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天之吹男神(アメノフキオ)
(日本書紀には同名の神の記載なし())

イザナギとイザナミの神生みで、大戸日別神の次に生まれるのが、天之吹男神(アメノフキオ)です!

「吹」という字を見て、風を吹かせる神様かな?と思うかもしれません。でも、前後の神様の名前と一緒に読むと、家の屋根を「葺(ふ)く」姿も浮かんできます。いったいどんな神様なのか、古事記の記述と名前についての説をたどってみましょう。

古事記・日本書紀での描かれ方

古事記では、神生みの五番目に登場!

古事記上巻では、国生みを終えたイザナギとイザナミが、続いて神々を生みます。大事忍男神から数えて五番目、大戸日別神の次に生まれたのが天之吹男神。その次には大屋毘古神が続きます。

ここでいう「五番目」は、国生みの後に始まる神生みの中での順番です。古事記本文には名前と誕生の順番が記されていますが、天之吹男神が実際に屋根を葺いたり、火を吹いたりする場面はありません。

日本書紀に同じ名前は見える?

國學院大學の神名データベースは、天之吹男神の登場箇所を古事記上巻と『先代旧事本紀』「陰陽本紀」に挙げています。日本書紀での同名の登場は挙げていません。「吹」の字だけで、日本書紀に登場する別の神様と同一視することはできません。

天之吹男神とは?

ひとことで紹介するなら、屋根を葺くことに関わると考えられている、イザナギとイザナミの子です。ただし、「火を吹く」ことに関わる神と読む説もあります。

雨の日に家の中でゆっくりできるのは、頭の上に屋根があるから。そう思うと、屋根を葺く神様という見方は、急に身近に感じられますね!

神様の名前天之吹男神
アメノフキオノカミ
親神イザナギ・イザナミ
登場する場面古事記上巻・国生みの後。神生みの五番目
役割の解釈屋根を葺く神とする説、火を吹く竈の神とする説など

名前の由来・意味

「吹」は屋根を葺くこと?

國學院大學の解説には、天之吹男神を屋根を「葺く」神と見る説が紹介されています。「吹」と「葺」はともに「ふく」と読めます。石や土、すみか、戸、屋根、大きな家……と前後の神様を住まいの流れで読むと、この説はとても分かりやすいですね。

熊本県の浮島神社による地鎮祭の案内でも、天之吹男神を家宅六神の一柱として「屋根を葺く神」と紹介しています。これは神社による解釈で、古事記本文に屋根を葺く場面が描かれているわけではありません。

火を吹く、竈の神という説も

一方、同じ國學院大學の解説には、「吹」をそのまま火を吹く意味にとり、竈(かまど)の神かもしれないとする説も載っています。昔の暮らしを思い浮かべると、家を覆う屋根も、家の中で火を使う竈も、どちらも欠かせないものです。

名前の意味は一つに決まっていません。まず屋根の神様という親しみやすい見方を入り口に、別の読み方も覚えておきたいですね。

気吹戸主神と同じ神様?

さらに、神生みの最初の十柱を、イザナギの禊で生まれた神々の別の伝え方と考え、天之吹男神を気吹戸主神(イブキドヌシ)と同じ神と見る研究上の説もあります。

ただし、國學院大學のデータベースでは、古事記における天之吹男神の「別名」は挙げられていません。「気吹戸主神」は古事記本文が示す別名ではなく、神生み全体の読み方から生まれた同一視の一説です。

登場する神話(国生みから神生みへ)

イザナギとイザナミが、国生みの後に生んだ最初の十柱を並べました。天之吹男神の前には「戸」、後には「大屋」の名を持つ神様がいます。

順番神様の名前読み関わるもの・解釈
1大事忍男神オオコトオシオ国生みや神生みの大事業に関わるとする説
2石土毘古神イワツチビコ住居に関わる神
3石巣比売神イワスヒメ住居に関わる神
4大戸日別神オオトヒワケ住居に関わる神
5天之吹男神アメノフキオ住居に関わる神という説
6大屋毘古神オオヤビコ住居に関わる神
7風木津別之忍男神カザモツワケノオシオ住居に関わる神
8大綿津見神オオワタツミ海の神
9速秋津日子神ハヤアキツヒコ水門の神
10速秋津比売神ハヤアキツヒメ水門の神

※国生みを終えた後の、神生みでの順番です。「住居に関わる神」という分類は解釈で、神生みを別の文脈で読む説もあります。海と水門については古事記本文に記されています。表が画面に収まらない場合は横にスクロールできます。

戸から屋根へ、家を思い描くと

家に関わる神々として読むと、大戸日別神の「戸」に続き、天之吹男神が屋根を葺き、大屋毘古神の「大屋」へ。雨風をしのげる家が、頭の中で少しずつできあがっていきます。

もっとも、古事記に「この順番で家を建てた」とは書かれていません。神々の名前の並びから、暮らしの風景を想像する読み方です。この後には海の大綿津見神、水門の速秋津日子神・速秋津比売神が続きます。

伝承の地

古事記は特定の土地を伝えていません

古事記には、天之吹男神がどこかに降り立ったり、特定の土地で屋根を葺いたりする話はありません。神様の出身地を、この神名だけから決めることもできません。

屋根の神様として親しむなら、土地を一つに絞るよりも、それぞれの家の屋根を見上げた時に思い出したくなりますね。

歴史の中で読まれてきた天之吹男神

先代旧事本紀にも名前が見えます

國學院大學の神名データベースによると、『先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)』の「陰陽本紀」にも天之吹男神の名が記されています。ただし、名前が後の文献にも載ることと、独自の活躍が語られることは別です。

「屋根の神」という受け止め方

現代の浮島神社の案内は、イザナギとイザナミを祭神とし、その二柱が生んだ家宅六神を地鎮祭にゆかりの深い神々として紹介しています。その中で天之吹男神は「屋根を葺く神」。古事記の短い神名が、今の家づくりへの祈りにも結びついているのですね。

なお、気吹戸主神との同一視は、こうした屋根の解釈とは別の研究上の説です。二柱を古事記に書かれた同じ神として扱ったり、気吹戸主神を祀る場所をそのまま天之吹男神の神社としたりはできません。

御利益(神徳)

名前から願うなら、住まいを守る屋根の安心を

古事記に天之吹男神の御利益は書かれていません。ここからは、屋根を葺く神様という説に、私たちの願いを重ねるならというお話です。

雨の日も風の日も、家族が安心して過ごせる屋根でありますように。家を建てる時や屋根を直す時、職人さんが無事に作業できますように。そんなお願いをしてみたくなりますね!

火を吹く竈の神という説からは、台所で毎日のごはんを作れるありがたさも思い浮かびます。ただし、屋根や竈に関する願いは神名の解釈をもとにした祈り方で、この神様だけに伝わる確定した神徳として挙げているわけではありません。

祀られている神社・関連する神社

浮島神社(熊本県)――親神を祀り、家宅六神を紹介

浮島神社の公式案内によると、同社の祭神はイザナギとイザナミ。地鎮祭の説明で、その子にあたる家宅六神の一柱として天之吹男神を紹介しています。

屋根の神様という見方を神社の言葉で読める、うれしい例ですね。ただし、この案内は天之吹男神を浮島神社の祭神として挙げているわけではありません。ここでは親神を祀る関連神社としてご紹介します。

天之吹男神を直接祀る神社は?

今回参照した神社・研究機関の資料では、天之吹男神を祭神と明記する神社の公式案内を確認できませんでした。神社名を見つけても、表記が似た別の神様だったり、配祀を確認できなかったりする場合があるため、ここには確かめられた神社だけを載せていきます。

参考資料・出典

古事記本文での誕生順、神名についての異なる説、『先代旧事本紀』の記載、現在の神社での受け止め方を、それぞれ以下の資料で確認しています。「屋根を守ってほしい」という御利益の部分は、神名の解釈に重ねた願いです。

この記事の参考資料

西宮一民校注『古事記』(新潮日本古典集成、新潮社)「神々を生む」注6

國學院大學:古事記ビューアー「神生み」 / 神名データベース「天之吹男神」

浮島神社:地鎮祭・家宅六神の案内

執筆のためのリサーチノート・参考文献


Writer’s Note:
本記事は、國學院大學の公開資料や古典文献・研究資料を参考に、作家・クリエイターであり、古事記学会会員でもある小野寺 優(ラノベ古事記 著者)が執筆しています。本文の記述や研究者の解釈をご紹介しながら、物語を楽しむ視点から、著者自身の考察も添えています。

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