皇産霊尊と書かれるタカミムスビ。
その他、高木神って呼ばれていることから、まんま「背の高い木の神」なんじゃないかと言われています。
そして「産巣日(むすび)」には、苔が生すなどの
「むす」→生産、生成、生命の誕生
+
「び」→太陽。
って意味と、
「結び」→えっち。
って2つの意味があります。
「結ばれること」と「産まれること」を同じ言葉に込めちゃうあたり、なんだか古代の日本人らしいセンスを感じます。
で、「高い木」+「太陽」+「生命」の意味を合わせて、ざっくりと「モノを生み成す生成力」の神様と言われているけど、アバウトすぎてあんまりメジャーになりませんでした。
高御産巣日神の神話
ミナカヌシと比べると出番がたくさんあるタカミムスビ。
でも一番最初の「天地開闢」から「オオクニヌシの国譲り」くらいまでは影が薄い神様です。一方、カムムスビは、出雲神話の時に大活躍しているコトから、元々は別の地方の神様だったんじゃないかと言われています。
タカミムスビが活躍し出すのは、国譲りでアマテラスがワガママを言い出すあたりから。うちの古事記では、カットしたけど、本家の古事記ではタカミムスビは常にアマテラスの近くにいて、アマテラスの指示は一度タカミムスビに通してから、他の天つ神に伝えられています。
実は、この2柱のカンケイが卑弥呼とその弟のカンケイに似ている。という事で、アマテラス→卑弥呼、タカミムスビ→卑弥呼の弟が元ネタ説。なんてのもあります。
『天地開闢』
アメノミナカヌシが生まれ姿を隠し、タカミムスビが生まれ姿を隠し、カムムスビが生まれ姿を隠す。あとはもう、しばらくの間出てきません。
『オオクニヌシの国譲り』
オオクニヌシに国を譲ってほしいとアメノワカヒコを送り込んだアマテラスだけど、8年もアメノワカヒコが帰って来なかったので、キジの遣いを送りました。でも、そのキジも帰ってこなくて、代わりに血の付いた矢が高天原に飛んできます。
「まさかワカヒコが遣いのキジを殺したの??」と、ビックリしたアマテラスとタカミムスビは相談して「アメノワカヒコに邪心があるならこの矢があたるように!」と言って、タカミムスビが出雲の方に矢を射返します。
そこで、邪心のあったアメノワカヒコは死んじゃいました。
『カムヤマトイワレビコの東征』
国譲りが無事に行われ、タカミムスビはしばらく出番が無いのですが、初代神武天皇が東征する途中で、熊野で気絶してしまい、ピンチを迎えた時にまた登場します。
熊野に住んでたタカクラジさんの夢に突然、アマテラス、タカミムスビ、タケミカヅチが現れます。そしてアマテラスが「私の子たちがピンチなの助けてよっ!!」とタケミカヅチに伝えると「いや、わざわざ自分が降りなくても、タカクラジに剣を届けさせましょう。」と言って、タカクラジの倉に剣を落としました。
タカクラジが夢から覚め、倉でその剣を見つけ、急いで神武のところに向かい、剣を渡すと、元気になりました。
すると元気になった神武に、タカミムスビが「神武くん、道案内のサポートに八咫烏(やたがらす)を送るからちょっと待ってて。」ってお告げをします。その八咫烏のお陰で神武たちは道に迷わず先に進めました。
さらに、神武たちがラスボスを倒そうとした時も「金の鳶」を送ってくれたり、上からいろいろサポートしてくれました。
以上が古事記に書かれたタカミムスビの神話です。
その他
タカミムスビには2柱の子供がいます。「オモヒカネ」と「タクハタチヂヒメ」。
そして、「タクハタチヂヒメ」と、アマテラスの長男の「アメノオシホミミ」が結婚。
2柱の間に天孫の「ニニギ」が産まれます。
古事記だと、アメノオシホミミがそれとなく「下に降りるの嫌だ。」って言い出して、代わりにニニギが降りますが、日本書紀だとタカミムスビが「いや、ニニギにしよう。ニニギのがいい。絶対ニニギ。」と言い出し、ニニギが降りる事になります。
このタカミムスビの日本書紀での発言から、皇祖神(天皇の元々のご先祖さま)はアマテラスじゃなくて、本当の皇祖神はタカミムスビなんじゃないか。って説があります。
とは言っても、タカミムスビもニニギのおじいちゃんなわけで、皇祖神っちゃ皇祖神。
巷では、「本当の皇祖神はタカミムスビなのか、アマテラスなのかどっちなんだ!!」って論争があるんですけど、個人的には「別に2柱共でいいんじゃん。」なんて思っています。なんならイザナギも入れてあげればいいと思う。
ご利益(神徳)
お願いごと全般
開運招福
厄除け
縁結び
祀られている神社
など。
天照大神と高御産巣日神だと、高御産巣日神の方が明らかに古いので、卑弥呼やその弟とは関係ないでしょう。(年上が弟というのも変)
そもそも日本神話及び日本の信仰には卑弥呼等は一切登場しません。卑弥呼が天照大神と関係あれば別名として類似する別名が神社に残ったりするはずですが日本人の信仰には卑弥呼が全く存在しない。
卑弥呼が注目されはじめたのはせいぜい近代以降、戦後の古代史ブームにのっかる形でのこじつけ的な説に過ぎず、魏という大陸国家に朝貢しなければ日本列島において勢力を維持できなかった弱小集団だったのでしょう。(こうした考察は本居宣長もおこなっており地方の弱小国家は皇室神話とは関係ないという立場をとります)
日本の皇室が九州へと勢力を拡大した際に当地の女性首長(女土蜘蛛)が頻繁に風土記等に確認されることから卑弥呼は女土蜘蛛の一人だったと考えるべきで、皇室の敵対者だったならず者を日本の神と比較するのは不適切かと思います。
ちなみに海洋政策研究所では、7,300年前に超巨大噴火を起こし、南九州縄文人を消し去り天岩戸神話のモチーフになったとも言われる「鬼界海底カルデラ」との見方を示しており、この点からも日本神話の独自性と古代の外国の記録とは無関係であることが伺えるかと思います。