日本神話『クシナダヒメ』
農業の起源
まずは、彼の所有する品々を
次に、ヒゲを剃り、爪をすべて剥がした。また生えてくるものを無くすことは、心を入れ替えるという意味があった。
そして最後に、
・・・こうして文無しになった
『あぁ、やっちまった ・ ・ ・ 。』
イタズラ好きのガキ大将のような性格だった
『つーか、腹減った。』
そういえば、
オオゲツヒメは食物の神だ。彼女なら何か食べ物を譲ってくれるだろうと考えたのだ。
そして神殿に着くと、彼女は快く迎えてくれた。
「あんらぁ~♡スサノオ様でらっしゃいますね?わらわの神殿に向かっていると風の噂で聞いたものですから ・ ・ ・ お待ちしておりましたのぉ♡♡♡」
・ ・ ・ ・ ・ ・ なんか、気色悪いけど ・ ・ ・ ・ ・ でも、いい人そうだ。
「まだまだたくさん出ますからぁ〜♡いま、おかわりをお持ちしますわねん♡♡♡」
食いっぷりの良い
『はぁ ・ ・ ・ ぶっちゃけ最初は、なんか、気色悪ぃ女だなぁ。なんて思っちまったけど ・ ・ ・ ・ ・ めっちゃイイヤツじゃねぇかっっ!!!!』
自分のせいとは言え、
「つーか、食ってばっかってのも、なんか悪りぃな ・ ・ ・ ・ 礼でもしに行くか。」
そして廊下を進んでいると、どこからか、嗚咽のような声が聞こえて来た。
「 ・ ・ ・ ・ ・ ん??誰か泣いてんのか???」
『うっっっうっっっっ ・ ・ ・ ・ ・ うおぇぇぇぇぇぇぇぇ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 』
ビチャビチャビチャ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「っっっ!?いや、誰か吐いてんのかっっっ!?!?」
廊下の先に、のれんが見える。
きっとあそこが台所だ。
『うおぇぇぇぇぇぇ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 』
ビチャビチャビチャ ・ ・ ・ ・ ・
のれんの奥で、誰かが吐いている姿が見えた。
しかし、不思議なことに、ゲロリンチョではなく、魚やら、野菜やらがボトボトと落ちてゆく。
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ??」
誰かが吐く音が止んだ。
するとそこには、まな板を敷き、ケツを向け ・ ・ ・ ・ ・
ウンチング体勢で踏ん張っているオオゲツヒメの姿があった。
「ふぬぬぬぬ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 」
ぷりぷりぷりぷりぷりぷり♡
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ う”っ。」
「はっ!!」
オオゲツヒメが振り返る。
「あら、やだぁ〜〜ん♡スサノオさまったら、えっちぃぃ〜〜♡♡♡
いまから、こちらも調理してお持ちしますからねん♡お席でお待ちくださいなっっ♡♡♡」
オオゲツヒメが
彼の中で何かが『ブチン』とキレた。
「っって、ソレ、食っちまったじゃねぇかああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
ザクッ!!!
「ギャァァァ!!!!!」
「ヒドイっっ!!!酷すぎるっっ!!!俺を侮辱するにも程があるっっっ!!あぁ ・ ・ ・ ・ 食っちまったじゃんか ・ ・ ・ ・ ・ あれっ ・ ・ ・ アレ ・ ・ ・ おれ ・ ・ ・ 食っちまったじゃねーかよ ・ ・ ・ ・ ・ 」
しかし、オオゲツヒメにとってこれは最高の"おもてなし"のつもりだった。
この喜劇とも悲劇とも何とも言えない事件を
結果的にはこの事件のお陰で、人々の間に農業が広まることとなった。
クシナダヒメとの出会い
そんなことはつゆ知らず。
『あ"ぁ ・ ・ ・ ・ ・ あの事件以来、ここ何日も人に会ってねぇ。お陰様であの映像がエンドレスリピートだ ・ ・ ・ いいかげん頭がおかしくなりそう ・ ・ ・ ・ ・ つぅか腹減った。そろそろ餓死するんじゃねぇか?俺。』
夕暮れになり歩き疲れた
『ネェちゃん ・ ・ みんな ・ ・ ・ 迷惑かけちまったな ・ ・ ・ ・ ・ あぁ ・ ・ ・ ・ ・ あぁ ・ ・ ・ ・ ・ 』
「んがあぁーーっ!!考えても無駄だぁー!!! ・ ・ ・ ・ ・ なんか人恋しいなぁ ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ぐすっ ・ ・ ・ いや、泣かねぇけど。」
気がつけばもう、日はとっくに沈んでいた。『もう、民家を見つけても、寝ちまってるよなぁ。』なんて考えながら歩いていると、誰かがすすり泣く声が聞こえて来た。
「なんだ?あっちからか? ・ ・ ・ ・ ・ おぉっ!明かりが見える!家だっ!!!」
そこにはこじんまりとしていながらも、立派な造りの家があった。周りにもいくつかの小さな家が見える。ってことは、きっと村長か誰かの家だろう。
するとそこには若い娘を囲んで、老夫婦がすすり泣いていた。
「なぁ、何かあったのか?」
「へっ!?あ、あなた様は??」
老父は突然の客人に驚き、後ずさった。
「あぁ、悪りぃ。泣き声が聞こえたもんだから、気になって覗いちまった。
えっと ・ ・ ・ ・ ・ 俺はスサノオだ。」
「スサノオって ・ ・ ・ ・ 須佐之男命?あの天照大御神の弟の???」
「あぁ。」
「それは失礼しました!!私は
話によると、彼はどうやらここらの土地神らしい。ちなみに、『
「そして、こちらが娘のクシナダヒメでございます。」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ クシナダヒメ ・ ・ ・ ・ ・ 」
「始めまして。」
「お ・ ・ ・ おぅ ・ ・ ・ ・ えっと。あぁ、それで、なんでお前ら泣いてたんだっけか?」
父親のアシナヅチは何かに怯えるように、肩をすくめながら語り出した。
「えぇ ・ ・ ・ ・ 私達家族は、8人の娘と幸せに暮らしておりました。親バカですが、皆、美しく心の優しい娘たちで ・ ・ ・ ・ しかしある日、古史郷に八岐大蛇が住み出すとその生活は崩れ去りました。
八岐大蛇は村人全員の命と引き換えに、娘を生贄に捧げるよう要求してきたのです。それからというもの毎年1人づつ娘が奪われ・・・・・」
「ヤマタノオロチ?なんじゃそりゃ。」
「八岐大蛇は、谷8つ分もの大きさがある巨大な蛇の怪物です。目は赤く鬼灯のようにギラギラと光り、ひとつの体に頭が8つあります。尾も8つついている。あまりの大きさで、体には苔と木が繁っていて、腹には誰のものともわからない血がべっとりと付いて赤くただれているのです。
私たちはそんな怪物と戦える術など持っておらず ・ ・ ・ ・ 自分の娘を差し出すしかありませんでした ・ ・ ・ ・ 末の子のクシナダヒメは最後の1人として大事に育てましたが、この子ももう年頃です。明日は、この子が連れて行かれるでしょう ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ くぅ ・ ・ ・ ・ 」
「父さん ・ ・ ・ お客様の前よ。泣かないで ・ ・ ・ ・ 」
アシナヅチが涙を流すと、クシナダヒメは父の肩を抱いた。
・・・パチンッ!!
その場に合わない軽快な音が
「そうか、話はわかったぞっ!!つまり、そのヤマタノオロチっつーの倒せば、俺がクシナダヒメと結婚できるっていうことだな!!!」
クシナダヒメは冷たい眼差しで
「は? ・ ・ ・ ・ 今の流れのどこでそうなった?」
「だって、俺、クシナダヒメが好きなんだ。ヤマタノオロチは俺が倒してやるから、結婚してくれっっ!!!」
「いや、まだ出会って数分なんすけど。」
すると、ローテンションの娘の横から、アシナヅチは声を上げた。
「オロチを退治してくださるのですかっ??願ってもないお言葉です!!!どうぞ、喜んで娘を差し上げましょう!!」
よっしゃ!親の承諾が得られた!!これで断る理由も無いだろう!!
「決まりだなっ!!っつーわけだ。いいだろ??クシナダヒメ!!!!」
「 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 嫌だ。」
「へ??」
即答で断られるなんて思ってもいなかった
「バッカじゃないの???オロチがそんな簡単に倒せるわけ無いじゃない!! ・ ・ ・ だいたい、姉様達の時だってね、黙って見ていたわけじゃないんだから!!力自慢の男たちが何人も何人も殺されてるの!!!中には許婚だっていたわ。私一人の命で事が収まるなら、それでいいじゃない。」
なんだ、そーいうことか!俺のこと心配してくれてたんだなっ!なるほど、これが世にいうツンデレってやつか!!
「お前、めっちゃいい奴じゃん!!」
「はぁっ!?なんでそうなんのよっ??別にあんたのためじゃないしっ!!この地域に住む皆々さまのためだしっっ!!あんた、自意識過剰なんじゃないのっ??」
蔑むような目で畳み掛けられる。ま ・ ・ ・ まさか、これはツンデレじゃないのか??ただのツンなのか??胸がキウゥゥっと痛む。
「へ?自意識過剰??そうか?そうかな?? ・ ・ ・ まさか ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ あれか?俺、初対面で既に嫌われちまったのか??」
クシナダヒメは返事をしない。無言のまま怖い顔でこっちを見ている。どうしよう。心折れそう。
「そ ・ ・ そうか ・ ・ ・ ・ まぁ、お前がそんなに無理っつーなら ・ ・ ・ ・ 助けるだけっつーのもアリだけど ・ ・ ・ つーか無理なのかっ!?生理的に無理ってことなのか??ヤバい。ちょっと泣きそう。いや、泣かねぇけど。」
そう言いながらも完全に涙目の
「あ、いや、べっ ・ ・ ・ ・ べつに、無理じゃないわよ。 ・ ・ ・ ・ ていうか、個人的にはナヨイ奴よりあんたくらい、ガッシリしてる方が好きっていうか、タイプではあるけど ・ ・ ・ ・ って ・ ・ ・ ・ ハッッ!!」
まずい、口が滑った。今度はへらへらしながらこっちを向いている。
なんっつー単純な奴なんだ ・ ・ ・ ・
「へへへっ!!そうかそうか。そんなら決まりだな!大丈夫。お前のことは、絶対に俺が守ってやるからっ!!」
「ハァ ・ ・ ・ ・ 」
クシナダヒメはため息をついてから、しばらく考えた。姉達がオロチに食われた時の映像が、まだ鮮明に脳裏に焼き付いている。出会って数分の人を巻き込みたくない。
『 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・でも ・ ・ ・ ・ この人なら ・ ・ ・ ・ ・ ・ 』という気持ちが勝った。
「わかったわよ ・ ・ ・ ・ 本当に、倒してくれるんでしょうね?」
「あぁ!もちろんだ!!」
「絶対に死なないでよね。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 死んだらブッ殺す。」
「ハハッ!大丈夫。俺、絶対勝つから。」
クシナダヒメは、
「うん、わかった。 ・ ・ ・ ・ あなたのこと信じる。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ありがと。」
そういうと、クシナダヒメはやっと笑ってくれた。
『あ、よかった。デレあった。』