天皇記『崇神天皇』
疫病の流行
気が付くと、世は10代
10代目にもなれば、天皇もさぞかし安定した生活を送っていることだろう。と、思いきや。
というのも、国中が原因不明の疫病に犯され、町には誰ともわからない死体で
このままでは、日本から生者がいなくなるのではないかと危機を感じた
しかし、いくら寝ても神様は現れず、
「あぁ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ もう嫌だ。天皇辞めたい。」
こうして、10代目にして日本の天皇制はピンチを迎える。
「つーか、神床って何なんだよ。拷問部屋か??女連れ込んじゃいけないなんて、酷すぎるだろ。日本の神には慈悲が無いのかっ!?もぉ、俺、何日間一人で寝てると思ってるわけ??」
「だいたい疫病なんて、絶対、俺のせいじゃないし!何でみんな天皇ならなんでも出来ると思ってるわけ??俺だって出来ることと出来ないことがあるんだよ!!つーか、俺、神様なんか見たことないしっ!!アマテラスと血ぃ繋がってるとか、本当なのかよっ??」
「繋がっておるぞ。」
「うわっ!?何っ!?誰っっ!」
てっきり一人きりだと思っていた
「うむ、ワシはオオモノヌシだ。」
声の方に振り向くと、神棚の下で初老ののオジサンがあぐらをかいていた。
えっ!?いつの間にっ!?ていうか ・ ・ ・
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ オオモノヌシって、神様の?」
「いかにも。」
「うわ、すげぇ ・ ・ ・ 本当に神、出てきた ・ ・ ・ でも、オオモノヌシって、ホトに刺さった変態だよな?? ・ ・ ・ イケメンって聞いてたのに ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「うぅむ ・ ・ ・ ・ ・ 容姿に関しては幾つかの姿を持っておるのだ。ワシは美男で名高いオオクニヌシの分身でもあるからな。まぁ、分身と言えど、あんな病的な女好きはないが。」
「へぇ~ ・ ・ ・ 神スゲェ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。」
そんなことは兎も角。と、オオモノヌシは早速、本題に入った。
「お主、疫病に悩んでおるな?」
「あっ、そうなんだ!!よかった。もう事情、全部知ってますみたいなキャラなんだな。今、謎の伝染病でうじゃうじゃ死人が出ててさ ・ ・ ・ 映画化できるんじゃないかってほど、感染列島と化してるんだよ。あんた、神だろ?何か解決法とか知らないか??」
「うむ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 実は、あれ、ワシのせいなのだ。」
「はぁ??どーいうことっ!?」
オオモノヌシは、都合が悪そうに顎を掻くと、事態の説明をした。
彼は以前、オオクニヌシによって奈良の三輪山に祀られたのだが、もうだいぶ前の話しで、社も朽ち果ててしまい、力がうまく調節できなくなってしまったそうなのだ。どうやらそれが、民に
大阪の八尾市に自分の子孫の「オオタタネコ」という名前の人物が住んでいるので、彼を神主としてしっかり祀り直して欲しいとのことだった。
「もちろん!よかった。明日すぐにオオタタネコさんのところに遣いを送るよ!!」
疫病鎮火の糸口が見え、
「うむ。」と、オオモノヌシが満足げに頷いたかと思うと、次の瞬間には彼は消えており、いつの間にか朝になっていた。
早速、
イクタマヨリビメ
オオタタネコのひぃひぃひぃひぃひぃおばあちゃん、イクタマヨリビメは、とても綺麗な人だったそうだ。しかしその美しさから両親は、過度の心配性になっていた。
夜這いがナチュラルに行われていた時代に、何処の誰かも分からないような男に娘が寝取られないよう、彼女の部屋には厳重な鍵がかけられていてのだ。
年頃になり、恋に憧れを抱いていたイクタマだったが、これでは無理かと
そんなある日。イクタマがそろそろ寝ようと寝室に入ると、ガッチリと鍵がかけられているはずの部屋の中にイケメンが待ち構えていた。身なりも綺麗だしそこらへんのチンピラでは無さそうだ。
『こっ ・ ・ ・ これが世にいう夜這っっ ・ ・ ・ ・ ・ ・ !!!!』
イクタマはテンションが上がった。そしてそのまま見ず知らずの男性に身を委ねてしまう。
それからというもの、彼は毎晩のように彼女の部屋にやって来た。鍵は相変わらずガッチリとかかっているのに、いつも部屋に入って来れることが不思議でしょうがなかった。しかし、彼と一緒にいられることは何よりも幸せになっていったイクタマにとって、そんなことは、どうでも良くなった。
そうこうしているうちに、彼女は身ごもってしまう。最初は何とか隠していたが、数ヶ月もすると、さすがに隠しきれず両親にもバレてしまった。
「一体どういうことなんだっ!?ちゃんと説明するんだ!!」
箱入りで育てたはずの娘の裏切りとも言える行為に父親は激怒した。
「いや ・ ・ ・ ・ ・ ・ えっと ・ ・ ・ 実は名前も知らない人で ・ ・ ・ 」
「なんだとっ!?お前をそんな娘に育てた覚えはないっ!!」
『うわぁ ・ ・ ・ ドラマでしか聞いたことないセリフっ!!』
カゴの中の鳥のように育ったイクタマは、不謹慎ながらも、この展開にテンションが上がってしまう。
「聞いているのかイクタマっ!!」
「はいっ!!ごめんなさいっ!!」
そんな2人を見兼ねた母親が横から口を出した。
「でもお父さん、あれだけ厳重に鍵を掛けている部屋に入れるなんて ・ ・ ・ おかしいと思いませんか?」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ どういう意味だ?」
「誰か ・ ・ ・ 特別な方かもしれないっていう意味です。」
「特別って ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「 ・ ・ ・ ねぇ、イクタマ、あなた本当に自分で鍵を開けたわけじゃないんでしょう?」
「もちろん!私、鍵がどこにあるかも知らないもの。」
「わかったわ ・ ・ ・ それなら、次に彼が来たら着物の裾に糸巻きの糸をこっそり刺しなさい。きっと彼のところまで糸が導いてくれます。 ・ ・ ・ あなただって、自分が誰の子を産むのか知りたいでしょう?」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ うぅん ・ ・ ・ 」
その夜も、いつものように彼は部屋にやって来た。イクタマは、彼の正体を明かすことを躊躇しながらも、母親に言われた通り、彼の着物の裾に針で糸を通した。
すると、翌朝不思議な現象が起きていた。糸は扉からではなく、鍵穴を通って外に出ていたのだ。早速、両親と共にその糸を辿ると、糸はオオモノヌシが祀られる山まで繫がっていた。オオモノヌシは蛇神とも言われている。それであの小さな鍵穴も抜けることができたのだろう。
この時、糸巻きの糸が三輪しか残らなかったので、その山は「三輪山」と呼ばれるようになった。
両親は娘が神の子を身籠ったと喜んだ。
しかしその日以来、彼がイクタマの部屋に来てくれることは無くなってしまったそうだ。
そして話しは現在に戻る。
ワガママ娘 降臨
さてさて。疫病が収まり平和が戻ったある日、
ペチン。
誰かに頬を叩かれた。
・ ・ ・ いや、叩かれただけではない。誰かが自分の上に乗っかっている?いや、でも人にしては軽すぎるし、もしかして、コレ、金縛り??さっきまで何とも無かったのに ・ ・ どうしよう ・ ・ ・ 目ぇ開けるのスゲー怖い。
ペチン。
と今度は反対の頬を叩かれた。
・ ・ ・ ペチン。 ・ ・ ・ ペチン。 ・ ・ ・ ペチペチペチペチペチペチ ・ ・ ・ ・ ・ ・
べチンっっっ!!!!!!
「っ痛ッテェッッ!!!!!クソ!何だよっ!!誰なんだよっ??俺、天皇なんだけどっ!!偉い人なんだけどっっ!!貞子か誰だか知らねぇけど、もっと俺のこと丁重に扱えよっっ!!!」
状況に耐えられず
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ まったく。やっとタヌキ寝入りからお目覚め??」
腕を組んで自分を見下してくる。声も少し
「え ・ ・ ・ 君、誰??ココ、関係者以外立ち入り禁止なんだけど。つーか、君が座ってるところ、天皇のみぞおちなんだけど。」
「私は関係者なのっ!!あんた、私が誰かわからないわけ??」
「 ・ ・ ・ いや、初対面じゃないか?だって、俺、可愛い子だったら覚えてられるもん。」
ペチン。 ・ ・ ・ イタイ。あれ?初対面じゃ無いのか?
「でも、心当たり無いんだけどな ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
ペチン。 ・ ・ ・ え、これ、答えられるまで続けなきゃダメ?
「んー。思い出せないな。 ・ ・ ・ あっ!もしかして君!!!」
「っ!!わかってくれたのっ??」
「デリバリーの娘だろっ!!」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ はぁ?」
「なんだ、そういうことかぁ ・ ・ ・ 。ごめん、俺、チラシ見て無いんだよ。写真の子、送ってくるなんて超良心的なんだな。」
「えっ ・ ・ 何? ・ ・ ・ 何の話し???」
「 ・ ・ ・ そうか。部下が気ぃ効かせてくれたんだな。あいつら ・ ・ ・ 俺が最近疲れてるの知ってて ・ ・ ・ ・ ・ ・ ったく。神床に女連れ込めないの知ってるくせに馬鹿だなぁ。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 給料上げてやろ。よし。そうと分かれば早速 ・ ・ ・ ・ ・ 」
「キャッ!!何すんのよっ!!!」
ベチンッッッ!!!!
「イタイっっ!!!」
ベチンッッッベチンッッッベチンッッッベチンッッッ ・ ・ ・
「痛いっ!!痛い痛い痛いっ!!ねぇ!!!ちょっ!痛いってば!!チェンジ!!!ちょっと!!誰かっ!!この子、チェンジ!!!!」
「っっばか ・ ・ ・ ・ ・ ・ 崇神の馬鹿あぁぁ!!!」
気付くと彼女は目いっぱいに、涙を浮かべていた。
「えっ?あ ・ ・ ・ ごめん ・ ・ ・ 。俺ら昔、会ったことあったのか?全然覚えて無くて ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「ぐすっ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ばか。」
やっぱ可愛い。
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 君、名前は?」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ あまてらす。」
「アマテラスちゃんか。確かに聞いたことあるな。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ あま ・ ・ ・ ・ ・ ・ てら ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ っ
「何よ ・ ・ ・ やっとわかったの?」
「何でこんなところに!?」
「神床に神が出て何が悪いのよ。」
「いや、そーいう意味じゃなくて ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「
彼女は今までに無くドヤ顔だ。デリ嬢では無いことに気付いた
「そ ・ ・ ・ ・ ・ ・ そうか。そりゃ、悪ふざけしてすまなかった。自分で役に立てるなら何でも言ってくれ。」
「こほん。 ・ ・ ・ では崇神、これは重大な使命なんだから、心して聞くのよ!」
「あぁ。」
「あのね、私、お引越しがしたいの。」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ん?」
「今までは八咫鏡として、あなた達と一緒に住んでたけど、私、一人暮らしがしたいの。だからどっかに新しいお家建ててちょうだい。」
「え ・ ・ ・ ・ ・ ・ それが重要な任務?」
「そうよ。これが重要な任務。折角だから綺麗なところが良いわね ・ ・ ・ 神武が大和に来て以来、私、ココから出たことないから色んなところが見て見たいわ。いいでしょ?」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ベチンッッッ!! ・ ・ ・ イタイ。でも、なんか、悪くない。
彼女の話しによると、先日、
このまま、放置をすると何が起こるかわからないというのだ。
しかし、偉そうに命令してきた割に、
「なるほどなぁ ・ ・ ・ でも ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 一人暮らし、淋しくない?」
「別に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 淋しくないわよ。」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 本当に?」
「本当だもん。」
『うぅん ・ ・ ・ この子、すげー分かりやすいな。』
すると、さっきとはうって変わってパァーっと笑顔に変わる。
「別に寂しくないけどねっ!そーいうことなら、そーすると良いわっっ!!!」
あからさまにご機嫌な様子だ。こんなんがずっと崇めていたご先祖様だったとはね。
実はこの後、トヨスキイリビメは
こうして
崇神天皇の大和平定
疫病の一件が落ち着くと、
しかし、そう思って彼を送り出したのも束の間、兵たちは3日もせずに帰って来た。もちろん皆は無傷。しかも、何事か聞いても「ここでは伝えられない」と言って答えない。
「っちょ、オイオイ ・ ・ ・ どうしたんだよオホビコ。黙ってちゃわかんねーよ。」
オホビコは、入念に周囲を警戒し、他に人がいないことを確認すると、ようやく口を開いた。
「申し訳ありません ・ ・ ・ この程度の事で戻るか迷ったのですが、どうしても胸騒ぎが収まらず。」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ だから何があったんだよ。」
オホビコたちが、京都の辺りを進んでいると少女の歌声が聞こえたそうだ。最初は綺麗な歌声だと聞き惚れていたのだが、一行は、どうも歌詞がおかしいことに気付いた。
「『可哀想に。彼の命を狙ってる人が皇居の周りをウロウロしているのを知らないのね。』と。」
「命を?誰の??」
「 ・ ・ ・ 私も不思議に思って彼女にどんな意味かと聞きました。しかし、彼女は、自分は鼻歌を歌っていただけで、意味など無いと。」
「にしちゃ、意味がしっかりし過ぎているな。」
「はい。彼女は巫女のような身成りをしておりました。何かのお告げでは無いかと胸騒ぎがして、戻った次第です。」
「 ・ ・ ・ なるほどな。わかった。まぁ、用心に越したことはないだろう。早速、聞き込みをさせよう。」
こうして
その後は着々と東北地方を平定し、途中で数々の地名が生まれた。例えば、戦場で袴に糞がかかったため、屎袴(くそばかま)と呼ばれた土地が、そのうち楠葉(くすば/大阪)になったり。2人の将軍が会ったので会津(あいづ/福島)になったりなどだ。
やがて
こうして争いが激減し、平和な世が訪れると、民はみるみるうちに豊かになっていった。
しかし、いつの時代も人ってのは平和になると欲が増えるものだ。
「この川はいつも氾濫するんだ。国で整備してくれ。」
「うちの前の道路、水溜りができるんですけど。なんとかならなくて?」
「ギャンブルで全部スっちまったんだ。生活保護受給させろや。」
などなど、朝廷には日々様々な要望が寄せられてきた。しかし、いくら国とは言え、全ての要望に応えることはできない。
そこで
そう。つまりは税金だ。
この仕組みを作ったことが、後の日本文化の発展に大きく貢献することになる。
そして、