天皇記『履中 反正 允恭天皇』
墨江の謀反
まずは、長男の
残念ながら、その配慮が逆効果になってしまうのだが ・ ・ ・ ・ ・ ・
さて、仁徳が亡くなった翌年。大阪の皇居で
完全に悪酔いしてしまい、わけわかんない歌は詠うわ、粗相はするわ、すっかり上機嫌になり、ついにはパタリと倒れてしまった。
そして数時間後 ・ ・ ・ ・ ・ ・
「履中様っ!!いいかげん起きてください!!履中様ってばっ!!!」
「ん~アチノ??もぉ~無理ってば。飲めないって ・ ・ ・ う"ぅ・・うおえぇぇぇ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
べちゃべちゃべちゃ ・ ・ ・ ・ ・
「あぁ ・ ・ ・ ったく。しょーがねぇな ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「あぅ ・ ・ ・ あれ ・ ・ ・ ・ みんなは??てか、ここどこ????何か焦げ臭くない??あ・ ・ ・ ・ あれ? ・ ・ ・ ・ ヤバイ。俺、新嘗祭の後どうしたんだっけ?完全記憶無い。」
「そりゃ、あんた、ずっと爆睡してましたからね。墨江様が屋敷を全部焼き払っちまったんです。謀反ですよ。」
「えっ ・ ・ ・ ・ 嘘 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「今、大阪の羽曳野らへんです。ほら、追いつかれる前に早く馬乗ってください。大和に向かいます。」
「えっ、何でっっ??なんで、墨江が裏切ったの?? ・ ・ ・ 同じ母親を持った兄弟の謀反なんて聞いたことない ・ ・ ・ ・ ・ 」
「そんなん下っ端の自分が事情を知るわけないでしょう。もう、事は起こっちゃったんです。とにかく、逃げますよ。」
「え ・ ・ ・ ・ もう行くの?」
「追いつかれたら殺されます。あと、もう吐かないでください。敵に場所が知れます。」
「野宿するってわかってたらムシロ(藁を編んだやつ)持ってきたのに ・ ・ ・ 」
「ムシロを常備してる皇太子なんて見たことないっすよ。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ほら、履中様、アレ。」
小高い丘の上まで登ると、仁徳が治めていた大阪の町が一望できた。しかし辺りは一面火に覆われ、美しかった都は見る影も無い。
「嘘 ・ ・ ・ だろ ・ ・ ・ ・ あれ ・ ・ ・ 嫁の家らへんだ ・ ・ ・ ・ ・ ・ みんなちゃんと逃げられたのかな ・ ・ ・ 」
「わかんないです。でも命を狙われていたのは履中様だけでしたから ・ ・ ・ 奥様達はきっと大丈夫ですよ。」
アチノは
朝方、大阪と奈良の県境ら辺まで来ると、何かに怯えたように少女が走ってきた。彼女に気づき、アチノが声をかける。
「おい、どうかしたのか?」
「この先に武器を持ったおじちゃんたちがたくさん待ち伏せしてるの ・ ・ ・ ・ 大和に行くの??遠回りした方がいいと思うけど ・ ・ ・ 」
「 ・ ・ ・ そうか、ありがとう。助かったよ。」
こうして2人は、遠回りをして大和へ逃げ延び、石上神宮(奈良県天理市)に隠れた。
それから数日後、三男の
『あいつ、いつの日か絶対俺のこと食う気だよ ・ ・ ・ 』
そんな三男に急に尋ねて来られて、しかも次男に裏切られたばっかりで、不信感丸出しの
「兄者ーーー!!!ワシの声が聞こえんのですかあぁぁーー!!??このワシが裏切るとお思いかぁぁーーー!!??」
「 ・ ・ ・ ・ ・ つってますけど、どうします?」
と、家来のアチノが
「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!!!めっちゃ怖い。何?今のご時世『ワシ』って一人称の弟いる?いないでしょ??あの人、絶対、俺のこと食べる気だよ。」
「はぁ ・ ・ ・ ・ ・ ・ じゃあ、帰ってもらうように言いますね。」
アチノは、
「兄者ーー!!!ワシは帰りませんぞーーーー!!!同じ腹から産まれた兄者を殺そうなどと、考えた墨江をワシはもう兄弟とは思いませぬ!!!!兄者をお助けしたいのですーーーっっ!!!」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ つってますけど。」
「なら、墨江を殺してきてよ。そしたら部屋に入れてあげる。」
「はぁ ・ ・ ・ ・ ・ じゃあ、そう伝えますね。」
「兄者ーーー!!!分かりましたぞーーー!!!!必ず墨江の首を持って参りましょうっっっっ!!!!」
「いやっっ!!首は持って帰って来ないでっっ!!怖いからっっっ!!!見たくないからっっっ!!!!」
しかし、
そこで考えた
次男の墨江が殺され、目的を達成した三男の
しかし、あんなにあっさり主人を裏切ることができる人間なんて信用できるわけがない。でも、約束を果たさないなんて道理に反する。そこでまた考えた
「ソバカリよ、お主の活躍見事であった!!!!」
「はっ!!ありがとうございます。 ・ ・ ・ しかし何でまたこんな時に宴会を??」
「うむ、実はお主にサプライズを用意しておるのだっっ!!!!」
パンパンッ!!と、
「へっ!?こっっ ・ ・ ・ ・ ・ ・ これは??」
「全てお主への褒美だ。お主を大臣として任命するっ!!!」
ソバカリはパァァ~っと目を輝かせ「ありがとうございます!!ありがとうございますっ!!」と喜んだ。
続いて
ザシュッッ ・ ・ ・ !!!
ソバカリの首が天高く飛んだ。
人を殺めた
次の日。石神神宮についた
そして続いて
允恭天皇
最後に残ったのは四男の
「え ・ ・ 無理ですよ ・ ・ ・ ボク持病あるし、もうおじいちゃんですもん ・ ・ ・ ・ ・ 」
確かに年齢的にはおじいちゃんなのだが、神の子は老けない設定は健在なので、体の弱い美少年にしか見えない。皇后をはじめ、女中達は「そんなことありません!!允恭様しかいらっしゃいません!!!」とハァハァしながら必死に訴えかけ、ついには断りきれず皇位を継ぐことになった。
こうして新羅のおかげで病気が完治した
やり方は、至って簡単。
1)まず、煮えたぎる熱湯鍋を用意します。
2)次に、氏や姓を持つ人に熱湯鍋の前に一列に並んでもらいます。
3)そして、自分の氏または姓を名乗ってもらい、1人づつ熱湯に手を突っ込んでもらいます。
4)最後に彼らが手を
というわけだ。現代の感覚からしてみると、こんなやり方して、余計に氏と姓が乱れたんじゃ ・ ・ ・ と考えてしまうが、当時はこれで正確な判断ができると考えられており、裁判でも用いられた方法だった。
古事記には、『こうして允恭天皇は国中の氏と姓を正確に正しました。』とドヤ顔で綴ってある。
禁断の恋
さて、
しかしある日、そのキナシが詠ったという、とんでもない歌が2つも朝廷内に出回ってしまう。
「高い山の上の田んぼに水を通すため、地下を走った管のように、人目につかないよう愛を伝えよう。密かに慕って泣いてくれた君の肌に、今夜こそ触れてみせる。」
「笹の葉にあられが打ち付ける音のように、君と激しく体を重ね合うことができたなら、他の人が自分から離れて行ったって構わない。一度でいい。乱れに乱れて抱き合うことさえできたなら、君と離れ離れになったって構わない。」
キナシの青春時代の恥ずかしいポエムが朝廷内にばらまかれたのかと思いきや、そうではなかった。この歌を送った相手はカルノ。彼女は同じ母親を持つ妹だ。妹萌え公認の古代でも、同母兄妹の恋はタブーだった。
しかも、この時代の歌はTwitter並の拡散効果があり、瞬く間に国中に2人の関係は知れ渡った。家臣達は、近親相姦など気持ちが悪い。とキナシから離れて行き、3男の
日に日に悪化する家臣たちの
安康は、小雨が降る中メガホンを片手にキナシに訴えかける。
「キナシーキナシ兄ーー!!貴様は完全に包囲されているー!!雨が止んだら出てくるんだーー!!!国の母さんが悲しむぞ!!いい加減、観念しなさーーい!!早く出てこないと攻め込むからなーーっっ!!」
すると、慌てて家主のオオマエが外に出てきた。
「安康様 ・ ・ ・ 待ってください。これから天皇になるって方が、自分の兄を殺す気ですか??そんなことしたら世の人になんて言われるかわかりませんよ。キナシ様は後ほど私と一緒に自首しますから ・ ・ ・ 今日のところはお引き取りください。」
それもそうだと考えた
翌日、オオマエに連れられ、キナシが皇居に向かっていると、道の途中で妹のカルノが現れた。彼女はずっと探してくれていたのだろうか。着物の裾が泥だらけだ。
「キナシ、戻っちゃダメだよ ・ ・ ・ 何されるか分からない。殺されちゃうかもしれないでしょ!?そんなの嫌だっ!!!」
道中でポロポロ涙を流すカルノの姿を見て、キナシは困ったように歌を詠った。
「カルノ ・ ・ ・ お願いだから泣かないで。こんなところで泣かれると君まで変な目で見られるだろ ・ ・ ・ 家に帰るんだ。泣くなら山鳩みたいに忍び泣いてくれ。」
結局カルノは、兄を止めることができなかった。キナシは大和から
そして、刑執行の当日。キナシはカルノに2つの歌を届けた。
「空を飛ぶ鳥は恋の遣いだから ・ ・ ・ 鶴の鳴く声が聞こえたら、僕のことを尋ねてくれ。」
「いつの日か必ず君の元に帰るよ。だから僕が留守の間も寝具が汚れないようにしていて欲しい。そしてカルノの寝具も汚れませんように。」
こうして、キナシは伊予に流された。キナシが伊予に発つ前、家臣のオオマエがこっそり手紙を渡してくれた。船の中でそれを開くとカルノの歌が書いてあった。
「夏草の茂るあの浜は牡蠣の貝殻が多いそうです。足を踏み入れて怪我をしないように、夜明けを待って返って来てください。」
カルノも、キナシが島を抜けて帰ってくることを願っていた。そしてキナシも隙あらば必ず逃げてカルノの元に戻るつもりだった。
しかし、罪人のキナシがそう簡単に島を抜けられるわけもない。キナシは散々帰る方法を探したが、結局、船を手に入れることすらできなかった。
そうこうしているうちに何ヶ月も経過してしまい、妹のカルノはいてもたってもいられなくなってしまう。
「あなたがいなくなってからあまりにも長い時間が経ち過ぎました。こんな生活もう耐えられない。山を越えて海を越えて会いに行きます!!今すぐにっっ!!!」
そう歌を残すと船に乗ってキナシの元に旅立った。もちろんそんなことは許されることではない。でももうそんな事、どうだってよかった。キナシと結ばれない世界なんてあるだけ無駄なんだ。
一方その頃、キナシもカルノを想って歌を歌っていた。
「2人で過ごした隠れ家から見えた大きな峰と小さな峰みたいに、当たり前に寄り添いたいだけなのに ・ ・ ・
部屋の隅の飾り矢を普段は手に取ることは無いけれど、いざとなれば手に取るだろう。その日になれば必ず君のことを手に取り抱きしめに行く。だって君は誰よりも大切な僕の妻なんだから。」
なかなか、大和に戻れなかったキナシも、毎日カルノの事を想っていた。
カルノは伊予に着くと、牡蠣の貝殻の浅瀬を越えて、浜辺を越えてキナシが
「キナシっっっ!!!」
「 ・ ・ ・ っっ!? ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ カルノ ・ ・ ・ !!!」
カルノはキナシに飛びつき、キナシも強く強く抱きしめた。2人は今、同じ想いだった。キナシは彼女を抱きしめたまま歌を詠う。
「ねぇ、カルノ、川辺で鏡に照らされた水晶玉がキラキラ輝いていたのを覚えてる?あの神の宿った宝玉みたいに君のことが愛しくて愛しくてしょうがないんだ。 ・ ・ ・ 君がいる故郷なら帰りたいし、懐かしくも想う。でも君がここにいる今、そんな必要はどこにも無いっ!!」
この歌を残し、2人は心中をした。
2人の父親である