天皇記『雄略天皇と女』

雄略天皇

大悪天皇

皇位継承の資格をもつ親族をことごとく殺したオオハツセは、やがて雄略天皇ゆうりゃくてんのうとなった。

そして彼は宣言通り、なぁなぁになっていた豪族と天皇との上下関係を力によってハッキリさせた。今までも政略結婚はあったものの、ここまで女を戦略的に使った天皇は雄略ゆうりゃくくらいだろう。

まずは、最初にもらうはずだったクサカの妹、ワカクサを手に入れた。彼女は仁徳天皇の娘だ。この国で一番高い位の女性を皇后に置いたのだ。
続いてカラ姫。彼女はマヨワを匿ったツブラの娘だ。彼女の実家の葛城は仁徳天皇の皇后のイワノと同じところ。つまり、大和の要塞の要で、朝鮮貿易の交渉も得意としている豪族だ。

そして、軍事に特化した大臣で人事を固め、吉備、播磨、伊勢と、次々に反抗的な豪族を攻め落とした。また、吉備からは人質代わりに妻をもらった。他に、有力な豪族としては和邇があったが、そこは攻めずに妻をもらうことで配下に置いた。彼は宣言通り、平和ボケしていた日本を軍事力でまとめ上げたのだ。

さらに国内だけでは収まらず、高句麗にも攻め込み勝利した。勢いに乗った雄略軍は新羅にも攻め入ったのだが、そこでやっと敗北を味わうことになる。初めて大きな挫折を味わった雄略ゆうりゃくは、その後は落ち着いて、なんだかんだで立派な天皇へと成長していくのだが、この暴君ぶりから、雄略ゆうりゃくは影で『大悪天皇』なんて呼ばれていた。

・ ・ ・ ・ ・ ・ と、やっと古事記も歴史の教科書っぽくなってきた ・ ・ ・ なんて、言いたいところだけれど、残念ながらそうはならない。

 

 

というのも、この大悪天皇 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ものすんごいアホの子だった。

 

 

まじめな話しはココまでにして、次は彼の残した大量の『アホの子伝説』に進む。

『系図』仁徳天皇、イワノヒメ、履中天皇、墨江、反正天皇、允恭天皇、キナシ、カルノ、安康、ハツセ

ワカクサへの求婚

まずは時を遡って、雄略ゆうりゃくが天皇になってすぐの頃。ワカクサに皇后になってもらおうと、求婚しに行った時の話しだ。

ゴタゴタと血なまぐさい話しが続いていたこともあり、雄略ゆうりゃくは自分で彼女を迎えに行こうと出かけることにした。

数人の供と一緒に、彼女の実家に向かって生駒山を登っていると、鰹木かつおぎという、古代のシャチホコ的存在を屋根に飾っている家を見つけた。

 

「 ・ ・ ・ 何あれ?オレ様の皇居パクってんの??ムカつくんだけど。焼きに行こうぜ。

 

と、雄略ゆうりゃくは山を降り、その家の門をドンドン叩いた。そして「てめーパクってんじゃねーよ、ナメてんのかコラ??」と言って難癖をつけると、家の主が慌てて出て来た。

 

「もっっ!!申し訳ございません!!!身分に合わないこんな家を建ててしまい ・ ・ ・ 本当に申し訳ありませんてしたっっっ!!!是非お詫びをさせてください ・ ・ ・ 倉の宝を全てお持ちしますのでっっっ!!!

 

と、ヘコヘコ頭を下げて来た。だが、雄略ゆうりゃくの怒りは収まらない。「いらねーよそんなもん。宝ごとこんな家焼き払ってやる。」と藁を集めはじめた。

 

そんな張りつめた空気の中、門から シャランシャラン と鈴を鳴らしながら、赤い首輪のをつけた真っ白な犬が出て来た。こっちを見ながら、めっちゃ笑顔で尻尾を振っている。 その犬と目が合った雄略ゆうりゃくは固まった。

 

『 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ お父さんっ!?』

 

胸がドキドキする。なんだ、この感情は。コイツから目が離せない ・ ・ ・ ・ ・ ・

 

犬を見たまま硬直している雄略ゆうりゃくを覗き込み、家の主は恐る恐る声をかけた。

 

「あ・・・・あの、よろしければ、お詫びとしてこちらの犬を差し上げましょうか?」

 

「えっ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ いいのか?

 

こうして白い犬を譲ってもらった雄略ゆうりゃくは、彼の家を焼くことを止めた。

 

そして、上機嫌で犬のリードを引きながら、ワカクサの家へ向かった。

「これ、結納代わりにワカクサにやるんだっ。いいだろ??」 と、家臣に自慢しながらルンルンで山道を進み、あっという間に目的地についた。

さっそく侍女に「これ、やるよ。結納の犬だ。ワカクサに皇后として皇居に来るように言ってくれ。」と伝えた。

そして、彼の申し出を聞いたワカクサはとっても戸惑った。

『い ・ ・ ・ 犬??結納品がっっ!?』

しかし、こっそり様子を覗くと彼は本気っぽかった。すげー愛おしそうに犬を撫でている。『ていうか、お兄ちゃんが殺されて、甥っ子まで殺しておいて、何でこの人平気な顔でここに来れるんだろう・・・』ワカクサはどうしても、今すぐ彼について行く気にはなれなかった。そこで、

「わざわざ天皇自らお迎えいただいたことはうれしく思いますが、日御子ひのみこが太陽に背を向けてこちらへ来るのは良くないことです。日を改めてこちらから参ります。」

と伝えた。雄略ゆうりゃくは仕方なく「ちぇー。なんだよ。」と言いながら、残念そうにトボトボと皇居へ帰った。そして帰り道の生駒山を歩きながら下衆な歌を詠った。

 

あーぁ。今日は樫の気が鬱蒼としている中で根元に生えた竹みたいに、横たわってヤれると思ってたのになぁ。でもいいや。近いうちに抱いてやるよ。だってアンタはもうオレ様の嫁なんだから。

 

それから数日後、約束通りワカクサは皇后として皇居に移った。 しかしその後も、雄略ゆうりゃくは女性に対してやりたい放題だった。

エンペラータイム

ある日、雄略ゆうりゃくは吉野川でフラフラと散歩をしてた。すると、とっても綺麗な子が歩いていたので、声をかけて草むらで押し倒した。

ちなみに、現代で同じことをすると、強姦罪で捕まるので、絶対に真似しないように。

雄略ゆうりゃくは彼女が気に入って、次の日は皇居から琴を持ち出して、曲を披露しに行った。今で言えば、マイギターでオリジナルラブソングを歌っちゃうようなあの、痛々しい若気の至りと似たような行動だ。しかも琴って ・ ・ ・ 持って行くのすげー重かったろうに。そして、

「オレ様が弾いてやるから、アンタ踊れよ。」

と、即興の無茶ブリをした。

しかし、彼女は曲に合わせて見事に踊ってみせた。雄略ゆうりゃくが感心して見入っていると、腕にアブが止まる。水を指され雄略ゆうりゃくが『あぁん??』とアブにブチ切れそうになると、彼がキレる前にトンボが止まってそのアブを食べてしまった。

 

「やべっ!ちょっ!!今の見た???トンボまでオレ様に奉仕しやがるっ!!!」

 

と、トンボを誉めた歌を、なぜか彼女にプレゼントし、上機嫌で皇居に帰って行った。

超自由。絶対B型だ。

 

さらに雄略ゆうりゃくは皇居の中でも、やらかす。

 

ある日、采女うねめという、女のお手伝いさんが子供を産んだ。 彼女は、その子は雄略ゆうりゃくの娘だと言い張ったが、雄略ゆうりゃくは認めなかった。

「だって、アイツのことは一晩しか抱いて無いんだぜ??おかしいだろ。絶対ウソだって。」

「しかし、彼女は一回ではないと申しておりますが・・・」

家臣が恐る恐る申し立てる。すると雄略ゆうりゃくは訝しげな顔をして、彼を見た。

「そりゃ一回じゃねぇよ。オレ様は、一晩っつったんだ。

「え、一回じゃないって ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ じゃあ、何回されたんですか?」

 

「あぁ?? ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 七回だ。

 

「はぁっ!?七回っ!?マジっすか!?一晩でっっ!?陛下、賢者タイムとか無いんですか??」

 

「ねぇよ。そんなもん。常にエンペラータイムだよ。オレ、賢者よりステータス高けぇから。」

 

「マジか ・ ・ ・ ちょ、それ、エンペラータイムの秘訣が詳しく聞きた・・じゃなくって!!そしたらあの子、絶対、陛下のお子さんですって ・ ・ ・ 認めてあげましょうよ??」

 

と家臣に必死に説得され、雄略ゆうりゃくはやっとその赤子を皇女に認めた。

和邇のオドヒメ

次は和邇の娘のオドヒメだ。和邇の豪族も最初は反抗的だったが、吉備、播磨、伊勢と次々と豪族が落とされて行く姿を見て、おとなしくなっていた。しかも、和邇のオドヒメはとても可愛いという噂だ。それなら、ソイツを嫁にくれるなら許してやろうかな ・ ・ ・ なんて考えながら、和邇に向かった。もちろんアポ無しだ。

そして和邇に近づいて来たところで、偶然オドヒメを見つけた。オドヒメは雄略ゆうりゃくの姿を見ると恐怖から慌てて丘の茂みに逃げ隠れてしまった。

「 ・ ・ ・ やべー、今の見た??超可愛いんですけど。オレのこと見て恥ずかしがって逃げちまったよ。あーぁ。鋤が500本くらいあればなぁ。あの丘の草全部ムシって彼女を見つけ出すのに。

そんな雄略ゆうりゃくの独り言にオドヒメはガタブルしたが、『恥ずかしがり屋さんなんだなっ。』と、雄略ゆうりゃくが見事に勘違いしてくれたおかげで、草むらで押し倒されることだけは間逃れた。

雄略ゆうりゃくはとりあえず皇居に戻り、嫁になるように手紙を送っておいた。

 

そして、その年も皇居で新嘗祭にいなめさいが執り行なわれた。この日は和邇のオドヒメが嫁ぎに来ることになっており、雄略ゆうりゃくは朝から上機嫌だった。

彼の席は見事に紅葉したケヤキの下で、そこに少女が酒を運んで来た。しかし、少女に渡された酒にはケヤキの葉が浮かんでいる。どうやら少女は葉が落ちたことに気付かずに渡してしまったようだ。

雄略ゆうりゃくはその場でブチ切れ「おぃ、ガキ、オレ様にこの葉、食えってか??」と、少女ののど元に刀を突きつけた。新嘗祭が始まって早々に血が流れるのではと、会場がどよめく。

 

しかし、少女は涼しい顔をして雄略ゆうりゃくに歌を詠ってきた。

 

いいえ、日御子ひのみこさま。この皇居に茂るケヤキの木は、上の枝で天を覆い、中の枝で東の国を覆い、下の枝で国土を覆い、まるでこの世界のようじゃないですか。

そこから盃に落ちた葉は、浮き漂って、イザナギとイザナミが作った淤能碁呂島おのごろじまみたい。あの言い伝えのようで風流だとは思いません?

 

「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ へぇ。面白い。気に入った。」

 

彼女の物言いに感心した雄略ゆうりゃくは機嫌を直し、逆に彼女に大量の贈り物をあげた。

その後、オドヒメも新嘗祭に参加し、酒を献上しに来た。やっと嫁ぐ決心が着いたようだ。しかし、まだ緊張しているようで、大きなとっくりを持ったか細い腕がプルプルしている。

ちょっ・・アンタ、そんな細い腕で大丈夫か??ちゃんと持てよ?落とすなよ???落としたら殺すからな?まじ、気をつけろよっ???

雄略ゆうりゃくが珍しく他人を心配して歌を詠うと、オドヒメはふるふるしながら頑張って歌を返してきた。

あのっ、私っ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 陛下が朝には肘をついて、夕方には寄りかかってる、あの、よく、殿様とかが使ってる、あの、肘掛けみたいなやつに私はなりたくってっっ!!それでっっ、私っ、嫁ぎに参りましたっっ!!!

「へっ??あっ、そっ ・ ・ ・ ・ ・ ・ そうか ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。」

そして、オドヒメはふるふるしながら雄略ゆうりゃくに酒をついだ。『コイツ、Mなのか??』と考えながら、雄略ゆうりゃくはふるふるした注ぎ口からあふれないよう必死に酒をつがれた。

こうして雄略ゆうりゃくは着々と豪族の嫁を増やし、数年後には安定政権を手に入れた。

そして、道端で女子を襲っちゃうような若気の至り生活も落ち着き、その後、新羅に「おととい来やがれ」と滅多打ちにされ大人しくなり、数十年後にはすっかり丸くなり、立派な天皇になっていた。

雄略天皇2

アカイコとの約束

そんなある日、思わぬ来客があった。見知らぬ老婆が貢ぎ物を大量に積んで皇居までやって来たのだ。「ぜひとも雄略陛下にお目通りさせてください。会えば分かるはずです。」と訴えて来たが、門番もこんな怪しい老婆をみすみす通すわけにもいかない。

しかし、断っても断ってもなかなか帰ってもらえずに困りきっていると、たまたま雄略ゆうりゃくが通りかかった。

 

「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 騒がしいな。何かあったのか?」

「あ、陛下 ・ ・ ・ すみません、こちらの老婆がどうしても陛下に会いたいと ・ ・ ・ ・ お知り合いでしたか?」

「え ・ ・ ・ ・ ・ ・ いや、わかんねーな。ばあさん、アンタ、どこの人だ?」

 

雄略ゆうりゃくが不思議そうに尋ねると、彼女はボロボロと涙を流しながら雄略ゆうりゃくにすがってきた。

 

「あぁ!!雄略様っ!!お会いできて良かった ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」

 

「 ・ ・ ・ えっ、何っっ??オレら会ったことあったっけ??」

 

「はい・ ・ ・ ・ 私と結婚の約束を ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」

 

『ブフッッっっっ!!!!!』

 

雄略ゆうりゃくをはじめ、周りにいた人間が一斉にふいた。

 

ちょっ ・ ・ ・ はぁ??結婚??? ・ ・ ・ そりゃ悪りぃなばあさん、確かにオレ、若いときは女好きで有名だったかもしんないけど、さすがにもう落ち着いたし ・ ・ ・ ・ あん時も、ばあさんに手を出す程じゃなかったぜ?アンタ、今、いくつだよ??」

 

「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 数年前に卒寿を迎えました。」

 

「んーそうかぁ ・ ・ ・ ・ ・ ・ もうちょっと早く出会ってれば良かったんだけどなぁ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」

 

周りの人はまだクスクス笑っている。

 

「 ・ ・ ・ ・ ・ っっ雄略様 ・ ・ ・ やはりお忘れなんですね ・ ・ ・ ・ ・ ・ アカイコは雄略様が『必ず迎えにくるからどこにも嫁ぐな。』とおっしゃったのを信じてずっと待っていたのに ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」

 

『ん?アカイコ?』彼女の名前を聞いた雄略ゆうりゃくの顔から、一瞬で笑顔が消えた。

『あれ、どうしよう。アカイコって名前、めっちゃ聞いたことある ・ ・ ・ 。』

雄略ゆうりゃくの体からサァーーっと血の気が引いて行く。

「あ ・ ・ ・ あれ、えっと ・ ・ ・ アカイコさん ・ ・ ・ ・ ・ それって ・ ・ ・ ・ ・ ・ いつ頃の話しだ?」

「はい、ちょうど80年前になります。」

「ぅ"っっ ・ ・ ・ ・ ・ ・ぇ ・ ・ ・ えっと ・ ・ ・ あの、まさか ・ ・ ・ ・ ・ あの、三輪川沿いで ・ ・ ・ ・ ・ ・ 水浴びしてた ・ ・ ・ 首筋がエロかった子 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」

「あぁ!!思い出してくださったのですかっ??」

 

『思い出したぁぁぁぁーーーーーー!!!!!!!』

 

雄略ゆうりゃくは愕然としてその場に膝を付いた。門番やまわりのヤジ馬が『マジかよっっ!?』って顔で見ている。『あぁ ・ ・ ・ あれだ。あのめっちゃ可愛かった子だ ・ ・ ・ ・ 思い出したよ。言ったよ。オレ。どこにも嫁ぐなって。どっか嫁いだら殺すって。あの時のオレ!!バカッッ!!!

取り返しのつかないことをしてしまったと、雄略ゆうりゃくは力なく項垂れた。もちろん、この時代も神の子老けない設定は健在だ。雄略ゆうりゃくは100才を超えていたが、見た目はあの頃のままだった。

『どうしよう ・ ・ ・ ・ ・ ・ 思い切って抱くか?』

雄略ゆうりゃくはじっと老婆を見つめる。

 

 

『 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 無理だっっっ!!!!勃たねぇっっっっっ!!!!!』

 

 

彼は頭を抱えてうずくまった。そして、「あの時に抱いといてやれば ・ ・ ・ ・ ・ ・ オレが老けちまったもんだから ・ ・ ・ ・ ・ ちょ ・ ・ ・ 元気なくて ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」と、雄略ゆうりゃくなりに精一杯に気を使った歌を詠むと、彼女も「蓮の花のように、美しくて若い少女を羨ましく思います。」と歌を返した。

 

そして、しばらくの沈黙。『 ・ ・ ・ うん。本当ごめん。』雄略ゆうりゃくは心から懺悔した。

 

「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ あの、アカイコさん ・ ・ ・ ・ 倉に案内するよ。好きなもん全部持って行ってくれ。80年分の詫びだ。」

 

と、倉に案内し、彼女が欲しいという物は全てあげた。アカイコが宝の山に夢中になって喜んでくれたことがせめてもの救いだった。

そしてアカイコが倉を物色している間に雄略ゆうりゃくは「おぃ、朝廷内で一番顔の良い家来を連れてこい。」と密かに指示を出した。彼女が大量の宝をうれしそうに抱えて出てくると雄略ゆうりゃくはにっこりと笑顔で彼女を迎えて「ウチの若いモンだ。荷物持ちに使ってくれ。」と、そのイケメンの家来をお供にさせた。

こうして、アカイコが「勇気を出して来て良かったです。ありがとうございました。」と何度も頭を下げ、帰路につき、そのイケメンの家来も彼女の後を追おうと後ろに振り向こうとしたその瞬間。

雄略ゆうりゃくは、家来の肩を『ガスッ』と力強く掴み、あの大悪天皇の顔つきで耳打ちをした。

 

「オィ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 今晩、アカイコを抱いてやれ。イカすまで帰ってくるな。逆らったら殺す。

 

その家来は恐怖に引き攣った顔で彼女の後を追った。雄略ゆうりゃくは笑顔で2人を見送ったが、その後、彼らがどうなったのかは誰も知らない。

こうして、雄略ゆうりゃくの女絡みの『アホの子伝説』は幕を閉じる。

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