日本神話『アメノオシホミミとアメノホヒ』
天照大神 の命令
「だいたい、おかしいと思わない??あのチャラ男は
「 ・ ・ ・ あなた、オオクニヌシくんのこと本当に嫌いよね。」
以前よりオオクニヌシをサポートしているカムムスビは困ったように受け答えた。
「別に好き嫌いで言ってるわけじゃないわよ。根本的に間違ってるって言いたいのっっ!!だいたい、カムムは、オオクニヌシに甘すぎるのよっ!!ちょっと人より顔が整ってるからって、あんなやつ生き返らせなくてもよかったのにっっ!!!」
「でも ・ ・ ・ 国づくり頑張ってくれてると思うんだけど ・ ・ ・ 」
「あいつは何もやってないでしょ?実際頑張ってたのはスクナビコナとオオモノヌシじゃない!!チャラ男は敵っ!人類の敵よっっ!!私が
どうやら
「まぁまぁ、落ち着いて。でも、チャラ男云々は兎も角、アマテラスのいうことも分かります。要は生みの親か、育ての親かって話しでしょう?確かにイザナミの死が無ければ、
「そうよ!そうよっっ!!!アイツ、お父様とお母様が作った国で何様のつもり??私が
「はい!えっと ・ ・ ・ アマテラスちゃん、
「そんなことしないわ。話し合って譲ってもらうの。それに、返して欲しいのは
「うぅん ・ ・ ・ でも、オオクニヌシくんだって苦労してきただろうし ・ ・ ・ そう簡単に譲ってはくれないんじゃないかなぁ?」
「あーもぉ、いいのっっ!!これは命令なのっ!!」
「あうっっ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
もはやどちらが最高神なんだかわからない。
「オシホミミ!!オシホミミはどこ??」
「はいはい ・ ・ ・ 母さん、どうしたんだよ。そんなプリプリして。」
昼寝でもしたいたのか、オシホミミの頭には寝癖が立っていて、寝間着なのか普段着なのかよくわからない格好をしている。
「あなたは、スサノオとの
「え ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ それ、俺1人じゃ無理じゃね?」
「うるさぁーーい!!早く行って来なさーーいっ!!!」
「めんd ・ ・ ・ いや ・ ・ ・ わかったよ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。」
正直なところ、
『何で死も飢えも無い幸せな生活を捨ててまで人間のために人生を捧げなきゃいけないわけ?はぁ ・ ・ ・ ・ ・ ・ でも、母さん一回言い出すと聞かないからなぁ ・ ・ ・ 。』
しかも
橋の下で
『
『『そうだー!渡すなー!!』』
『土地が豊かになったからって、今更出て来るなーっっ!!』
『『そうだー!帰れー!!』』
「うーわぁー。めっちゃ荒れてんじゃん ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ めんど・ ・ ・ 。」
オシホミミは
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ とまぁ、そんな感じで ・ ・ ・
「くうぅ ・ ・ ・ デモなんて野蛮なことして ・ ・ ・ やっぱり、
急にふられ、たまたま
「えっ?私ですか?? ・ ・ ・ いや、そうは言っても、こちらだって戦争っていうか、内乱をしたいわけじゃ無いですし ・ ・ ・ 」
「だから戦争しないで、譲ってもらう方法を考えてって言ってんでしょっ!?」
「もぅ。ワガママなんだから ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「いや、えっと ・ ・ ・ ・ ・ ・ そしたら、アマテラスの次男、アメノホヒを遣いにやってはどうですか??彼は真面目だし、棘のない性格ですから、穏便に話しを進めてくれるかもしれません。」
「なるほど。いいわねっ!ソレ採用っ!!」
こうして、
ホヒの派遣
ホヒは、脱力系の兄を見て育ったからか、とても生真面目な性格だった。しかし、「母上のためだ ・ ・ ・ ・ 頑張らねばっ!!」と勢い良く
『
『『帰れー!!』』
「へ?えっ!?ちょ、通してもらえないか?私はオオクニヌシに話しがあって!!」
『『帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!帰れ!』』
「うわっ、やめろって!通してくれっ!!」
前にも右にも左にも行けず、ホヒが途方に暮れていると、デモ隊の奥から声がした。
「おーい、デモ隊のみなさぁーーん!!!・・・あの、お気持ちは
デモ隊の動きがピタリと止まった。そして隊長らしき人が口を開く。
「し ・ ・ ・ しかし、オオクニヌシ様、こいつは国を奪おうと ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
どうやらこの声の主がオオクニヌシらしい。想像していたより人の良さそうな声だ。
「まぁまぁ。 ・ ・ ・ いいから、いいから。」
デモ隊が道を開いた。その先に、にっこりしながら、こちらを向いている人がいる。
「 ・ ・ ・ あなたが ・ ・ ・ オオクニヌシ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
噂では、
「こんにちは。アメノホヒさんですよね。失礼しました ・ ・ ・ 事情は聞いています。さぁ、どうぞ。まずは宮殿までご案内します。」
オオクニヌシはホヒを
しかし様子が変だ。席には絶世の美女が何人もおり、次々とたかってきた。
「こんにちわぁ、こちらのお席どうぞ~。お隣り失礼しまぁす♥」
「はーい、これ、おしぼりー♥てゆーか、ココって何繋がりなんですかぁ??」
「ねーねー、ホヒさんって、
「あ、飲み物頼んでもいいですか?それか、何かボトル入れます??このシャンパンすごく美味しいんですよぉ〜♥一緒に飲みたいなぁ♥♥♥」
ホヒは硬直した。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ていうか、このノリ ・ ・ ・ 完全にキャバクラじゃないかっ!!危なっっ!見た目に騙されるところだった!!やっぱこの人、噂通りのチャラ男だっっ!!!
「おっっ!!!オオクニヌシさんっっ!!!ちょっ!!こっっ ・ ・ ・ ・ ・ ・ !!!こんなことされては困りますっっ!!!!」
美女に群がられ、ホヒは顔が真っ赤だ。
「ん??こんなこと??あ ・ ・ ・ もしかして、ヒメ達のこと??くすくすっ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ごめんなさい、日常すぎて気づかなかった。」
「どんな日常だよっっっ!!!」
ホヒは思わずツッコミを入れた。すると、さっきまでニコニコと笑っていたオオクニヌシが急に影を落としてみせた。
周りの美女たちも静かになって心配そうに覗き込むと、彼は「ごめんね、2人でお話ししてもいい?」と言って、彼女たちに席を外させた。部屋が急にガランとする。
『な ・ ・ ・ なんだ??何かまずいこと言っちゃったかな ・ ・ ・ ・ ・ ・ 謝った方がいいか?』と、ドキドキしていると、オオクニヌシが先に口を開いた。
「先ほどは、ふざけてしまって、すみませんでした。確かに ・ ・ ・ ホヒさんのいうとおりですよね。ほんの少し前まではこんな日常は、ありませんでした。」
「いや、そんな深刻に取らなくてもよかったのですが ・ ・ ・ 」
なんだか変なスイッチを押してしまったようで、ホヒは萎縮した。
「実は、お恥ずかしい話しなんですけど、僕は小さい頃、虐められていて ・ ・ ・ 」
「えっ?まさか。信じられません。今じゃ
「いやいや。何を隠そう、僕は腹違いの兄に2度も殺されているんです。カムムスビ様がいなければ、とうの昔に死んでました。」
「そんな ・ ・ ・ 」
ホヒにとっては、予想外の過去だった。てっきり、
いや、大方そのイメージで間違っては無いんだけど。
オオクニヌシは、話を続けた。
「もちろん、最初から全てが上手く行ったわけじゃありません。国づくりのために僕自身の手で、何人も兄を殺めることになってしまったんですから ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。しかし、そんな兄たちの弔いの為にも、僕はこの国づくりに生涯をかけてきた。」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ごめんなさい。知りませんでした ・ ・ ・ 。なんだか、オオクニヌシさんのこと、勘違いしていたようです。ただの他力本願なチャラ男なのかと ・ ・ ・ 」
「くすくすっ、否定はしません。僕なんかは人を頼らないと何もできないタイプですから ・ ・ ・ ・ ・ ・ でも ・ ・ ・ そんな僕と違ってアメノホヒさんは、優れた
オオクニヌシはぐっとホヒに近づいて彼の目を見た。
「 ・ ・ ・ ・ よかったら、国づくりのお手伝いをしていただけないでしょうか?」
ホヒは、口を開けたまましばらく固まった。
「えっ?いやっ ・ ・ ・ えっ!? ・ ・ いやっ、えっ、でも ・ ・ ・ 私は、母から国譲りを頼まれて来たんです ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
ホヒは、テンパって目を逸らした。オオクニヌシは居住まいを正し、真剣な面持ちで頭を下げる。
「もちろん、ホヒさんの立場はわかっているつもりです。お話をして、責任感の強い方なのだということも感じました。でも、そんなホヒさんだからこそ、無理を承知してお願いしているんです。」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ でも ・ ・ ・ 」
「僕はこれまで、みんなの血と努力でなんとか国を造って来ましたが、
「そんな ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「しかし、まだ国づくりは終わっていないんです!!こんな中途半端なところで譲ってしまっては、
僕は、この国に住む全ての人を幸せにしたいんです!
そのためには、ホヒさんの力が必要なんだっっ!!!」
オオクニヌシは深々と頭を下げ、そして考えた。
『んーー ・ ・ ・ ・ ・ ・ まじめそうだから、誠実っぽく訴えれば落とせると思うんだけど。どうだろ。 ・ ・ ・ 最後らへん、ちょっと演技がクサかったかな ・ ・ ・ ・ ・ ・ 』
まぁ、ここまでオオクニヌシの物語を見て来た方であれば分かると思うが、途中からかなり話しを盛っている。彼は、ホヒを
そりゃ、オオクニヌシにしたって、ここまで苦労して築き上げてきたものを「くれ」と言われて、「はい、どうぞ」なんて譲る気なんか、毛頭ない。しかし、国づくりに協力をしてもらっている
そして、オオクニヌシが恐る恐る顔を上げると ・ ・ ・ ・ ・ ・
ホヒは号泣していた。
「っっ ・ ・ ・ ・ ・ ・ んあぁ!! ・ ・ ・ 無理だっ!!私にはあなたにこの国を譲れなんて言えないっ!! ぐじゅっ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 私で ・ ・ ・ 私で、お役に立てるなら、喜んでお手伝しましゅっっ!!!」
『よかった ・ ・ ・ ・ ・ ・ ここまで泣かれるとちょっと罪悪感だけど ・ ・ ・ ま、いっか。
ごめんね、天照大神。息子さんはもらったよ。』
オオクニヌシは、人知れずほくそ笑んだ。
「 ・ ・ ・ そうですか!よかったぁ!!本当にありがとうございます!!共に良い国を作りましょうね。ホヒさんっ♪♪」
こうして、ホヒはちゃっかり