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イザナギとイザナミの神生みで、大屋毘古神の次に生まれるのが、風木津別之忍男神(カザモツワケノオシオ)です!
長い名前ですが、「風」と「忍男」の文字を見ると、風に負けずに踏ん張る姿が浮かんできますね。実際に、屋根が風に飛ばされないよう支える神様と読む説があります。名前の意味と、後の人々が寄せてきた信仰を見ていきましょう。
古事記・日本書紀での描かれ方
古事記上巻では、国生みを終えたイザナギとイザナミが、続いて神々を生みます。大事忍男神から数えて七番目に生まれるのが風木津別之忍男神。前には大屋毘古神、次には海の神・大綿津見神が登場します。
ここでいう七番目は、国生みの後に始まる神生みの順番です。本文には誕生が記されますが、風と戦ったり家を守ったりする場面はありません。そうした役割は、名前や前後の並びからの解釈です。
國學院大學の神名データベースには、日本書紀での同名の登場は挙げられていません。他文献では、『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』の「陰陽本紀」に同じ名前が見えると紹介されています。
風木津別之忍男神とは?
ひとことで紹介するなら、風に持ちこたえる家の強さを表すと考えられている、イザナギとイザナミの子です。
屋根を葺き、家ができても、風が吹くたびに壊れてしまっては安心して暮らせません。できあがった家を、しっかり支える。その姿を名前に重ねると、目立たないところで頑張ってくれる、頼もしい神様に感じられますね!
| 神様の名前 | 風木津別之忍男神 カザモツワケノオシオノカミ |
|---|---|
| ほかの読み | カザモクツワケノオシオノカミなど |
| 親神 | イザナギ・イザナミ |
| 古事記での登場 | 上巻・国生みの後。神生みの七番目 |
| 役割の解釈 | 風に耐え、家屋を支える力を表すとする説 |
名前の由来・意味
この神名には、古事記の中に「風」をカザと読み、「木」は音で読むように指示する注記があります。ところが、「木」をモと読むか、モクと読むかで意見が分かれます。
このページでは、これまでの一覧に合わせて「カザモツワケノオシオ」を使います。一方、國學院大學の神名データベースの見出しの読みは「カザモクツワケノオシオ」。違う神様の名前ではなく、同じ漢字表記に対する読みの違いです。
「カザモツ」と読む立場では、「風・持つ」と捉え、風に吹かれても屋根が飛ばないように支える意味に解釈する説があります。國學院大學の「神生み」の注釈は、倉野憲司の屋根を支える神という説や、西宮一民の家屋の耐久力を表すという説を紹介しています。
ただし、「モク」と読む立場では、同じように「風・持つ」と区切れるとは限りません。読み方が変われば、名前の意味の捉え方も変わるのですね。
「忍」と聞くと、じっと耐え忍ぶ姿を思い浮かべます。でも研究上は、威力のある存在をたたえる言葉とする説や、「おしなべて」という意味にとる説があります。「別(ワケ)」には男子への敬称とする説もあります。
「忍」の字だけから、我慢が得意な性格だったとまでは言えません。ただ、風に持ちこたえる神という解釈と合わせると、力強いイメージが伝わってきます。
國學院大學の注釈は、西郷信綱が意味の不明瞭さを認めたうえで、後に生まれる風や木の神とのつながり、また続く神名の「ツ」とのつながりを考えていることも紹介しています。住まいの神々という読み方だけで、すべてが解けるわけではなさそうです。
登場する神話(国生みから神生みへ)
国生みの後に生まれる最初の十柱です。風木津別之忍男神は、住まいに関わる六柱として読まれる神々の最後に位置しています。
| 順番 | 神様の名前 | 読み | 関わるもの・解釈 |
|---|---|---|---|
| 1 | 大事忍男神 | オオコトオシオ | 国生みや神生みの大事業に関わるとする説 |
| 2 | 石土毘古神 | イワツチビコ | 住居に関わる神という説 |
| 3 | 石巣比売神 | イワスヒメ | 住居に関わる神という説 |
| 4 | 大戸日別神 | オオトヒワケ | 住居に関わる神という説 |
| 5 | 天之吹男神 | アメノフキオ | 住居に関わる神という説 |
| 6 | 大屋毘古神 | オオヤビコ | 家屋に関わる神という説 |
| 7 | 風木津別之忍男神 | カザモツワケノオシオ | 住居に関わる神という説 |
| 8 | 大綿津見神 | オオワタツミ | 海の神 |
| 9 | 速秋津日子神 | ハヤアキツヒコ | 水門の神 |
| 10 | 速秋津比売神 | ハヤアキツヒメ | 水門の神 |
※国生みを終えた後の、神生みでの順番です。「住居に関わる神」は神名に基づく解釈。海と水門については古事記本文に記されています。表が画面に収まらない場合は横にスクロールできます。
天之吹男神を屋根を葺く神、大屋毘古神を家屋の神と読むと、その次に「風に持ちこたえる力」が続きます。家を建てて終わりではなく、住み続けられる強さまで大切にしているように感じますね。
これは神名の並びから広がる読み方で、古事記に建築の手順が書かれているわけではありません。この後は、海の大綿津見神、水門の速秋津日子神・速秋津比売神へと続き、神生みはさらに風・木・山・野の神々へ広がります。
同じ神生みには、後に志那都比古神も登場します。こちらは本文が「風神」と明記する神様です。風木津別之忍男神は、名前に「風」があり、そこから役割を考えられている神様。古事記は二柱を別々に挙げています。
伝承の地
古事記には、風木津別之忍男神が特定の土地へ降り立ったという話はありません。一方、現在の祭祀を調べると、三重県松阪市にこの神名に関わる神社が見つかります。
三重県神社庁の案内では、加世智神社や松ヶ崎神社は、昔から漁民の信仰が篤かったと伝えられています。家を支える神という読み方から調べ始めて、海辺の暮らしにも出会えるのがおもしろいところです。ただし、各社への信仰すべてを、この一柱だけの神徳とはしません。
歴史の中で伝えられてきた信仰
三重県神社庁の由緒によると、『延喜式』神名帳の飯南郡には加世智神社の名が見えます。ただし創始の詳しい事情は不明とされています。神名帳で確かめられる社名と、現在の案内に記される祭神名は、区別しておきたいところです。
同社は明治41年(1908年)に34社を合祀し、現在地へ移ったと伝えられています。現在の祭神が多い背景にも、地域の神社が集まってきた歴史があるのですね。
御利益(神徳)
屋根を支え、風に持ちこたえる神様という解釈からは、風の災いを避け、家族が安心して暮らせますようにと願いたくなります。浮島神社の家宅六神の案内でも、この神様は風害を防ぐ神として紹介されています。
そして、ここからは名前に重ねる私たちの願い。大切なものを守りたい時、向かい風の中でも踏ん張りたい時に、「もう少し、支える力を貸してください」と頼ってみるのもよさそうです。
古事記本文に御利益の説明はありませんが、家を支える力に、自分や家族の毎日を支えてほしいと願う気持ちを重ねる。そんな親しみ方が似合う神様ですね!
祀られている神社・関連する神社
三重県神社庁の案内は、祭神の一柱に「風木津別忍男神」を挙げています。古事記の表記から「之」を除いた形です。所在地は松阪市大平尾町67。「名残の天神さん」の通称でも親しまれています。
昔から漁民の信仰が篤かったと伝わる神社です。屋根や家の強さという神名の解釈とともに、地域で大切にされてきた歴史も知っておきたいですね。
三重県神社庁の案内では、祭神に「風木津別男神」の名が見えます。所在地は松阪市松崎浦町736。地域の産土神として、漁民たちの篤い崇敬を受けてきたと紹介されています。
こちらは「之」「忍」を含まない祭神表記です。古事記の神名との関係を考えるうえで参考になる神社として、案内に記された名前をそのまま紹介しています。表記が異なる経緯は、この資料だけでは分かりません。
浮島神社の地鎮祭の案内には、家宅六神の一柱として風木津別之忍男神が紹介されています。屋根を葺く神、家の神に続いて、風害を防ぐ神が並ぶ説明です。
同社の祭神は親神のイザナギとイザナミ。このページは風木津別之忍男神を同社の祭神として挙げているものではなく、住まいの神々の受け止め方を知る資料として紹介しています。
参考資料・出典
古事記本文の誕生順、読みと名前の解釈、神社の祭神表記と由緒を、以下の資料で確認しました。倉野憲司・西宮一民・西郷信綱の個別の解釈は、國學院大學の注釈による紹介を参照しています。
この記事の参考資料
國學院大學:古事記ビューアー「神生み」
國學院大學:神名データベース「風木津別之忍男神」
三重県神社庁教化委員会:加世智神社
三重県神社庁教化委員会:松ヶ崎神社
浮島神社:地鎮祭・家宅六神の案内
執筆のためのリサーチノート・参考文献
Writer’s Note:
本記事は、國學院大學の公開資料や古典文献・研究資料を参考に、作家・クリエイターであり、古事記学会会員でもある小野寺 優(ラノベ古事記 著者)が執筆しています。本文の記述や研究者の解釈をご紹介しながら、物語を楽しむ視点から、著者自身の考察も添えています。

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