天皇記『景行天皇』

景行天皇

景行天皇

垂仁天皇すいにんてんのうが亡くなると、皇后ヒバスヒメとの息子の景行天皇けいこうてんのうが後を継いだ。

景行けいこうは父の垂仁すいにんを見て一人に依存するのは良くないという結論に至ったのか、それとも大人になるまでしゃべれなかった兄のホムチワケに親の目が行ってしまい愛情に飢えていたのか、10人もの妻をもらった。しかも彼には側女も多く、80人もの子どもに恵まれ、朝廷は一気に大所帯となった。

さらにそれだけでは飽き足らず、美濃にすごく綺麗なエヒメとオトヒメが住んでいるという噂を聞いて、景行けいこうは彼女達も妻にしようと考えた。
ちなみに、エヒメは姉姫、オトヒメは妹姫という意味だ。

 

これだけ聞くと、どんだけ女好きのチャラい奴なんだと想像してしまうが、彼は今まで出てきた天皇の中では一番落ち着きがあり、王様っぽい性格だった。自分であれこれ行動するよりも、指示して人を動かすタイプで、垂仁すいにんのユルさは微塵も受け継がず、基本的にはいつも無表情だった。

 

景行けいこう息子のオオウスを呼び出すと美濃のエヒメとオトヒメを連れてくるように命じた。

こうして素直に美濃に向かったオオウスだったが、エヒメとオトヒメを見た瞬間、彼の中に衝撃が走る。

2人の美しさは彼の想像を遥かに超えていたのだ。一目見るなり、恋に落ちてしまったオオウスは、なんと、そのまま2人を自分の妻にしてしまった。

しかし、天皇に背くなんていくら息子と言えども勇気がいる。それでも2人を手放したくなかったオオウスは考えた挙句、なんとなく2人に似ている姉妹を景行けいこうの元にも連れて行き、彼女達がエヒメとオトヒメですと嘘をついた。景行けいこうは無表情のまま「ご苦労だった。」とだけ言って彼らを下がらせた。

偽のエヒメとオトヒメは、バレたのではないかとオオウスに迫ったが、元々表情の無い人なので大丈夫とのことだった。

 

そしてその日の夜。

 

偽のエヒメとオトヒメは、早速、景行けいこうの寝室に呼ばれた。ってことはバレてないって事でいいんだよね??2人は恐る恐る彼の寝室に入る。

すると景行けいこうは優しげに笑っていた。

なんだ、ちゃんと表情筋があるんじゃないか。よかった、どうやらセーフっぽい。

 

「君たちが美濃のエヒメとオトヒメか。」

 

声も優しげだ。よし。このままお淑やかに振る舞えばイケるっ!!2人は三本指をついて頭を下げた。

景行けいこうは微笑みながら言葉を続けた。

 

「脱いで。」

 

『へっ?』

 

イキナリですか?ていうか2人供ですか??いや、でもそっか。そうだよな。天皇って要はこの国の王様みたいなもんだもんな。そーいうプレイもするよね??

 

2人は言われるままに服を脱いだ。

 

「立って。」立った。

 

「回って。」回った。

 

「回って。」回った。

 

「もう一回。」回った。

 

「はい、そこでエロいポーズ。」

 

キラッ☆ っとセクシーポーズをキメた。

 

ふっ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 君たちが ・ ・ ・ ・ ・ ・ ねぇ?」

 

気が付くと、景行けいこうはめちゃめちゃサディスティックな顔で2人を眺めていた。

 

『っっっ!!!!まずいっっ!!これ、完全にバレてる!!!』

 

景行けいこうは、ポーズをキメた2人の周りをくるりと回って観察すると、飽きた様子で布団に入り、そっぽを向いて寝てしまった。日本史初の放置プレイだ。2人は彼に触れられる事すらなく、素っ裸のまま超いたたまれない夜を過ごす羽目になった。

 

この可哀想すぎる2人の噂は、翌日には朝廷中に広まった。しかしこの時代、ご飯は必ず天皇を囲んで家族みんなで取ることになっており、オオウスは、この話を知りながらも席に行かざるを得なかった。しかも席は何十もあるっていうのに、オオウスの座る位置は景行けいこうのすぐ目の前だ。超気まずい。

会場中の兄弟はそれぞれ会話をしつつも、2人の動向を横目で伺った。が、2人の間には全く会話がない。それどころか、景行けいこうが一言も発しない。気遣って他の人が話しかけてもガン無視だ。会場は徐々じょじょに静かになり、最後はまるで喪の席のようだった。

 

その日以来、オオウスは食事に顔を出さなくなった。しかしだからと言って、本物のエヒメとオトヒメを差し出すつもりも無い。彼はそれほどまで2人に執着していた。
その後、エヒメとオトヒメは身籠り、子供が生まれた。大所帯になったとは言え、狭い朝廷内なので隠せる訳も無く、超オープンに情報が流れて来るのだが、オオウスは頑なに顔を出そうとしなかった。

こんなんじゃ、仕事もろくに任せられない。景行けいこうは自分が折れることを決め、オオウスの同母の弟、ヤマトオグナにお前から言って兄を『諭せ』と命じた。

ちなみに"オグナ"というのは少年という意味だ。大和少年。単純すぎる。一応、彼には”オウス”という名前もあるのだが、分かりづらいので、”ヤマトオグナ”で統一する。

 

ヤマトオグナは兄のオオウスを差し置いて、皇太子候補の一人だった。まだ少年のため、戦や政に顔を出した事は無く、実力は未知数なのだが、人懐っこく、自然と人から愛される性格が買われたのだろう。ヤマトオグナは初めて父親から頼まれた仕事を、うれしそうに引き受けた。

 


 

それから5日が経った。

まだオオウスは食事の席に顔を出していない。しかし、ヤマトオグナは涼しそうな顔をしている。痺れを切らした景行けいこうは、食事の席でヤマトオグナに事情を聞いた。

「オグナ、余はオオウスを諭せと伝えたはずだが?」

この話題に興味津々の兄弟は、会話を続けながらもシッカリ聞き耳を立てた。

「えっ??父上・・・お言葉ですけど、もうとっくに諭しましたよ??

ヤマトオグナは不思議そうに頭を傾げた。

「なら、なぜあいつは未だに顔を出さない。」

ふふっ!父上、オオウス兄が来れる訳無いじゃないですか。」

ヤマトオグナが無邪気な笑顔を返し、景行けいこうは訝しげに彼を見た。
兄弟中の耳が2人の会話に向けられる。

 

「 ・ ・ ・ お前、オオウスをどの様に諭した。」

 

え??えっと~ ・ ・ ・ 確か、父上に指示された次の日です。2人きりになりたかったので、夜明けにオオウス兄が厠に入るのを待っていました。しばらくすると兄上が来たので、"おはようございます"って言いました。」

 

「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ で?」

 

「それから、オオウス兄を諭そうと思って ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ いっぱい殴って殺しました。あとは、腕をもぎ取って ・ ・ ・ えっと ・ ・ ・ あと ・ ・ ・ ・ ・ ・ 適当にバラバラにしてワラに包んで裏庭に捨てておきました!!

 

ヤマトオグナは眩しいくらいに純粋な笑顔を景行けいこうに向けた。席はシンと静まり返った。

 

それまで景行けいこうは、ヤマトオグナを気に入っていた。無表情の自分にもいつも人懐っこい笑顔で接してきたし、ドSな精神攻めのセリフを吐いても物怖することがなかったからだ。

しかし彼はまだ少年だ。刀は持たせていない。つまり兄の殺害と解体を全て素手でやったことになる。しかもこの4日間、毎日共に食事を取っていたというのに全く違和感を感じなかった。初めて人を、しかも兄を殺した人間のリアクションじゃない。

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ こいつ、人としての感情が何か欠けている。

 

景行けいこうは彼の笑顔を『気持ち悪い』と感じた。

 

「「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」」

 

沈黙が続く。ヤマトオグナは誉めてもらえると思っているのか、にこにこしながら父親の言葉を待っていた。景行けいこうは静かに口を開いた。

 

「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ オグナ、西の熊襲にクマソタケルという兄弟が住んでいる。奴らは最近力を付け、朝廷に反抗的だ。 ・ ・ ・ ・ 彼らを"諭して"熊襲を平定してこい。

 

景行けいこうはこの気持ち悪い息子を自分の近くに置きたくなかった。

 

「はい ・ ・ ・ ・ ・ ・ わかりました。」

 

彼はやはり誉めてもらえると思っていたのだろう。少し不満そうに返事をした。

 

そしてここからは、ヤマトオグナが主人公となる。

 

ヤマトオグナは早速、平定の旅に出かけた。熊襲くまそと言えば鹿児島の方だ。かなり遠いが、景行けいこうには何も持たされていない。まずは準備のために、伊勢の倭姫やまとひめのところに向かった。

倭姫やまとひめは、垂仁すいにんの娘、景行けいこうの妹、そしてヤマトオグナにとっては叔母にあたる。彼女は、天照大神アマテラスに散々引っ越し先探しを付き合わされた後、やっとOKの出た伊勢で、斎王さいおうとして一緒に住んでいたのだ。ちなみに斎王というのは簡単にいうと、神に仕える巫女さんのすっごく偉いバージョンの人のことだ。

倭姫やまとひめは久しぶりに尋ねてきた甥っ子を心から歓迎した。斎王さいおうは(誰かさんに気を遣ってか)処女の未婚女性しかなれない。なので、彼女には子供が居なかったのだ。
姪も甥も皆、可愛かったが、ヤマトオグナのことはその中でも特に可愛がっていた。

 

「オグナ~!よく来たねっ。上がっていきな!!」

 

倭姫は玄関まで彼を出迎え頭をクシャクシャ撫でた。恥ずかしそうに笑う甥っ子はめっちゃ可愛い。しかし、返事はつれなかった。

 

「いえ、ごめんなさい叔母さん。実はゆっくりしていられなくて ・ ・ ・ 。今から熊襲に行かなくちゃなんです。」

はぁっ!?熊襲っ??なんでまたそんな遠くまで??」

「父上の命令で、熊襲の平定に行くんですよ。」

「そうなの?なんか大変そうね。 ・ ・ ・ でも、そしたら、何で寄ってくれたの??お小遣い??」

「んー、実はお願いがあって。」

「うんうん、何でも言って??おばちゃん、オグナの為なら何でもあげちゃうっ!!

「えっと、叔母さんが若い頃に着てて、もう着れなくなっちゃった着物とか、もしあったらお借りしたくて。」

「え ・ ・ ・ ・ ・ ・ 女物の??」

「はいっ。ちょっと、熊襲で使う用があるんです。」

「そう ・ ・ ・ それ、何に使うのかは、あんまり深くは聞かない方がいいのかしら。」

「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ダメですか?」

可愛い甥っ子の上目遣いに、倭姫やまとひめのハートがズキュンひびく。

うぅん、大丈夫っ!!オグナは色白だし顔も可愛いから似合うと思うよ!!そしたら、ついでにメイク道具も貸してあげようっ!!」

「本当っ!?わぁい!ありがとうございますっ!!」

こうしてヤマトオグナは、倭姫から貸してもらった女物の着物と短刀を忍ばせ、熊襲に向かった。

ヤマトオグナ

ヤマトオグナの熊襲平定

熊襲くまそには2週間程で着いた。しかしやっとの思いでここまで来たものの、クマソタケルの家の回りは、厳重な警備が敷かれ、軍勢が3重にも囲んでいた。兵は囲いの外と中を行ったり来たりと、慌しい様子だ。これでは中に入れない。

何か忍び込む良いタイミングはないものかと様子を伺っていると、『近々、塀の中で新築の家が完成するので、お披露目の宴会が行われる』との会話を兵から盗み聞きすることができた。絶好のチャンスだ。ヤマトオグナは、近くに潜みその日を待った。

 

そして、宴会当日。ヤマトオグナは川で旅の汚れを落とし、髪を洗い綺麗に解き、女性のように垂らした。この日の気合は十分だ。彼はムダ毛の処理をすると、倭姫から借りた可愛いピンクの着物を着込み、ナチュラルメイクを施した。 とても初女装のクオリティとは思えない、そこらへんの女子より全然可愛い仕上がりとなった。

 

その夜、ヤマトオグナは宴会に呼ばれたコンパニオンに紛れて会場に入り込んだ。誰も男が混ざったことに気付かない。それどころか「上玉が来た」と会場は密かに沸き立った。宴会は既に始まっていて、クマソタケル兄弟は「新居で飲む酒は格別に美味い」とかなんとか言って、大いに盛り上がっている。

ヤマトオグナは、周りのコンパニオン同様、酒の入ったトックリを片手に各席を周りつつ、クマソタケル兄弟に徐々じょじょに近付いて行った。

すると、彼に気付いた兄弟が自分を横目で見ながらコソコソ話を始めた。『あれれ。バレちゃったかな ・ ・ ・ ・ ・ 』と思いつつも、試しに兄らしき人物に向かって軽く微笑み、ウィンクを送ってみた。

 

そんな彼を見た兄はニヤリと笑い、声を上げた。

 

「オイ!そこの ・ ・ ・ ピンクの着物の、お前!!」

 

席中のコンパニオンが誰だ誰だとキョロキョロする。

 

「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 私ですか?」

 

ヤマトオグナの隣にいたピンクの着物の女性が答えた。

 

「ちげーよ。隣の可愛い方だ。」

 

ヤマトオグナが、会場中の視線を浴びる。少し気まずそうに、人差し指を自分の方に向け、『私?』という表情で首を傾げて見せた。

「そうだ。隣で酒を次げ。」 どうやら、気に入られたようだ。ヤマトオグナは申し訳なさそうに、隣の女性にちょこっと頭を下げてから、そろそろとクマソタケル兄の隣に座った。そして酒を次ぐと、兄は不思議そうに彼を見た。

 

「なぜ、喋らない。」

 

ヤマトオグナはできれば喋りたくなかった。つい数年前に声変わりを終えてしまったので、声だけは誤魔化せない。そこで彼は伏し目がちに、顔を赤らめながら答えた。

 

「 ・ ・ ・ みんなに ・ ・ ・ 男の人っぽいってからかわれるから ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」

 

きゅーーーーーん♥

 

クマソタケル兄弟は完全にヤマトオグナに心を奪われた。「兄者!ズルイ!!真ん中!!真ん中に座らして!!」という弟の主張を兄は仕方なく聞き、ヤマトオグナはこれから殺す2人に囲まれて酒を次いだ。

「わぁ!お酒、強いんですねぇ~!」とか「すごぉ~い!イッキ、かっこいぃ~!!」とか、適当にキャバ嬢が言いそうなセリフを並べていると、クマソタケル兄弟はうれしそうにガブガブ酒を飲み、あっという間にベロンベロンに酔ってしまった。

 

ボディータッチも徐々じょじょに増え、そろそろウザいな。と思ったヤマトオグナは、お尻に手を出してきたクマソタケル兄の手を払いのけ胸ぐらに掴みかかった。セクハラに怒ったのかと勘違いした兄は慌てて謝る。

 

「ハッハ!すまん、ついだつい!!」

 

「ふふっ、"つい"でも痴漢は犯罪なんです。」

 

ヤマトオグナはにっこり笑って言葉を続けた。

 

「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ だから、死んでください。

 

「は??」

 

クマソタケル兄は、状況が飲み込めなかった。目の前にいる清純派の娘の手には短刀が握られ、その刃の部分は自分の胸を貫いている。しかし、あまりにもすんなり刃が通ってしまったので、まだ痛みすら感じていなかった。

ヤマトオグナは、そのまま彼の胸を切り裂き、辺りにはビシャッッと血が飛び散った。ピンクの可愛らしい着物があっという間に真っ赤に染まってしまう。

 

「 ・ ・ ・ ・ ・ あとは ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 弟の方 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」

 

ヤマトオグナは今しがた人を殺したとは思えない程の冷静な表情で弟に目を向けた。

 

その瞬間、時間の止まっていたかのような会場が一気にパニック状態に陥った。客は皆、奇声にも近い叫び声を上げながら我先にと会場の外へ飛び出して行く。

クマソタケル弟も、声にならない声を上げながら逃げ出した。しかし、すぐに背後を取られ、ヤマトオグナにケツをグサリと刺されてしまう。 ・ ・ ・ 他にも刺せる場所はあったろうに。可哀想。

さっさと片を付けようと思ったヤマトオグナだが、クマソタケル弟が待ったをかけた。

 

「ちょっ待っ ・ ・ ・ ・ ・ ・ !!」

 

「嫌です。」

 

「いやっ ・ ・ ・ 息のあるうちに誰に殺されるかくらい教えてくれ!!

え?ん~、えっと ・ ・ ・ ボクは大和から来ました。景行天皇の息子で、ヤマトオグナっていいます。よろしくお願いします。」

「朝廷のっ? ・ ・ ・ そうだったか。」

「じゃ。」

「ちょっ!!待っっっ!!!!」

「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ まだ何か?」

「もうちょいだからっ!!聞いてくれってば!!!」

「 ・ ・ ・ わかりましたよ。簡潔に述べてください。」

「ここらで ・ ・ ・ ・ ・ いや、九州全土で俺らより強い奴なんていないんだ ・ ・ ・ だから、俺ら兄弟は「クマソタケル」を名乗っていた。タケルって強い奴って意味だろ?最強のクマソ兄弟にふさわしいと思って。でも大和には俺らより強い人間がいたんだなって ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」

「えっと ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ それ、長いですか?」

「いやっ!!もうちょい!!!すぐ終わるっ!!!すぐ終わるからっっ!!!」

「はぁ。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ で?

「それでっ ・ ・ ・ この"タケル"の名前を献上する。君もいつまでも"少年"なんて名乗る訳じゃないだろ?ほら、若いうちに"少年"なんて名前付けられると、後で周りが気まずい思いをすることになるし ・ ・ ・ だから、これからは"ヤマトタケル"と名乗るといい。

 

「ヤマトタケル ・ ・ ・ うん、イイですね。ありがとうございます。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ それで ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 終わり?

 

「っっ ・ ・ ・ あぁ。終わりだ。」

 

「そうですか。じゃ。」

 

『ヤマトオグナ』改め、『ヤマトタケル』は何の躊躇もなくザクリと熟したウリのように彼のケツを切り裂いた。 ・ ・ ・ 話を聞いている限りでは、いい人っぽかったのに、やっぱり可哀想。

しかし、景行けいこうには平定も頼まれている。会場には腰を抜かして動けなくなっている人が何人か残っていたので、ヤマトタケルは彼らに向けて声を掛けた。

 

「 ・ ・ ・ という訳で、父上に逆らった熊襲兄弟は殺したゃったんですけど、ココって他にも反抗的な人いるんですか?」

 

彼らはそろって首を横に降った。

 

「そうですか。そしたら、これからはあんまり反抗的な態度たいど、取らないでくださいね。大和からここまで結構あるから、来るの大変なんです。よろしくお願いします。」

 

彼らはそろって首を縦に振った。

 

ヤマトタケルは、にっこり笑うと満足そうにその場を後にした。

 

さて、もうとっくにお気づきのことと思うが、彼こそが日本の誇る伝説の英雄「ヤマトタケル」だ。この厨二病臭漂う、日本史初の女装男子がまさかの英雄。どうやら千何百年以上も前から日本人の萌えポイントは変わっていないらないらしい。

 

こうしてヤマトタケルの伝説は幕を開けた。

 

『系図』アマテラス、垂仁天皇、ヒバスヒメ、倭姫、景行天皇、オオウス、ヤマトタケル、クマソタケル兄弟

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