天皇記『朝鮮出兵』

朝鮮出兵

朝鮮出兵

仲哀が亡くなってしまったため、家臣たちは急いで遺体の安置するための殯宮ひんきゅうを建てて彼を運んだ。そして、国中からおはらいのための供物くもつを集め、全国のありとあらゆる罪を調べ上げて、犯罪者を追い払い、けがれを全て祓った。

武内宿禰

武内宿禰

はぁ ・ ・ ・ 我々はこれからどうすればよいのでしょうか ・ ・ ・ ・ ・ ・

できる限りのお祓いを全て終え、審神者さにわ武内タケシウチがぽそりと呟くと、神功の縦巻きロールがまたフワッと浮く。

神功皇后

神功皇后

西の海の先には金銀に恵まれ、目にも輝く草々の広がる国がある ・ ・ ・ 全てはこの女の腹の中にいる子に治めさせるべきだ。

あの神が、また神功に舞い降りたのだ。武内は、驚きでパッと目を見開く。

武内宿禰

武内宿禰

そんな、神功様がご懐妊を?しかし、女子が産まれてしまったら ・ ・ ・

神功皇后

神功皇后

案ずるな。子は男子だ。

武内宿禰

武内宿禰

・ ・ ・ あなた様は一体 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

神功皇后

神功皇后

我らはソコツツノオ、ナカツツノオ、ウワツツノオの住吉三神。

全ては天照大御神による意思だ。

武内宿禰

武内宿禰

イザナギ様が禊でお生みになった三神でしたか。

神功皇后

神功皇后

真に西の国を求めるのであれば、天つ神、国つ神、山川海の神の全てに供物を捧げ、船に我らの御魂を祀るのだ。

神功皇后

神功皇后

そして大量の器と箸を海に撒き、清めてから出航せよ。さすれば航海に我らの恩恵が与えられるであろう。

武内宿禰

武内宿禰

はい ・ ・ ・ ・ かしこまりました。

武内が深々と頭を下げると、神功はまたパタリと倒れてしまった。

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神功が目覚めると、ソコツツノオ、ナカツツノオ、ウワツツノオ、住吉三神のお告げの通り、神々に供物を捧げ、三神を船にを祀り、武内と共に軍を率いて新羅しらぎに船を向けることにした。

神功皇后

神功皇后

・ ・ ・ ・ ・ ・

大好きな仲哀の死から急な展開が続き、体力的にも精神的にも疲れた神功は塞ぎがちになっていしまい、いつものドヤ顔が見られない。

武内宿禰

武内宿禰

神功様 ・ ・ ・ せっかく待ちに待った御子をご懐妊されたというのに ・ ・ ・ ・

武内は心配そうに彼女を見守っていた。

神功皇后

神功皇后

・ ・ ・ ・ ぐすっ。

しばらく海を進んでいると、海原の大小さまざまな魚が集まってきた。

神功はソワソワしながら船の周りを覗き込む。すると、魚たちの群れはどんどん増え、やがて船を背負って走り出したではないか。

神功皇后

神功皇后

・ ・ ・ ・ !!

さらに、大きな追い風が起こり、船の帆が大きく広がる。まるで高速のジェットスキーにでも乗っているかのように船はぐんぐんと前へ進んだ。

その様子に神功は ”ぱあぁぁ” っと笑顔になると、船の先般に乗り出し、片足を台に乗せ、バサッと扇子を広げる。

神功皇后

神功皇后

よろしくってよっ!!

武内宿禰

武内宿禰

あ。ドヤ顔が戻った。

どうやら魚の群れにテンションが上がったようだ。

神功皇后

神功皇后

神のご意志では仕方がございませんわねっ!

神功皇后

神功皇后

新羅はわらわが治めて差し上げますわっっ!!!

武内宿禰

武内宿禰

神功様 ・ ・ ・

武内は神功の復活を心から喜んだ ・ ・ ・ が、あまりにも元気になり過ぎて

武内宿禰

武内宿禰

仲哀陛下にはお見せできませんね ・ ・ ・

と思った。武内たちは後ろから彼女が海に落ちないように見守りながら、後に従った。

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魚に背負われた船はあっという間に新羅しらぎまで着き、そのままドバシャーっと、海岸に乗り上げる。

そして軍隊が一気に内陸に下り立つと、その様子を見ていた新羅王が城から飛び出してきて待ったをかけた。

新羅王

新羅王

ちょっ!?えっっっ??ちょっと待った!!!なにっ!?コレどーうことっ!?

神功皇后

神功皇后

あら!あなたが新羅王ですわね。ごきげんよう。

新羅王

新羅王

ゴ ・ ・ ・ ゴキゲンヨウ ・ ・ ・ ・ ・ ・

新羅王

新羅王

・ ・ ・ って、アンタ、誰だよ。何の用なわけ??

神功皇后

神功皇后

ふふん!わらわがこの国を治めて差し上げますわ。それが神のご意志ですの。

新羅王

新羅王

・ ・ ・ えっ??

新羅王

新羅王

どうしよう。日本からすげーイタイ奴が来たんだけど。

新羅王が戸惑いながら彼女を凝視する。神功の腹はパンパンに膨れており、今にも赤子が出てくるんじゃないかというような大きさだ。

新羅王

新羅王

つーか、アンタの腹めっちゃデカイけど大丈夫なのか?

神功皇后

神功皇后

ふふっ、出産予定日なんてとっくの昔に過ぎておりますわ。

新羅王

新羅王

それ、やばくね?さっさと国に帰れよ ・ ・ ・ ・ ・ ・

新羅王

新羅王

ていうか、お願いします。帰ってください。

神功皇后

神功皇后

ご安心なさって?腰に石を括り付けて出産を抑えておりますの。

新羅王

新羅王

はぁっ?そんなんで、腹の子は大丈夫なのか??

神功皇后

神功皇后

ご心配無用ですわ。わらわの御子は丈夫ですの!

新羅王

新羅王

はぁ ・ ・ ・

神功皇后

神功皇后

それで貴方は、わらわにどう仕えてくださるのかしら?

新羅王

新羅王

はぁ?仕える前提かよ??

新羅王

新羅王

ソレ、断るって選択肢は ・ ・ ・ ・ ・ ・

神功皇后

神功皇后

当然、ございませんわっ!!

新羅王

新羅王

っっっこの女、めんどくせぇ ・ ・ ・ !!!!

神功皇后

神功皇后

あら ・ ・ ・ 気分を害されましたの??

新羅王

新羅王

いえいえ。はぁ ・ ・ ・ ・

神功皇后

神功皇后

??

新羅王

新羅王

この女、まじでうぜぇな ・ ・ ・ ・ けど、コレ戦ったら100%負けるよなぁ ・ ・ ・ 。

ったく。どんだけ兵連れて来たんだよ。攻撃されなかっただけまだマシか。

新羅王

新羅王

癪だけど、とりあえず言うこと聞くしかなさそうだな。

新羅王

新羅王

わかったよ。いいっすよ。そしたら、馬飼になって、お仕えしますね。

神功皇后

神功皇后

あら。

新羅王

新羅王

・ ・ ・ はい。それじゃ。ご苦労様でした。お引き取りください。

神功皇后

神功皇后

あらら ・ ・ ・ それだけですの?仕えるってことは朝貢もしてくださるんでしょう?

新羅王

新羅王

あぁ??朝貢??クソ。図々しい女だな。

神功皇后

神功皇后

せっかくわらわが海を渡ってまいりましたのに ・ ・ ・

新羅王

新羅王

はぁ ・ ・ ・ ・ ・ ・ クソ。わかったよ。したら、貢物も送ってやるよ ・ ・ ・ ・ ・ ・

神功皇后

神功皇后

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

新羅王

新羅王

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

神功皇后

神功皇后

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

新羅王

新羅王

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

神功皇后

神功皇后

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

新羅王

新羅王

・ ・ ・ ・ ・ 船の腹が渇かないくらい頻繁に。

神功皇后

神功皇后

あら、素敵っ!!誉めて差し上げますわっ!

新羅王

新羅王

まじか。

神功皇后

神功皇后

よろしくってよっ!!

新羅王の提案した条件に満足した神功は、嬉しそうに扇子を仰いだ。

新羅王

新羅王

クソ ・ ・ ・ ・ ・ ・ おいっ!!そこの爺さん!!!

神功のテンションに困り果てた新羅王は、話の通じそうな武内タケシウチに声をかける。

新羅王

新羅王

ったく、何なんだよあの女はっ!?

武内宿禰

武内宿禰

はっ、仲哀天皇の皇后、神功様でございます。

新羅王

新羅王

へ??皇后??

武内宿禰

武内宿禰

先日、仲哀陛下がお亡くなりになられましたので、神功様が国の代表を勤めさせて頂いております。

武内宿禰

武内宿禰

今後ともどうぞ、宜しくお願いいたします。

武内は深々と頭を下げた。

新羅王

新羅王

えっ ・ ・ ・ もしかしてオレ、やばいこと約束しちまった??

武内宿禰

武内宿禰

いえいえ、そんな。滅相もございません。大和は新羅王の寛大なお心に感謝しております。

新羅王

新羅王

ちょっ、いやっ、さっきの約束キャンセルってのは ・ ・ ・ ・ ・ ・

武内宿禰

武内宿禰

申し訳ございません ・ ・ ・ ・

武内宿禰

武内宿禰

武内は、あくまで執事でございますので。

新羅王

新羅王

まじかよ。

武内宿禰

武内宿禰

では新羅王、こちらが正式な書類でございまして ・ ・ ・ ・

武内は、ニッコリ微笑むとテキパキと事務手続きを済ませ、新羅しらぎを馬飼の役所、隣の百済くだらを航海の役所として、朝貢ちょうこうの契約を結んだ。ちなみに朝貢が何かってことはグーグルさんに聞いてください。

こうして戦うこと無く朝鮮三国を手に入れると、神功は新羅王の城の前に、占領した証のでっかい杖を掲げて、満足そうに微笑んだ。

神功皇后

神功皇后

新羅王?あなたが素直に従ってくださったご褒美に、ソコツツノオ、ナカツツノオ、ウハツツノオの住吉三神をこの朝鮮を守る神として祀って差し上げますわ!

新羅王

新羅王

はいはい。そりゃどーも。

新羅王

新羅王

じゃーそのスミヨシなんちゃらを日本でも祀るためにも、さっさと帰ってもらえるかな。

神功皇后

神功皇后

よろしくってよ!!

それから神功は、新羅でショッピングとマタニティーエステと焼肉を堪能し、帰国の準備をした。

神功皇后

神功皇后

では、新羅王、また遊びに来ますわねっ!

新羅王

新羅王

おー。そりゃー楽しみだー。

新羅王

新羅王

もう、2度と来んな。

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そして、神功軍はまた魚に背負われ、サーっと筑紫の国(九州)に帰ると、すぐに出産をした。それでこの地は宇美うみ(福岡県糟屋郡宇美町)と呼ばれる。

神功皇后

神功皇后

あら、大変。見てっ!!この子、腕に防具を付けたみたいな肉片が付いてるわっ!!

神功皇后

神功皇后

お腹に居る頃からそんな意識が高いなんて、天才ねっ!!さすが将来の天皇を、約束された御子ですわっ!!

このことから、赤子はオオトモワケと名付けられた。(昔、トモって言う弓を打つ時、腕に付ける防具があったらしい。)

でも、大きくなったら応神天皇おうじんてんのうになるんで。もう、応神で。

それから神功は、朝貢国となった朝鮮三国を守るためにソコツツノオ、ナカツツノオ、ウハツツノオの三神を住吉神社すみよしじんじゃ(福岡県博多)に祀った。

ちなみに、神功が出産を我慢するためにお腹にくっつけていた石は、今も福岡県糸島市の鎮懐石八幡宮ちんかいせきはちまんぐうに祀られている。

仲哀天皇&神功皇后


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現代語訳がとにかく丁寧で美しくて読みやすい作品です。上段に現代語訳、下段に解説が書かれています。現代語訳だけであれば、1日でサラッと読めます。

現代語古事記(竹田 恒泰)

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明治天皇の曾孫にあたる、竹田 恒泰さんの作品です。現代語訳は少し固い印象ですが、解説が面白いのでスラスラ読めてしまいます。日本が好きになります。

まんがで読む 古事記(竹田 恒泰)

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文章が苦手な方におすすめ。「現代語古事記」の竹田さんが監修されています。天皇記は無く、日本神話とヤマトタケルだけですが、子供でも簡単に読めます。