天皇記『雄略天皇と神』
葛城山の神
すると見たこともないくらい巨大なイノシシが現れた。まるで、あの映画に出てきた山の神みたいだ。
『 ・ ・ ・ ・ っっかっけぇ!!殺すっ!!!』
テンションの上がった
『トンッ』と見事に矢を命中させた。
「よっし!!!」 と、
『あれっ??矢ぁ、刺さってんのに ・ ・ ・ ・ ・ ・ 全然効いてないっ???』
「早っっ!!!」
「クソッ!!!!」
っと、
『ドスンッッッ!!!』
イノシシの激しい突きで、巨木は大きく揺れた。
「やばいやばいやばいやばい!!!!!」
『ドスンッッッ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 』
『ドスンッッッ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 』
『ドスンッッッ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 』
定期的な間隔で巨木に激しい振動が走る。恐怖で半泣きになりながら
「オレ様、天下を治める天皇なのにっ!!!怪我したイノシシが、怖すぎて何にもできねぇ!!!!頼むっっ!!誰か助けてくれぇぇぇ!!!!!!!」
さて。九死に一生を得た
すると、向こうの山にも鏡に写したように全く同じ格好をした行列が見えてきた。
「なんだ?アイツら。このオレ様のスタイルをパクってんのか??ムカつく。殺す。」
「 ・ ・ ・ ・ へぇ。このオレ様に矢を向けるとは、いい度胸してるじゃねぇか。オィ!アンタ名は?」
すると、むこうの先頭を歩いていた人がこちらを向いて
「ふふっ!君、面白いよね。私、人前に姿見せるの好きじゃないんだけど ・ ・ ・ この前、ツボっちゃって ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。」
「あぁ??アンタ何言ってんだ?オレ様は名前を聞いてるんだ。」
「あっ、ごめんなさい。 ・ ・ ・ ・ ・ 私は一言主大神(ひとことぬしのおおかみ)と申します。この山で守り神やってます。」
「へっ?? ・ ・ ・ 神っっ!?」
「はい、神です。得意技は言葉にした吉凶をリアルにすることです。」
「それ、最強やん ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「でも、急に神様なんて胡散臭いですよね? ・ ・ ・ もしよければ、天変地異か何か起こしましょうか? ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 今。」
一言主大神は優しい笑顔でニッコリ微笑んだ。
まずい。
この笑顔はアレだ。
人間の命なんて、蚊の命とさして変わらないと思っている人の笑顔だ。
「っっいやッッ!!大丈夫デスッッッ!!!オレ、神様めっちゃ信ジテマスカラッッッ!!!!まじ、アーメンッッッス!!!」
「ブフッッッッ!!!!ふっ ・ ・ ・ ふふふふっ!!面白い ・ ・ ・ 君、面白過ぎる ・ ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ でも ・ ・ ・ ・ ・ ・ 神様に矢を向けるのは良くないよね?」
「あぅっっ!!すみませんデシタァァァっっ!!!」
「テメェら全員、脱げぇぇ!!!フンドシ以外、身についてるモン全部、差し出すんだあぁぁ!!!!」
と叫んで、刀や、弓矢、服まで全部脱ぎ捨ててて、一言主大神に献上した。そして
一言主大神はパチパチ手を叩いて大喜びし、献上の品を受け取った。
それから、一言主大神に道を案内され、無事に山を抜けた一行は、そのままフンドシ一丁で目的地に向かい、そこで何とか服を譲ってもらえたのだが ・ ・ ・ ・ 道中で色んな人に目撃され、この面白すぎる噂は世界中に広まり、やがて『はだかの王様』とかいう絵本になってロングセラーしたとかしないとか。
アマテラスの神託
さてさて。
既に忘れ去られているかもしれないが、
そんなある日、彼は神床で神託を仰いだ。天皇が神様に夢でアドバイスをもらうあの儀式のことだ。しかし儀式とか言いながら、
ペチン。
ペチン。
・ ・ ・ ・ ・ ・ やはり無反応だ。
・ ・ ・ ペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ベチンッッ!!!!
「ん ・ ・ ・ んぁ? ・ ・ ・ 痛てぇ ・ ・ ・ 誰 ・ ・ ・ 殺 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ぐぅ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「えっ!?嘘っ??まだ寝るのっ??ちょっと ・ ・ ・ 起きてよ雄略 ・ ・ 話しが進まないじゃない。」
「んー ・ ・ ・ ・ ・ ・ 無理 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「ちょっ!!無理じゃないわよ。せっかく伊勢から着たのにっ!!ねぇ ・ ・ ・ 起きてってば!!」
「 ・ ・ ・ るせーな ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ デリヘル頼んだ覚えは ・ ・ ・ ねぇ。」
「あぅっ!!何で
「んー? ・ ・ ・ ・ ・ ・ そりゃぁ ・ ・ ・ ・ ・ 神聖な ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 儀式だ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「??」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 試してみるか?」
そしてそのまま、彼女に覆い被さる。
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ っっ!!!ギャーーー!!!」
ベチンッッッ!!!!
「痛って!!!」
ベチンッッッベチンッッッベチンッッッベチンッッッ・・・
「痛っ!!痛っ痛っ痛てぇよ!!ふざけんな!!殺すぞっ!!!オィ!!チェンジ!!!チェンジだチェンジ!!」
「っっ雄略のバカあぁぁぁぁ!!!!!!」
彼女は叫ぶと泣き出した。
「うわ。やべぇ。面倒くせぇ。何で泣くわけ??泣けば許されると思ってるわけ??そーいうの嫌いなんだけど。だいたい、アンタ誰なんだよ。」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ アマテラス。」
「あぁ?? ・ ・ ・ アマ ・ ・ ・ ・ ・ テラ ・ ・ ・ ・ ・ ・ えっ ・ ・ ・ マジで??」
「マジよ。」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ マジか。」
ここまできてやっと
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ え ・ ・ ・ もしかして、また引っ越しがしたいとか ・ ・ ・ ・ ・ そーいう感じのやつを神託とかホザく気じゃねぇだろうな ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「ちっ!!違うわよっ!!そーいうのじゃないのっ!!もっと大変なのっっ!!私の命に関わる重要な神託なのっっ!!!」
「あぁ?本当かよ?マジ、嫌な予感しかしねぇんだけど。」
「あぅ。あなたもっとご先祖様に対する敬意の念とかないわけ??」
「アンタに威厳を感じることができねぇ。」
「なっ ・ ・ ・ 何よっ!!日本は、ご先祖様をちゃんと大切にする国なのっっ!!トップがお手本にならなくてどうすんのよっ!!!!あなた天皇でしょっ???」
「知るかよ ・ ・ ・ ・ ・ ・ まぁ、とりあえず聞いてやるから言ってみ?」
「えっ? ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ あぁ ・ ・ ・ えっと、あのね ・ ・ ・ ・ ・ ・ 私 ・ ・ ・ お腹が ・ ・ ・ ・ ・ ・ 空いたの。」
「あぁ???」
「ちっっ違うのっっっ!!!あの、私、もう年齢もわからないくらいおばあちゃんでしょ???だからね、うまくご飯食べられないのっ!!!」
「いや、意味わかんねぇ。」
「こぼしちゃうのっっ!!障がい者なのっっ!!!一人じゃスプーンも持てないのっっ!!!!」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ だから何なんだよ?」
「えっ ・ ・ ・ だから ・ ・ ・ ・ ・ 誰か ・ ・ ・ そばで一緒にご飯食べてくれる人が欲しい ・ ・ ・ 」
寂しいのか。
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ それなら斎王がいるだろ?オレの娘も伊勢に送ってやったじゃねーか。」
「だって、人間じゃ、おしゃべりしながら一緒にご飯食べられないでしょう??それに斎宮って意外と神宮から遠いし ・ ・ ・ 貢物とか言っていろいろくれるけど、生米って結構固いのよ??お魚だって目が合うから食べる時、本当ごめんなさいって思うし ・ ・ ・ 」
「おぃ ・ ・ ・ ・ ・ ちょっと待った。まさか今までの貢物全部、生で食ってたのか??」
「えっ??みんな生で食べないの?」
「いやいや。神がどうやって飯食ってるのかなんてオレが知るわけねぇだろ。
「そりゃ、
「 ・ ・ ・ ・ ・ 自分で調理したりは?」
「え ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ コンロの火のつけ方わかんない。」
「アンタ、太陽神だろ。」
「違うのっ!!私やると、地球が燃えちゃうのっ!!人類滅亡の危機なのよっ!!!」
「 ・ ・ ・ あぁ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ めんどくせぇ ・ ・ ・ 。はぁ。したら、誰か適当に祀ってやるよ ・ ・ ・ 。料理がうまくて、話し相手になって、面倒見が良くて、アンタのワガママに耐えられる神 ・ ・ ・ ・ ・ ・ いるかわかんねーけど。」
すると
「ふふん!そうっ!!そうよっ!!分かればいいのよ分かればっ!」
「どうしよう。遠回しの拒否が通じねぇ。 ・ ・ ・ つーか、誰祀りゃいいんだよ。オレ、そんなに神、詳しくないぜ??」
「大丈夫!目星は付けてるの!!トヨウケちゃんって子なんだけど、料理がとっても上手なのよっ♪♪」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ トヨウケ?」
「豊受大神(とようけのおおかみ)。イザナミの孫で食物の神。私の姪っ子??」
「創造神の孫、ちゃん呼ばわりかよ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「それじゃ、近いうちにちゃんと祀ってよねっ!!私ん家の近くにっっ!!!!」
「あぁ? ・ ・ ・ はぁ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ まぁ ・ ・ ・ わかったよ。」
こうして伊勢神宮には、天照大御神が祀られる『内宮』と、豊受大神が祀られる『外宮』ができた。