日本初の結婚式「みとのまぐわい」
ついに始まった、イザナキとイザナミの国生みプロジェクト!神々による「日本初の結婚式」の様子をサクッと解説します。

(なあ、天武……)


(この章、安万侶に質問させるのは酷じゃないか?)

そうか? 大丈夫だろ。男の子だし

(しかしだなぁ……)

む? どうかしました?

いや、ちょっとね。阿礼ちゃんが心配性で

早速、続き行くか!

はーい!

うぅん……
於是問妹伊邪那美命曰、汝身者如何成。答白吾身者、成成不成合処一処在。爾伊邪那岐命詔、我身者、成成而成余処一処在。故以此吾身成余処、刺塞汝身不成合処而、以為生成国土。生奈何。伊邪那美命、答曰然善。爾伊邪那岐命詔、然者吾与汝行廻逢是天之御柱而、為美斗能麻具波比。如此之期、乃詔、汝者自右廻逢、我者自左廻逢。約竟廻時、伊邪那美命、先言阿那迩夜志愛袁登古袁、後伊邪那岐命、言阿那迩夜志愛袁登売袁、各言竟之後、告其妹曰、女人先言不良。
ここにその妹伊邪那美命に問ひたまはく、「汝が身は如何か成れる」ととひたまへば

そこで伊邪那岐命は、妻の伊邪那美命に「あなたの体は、どのようにできているのか」と尋ねた

「吾が身は、成り成りて成り合はざる処一処あり」と答へたまひき

伊邪那美命は「私の体は成長してできあがったが、一か所だけ足りないところがある」と答えた

ここに伊邪那岐命詔りたまはく、「我が身は、成り成りて成り余れる処一処あり」

そこで伊邪那岐命は言った。「私の体も成長してできあがったが、一か所だけ余っているところがある」

「故、この吾が身の成り余れる処をもちて、汝が身の成り合はざる処にさし塞ぎて、国土を生み成さむと以為ふ」

「だから、私の体の余っているところを、あなたの体の足りないところに差し塞いで、国を生み出そうと思う」

「生むこと奈何」とのりたまへば、伊邪那美命、「然善けむ」と答へたまひき

「国を生むのはどうだろうか」と尋ねると、伊邪那美命は「それがよいでしょう」と答えた

ここに伊邪那岐命詔りたまひしく、「然らば吾と汝とこの天の御柱を行き廻り逢ひて、みとのまぐわい為む」とのりたまひき

そこで伊邪那岐命は「それならば、私とあなたでこの天の御柱を巡り、そこで出会って、夫婦の交わりをしよう」と言った

かく期りて、すなはち「汝は右より廻り逢へ、我は左より廻り逢はむ」と詔りたまひ

このように約束して、伊邪那岐命は「あなたは右から巡りなさい。私は左から巡ろう」と言った

約り竟へて廻る時、伊邪那美命、先に「あなにやし、えをとこを」と言ひ

約束を交わし終えて、二柱が柱を巡った時、伊邪那美命が先に「ああ、なんと素晴らしい男性でしょう」と言い

後に伊邪那岐命、「あなにやし、えをとめを」と言ひ

後から伊邪那岐命が「ああ、なんと素晴らしい女性でしょう」と言った

各言ひ竟へし後、その妹に告げたまひしく、「女人先に言へるは良からず」とつげたまひき

それぞれ言い終えた後、伊邪那岐命は妻に「女性が先に言葉をかけるのは、よくない」と告げた

えっと……安万侶、質問は任せても大丈夫か?

もちろんですっ!

そっか。ならいいんだけど……

では、「成り合はざる処」と「成り余れる処」って、どういう意味ですか?

ああ。まず「成る」は、形づくられる、できあがるって意味だ

ふむふむ

女性は、形づくられた時に、成り切らなかったところがあるそうだよ? それが「成り合はざる処」

成り切らなかったところ?

対して男性には、形づくられた時に、成り過ぎて余っているところがあるらしい。それが「成り余れる処」

成り余ったところ……

安万侶にも「成り余ってるところ」があるだろ?

む??

股間に

ギャッ!!

他に質問は?

あ〜、え〜、えっとぉ……

「みと」は?

「みと」は「御所」や「御座所」。ここでは、神聖な場所と考えればいいかな

あとは、「水の戸」とも読めることから……

オイ、天武。安万侶で遊ぶなよ?

はいはい。なら、こっちの説はやめておこうか

む?

ここでは分かりやすく、「二人の寝所」と訳しておこう

新婚さんの寝室……

はっ!

その、えっ……えっと、じゃあ、「期りて」は???

ん〜? 「期り」は「契り」だから、普通に「約束」のことだけど……

「まぐわい」の意味はわかったのかな?

へっっ!?!?

あ、いや、えっと、だって、ほら……新婚さんが寝室ですることって言ったら……その……あれかなって……

うん、そうだな。新婚さんといえばあれだ

「目と目を見合わせる」という意味だ

へ?

「まぐわい」は「目合ひ」とも書くんだよ?

えっ、あっ、そうなんですね。なんだ、てっきり……

そんな言葉が、セックスまで表すなんて、古代人もロマンチストだよな?

あああっっ!!! やっぱりっっ!!!!!

ふっ!

ったく……

つーか、「まぐわい」はシンプルに「交わり」でよいのでは?

まー。別にそれでもいいけど……

そっちの解釈で「みとのまぐわい」説明したら、安万侶には刺激が強すぎないか?

……あー。ですね

気付かなかったフリ……気付かなかったフリ……

他に質問は?

え、えっと……なんでイザナキとイザナミは柱の周りを回ってるのでしょうか?

これは、結婚の儀式だよ

む?

なんか、面白い儀式ですね。あんまり馴染みがない気もするけど

かもな。けど、神前式で「天の御柱めぐり」を取り入れている神社も、ちらほらあるぞ?

へー! 神話と同じ儀式で結婚式するなんて、とってもロマンチックですねっ!!

わかる! いいよなぁ〜

いや、公開処刑だろ……

中国南西部のミャオ族などには、男女が柱や木の周りを巡る、よく似た婚姻儀礼が残っているらしい

わぁー。ロマン!!

となると、つい「春秋緯元命苞」にあった「天左旋、地右動」の記述や、「淮南子」の「雄左行、雌右行」なんかとの繋がりを勘ぐっちゃいますねっ!!

えっ!?

は?

ん? なんだそれ。しゅんじゅうげんめいほう?? えなんじ???

「春秋緯元命苞」は古代中国の緯書で、「淮南子」は思想書だよ……

子どもが気軽に読むような本ではない

んな、マニアックな……

む? 淮南子は思想書だから、結構読みやすいですよ??

まじか

天地開闢のくだりなんかは特に影響を感じますねっ!!

あーー。安万侶さ……

オレの説明で事足りてる??

もちろんですっ!! 陛下のお話、とってもわかりやすいですっ!!!

あ、そう?? ならいいんだけど……

(おい天武……安万侶の所感は、掘り下げなくてもいいのか?)

(そうですよ。この手の話、お好きじゃないですか)

(は? いやいや。これ掘り下げたら収拾つかなくなるやつだろ……)

(子どもの可能性を広げるよりも、ご自分の自尊心を守るんですね?)

(ちげーよ、ばか。読者様がついてこれなくなったら本末転倒だろうが!!)

む?? どうかされました?

あ、いや、こっちの話!

……じゃ、続き行こうか

はーい!

末恐ろしいな……

あとは、「あなにやし」って??

感動表現だ。「あれまあ」くらいの感じかな?

「えをとこを」と「えをとめを」は??

「良い男だわ」「良い女だなぁ」ってこと

ふふっ! ラブラブですね

羨ましいねぇ

しかし、イザナキの「女性が先に言葉をかけるのは、よくない」という言葉どおり、このあと問題が起きてしまう

む? 何かあったんですか?

それは、次ページで

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