そもそも古事記とは
ラノベ古事記 月間約50万PVを記録!

日本の神話・古事記の情報発信サイト

古代の文化

聖徳太子は笏を持っていなかった!?飛鳥時代の服装を再検証!

投稿日:2022/06/22 最終編集日:2022/06/21

初めまして、シロガネロックと申します。古代史で主に飛鳥時代~奈良時代辺りで創作したり絵を描いたりしている者です。

古事記も時代範囲が広いのですが皆さんがイメージする古代の人々のビジュアルイメージ(特に服装)は必ずしも一致していないのではないでしょうか?

当時の風俗については分からないことも多く、創作であれば自由に描くことももちろんアリだと思いますが、あまりにもイメージ先行だなと思うことも多く、最低限それは当時は無いんじゃないかな~多分こんな感じじゃないかな~レベルの話は知ってて損はないと思いまして。

今回は特に、古事記には簡単にしか出てきませんが古代史でもトップレベルの有名人、聖徳太子についてのお話です。

聖徳太子の生きた、飛鳥時代の服装について

聖徳太子(唐本御影)
唐本御影の木版複製(Wikipediaより)

聖徳太子といえば浮かぶイメージは大多数が太子が黒い冠かぶって笏持ってて王子二人引き連れてるあの「唐本御影」スタイルではないでしょうか? 当然私もでした。この絵を元にした聖徳太子像は過去のお札にも使われていて、

これの功罪ほんとすごい。

実際は聖徳太子の時代より後の奈良時代辺りの風俗を描いたものと考えられています。そしてこの絵と後世での存在感のせいか、古代の日本人「笏」持ちすぎ問題があります。

把笏の制度はいつから?

古代の官人のイメージで大体持ってる感の細長い板状のもの=笏

この笏、導入当時から案外常に持ってるわけでもないし、正式な導入となるとかなり遅いです。具体的には奈良時代も元正天皇の時代、養老三年(719年)に帰国した遣唐使が唐王朝から与えられた朝服を着用して天皇に拝謁しました。その直後に見える記事がこちら。

養老三年二月壬戌(三日)
初令天下百姓右襟。職事主典已上把笏。其五位以上牙笏。散位亦聽把笏。六位已下木笏。

初めて全国の人々に、衣服の襟を右前にさせ、識事の四等官以上の者に笏をもたせた。五位以上は象牙の笏、散位も笏をもつことを許した。六位以下は木の笏である。

『続日本紀』(現代語訳は講談社学術文庫より)

遣唐使が実際に持ち帰った唐の服装に倣ったものと思われますが、ここからが正式な把笏(笏を持たせること)スタートです。実は現在着物を着る際には当たり前になっている装束の右衽(右前)もこの時から正式に決められました。

聖徳太子の時代から大体百年くらい後のことで、奈良時代代表な藤原不比等ですら人生の大半笏持ってないことになります。

ただし財力あったりする人が個人的に持つとかはあったんじゃないかなと個人的には思うのですけど。むしろ律令以前ってみんな結構服装バラバラだったんじゃないでしょうか。一律に支給でもされないと服装ってなかなか揃わないものですよね。律令制施行以後も近頃服装が乱れている!メッ!みたいな勅とか割とあります。

天寿国繡帳から考える、飛鳥時代の服装

聖徳太子の服装となると、最近では同時代(もしくは近い時代・諸説あり)「天寿国繡帳」を参考にした服装となっていることが多く、個人的にもこちらに倣っておくのが無難ではないかと思います。

そこで参考までに従来の「唐本御影」スタイルと「天寿国繡帳」スタイルで聖徳太子並べて描いてみました。

唐本御影及び天寿国繡帳を参考にした聖徳太子像比較
唐本御影及び天寿国繡帳を参考にした聖徳太子像比較

描いてみて実感したけど、まっったく違いますね!!

みんな大好き(のはず)冠の後ろのヒラヒラ(纓や幞頭の脚など)もどうやらこの頃はまだなさそうですよ~。右の装束になるとさすがに前時代のみずらなどは相性が悪いので(冠の上部分に結った髪を入れるから)、無くなっていくのもわかる気がします。

飛鳥時代の服装 まとめ

それぞれの服装を比較してみると元々の聖徳太子イメージで存在していたものがほとんど無くなるような状況ですね。最近では学習漫画とかかなり意識して聖徳太子は描かれており元のイメージではなく天寿国繡帳を参考にした服装で描かれていることが多いです。そういえばNHKのドラマ「聖徳太子」でもその辺りはしっかり考証されていた記憶。

ここから、服制は奈良時代までかなり変わっていきますが、参考にするものが少なすぎるのが古代史なので細かいところはほんと「わからん!!」につきます。描く側としては毎回資料の無さに泣いており…古代史ジャンルで描く服装が曖昧もしくは不統一でも許してほしい…(描き手の本音)

参考文献
『風俗博物館蔵 日本服飾史 男性篇』 井筒雅風 光村推古書院
『日本服飾史考』 井筒雅風 風俗博物館
『図解 日本の装束』 池上良太 新紀元社
『続日本紀 全現代語訳』 宇治谷孟 講談社学術文庫

古代の文化一覧へ
Writer シロガネロック

奈良時代を中心に日本古代史、同時期の中国史などを趣味で追いかけています。興味対象を狭く深く。推しを贔屓する歴史創作なども。

Homepage

ラノベ古事記ラノベ古事記

当サイト代表が運営する古事記をキャラ萌えしながら楽しめる読み物コンテンツです。月間約50万PVを記録した人気サイト!ぜひご覧ください!

Likebox