神生み神話 原文

このページでわかること

国生みの次は、神々が次々と誕生!

日本の島々を生み終えたイザナギとイザナミ。
二柱は続いて、海、川、風、木、山、野など、この世界を形づくるさまざまな神々を生んでいく。

そしてここから、神様の名前がとにかく多い。

怒涛どとうの神生み編、スタート!!

天武

よーし。それじゃあ、次もがんばってこー!!

天武

よろしくね、阿礼ちゃん

阿礼

てっ……天武? ボク……もう無理かもしれない…………あと、「ちゃん」づけで呼ばないで欲しい

天武

は? さっき休憩入れてあげたでしょ

阿礼

でも……国生みだけでも大変だったのに、このまま神生みまで語るんだろ?

阿礼

ここらで庶民しょみんでは手に入らない贅沢ぜいたくなお菓子でも食べないと、脳が回復しないというか……

天武

あー。確かに、ここまで、名前が延々えんえんと続いてきたからなぁ……

天武

……ああ、そうだ。最後まで頑張れたら、ご褒美に皇室門外不出こうしつもんがいふしゅつの日本酒レシピをあげようか?

阿礼

なっ!! 酒だとっ!?

阿礼

な……なんだか、神生みもいけそうな気がしてきたぞ……!!

天武

そう? なら、よかった

天武

頼りにしているよ、阿礼

阿礼

おう! 任せろっ!!

不比等

……レシピを得たところで、庶民しょみんには酒に回す米がねぇって教えてやった方が親切だろうか?

古事記の原文

原文安万侶 既生国竟、更生神。故、生神名、大事忍男神。次生石土毘古神。(訓石云伊波、亦毘古二字以音。下效此也。)次生石巣比売神、次生大戸日別神、次生天之吹(上)男神、次生大屋毘古神、次生風木津別之忍男神。(訓風云加邪、訓木以音。)次生海神、名大綿津見神、次生水戸神、名速秋津日子神、次妹速秋津比売神。(自大事忍男神至秋津比売神、并十神。) 此速秋津日子、速秋津比売二神、因河海持別而、生神名、沫那芸神。(那芸二字以音。下效此。)次沫那美神。(那美二字以音。下效此。)次頬那芸神、次頬那美神、次天之水分神。(訓分云久麻理。下效此。)次国之水分神、次天之久比奢母智神。(自久以下五字以音。下效此。)次国之久比奢母智神。(自沫那芸神至国之久比奢母智神、并八神。) 次生風神、名志那都比古神。(此神名以音。)次生木神、名久久能智神。(此神名以音。)次生山神、名大山(上)津見神、次生野神、名鹿屋野比売神。亦名謂野椎神。(自志那都比古神至野椎神、并四神。) 此大山津見神、野椎神二神、因山野持別而、生神名、天之狭土神。(訓土云豆知。下效此。)次国之狭土神、次天之狭霧神、次国之狭霧神、次天之闇戸神、次国之闇戸神、次大戸惑子神。(訓惑云麻刀比。下效此。)次大戸惑女神。(自天之狭土神至大戸惑女神、并八神也。) 次生神名、鳥之石楠船神、亦名謂天鳥船。次生大宜都比売神。(訓神名以音。)

読み下し文&現代語訳

読み下し文|阿礼

すでに国を生み竟おえて、さらに神を生みたまいき
かれ、生みたまえる神の名は、大事忍男おおことおしおの神

現代語訳|不比等

国をすべて生み終えると、二柱はさらに神々を生んだ
最初に生まれた神の名は、オオコトオシオという

読み下し文|阿礼

次に石土毘古いわつちびこの神を生み
次に石巣比売いわすひめの神を生み
次に大戸日別おおとひわけの神を生み
次に天之吹男あめのふきおの神を生み
次に大屋毘古おおやびこの神を生み
次に風木津別之忍男かざもつわけのおしおの神を生み
次に海の神、名は大綿津見おおわたつみの神を生み
次に水戸みなとの神、名は速秋津日子はやあきづひこの神
次に妹いも速秋津比売はやあきづひめの神を生みき

現代語訳|不比等

次にイワツチビコ
次にイワスヒメ
次にオオトヒワケ
次にアメノフキオ
次にオオヤビコ
次にカザモツワケノオシオを生んだ
続いて海の神、オオワタツミを生み
水戸の神であるハヤアキツヒコと
その妹のハヤアキツヒメを生んだ

読み下し文|阿礼

(大事忍男おおことおしおの神より秋津比売あきづひめの神まで、并あわせて十はしらの神ぞ)

現代語訳|不比等

(オオコトオシオからハヤアキツヒメまで、合わせて十柱の神である)

読み下し文|阿礼

この速秋津日子はやあきづひこ・速秋津比売はやあきづひめの二ふたはしらの神、河かわ・海によりて持ち別わきて
生みたまえる神の名は、沫那芸あわなぎの神
次に沫那美あわなみの神
次に頬那芸つらなぎの神
次に頬那美つらなみの神
次に天之水分あめのみくまりの神
次に国之水分くにのみくまりの神
次に天之久比奢母智あめのくひざもちの神
次に国之久比奢母智くにのくひざもちの神

現代語訳|不比等

このハヤアキツヒコとハヤアキツヒメの二柱は、河と海をそれぞれ分担して
アワナギ
アワナミ
ツラナギ
ツラナミ
アメノミクマリ
クニノミクマリ
アメノクヒザモチ
クニノクヒザモチを生んだ

読み下し文|阿礼

(沫那芸あわなぎの神より国之久比奢母智くにのくひざもちの神まで、并あわせて八はしらの神ぞ)

現代語訳|不比等

(アワナギからクニノクヒザモチまで、合わせて八柱の神である)

読み下し文|阿礼

次に風の神、名は志那都比古しなつひこの神を生み
次に木の神、名は久久能智くくのちの神を生み
次に山の神、名は大山津見おおやまつみの神を生み
次に野の神、名は鹿屋野比売かやのひめの神を生みたまいき
亦またの名は野椎のづちの神という

現代語訳|不比等

次に風の神、シナツヒコを生み
木の神、ククノチを生み
山の神、オオヤマツミを生み
野の神、カヤノヒメを生んだ
別名を、ノヅチという

読み下し文|阿礼

(志那都比古しなつひこの神より野椎のづちの神まで、并あわせて四はしらの神ぞ)

現代語訳|不比等

(シナツヒコからノヅチまで、合わせて四柱の神である)

読み下し文|阿礼

この大山津見おおやまつみの神・野椎のづちの神の二ふたはしらの神、山・野によりて持ち別わきて
生みたまえる神の名は、天之狭土あめのさづちの神
次に国之狭土くにのさづちの神
次に天之狭霧あめのさぎりの神
次に国之狭霧くにのさぎりの神
次に天之闇戸あめのくらどの神
次に国之闇戸くにのくらどの神
次に大戸惑子おおとまといこの神
次に大戸惑女おおとまといめの神

現代語訳|不比等

このオオヤマツミとノヅチの二柱は、山と野をそれぞれ分担して
アメノサヅチ
クニノサヅチ
アメノサギリ
クニノサギリ
アメノクラド
クニノクラド
オオトマトヒコ
オオトマトヒメを生んだ

読み下し文|阿礼

(天之狭土あめのさづちの神より大戸惑女おおとまといめの神まで、并あわせて八はしらの神ぞ)

現代語訳|不比等

(アメノサヅチからオオトマトヒメまで、合わせて八柱の神である)

読み下し文|阿礼

次に生みたまえる神の名は、鳥之石楠船とりのいわくすぶねの神、亦またの名は天の鳥船とりふねという
次に大宜都比売おおげつひめの神を生みたまいき

現代語訳|不比等

次にトリノイワクスブネを生んだ。この神の別名をアメノトリフネという
次にオオゲツヒメを生んだ

天武先生の用語解説!

阿礼

ゼェ……ゼェ…………もうむり……

天武

お疲れ様!

天武

ご褒美のレシピは、高市に用意させとくよ

阿礼

わーい!

不比等

……高市様がコイツの長男で、ただでさえ忙しいのに、さらにコイツの他の仕事が回ってくるせいで、そんな暇は微塵みじんもないって教えてやった方が親切だろうか?

安万侶

うぅ。神様も、すごい数ですね……

天武

まー。この辺は、無理に覚えようとしなくていい

天武

「なんとなく世界のいろんなものが神様になってるなー」くらいで読んでくれ

安万侶

神様の名前には、何か意味はあるんですか?

天武

んー。あるけど、この辺も最初と同じで「正解」は書かれていないから

天武

神様の名前や、前後に生まれた神々との関係から、意味を読み取っていくしかない

安万侶

ふーん

天武

ざっくり表にすると、こんな感じ

神産み相関図
安万侶

あーーたすかるーーー

天武

最初のオオコトオシオは、「大きな事」「大事」を表す名前だ

天武

ここまでの「国生み」という大仕事を成なし遂とげた……

天武

もしくは、ここから始まる「神生み」という大仕事を表している、って説がある

安万侶

へー。なんだか台詞せりふっぽいですね。アヤカシコネの「ああなんて尊かしこいの」みたい

天武

そうだな

天武

「尊い!」とか「大事だ!」みたいな言葉が、そのまま神様の名前になったと考えると面白いよな

安万侶

ふふっ。確かに

安万侶

そしたら、ここからは神様の性質せいしつが変わるんですか?

天武

そう。前回までは島を生んでいたから「国生み神話」

天武

ここからは神々を次々に生んでいくから「神生み神話」だ

安万侶

ふーん

天武

最初の方に出てくるイワツチビコ、イワスヒメ、オオトヒワケ、アメノフキオ、オオヤビコあたりは、まとめて家屋かおくの成立を表す神々と見る説がある

家宅六神図
天武

岩いわや土、砂すな、戸、屋根やね――人が暮らすための家が少しずつ出来上がっていくイメージ。家宅六神かたくろくしんってやつだな

安万侶

おー。国を作ったから、次は家を作るんだ

天武

そう読むと流れが綺麗だろ?

天武

ただ、この神々を家の神じゃなくて、自然そのものを表す神々と見る説もある

天武

ちなみに「オオヤビコ」は後で地味に再登場する。覚えてたら「あっ!」ってなるぞ

安万侶

ふふっ、覚えてられるかなぁ?

安万侶

カザモツワケノオシオは、どんな神様ですか?

天武

名前に「風」が入っているから、風に関わる神だ

天武

これも家屋かおくの神々の流れで読むなら、「風に屋根やねを吹き飛ばされないよう支える力」を表す神って説がある

安万侶

へー。風の神様より先に、風から家を守る神様が生まれてくるんですね

天武

な。この辺も面白い

天武

台風や竜巻たつまきが来たら、家無しじゃキッツイもんな

安万侶

確かに

安万侶

あ、『オオワタツミ』は、ちゃんと『海の神様』って書いてあるんですね

天武

そうだな。「海神」と書いて「わたつみ」と読むくらいだし、ワタツミはかなり分かりやすい海の神だ

水の神
天武

「オオワタツミ」も神話の後半でまた出てくるよ

安万侶

ふーん。あと、水戸は「港」のことですか?

天武

ここでいう「水戸」は、水の出入口――つまり河口かこうのことだ

天武

海と川が出会う境界きょうかいだな

安万侶

ハヤアキヅヒコとハヤアキヅヒメは?

天武

その「水戸」の神様

天武

河口かこうや海峡かいきょうみたいに、水が出入りする場所を表す神だ

安万侶

あれ? 原文ではハヤアキツヒメを「妹」って呼んでましたよね。この「妹」は「いもうと」の「妹」?

天武

ああ、イザナキとイザナミの子だからな

天武

ただ、前にも説明した通り、昔の「妹」は、妻や恋人など、親しい女性を指すこともあるから、恋人なのか、夫婦なのか、パートナーなのか、実の兄妹としての妹か……

天武

これは、前後の文脈で想像するしかない

安万侶

Oh…

天武

ハヤアキツヒコとハヤアキツヒメは、一緒に八柱の神を生んでいるから、関係の深い二柱として描かれている

天武

ただ、結婚したとは書かれていないから、「パートナー」くらいの表現が無難かな?

安万侶

ニュアンス細かい……

安万侶

「河海に因りて持ち別けて」って?

天武

「川と海を分担ぶんたんして」ってことだ

天武

この二柱が川と海を受け持って、そこからさらに八柱の水の神々が生まれる

安万侶

なるー。ここで水の役割が細かく分かれていくんだ

天武

ああ。最初はざっくり「水」だったものが、河口かこう、水面、波、水を分ける働き、水を汲くむ働き……って、どんどん細かく神様になっていく

安万侶

なんか、世界の解像度かいぞうどが上がっていく感じ

天武

だな。で、続いて生まれる八柱も、全部水に関係してる

水の神の子ども
天武

アワナギ・アワナミは、水面に浮かぶ泡の「凪なぎ」と「波」
ツラナギ・ツラナミは、水面そのものが静まることと、波立つこと
アメノミクマリ・クニノミクマリは、水を分けて配る神

天武

アメノクヒザモチ・クニノクヒザモチは、その水を汲み、分け与える働きに関わる神だ

安万侶

へぇー!

安万侶

凪なぎと波の神様が出てくると、イザナキとイザナミも海に関係してそうって思っちゃいますね?

天武

だな。ま、そこは想像にお任せってことで

安万侶

そういえば、風の神、木の神、山の神とか、この辺はちゃんと「何の神様か」書いてあるんですね

安万侶

オオヤマツミとオオワタツミの名前が似てるのは、山と海の神様だからですか?

天武

そうそう

天武

「ヤマツミ」が山の神。「ワタツミ」が海の神

天武

さらっと出てくるけど、どっちも重要な神様だ。忘れたころにまた出てくるよ

山と大地の神々
安万侶

ふーん。そしたら、オオヤマツミとノヅチの子供たちも山系の神様?

天武

そう。ここも面白くて、ただ「山の神!」で終わらず、山の中で人が経験する風景が、どんどん神様になっていく

山の神の子ども
天武

アメノサヅチ・クニノサヅチは、狭い土の山道
アメノサギリ・クニノサギリは、山にかかる霧きり
アメノクラド・クニノクラドは、暗い谷たにあい
オオトマトヒコ・オオトマトヒメは、そこで道に迷うこと

安万侶

えっ。山で迷子になるところまで神様なんですか?

天武

なる

安万侶

古事記、なんでも神様にする……

天武

日本に八百万やおよろずの神々が住むと言われるのも納得だろ?

安万侶

ふふっ、神様だらけ

安万侶

トリノイワクスブネは?

天武

これは船そのものを神様にした神だ

天武

別名は「アメノトリフネ」

天武

「鳥」は、鳥みたいに空を飛ぶ船か、速く進む船を表したって説もある

天武

アメノトリフネは、あとで国譲くにゆずりのところにちゃんと再登場するから、名前だけ覚えておくといいぞ

安万侶

むん。アメノトリフネアメノトリフネアメノトリフネ……

アメノトリフネ・オオゲツヒメ
安万侶

あとはー。オオゲツヒメって、さっきもいませんでしたっけ?

天武

ああ。粟国あわのくにの名前が「オオゲツヒメ」だったな

安万侶

同じ神様なんですか?

天武

『古事記』には同じ名前で二度出てくるけど、同じ神様なのか、別の神様なのかは、はっきり書かれていないんだ

天武

名前の「ゲ」は食べ物を表す「ケ」だから、こっちのオオゲツヒメはれっきとした食物しょくもつの女神だ

安万侶

あ。粟国あわのくにも「粟あわ」だ

天武

そうそう。粟国あわのくにのオオゲツヒメも、食べ物との結びつきを感じさせる名前になってる

天武

だから同じ名前なのは、まったく無関係とも言い切りづらい。そこが面白いところだな

安万侶

ちなみに粟あわって、あの黄色いつぶつぶのやつ?

天武

そ。現代だとあまり食べないけど、粟あわは縄文時代じょうもんじだいの終わりごろには日本で栽培さいばいされていた、めちゃくちゃ古い穀物こくもつだ

天武

米が広く普及ふきゅうする前から、日本人の食を支えてきた大先輩

天武

古代の人にとっては、「命」みたいなもんってことだな

安万侶

なるー

安万侶

もう、ただでさえ神様いっぱいいるのに、同じ名前の神様がいたり、名前がいくつもあったりして、わけわからない……

天武

んー。そうねぇ

天武

でも安心しろ。ここが神様の名前ラッシュの山場だから……

安万侶

ほんとですか!?

天武

うん……まぁ、一応……

安万侶

……一応?

天武

いや、大丈夫! とりあえず、ここを越えさえすれば、物語が大きく動き始めるから……

天武

とりあえず……大丈夫

安万侶

陛下へいかが目を合わせてくれない……

このページの神々

神生みをする神
家宅などに関わる七神
海と川の三神
速秋津日子・比売に続く八神
風・木・山・野の四神
大山津見・鹿屋野比売に続く八神
神生みの締めくくり
Author & Historical Supervisor:小野寺優
Illust:駒碧 × AI × Canva
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