日本神話『八岐大蛇』
八岐大蛇退治
「んあー!良い朝だーーー!!」
一目惚れしたクシナダヒメを八岐大蛇から救うことになり、昨晩、ちゃっかり彼女の実家に泊まり込んだ
『いいねぇ。太陽って。なんかネェちゃんが見守ってくれてる気がする。ま、戦うのは夜だけど。』
「よしっ!そんじゃあ、いっちょやりますかっ!!なぁ、アシナヅチ、この辺に酒蔵は無いか?」
早速クシナダヒメの父、アシナヅチに協力を求める。
「えぇ、ございますが ・ ・ ・ ・ 」
「そしたら、そこから一番強い酒をありったけもらってきてくれ。でかい樽8つ分だ。あと、家の周りに垣根を植えても問題ないよな?」
「問題ありませんが ・ ・ ・ 何をするので?」
「まぁ、見てなって! ・ ・ ・ ・ そんで、クシナダ。お前は見つかったら大変だから、クシに変えとこう。特等席でオロチ退治を拝ませてやるよ。」
サクサクと指示を出す
「はぁ?クシってどういうこ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
『ぼふんっ!!』
「スサノオ様、お待たせしました。どちらに持って行きましょう?」
「あぁ、こっちに頼む!」
『楽しみだなぁ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 』
そして、日は静かに沈んだ。
ズズズズズズ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ズズズズズズ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
聞き慣れない奇妙な音が
ズズズズズズ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ズズズズズズ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ピタッ
クシナダヒメの家の前まで来ると、八岐大蛇はこちらに気づいたようだ。合計16個の目玉が
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ お前誰だ?見ない顔だな。」
「あぁ、ヤマタノオロチ様!!お待ちしておりました。ただ今、クシナダヒメはあなたのために、身支度を整えております。酒を用意しましたので、しばらくの間、こちらでお待ちください。」
「 ・ ・ ・ 酒?ほぅ、ワシを酔わせてその間に逃げようとでもいうのか?」
「まっさかぁ~!そのつもりなら、こんな夜まで待っていませんって。さぁ!ここらで一番の酒を用意しました。もちろん、皆様の分取り
「フン!まぁいいだろう。どのみち、怪しい動きがあれば、一捻りだ。」
オロチは、門のひとつひとつに顔を入れ、酒を飲み始めた。
「ん ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ これ ・ ・ ・ ・ うまいな。」
どうやら、この酒が気に入ったらしい。
「ハハッ!ありがとうございます。夜は長い。ゆっくりお楽しみください。」
やべぇ ・ ・ ・ うまいぞコレ本当 ・ ・ ・ ・ と、八岐大蛇はブツブツと言いながら酒に夢中になった。
しばらくすると、どこからかイビキが聞こえてきた。頭が一つ、また一つと眠り出したのだ。
『 ・ ・ ・ ・ なんだ。ちょろかったな。』
「 ・ ・ ・ ・ ありゃりゃぁ~?オロチちゃ~ん。気ィ抜き過ぎなんじゃねぇの??
油断してっと ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 寝っ首掻かれるぜっっ!!」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ キアアアアアアアアアアアア ・ ・ ・ ・
オロチの
「貴様アァ!!騙したなアアアアアアア!!!」
オロチは奇声を上げた。しかし、時既に遅し。
「悪りぃなっ!お前が最後のいっちょだっっ!!」
ザクリ。
「ハッ!呆気なかったなぁ。」
しかし、すぐ近くで『ドオォォォォォン!』と低い大きな音と共に、地鳴りがした。どうやら、残りの尾が暴れまわっているようだ。
「チッ!往生際の悪い奴だ。」
ガツンッッ!!!!
「うわっ!なんだ?なんだ???」
尾の中で何か引っかかったのだ。不思議に思い切り出すと、立派な大刀が出て来た。
「うおぉ~なんじゃこりゃ??カッケェ~!!コレあれじゃね???ラスボス倒すともらえる最強武器的なソレじゃねっ!?」
しばらくのたうち回っていたヤマタノオロチだったが、やがて動かなくなった。
「終わったか ・ ・ ・ ・ オィ、クシナダっ、もうイイぞ!」
『ぼふんっ!!』
「わわっ!!!何なに?キャッ!!ヌメヌメするっ!!これ、オロチの上???臭っっさ!!血生臭っっっ!!!」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ お前、本当にうるせぇ女だな。」
「うわぁ ・ ・ ・ 本当に倒しちゃったのね。」
「あぁ!言ったろ??俺が守るって。」
「ふふっ、よくそんなクソ恥ずかしいセリフを平気で言えるわね。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ でも ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ありがと。スサノオ。」
「へへっ。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ クシナダ、これから宜しくな。」
「うん ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 本当にありがとうっっ!!」
ガバッッ!!
「うわっっっ!!!」
クシナダヒメは
こうして、2人は結ばれ夫婦となった。
八雲立つ
それから、数日後。
「アマテラス ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ スサノオが面会をしたいと、そこまで来ているんですけど ・ ・ ・ どうします?」
「えっ??全然気づかなかった。この前は稲妻を鳴らしながら来たのに ・ ・ ・ 通してあげて。」
「はい。」
ダダダダダダダッ ・ ・ ・ ・ バタンッッッ!!!!!
「ネェちゃんっ!!」
「バカッ!みんなの前では御姉様って呼べって言ったじゃないっ!!」
「あ、悪りぃ、オネーサマ。それより俺、好きな人ができたんだ!!」
「はぁ?あんた、そんな事をいうためにここまで来たわけ??」
「んなわけねーだろ。これを
「わぁ、すごい ・ ・ ・ ・ 立派な剣ね。これ、もらっちゃっていいの?」
「あぁ、もちろんだ!!!俺が、
「そう ・ ・ ・ ・ ・ ・ ありがと。それじゃあ、遠慮無くいただくわ。」
「そうか!よかった!!」
「クスっ、にしてもあんた、すごい変わり様ね。きっと素敵な人と出会えたのね。」
「あぁ!クシナダは最高の嫁だっ!」
・ ・ ・ は?今、何と??
「えっ?ヨメ??あんた、結婚したのっ???
「ハハッ!一目惚れだからな!」
いやいや、一目惚れだからと言って、展開早すぎでしょ。結婚ってそんな一瞬で決まるもんなの??まぁ、幸せそうだからいいけど。
なんだろう。このやるせない感じ。
「そ ・ ・ ・ ・ そうなの。まぁ、とにかく良かったわ。おめでとう。」
「おぅ!ありがとっ!!」
「 ・ ・ ・ あんたを
「あぁ!!ありがと!! ・ ・ ・ ・ そんじゃ、俺、
「うん ・ ・ ・ ・ ・ ・ バイバイ。元気でね。」
「あぁ、ネェちゃんもなっ!!」
ダダダダダダダ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「よかったですね。元気そうで。」
そんな
「うん ・ ・ ・ ・ 」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ でも、先越されちゃいましたね。」
「黙れ、メガネ。」
「ゴメンナサイ。」
それから数ヶ月が経ち、話は地上の
・ ・ ・ ・ バタン!!
朝っぱらからハイテンションの
「おい!クシナダ起きろ!!お前に見せたいモンがある。」
「ん~~ ・ ・ ・ 何よ ・ ・ ・ ・ まだ日の出前じゃない。」
「出かける準備だっ!!」
「へっ??うわっ!ちょっ ・ ・ ・ ・ 何よっ??」
「ちょっと!ねぇ、どこまで行くのよっ!?」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ここだ。ここを抜けると ・ ・ ・ ・ 」
そこは、辺り一面に緑が生い茂る広々とした場所だった。
「わぁ~ ・ ・ 綺麗なところ ・ ・ ・ ・ 清々しい気分になるわね ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「お前もそう思うか?俺も初めてココに来た時『なんて清々しい場所なんだ』って思ったんだ!だから、俺はこの土地を"須賀"と名付けた!!」
「うわっ ・ ・ ・ 単純っ!!」
クシナダヒメが辺りを見回すと小高い丘の上に大きな宮殿が見えた。「この辺の地主さんかな??」と眺めていると
それは、幾重にも垣を巡らせた見事な宮殿だった。
「わぁー素敵な宮殿ね ・ ・ ・ ・ 新築の匂いがする ・ ・ ・ ・ 」
「俺が建てた。」
「はいっ!?」
「ここに、家族で住もう。」
「うそ ・ ・ ・ こんな立派な宮殿に? ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ すごい。しばらくコソコソと出歩いていると思ったら ・ ・ ・ ・ 」
「驚いたか??」
「うん、とっても素敵! ・ ・ ・ ・ ・ ありがとう、スサノオ!!」
宮殿の縁側からは、壮大な山々が一望でき、日の出と共に朝雲がもくもくと立ち上がってくるのが見えた。
「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を ・ ・ ・ 」
「何それ?歌??らしくないじゃない。」
「短歌だ。いいだろ??たまには。」
「ふふっ、そうね。案外才能あるかも。」
「へへっ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 幸せになろうな。クシナダ。」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ うん。」
クシナダヒメは、
こうして
めでたしめでたし。