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淡道之穂之狭別嶋あわぢのほのさわけのしま
淡路洲あわじのしま

イザナギとイザナミによる、壮大な「国生み(島生み)」の神話。 天の神様から「世界を固めなさい」と命じられた二人が、失敗と試行錯誤を乗り越えて、一番最初に生み出した記念すべき第一の島が「淡路島」です。

昔の人々にとって、この島はただの地面ではありませんでした。豊かな食べ物をもたらし、日本という国が始まる「生命の源」そのものだったのです。ここでは、国生みのトップバッターである淡路島が、どんな神様として描かれ、どんな深い秘密を持っているのかを分かりやすくお話しします。

古事記と日本書紀で違う「生まれ方」の秘密

淡路島の誕生シーンは、歴史書によって書かれ方が違います。ここには、命が生まれる時の神秘的な生々しさが隠されています。

文献名 表記 読み方 特徴と込められた意味
古事記 淡道之穂之狭別嶋 あわぢのほの
さわけのしま
大八島(日本の島々)の第一号。島としての名前と、神様としてのキャラクター名が合体したカッコいい名前です。
日本書紀 淡路洲 / 淡洲 あわじのしま 日本という巨大な島々が生まれる前の「胞(えな=胎盤)」として生まれた、と書かれています。

胎盤(えな)として生まれた島?

『日本書紀』には、本州や四国といった巨大な島々(大きな赤ちゃん)を産み落とす前に、まず赤ちゃんを包んで育むための「胞(えな=胎盤)」として淡路島がポロッと生まれた、というとても印象的な表現があります。

大地が生まれることを、人間のお産と同じように生々しく、命の力に溢れたものとして捉えていた古代の人々の感覚が伝わってきますね。神様にとっては「本番前の胎盤」として産み落とされた島だったかもしれませんが、ここから立派な日本列島が次々と生み出されていく、まさに「命の器(スタート地点)」としての素晴らしい大役を果たしたのです。

実際の『日本書紀』には、このように書かれています。

「以淡路洲為胞、意所不快、故名之曰淡路洲」 (淡路洲を胞<えな>とした。心に喜ばしくなかった。ゆえに名付けて淡路洲という

ちょっと切ないエピソードですよね。イザナギとイザナミが最初に産んだこの島(胎盤)を見て、「心に喜ばしくない(ガッカリした)」と思い、だからこそ「あわじ」と名付けた、というのです。

この「あわじ」という響きは、「あがはじ(吾恥=私の恥だ)」という神様の嘆きの言葉がなまったものだと言われています。

ちなみに、『日本書紀』の別のお話(一書)では、この胎盤として生まれた島を「淡洲(あわしま)」と呼ぶバージョンも存在します。

流されてしまった悲しき「淡島(アワシマ)」と、大成功の第一号である「淡路島(アワジシマ)」。名前がそっくりなこの二つの島は、日本列島という新しい命を産み出す神秘的な場面において、まるで光と影のように深く繋がっているのかもしれませんね。

「あわぢの・ほのさわけ・のしま」の名前の秘密

『古事記』に登場するこの長くてカッコいい名前には、「この島は、こんなにも実り豊かで素晴らしいんだ!」という、熱い誇りと愛情が詰まっています。

淡道(あわぢ): 島の名前(淡路)。

穂(ほ): 稲や粟(あわ)の穂のこと。または、一番最初に出る「初穂」、海の中で高く抜きん出ている地形を表します。

狭(さ): 稲を意味する古い言葉。

別(わけ): 天皇や皇子の名前にも用いられる「特別な力を持つ男神様」や「領主」という意味。

つまり、「一番最初に豊かなお米や穀物をもたらす、特別なパワーを持った男神様」という意味になります。

実際、淡路島は古くから「御食国(みけつくに)」と呼ばれ、朝廷に美味しい海の幸や山の幸を献上する、食料の超重要拠点でした。

「あわじ」という名前の、ちょっと切ない由来

そもそもなぜ「あわじ」という名前になったのかについては、大きく2つの説があります。

阿波路(あわじ)説
阿波の国(徳島県)へ行くための海の「通り道」にある島だから、阿波路(あわじ)になったという、地理的なルートに由来する説です。

吾恥(あがはじ)説
『日本書紀』には、少し切ないエピソードが書かれています。イザナギとイザナミが最初に産んだこの島(胎盤)を見て、「私たちが思い描いていた立派な国とは違う。

ああ、私の恥(吾恥=あがはじ)だ」とガッカリしたから「あわじ」になったという説です。 最初は失敗作だと思われたり、小さな島だと嘆かれたりしながらも、そこから立派な日本列島が次々と生み出されていく過程は、神様たちの人間らしい苦悩と成長のドラマを感じさせます。

『ラノベ古事記』に込めた、もうひとつの「アワジ」

学術的な説とは別に、私の描く『ラノベ古事記』の中では、オリジナルの裏設定を持たせました。

それは、「先に形がなくなって海へ流されてしまった子『アワシマ』のことを忘れないように、その『次(ジ)』に生まれたこの子を『アワジシマ』と名付けた」というものです。

「次」を「ジ」と読むのは中国から来た音読みなので、当時の大和言葉のルールとしては採用できない説なのですが、この解釈には、私自身が過去に流産を経験した際の「失われた命への想い」と、無事に生まれてきてくれた次の子を「何よりも大切にしたい」という、愛情を込めています。

神話の舞台!「おのころ島」はどこにある?

イザナギとイザナミが、天の沼矛(あめのぬぼこ)で海をかき回し、矛の先からポタポタと落ちた塩が固まってできたのが、神話のスタート地点である「淤能碁呂島(おのころじま)」です。淡路島の周辺には、「ここがそのおのころ島だ!」と言い伝えられている神秘的な場所がいくつもあります。

沼島(ぬしま)
空から見ると勾玉(まがたま)の形をした不思議な島。海岸には、矛の先のような形をした巨大な岩「上立神岩」がそびえ立っています。

絵島(えしま)
約3500万年前の地層が作り出す、まるで絵画のように美しいマーブル模様の小島です。

自凝島神社(おのころじまじんじゃ)周辺
かつては海に浮かぶ入り江の島だったとされる場所。巨大な鳥居がそびえ立ちます。

淡路島の神様に出会える、始まりの神社

淡路島には、「すべての神様の始まり」を感じられる由緒正しい神社が集まっています。

神社名 場所 お祀りする神様 特徴やご利益
伊弉諾神宮
(いざなぎじんぐう)
淡路市 イザナギ、イザナミ 大仕事を終えたイザナギが余生を過ごした「幽宮(かくりのみや)」の跡地。日本最古の神社のひとつで、夫婦円満や縁結びの最強パワースポットです。樹齢900年の「夫婦大楠」は圧巻です。
自凝島神社
(おのころじまじんじゃ)
南あわじ市 イザナギ、イザナミ 神様が最初に降り立った「おのころ島」にあったとされる神社。安産の神様として信仰が厚く、ここの砂をお守りにすると良いと言われています。
岩樟神社
(いわくすじんじゃ)
淡路市岩屋 イザナギ、イザナミ、蛭子命 最初に生まれて海に流された「ヒルコ」を祀る海辺の洞窟の神社。夫婦円満や子宝、商売繁盛のご利益があります。

おわりに

淡道之穂之狭別嶋(淡路島)は、ただ「一番最初に生まれた島」というだけではありません。

親であるイザナギとイザナミが「失敗した(吾恥)」と涙し、もがき苦しみながらも、必死に命を紡ぎ出した「最初の成功体験」であり、これから生まれるすべての命を優しく包み込む「ゆりかご」です。

最初から完璧なスタートではなかったからこそ、この島に生きる人々は、自らの手で大地を耕して豊かな実りを育て上げ、自分たちの故郷を「特別な力を持つ誇り高き島」へと進化させていきました。

神様の人間らしい葛藤と、そこに生きる人々の汗と愛情が幾重にも重なってできた、最高に愛おしい始まりの大地。それが淡路島なのです。

執筆のためのリサーチノート・参考文献


Writer’s Note:
本記事は、國學院大學の公開資料をはじめとする古典文献の厳密な記述を参考にしつつ、作家・クリエイターである小野寺 優ラノベ古事記 著者)の視点から、独自の解釈で構成しています。

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