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国之闇戸神(クニノクラド)は、大山津見神と鹿屋野比売神の子として登場する神様です。日の差し込みにくい谷や、険しい山の地形と結び付けて、その名前が解釈されてきました。
親神は大山津見神(オオヤマツミ)と鹿屋野比売神(カヤノヒメ/野椎神)。子八神の第六で、天之闇戸神(アメノクラド)と対をなします。
国之闇戸神とは?
| 神様の名前 | 国之闇戸神 クニノクラドノカミ クニノクラトノカミとも読む |
|---|---|
| 親神 | 大山津見神(オオヤマツミ)・鹿屋野比売神(カヤノヒメ/野椎神) |
| 登場する場面 | 古事記上巻・神生み |
| 神格・名前の解釈 | 暗い谷や険しい地形に関わる神とする説がある。子八神の第六 |
| 日本書紀の表記 | (日本書紀には同名の神の記載なし) |
古事記・日本書紀での描かれ方
古事記の神生みでは、大山津見神と野椎神が山と野を分け持って八柱を生みます。野椎神(ノヅチ)は、鹿屋野比売神(カヤノヒメ)の別名です。国之闇戸神はこの二柱の子で、八神のうち六番目に名が挙がります。
名前が並ぶ順番は、天之闇戸神、国之闇戸神、大戸或子神、大戸或女神。狭土・狭霧・闇戸と続いた「天之」「国之」の三組のうち、最後の組にあたります。
国之闇戸神について、古事記は誕生と名前を伝えています。個別の活躍や台詞、性別についての説明はありません。天之闇戸神とは神名が対をなす関係で、二柱を夫婦とする記述も、この場面には見られません。
この記事ではクニノクラドとしていますが、國學院大學の神名データベースは「くにのくらとのかみ」の読みを採っています。「クラト」と「クラド」、両方の読みで紹介される名前です。
日本書紀には同名の神の記載はありません。
古事記以外では、『先代旧事本紀』の陰陽本紀にも国之闇戸神の名が見られます。
名前の由来・意味
名前の「闇戸」には、クラを暗い谷、トを場所と解する説があります。さらに、谷を囲む断崖などの険しい地形と関わる語と見る解釈もあります。暗さと地形の両方に目を向ける名前なのですね。
山に囲まれた場所は、開けた野とは光の届き方が違います。地形が視界を遮り、見上げなければ空が見えないような場所もあります。そんな景色を思うと、「闇」をただの夜の暗さとは違う感覚で受け止められます。
「天之」と「国之」の対応には、山と野、高い場所と地上などを重ねる説があります。一方、二柱の神名を組にする呼び方と見る説もあります。国之闇戸神を考える時も、天之闇戸神との並びが大切な手がかりになります。
私はこの二つの名前を読むと、空に近い山の高みから、地上の谷間まで続く風景を想像します。山と野を親に持つ神々だからこそ、一柱ずつの名前をつなぎながら景色を思い浮かべるのも楽しいですね。
風・木・山・野の四神と、山野の子八神

このまとまりには、親子の世代が二つあります。まずイザナギとイザナミから四柱が生まれ、そのうちの山の神・大山津見神と、野の神・鹿屋野比売神が、さらに八柱を生みます。
| 組内の順 | 神様の名前 | 読み | 関わるもの・関係 |
|---|---|---|---|
| 風・木・山・野の四神|親神:イザナギ・イザナミ | |||
| 1 | 志那都比古神 | シナツヒコ | 風の神 |
| 2 | 久久能智神 | ククノチ | 木の神 |
| 3 | 大山津見神 | オオヤマツミ | 山の神/下段八神の親神 |
| 4 | 鹿屋野比売神 別名:野椎神 | カヤノヒメ | 野の神/下段八神の親神 |
| ↓ 大山津見神 + 鹿屋野比売神(別名:野椎神)が生む子八神 | |||
| 子1 | 天之狭土神 | アメノサヅチ | 土・山野の境界に関わる神とする説 |
| 子2 | 国之狭土神 | クニノサヅチ | 土・山野の境界に関わる神とする説 |
| 子3 | 天之狭霧神 | アメノサギリ | 山野に立つ霧に関わる神とする説 |
| 子4 | 国之狭霧神 | クニノサギリ | 山野に立つ霧に関わる神とする説 |
| 子5 | 天之闇戸神 | アメノクラド | 暗い谷・険しい地形に関わる神とする説 |
| 子6 | 国之闇戸神 このページ | クニノクラド | 暗い谷・険しい地形に関わる神とする説 |
| 子7 | 大戸或子神 | オオトマトヒコ | 山野で道に迷うことに関わる神とする説 |
| 子8 | 大戸或女神 | オオトマトヒメ | 山野で道に迷うことに関わる神とする説 |
※上段はイザナギ・イザナミの子、下段は大山津見神・鹿屋野比売神の子として整理しています。数字はそれぞれの組での登場順です。八神を生む主体には文章解釈の違いがありますが、本記事では大山津見神・野椎神の子と読む解釈で整理しています。子八神の神格には諸説があります。色付きの行がこのページの神様です。表は横にスクロールできます。
霧から闇戸へ、そして「惑い」を思わせる名前へ
八神の神名を、土から霧が立ち、霧で暗くなり、その中で道に迷うという流れに結び付ける説があります。国之闇戸神の前に狭霧の神々、後に大戸或の神々がいることが、この読み方の手がかりです。
これは、名前の連なりから山野の様子を考える解釈です。霧が深くなった時、さっきまで見えていた道や木々が見えにくくなる。そんな体験を重ねると、並んだ名前にも、一続きの景色を感じられます。
親神の大山津見神と鹿屋野比売神から、子神の名へ進むにつれて、山野の輪郭だけでなく、その中で感じる明暗にも目が向く。国之闇戸神は、そのような読書の手がかりになってくれる神様です。
著者の所感―見えにくい場所にも、心を向ける
山野の神々を読んでいると、私たちが気持ちよく眺められる景色だけが取り上げられているわけではないことに気づきます。深い谷や暗がりにも名前があり、自然の一部として語られているのです。
そこに私は、自然を自分に都合のよい姿だけで見ない、丁寧なまなざしを感じます。明るい時にも、見通しのよくない時にも、その場所を敬いながら向き合う。
私が国之闇戸神のお名前に願いを重ねるなら、自然の中で無事に過ごせること、見えにくいものを軽んじず、落ち着いて歩めることを祈りたくなります。神名を知った後には、いつもの景色の陰にも、少し心が向きそうです。
参考資料・出典
古事記の登場場面は原文と読み下しを、神名の解釈や日本書紀との関係は國學院大學の資料を参照しました。「こんな願いを託したい」という部分は、神名の解釈から考えた著者の所感です。
執筆:小野寺優(古事記学会会員・『ラノベ古事記』著者)
執筆のためのリサーチノート・参考文献
Writer’s Note:
本記事は、國學院大學の公開資料や古典文献・研究資料を参考に、作家・クリエイターであり、古事記学会会員でもある小野寺 優(ラノベ古事記 著者)が執筆しています。本文の記述や研究者の解釈をご紹介しながら、物語を楽しむ視点から、著者自身の考察も添えています。
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