須佐之男の暴走
誓約に負けた天照大神は、須佐之男を高天原
の神殿に迎え入れた。ウルサイ弟だが、なんだかんだ自分を頼って来てくれたのは
嬉しかった。
しかし翌日、天照大神の部屋に八百万の神の一人が飛び込んで来た。
「アマテラス!助けてくれっ!!スサノオが育てた作物を荒らしまくってる!!!」
どうやら早速、問題を起こしたらしい。しかし誓約でも示された通り、彼はちょっとやんちゃなだけで悪意は無いのだ。そんな弟のために、天照大神はすぐにフォローを入れた。
「えっ??いや、でも ・ ・ ・ スサノオは見た目によらず、そんな悪い子じゃないのよ? ・ ・ ・ 害虫駆除でもしているんじゃない??」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ そうかぁ?そうは見えなかったけどな。」
しかし、次の日もまた別の神が部屋に飛び込んで来た。
「アマテラスちゃ~ん ・ ・ ・ どうしよぉ??スサノオくんが田んぼの畔を壊しちゃったの!!しかも、まだお馬さんに乗って、穂の上を走りまわってるんだよ??お願い、止めさせてっ!」
「あぁ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ それはきっと畑を作ろうとしているのね!みんなのこと思って ・ ・ ・ いい子でしょ?だいじょぶだいじょぶ。何の問題もないからっ!!!」
「ほんとぉ?? ・ ・ ・ ん~、ま、いっか!」
さらに次の日は ・ ・ ・
「アマテラス!!大変だっっ!!!!スサノオの奴、神殿のそこら中に ・ ・ ・ 脱糞しやがった!!!」
「ダダッッ ・ ・ ダップン!? ・ ・ ・ ・ ・ ダップ ・ ・ ・ ・ え ・ ・ えっと ・ ・ ・ ・ お ・ ・ ・ ・ ・お酒に酔っちゃったのかなっ??そうねっ!きっとお酒に酔っちゃったのねっっ!それ、ウ●コじゃなくてゲロよ。ゲロ!!大丈夫!なんとかなる。」
「いやぁ、ゲロでもダメだろ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
このように天照大神は、事あるごとに須佐之男をかばった。
しかし、そんなある日 ・ ・ ・
ガラガラ ・ ・ ・ ドタタタタ ・ ・ ・ キャー ・ ・ キャー ・ ・ ・ ドドドドドド ・ ・ ・ ・ ・
「な ・ ・ ・ 何よ?騒がしいわね ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「アマテラスっっ!!!&:/}"$;}*+$!"*#|<=+#|\?!÷!!!」
八百万の神々が天照大神の部屋に雪崩のように押し寄せて来たのだ。
「なっ ・ ・ ・ ・ ・ なにっっ、みんなしてっ!?1人づつ話してくんなきゃわかんないじゃない!!」
すると、一番下で潰れていたインテリ神の思金神が這いずり出て、口を開いた。
「私が ・ ・ ・ 話しましょう。アマテラス、落ち着いて聞いてください。実は、先ほどスサノオが機織女の仕事場の屋根に穴をあけて ・ ・ ・ 皮を剥いだ血だらけの馬を投げ込んだんです。」
「そんな ・ ・ ・ ・ ・ ひどい ・ ・ ・ ・ で ・ ・ ・ ・ ・ でも、スサノオにきっと悪気は無くて ・ ・ ・ 」
「それで ・ ・ ・ ほとんどの機織女は逃げることができたのですが、1人機織の道具が刺さって ・ ・ ・ 死んでしまったんです ・ ・ ・ 」
「っ!! ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ う ・ ・ ・ うそ ・ ・ ・ そんな ・ ・ ・ ・ ・ 」
天照大神の顔が真っ青になった。
「 ・ ・ ・ ごめんなさい。私がスサノオを放って置いたからこんなことに ・ ・ ・ ・ ・ 」
「いえ、貴方のせいでは ・ ・ ・ 」
「違うっ!!私のせいよっっ!!」
そう叫ぶと天照大神は神殿から飛び出し、ゴツゴツと大きな岩が一面に広がる岩山へ走った。そこには『天岩屋戸』と呼ばれる、大きな岩のくぼみと岩戸がある。
彼女はそのくぼみに駆け込むと、岩戸をピシャリと閉め、結界を張った。
すると、太陽神を失った高天原と葦原の中つ国は一瞬のうちに暗闇に包まれ、その暗闇に吸い寄せられるかのように悪神、悪霊が増え、災いが絶えなくなってしまった。
天照大神に出てきてもらおうと、力自慢のタヂカラオが岩戸に触れようとしたが、強力な結界で弾かれてしまう。困り果てた八百万の神々は天安川で緊急会議を開いた。しかし、話せど話せど良いアイディアは出てこず、話しは平行線を辿った。そんな話し合いの間も悪霊は増え続け、危機感を覚えた八百万の神々は、天つ神で一番頭の冴える思金神に全てをゆだねる事にした。
思金神はしばらく考えると、いくつかのアイテムを用意するよう神々に指示を出した。
「榊の木」「八尺瓊勾玉 500個」「八咫鏡(やたのかがみ)」「常世の長鳴鳥(とこよのながなきどり)」「ドエロいダンス衣装」の5つだ。
それまで思金神のことを『インテリの草食系でいけ好かない奴』と評価していた八百万の神々だったが、作戦の詳細を聞き終えると、彼に対する眼差しは尊敬と敬意のものに変わっていた。

天岩屋戸
さて、作戦当日。天照大神が引き蘢っている天岩屋戸の前に八百万の神々は続々と集合した。
「コケーッコッコッコッコケーッッコケーッッッッッ」
常世の長鳴鳥 ・ ・ ・ つまりは、めちゃめちゃ五月蝿く鳴き叫ぶニワトリが騒ぐ中、準備は着々と進められた。
天岩屋戸の目の前には、大きな桶がひっくり返して用意されていた。どうやら、ライブステージの代わりらしい。ドエロい衣装を身に着け、桶の上がったのは天宇受賣命という女神だ。
日本の元祖アイドルとも言えるウズメは、見た目はとっても可愛いのだが、性格はどちらかというと、バラエティ向きだった。今では芸能の神として祀られている。ウズメが舞台に上ると、八百万の神々からは歓声が上がった。
天照大神を呼ぶ祝詞を読み上げるのは天児屋命だ。祝詞とは、神様を呼ぶ時に、その神様を称えて持ち上げる言葉だ。今でも神前式や、上棟式などで聞く事ができる。コヤネは、祝詞を任されるだけあって、ダンディーな美声の持ち主だった。
用意した榊(さかき)の木には500個の八尺瓊勾玉をぶら下げた。勾玉はキラキラと反射し合い、まるで和製クリスマスツリーのようだ。榊の木と八咫鏡(やたのかがみ)は、布刀玉命が持ってスタンバイした。フトダマは太占(動物の骨を使った占い)が得意で、事前にこの作戦が成功するかを占った。結果はミスをしなければ成功。つまり最後まで油断は禁物ってことだ。
そして最後に、天手力男神 が気配を消しながら、天戸の裏に隠れた。タヂカラオは名前の通り、怪力の持ち主だった。趣味は筋トレ。これも見た目の通りだが。
準備が整うと、思金神は最終チェックを行い、八百万の神々に語りかけた。
「みなさん、お待たせしました。これから、『アマテラスを岩戸から出そう大作戦』を実行します!!」
どうやら、ネーミングセンスは無いらしい。
「チャンスは一度だけ。これに失敗すれば我々に未来はないでしょう。それぞれ事前にお伝えした通りに、よろしくお願いします。・・・では、常世の長鳴鳥から行きますよっ!!うりゃっっ!!騒いでくださいっっ!!」
コケーッコッコッコッ・・コケーコケー!!!コケーッコッコッコッコケーッッコケーッッッッッ!!!!!!!
常世の長鳴鳥はここぞとばかりに鳴き叫んだ。続いてコヤネが祝詞を唱える。
「 ・ ・ ・ かしこみ~かしこみ~もまもお~す~~」
祝詞を唱え終えると、ダンスミュージックが始まった。ウズメが曲に合わせて踊りを舞う。八百万の神々はウズメのダンスを見ながらどんちゃん騒ぎ、大いに盛り上がった。祝詞を唱え終えたコヤネは、近くで見たい気持ちをぐっと堪えて、フトダマの持っている八咫鏡の元へ向かった。
うおぉぉぉ!!ウズメたーん!!!可愛いー!!キャーキャー!!!
大音量で演奏される音楽に合わせ、ウズメはステージの桶を足で鳴らしながら激しく舞った。ウズメの服が乱れ、乳房がチラつく度に、神々は歓声を上げる。
ちょ!!見えた!!今、見えたんですけど!!!うおおおぉぉぉ!!!!
キタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!!!!
一方、天照大神は岩戸の中で混乱していた。
『 ・ ・ ・ ちょっ!えっ!?なに???みんな何を騒いでるの??このニワトリの声は?外は真っ暗のはずなのに・・・私がいなくても朝が来たってこと?』
ワアアァァァ ワアアァァァ ・ ・ ・
歓声が岩戸の中まで鳴り響く。
ワアアァァァ ワアアァァァ ・ ・ ・ ワアアァァァ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「な ・ ・ ・ なんなのよ ・ ・ ・ 外で何が起こってるの???めっちゃ気になる。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ちょっとだけなら覗いても ・ ・ ・ いやでも待て ・ ・ ・ ・ あわてるな ・ ・ ・ これは思金神の罠だ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
そう言いながらも誘惑に勝てなかった天照大神はピシャリと閉めていた岩戸がゆっくりと静かに開いた。しかし、まだ警戒心を解いた訳ではない。声がやっと通るくらいの隙間に留めた。それを見た思金神は岩戸の裏に隠れているタヂカラオに、まだ待つよう合図を送った。
「ね、ねぇ ・ ・ ・ ちょっと、誰か??なんで、みんなこんなに騒いでいるの?」
ウズメはダンスを踊りながら天照大神に理由を伝えた。
「あのね、アマテラスちゃんよりもエッラーイ神様が現れたから、みんなでお祝いしてるんだよぉ♪♪」
「えっ ・ ・ ・ そうなの??」
『なんだ ・ ・ ・ 私がいなくても、もう大丈夫なんだ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。』
自分から閉じこもったものの、天照大神はちょっぴりヘコんだ。岩戸がまた少し開く。今度は、天照大神の光が通るくらいの隙間だ。
このタイミングを待っていたフトダマとコヤネは、八咫鏡と榊の木を天照大神に向けた。すると、榊の木に飾ったたくさんの八尺瓊勾玉が天照大神の光を受け、反射しあい、あたり一面がキラキラと輝いた。ミラーボールのように飛び散る光に、八百万の神々は一層盛り上がる。
『眩しっ!! ・ ・ ・ 綺麗な光 ・ ・ ・ 私よりずっと素敵な神様なのね ・ ・ ・ ・ ・ ・ みんなすごいハシャギようだもん。私がヘコんで引きこもってるっていうのに ・ ・ ・ ・ ・ ・ なんか ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ちょっとムカついてきたな。うぅん ・ ・ ・ どんな奴か、顔だけでも拝んでやろうかしら ・ ・ ・ 』
天照大神の心が揺らぐ。
そんな中、ウズメのダンスはクライマックスに差し掛かっていた。もう上半身には衣が無い。正直なところ八百万の神々は、天照大神なんかよりもウズメにくぎづけだった。テンションがMAXになったウズメは、狂ったように舞い、乱れた衣装は、ついに全て落ちてしまった。
「ありっ?? ・ ・ ・ 全部見えちゃった。」
どっっ!!アッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!
全裸のウズメを見た八百万の神々は大きな大きな声で笑った。
ウズメも、笑いながらさらに舞った。天照大神はさらに混乱する。
「えっ??何?何っ??何が面白いの???ギャグセンも高い神様なのっ??」
突然の笑い声に、天照大神は、引き寄せられるかのように、前へ前へ進んだ。岩戸の先に人影が見える。
『眩しくて良く見えないけど、きっとあれが新しい神様なんだ。女の人っぽいけど ・ ・ ・ どうせ性格ひん曲がった高飛車な女に決まってる。みんなったら何なのよ。みんなってば ・ ・ ・ はぅ ・ ・ ・ いや、泣かないけど ・ ・ ・ ・ でも ・ ・ ・ もう少しで見えそう ・ ・ ・ ・ ・ 』
天照大神はついに岩戸からぴょっこり顔を出した。この時を待っていた思金神はタヂカラオに向かって叫んだ。
「今ですっ!」
「よっしゃっ!!」
タヂカラオは、思金神の合図で天照大神の手を引っ張った。
「キャッ ・ ・ ・ タヂカラオ??何すんのよっっ!?」
「捕まえたぞ、アマテラス。もう戻れねぇ。」
タヂカラオが天照大神を外に引き出すと、フトダマがすかさず天岩屋に注連縄を張った。
「これで、もう中には戻れないよっ!」
「えっ?何なにっ??どーゆうことっっ??新しい神様は??」
その新しい神様が立っていたはずの場所には、コヤネが八咫鏡を持って立っていた。そこには自分の姿が映り込んでいる。天照大神は鏡の中の自分を新しい神だと思い込み必死に目を凝らしていたのだ。
口をポカンと空けて呆然としている天照大神に、思金神はドッキリを明かした。
「ハァ ・ ・ ・ 全部嘘ですよ。貴方が引きこもってから、大変だったんですから ・ ・ ・ 。もうちょっと、自分の立場を理解してもらえませんか?」
アメノウズメが横から割り込む。
「ふふ~、全部ね、思金神くんの作戦だったんだよぉっ♪♪びっくりしたっ??」
「ちょっっ!!ウズメさん、早く服着てください!!!」
やっと状況を飲み込んだ天照大神の目には涙が溢れた。
「うそ ・ ・ まさか ・ ・ ・ 私のために ・ ・ ・ ・ ・ ?あぁ ・ ・ ・ みんなぁ ・ ・ ・ あぅ~ ・ ・ ・ ごめんなさぃ ・ ・ ・ ・ ごめんなさぁぁぃ ・ ・ ・ ふぇ~~ん ・ ・ ・ 」
うおぉぉ!アマテラスが出て来たぞーー
ワアアァァァ ・ ・ ・ ワアアアァァァァ ・ ・ ・ ・ ・ !!
天照大神の姿を見た八百万の神々は大喜びし、次々と彼女に声をかけていった。いつまでもいつまでも歓声が鳴り止まなかったので、神々は天照大神も入れて宴会を続ける事にした。
こうして高天原と葦原の中つ国に、再び光と平和が戻った。
