日本神話『アメノワカヒコ』
アメノワカヒコの派遣
しかも『
「んあーもぉっっ!!!!ホヒは何やってんのよっ!
「えっ、私ですか?」
「あんた以外に
「いやっ ・ ・ ・ えっと ・ ・ ・ そうですね ・ ・ ・ ・ ・ ・ ホヒは
「あー違うっっ!!」
「え ・ ・ ・ えっと ・ ・ ・ じゃあ、次はアメノワカヒコとか?」
「なんか、適当に言ってない??」
「まさかっっっ!!!アマテラスの息子ではないけれど、彼は野心家だし、仕事もよくできます。ホヒよりも、押しが強いから、ちゃんと交渉できるのでは?」
「なるほど ・ ・ ・ ・ ・ ・ うん、いいわね!!それでいこう!!アメノワカヒコー!!!ワカヒコー!!いるーー!?」
しばらくすると、見るからに誠実っぽそうな好青年が入ってきた。
「 ・ ・ ・ はい、呼びました?なんでしょう。」
早速、事の次第を伝えると、ワカヒコは「お役に立てるなら。」と快く任務を引き受けてくれた。
ワカヒコが
オオクニヌシはニコニコしながら
そして宮殿のこじんまりとした部屋に通されると、そこには豪勢な料理が用意されていた。なんか、政治家とかが汚職の打ち合わせで使いそうな、料亭の個室みたいだ。ワカヒコの警戒心がさらに強まった。
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 随分豪勢ですね。」
「喜んでもらえたら
「フッ!!なるほど ・ ・ ・ ・ ・ ・ 確かに、それはホヒさんらしいですね。」
ワカヒコは美女に囲まれて硬直するホヒの姿が容易に想像できた。
「だから、今日は2人だけにしてみたですけど ・ ・ ・ ・ ・ これでじゃあ、お客様に手酌をさせてしまう上に、花が無いので、僕の娘を同席させてもいいですか?」
「えぇ、もちろん。」
「それはよかった。それじゃあ、 ・ ・ ・ ・ おーい、シタテルヒメ!ワカヒコさんに、お酒持って来てー!!」
「 ・ ・ ・ はぁい!!すぐにお持ちしますね~。」
隣の部屋から可愛らしい声が聞こえた。しばらくすると、ふすまが開き、酒を持った女性が入ってくる。ワカヒコは、彼女から視線を離せなかった。こんなに美しい女性を見るのは初めてだったのだ。
その表情を見たオオクニヌシは、またほくそ笑む。
『 ・ ・ ・ ・ ・ ・ あらら。天照大神、ダメだよこんな若い子よこしちゃ。瞬殺じゃないか。これじゃあ勝負にならないよ?』
「さ、シタテルヒメ。ワカヒコさんにおつぎして。」
「はい ・ ・ ・ どうぞ。」
ワカヒコは、緊張で手が震えた。
「あっ、ありがとうございま ・ ・ ・ わっ!」
「キャ ・ ・ ・ ごめんなさい、こぼしちゃった。すぐに拭きますねっ!」
「いえっ、お構い無くっっ ・ ・ ・ !!」
ワカヒコは、完全にテンパっている。オオクニヌシはくすくす笑いながら、詰みにかかった。
「あちゃぁ~、娘がすみません。この子、おっちょこちょいなんですよ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「いえっ、私の手元が狂ってしまって ・ ・ ・ 。」
「いやいや。お気遣い、ありがとうございます。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 実は、シタテルヒメも、そろそろ嫁に出してもいい年頃なのですけどねぇ~。優しい方じゃないと、返されちゃうんじゃ無いかと心配で。まだ嫁ぎ先を決め兼ねてるんですよ ・ ・ ・ 。」
「そんな ・ ・ ・ 全国の男がこぞって喜ぶでしょうに。」
「そうですか?僕としては、ワカヒコさんみたいな人にもらっていただけたら、安心なんですけどね。」
『ブファァァッッ!!!!!』
ワカヒコの口に含んだ酒が、しぶきのように舞った。オオクニヌシの顔がその酒でベットベトになる。
「へ?わ ・ ・ ・ 私ですか??」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ いや、もし、ご迷惑で無ければ。という話です。」
オオクニヌシは、おしぼりで顔を吹きながら答えた。
「まさか!こんなに美しい方をもらって、迷惑な訳がない!!」
「えー。気に入っていただけたんですかー?」
「いや、それより、シタテルヒメさんは、私なんかでいいんですかっ!?」
「えぇ!もちろんっ!!ありがとうございます。とても
シタテルヒメに事情を説明していたわけでは無かったが、どうやら彼女もワカヒコを気に入ったようだ。
「うわぁー。これはめでたい。すごいやぁ。こんな運命みたいことって本当にあるんだなー。早速、祝言の準備をしなくっちゃーー。」
最後の方、オオクニヌシはセリフを棒読みしていたが、ワカヒコはとっても喜んだ。こうして、次の日には盛大に結婚式を挙げ、オオクニヌシはまたしても
・ ・ ・ ・ ・ ・ それから、あっというまに数年が経ち、ちゃっかり
しかし、何年経っても
だが、
『ならば自分が ・ ・ ・ ・ ・ ・ 』
ワカヒコは次第に
鳴女の派遣
ワカヒコの派遣から、いつの間にか8年もの月日が流れていた。
日々の業務に追われ、慌ただしくしていた
「あぁ~~!!やっと片付いた!!もぅ、書類が多すぎるのよ ・ ・ ・ ・ ・ ・ あ、あれ?これ何だろ??古ぼけた企画書 ・ ・ ・ 」
『
「えっと。なになに?
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ・
あっ ・ ・ ・ あ"ーーーーー!!!!!!
忘れてたぁぁぁ!!!!!
ちょっとぉぉぉ!!
おもひかねぇぇぇ!!!」
サイレンのような叫び声に
「は、はい!!お呼びですか?? ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ って、あれ??アマテラス、お部屋、片付けたんですか??? ・ ・ ・ ・ ・ ・ 汚ったなかったですもんね。」
まずい、口が滑った。不機嫌にさせたら後が面倒だ。
「書類が多いからいけないのよ!!」
「ゴメンナサイ。」
「ところで、この企画書。何かわかる??」
「え? ・ ・ ・
「あれから8年も経つのに連絡が一切無いって、どういうこと??ねぇ、おかしくない??絶対に何かあったのよ!!」
「えぇ、まぁ ・ ・ ・ 」
8年間忘れていた我々にも問題がある気がするんだけど ・ ・ ・
「何よ??何か言いたそうな顔ね?」
「いえ ・ ・ ・ ただ、もう2人も遣わせたのに帰って来ないんですから、また人を送っても同じ結果にならないかと。」
「じゃぁ『人』以外の何を送ればいいっていうのよ??」
「 ・ ・ ・ キジの
鳴女は、人の言葉が理解できるでっかいキジだ。
「なるほど・・・確かに、鳴女だったら鳥だし、さーっと行って帰って来れるわね。わかったわ。
一方その頃、
『ワカヒコーナゼニ言ウコト聞カナイ?ネェーワカヒコー??』
端から見ればコミカルな鳴き声だが、シタテルヒメはその声にサァっと血の気が引いた。『あの鳥 ・ ・ ・ ・ ・ ・
「ねぇ、ワカヒコ!あそこ、見て!空に邪悪な鳥がいるっ!!」
彼女は顔面蒼白だ。ただ事では無いと感じ、ワカヒコも慌てて空を見る。
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 随分でっかいキジだな。」
「災いを運んで来たんだ ・ ・ ・ こちらに降り立つ前に撃ち落としてっっ!!」
「何でそんなに怯えてるんだよ。大丈夫だから ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
ワカヒコは、彼女を落ち着かせると、
その日の夕方、
「アマテラス、報告です ・ ・ ・ 実は、この矢が
「え??それ、私がワカヒコにあげた
「
「 ・ ・ ・ どうって ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
状況から察するに答えはひとつしか思い浮かばなかった。ワカヒコが
「ごめんなさい。私が
「
「父さん ・ ・ ・ 」
「そうだよ。お兄は悪くないよ。千々は、お兄の味方だからねっ!!」
「千々ぃ ・ ・ ・ ♥♥♥」
このシリアスな場面で
「ねぇ、アマテラちゃん、ワカヒコは、
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ うぅん。でも ・ ・ ・ まだそうと決まったわけじゃないでしょ?」
「ひとつだけ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 確かめる方法を持ってます。ワカヒコを殺めてしまうことに、なるかもしれないけれど。」
「 ・ ・ ・ どういうこと?」
方法は簡単だった。ワカヒコに邪心があるなら彼の心臓を射抜くように。無ければ誰もいないところに落ちるよう唱えて
話し合いの結果、
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 明日になればわかります。今は待ちましょう。」
「うん ・ ・ ・ 」
翌朝――
悲痛な声で泣く女性の声が風に乗って
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
それは、ワカヒコの妻、シタテルヒメの泣く声だった。
「ワカヒコ ・ ・ ・ 死んじゃったんだ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「そのようですね。」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ そっか ・ ・ ・ ・ ・ ・ そりゃ、戻ってこないわけよね。こんなに悲しんでくれる人がいるんだもん。」
「アマテラス。残念ですけど、帰って来ないのと
「うん ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「 ・ ・ ・
「うん ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ あ。私、ワカヒコの家族に伝えに行かなくちゃ。タカギは、今日休んで。疲れてるでしょ??」
「いえ、お気遣いなく。 ・ ・ ・ それに今日は働きたいや。」
「そっか ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
その後、
しかし彼女は、自分の夫が殺された理由が未だに分からないでいた。確かに
すると、
だって、彼が
天つ神も国つ神も共にワカヒコの死を悲しみ、八日八夜にわたり歌舞し彼を弔った。
しかしその葬儀の最終日、シタテルヒメの兄の
でも、それは別人だ。死人に間違われるなんて縁起でもない。
こうしてワカヒコの死は天つ神にも国つ神にも後味の悪い事件となってしまった。