日本神話『堲岡(埴岡・はにおか)』
堲岡(埴岡・はにおか)

スクナビコナ
ハイサイ!
というわけで、番外編行ってみましょーねーっ!!

オオクニヌシ
は? 待って待って。スクナビコナ。
君、常世の国に行ったまま帰ってこなかったくせに、なんで、今、急に仕切り始めたの?

オオクニヌシ
僕、もうとっくに国譲り終わって、隠居生活してるんだけど。

スクナビコナ
これはまだ、わーたちが出雲で国造りに奮励していた頃のお話さーね。

オオクニヌシ
アッ。これ、過去編?

スクナビコナ
やさやさ。わーたちが国造りのためにオオクニヌシもとい、オオナムチと播磨に来た時に、なんかで言い争いになったんよー。

スクナビコナ
なんでかは忘れたんだけどね?
それは、昔むかしのこと。何でか言い争いになったオオナムチとスクナビコナが「勝負をしよう!」と言い出した。

オオナムチ
クスッ! 琉球かぶれのくせに、出雲一筋の僕に勝てるとでも思ってるの?

スクナビコナ
はぁー!? なんねーその言い方ぁ! 国造りより、子作り優先するような顔だけの男に言われたくないよー。でーじ わじわじぃするやさー!!!

オオナムチ
あれは、趣味。

オオナムチ
じゃ、勝負の内容はスクナビコナが決めていいよ? まー、どんな勝負でも僕には勝てないと思うけど。

スクナビコナ
小さいからってナメると、たっぴらかすよ???
スクナビコナは小さな腕を組んで、プンプン怒る。そしてあたりを見渡した。

スクナビコナ
そーやっさ!
この落ちてる埴(赤土)の荷物を背負って歩いて行くのと、う●ちを我慢しながら歩いていくの、どっちの方が遠くまで歩いていけるかで勝負を決めよーねっ!!

オオナムチ
えー? なにそのクソほどくだらないルール。

オオナムチ
それに、僕、赤土を持つのは嫌だよ? これから兵庫美人ナンパしに行くのに、服は汚したくないもん。

スクナビコナ
オオナムチが先に決めていいからよ? この2つのどっちにする〜?

オオナムチ
じゃ、僕は便意を我慢しながら歩いて行きます

スクナビコナ
分かったよー。そしたら、わーは埴を持ちながら歩きましょーねっ!
こうしてオオナムチとスクナビコナは謎の勝負をすることになった。そして歩き続けること数時間。

スクナビコナ
はーーっ ・ ・ ・ はぁーーーっ ・ ・ ・ ・ ・ ・
埴を持ったスクナビコナが息を切らし始めた。それを見て、隣を歩いていたオオナムチは得意げに口角を上げる。

オオナムチ
クスッ! ねぇ、スクナビコナ。それ、重くない? こんなくだらない勝負に真剣にならなくていいから、もう諦めたら?

スクナビコナ
絶対に嫌だっ! わーは琉球の想いも背負ってるんだから、負けられんよぉぉーー!!!!

オオナムチ
はいはい。

オオナムチ
でもさ、冷静に考えてみてよ。
『便意を我慢しながら』なんて言っても、人間、四六時中トイレにこもってる訳じゃないんだし、僕、ただ、普通に歩いてるだけだからね? どう考えたって、僕の方が有利でしょう?

スクナビコナ
はぁぁーー。しにハゴーーー ・ ・ ・

オオナムチ
クスクスッ!
スクナビコナは肩を落としたが、結局、最後まで諦めずに埴(赤土)を持ち続け、この日は勝負がつかなかった。
そして、翌朝。

オオナムチ
こんな勝負で日を跨ぐなんて思わなかった。

オオナムチ
トイレ ・ ・ ・ 行きたくなってきたなー ・ ・ ・ ・ ・ ・

スクナビコナ
オオナムチ、おはよー! 今日こそ絶対、死なすからよっ!! 覚悟しといてねっ!!!!!

オオナムチ
・ ・ ・ 朝からテンション高。

スクナビコナ
ほら。早くしないと、わーが先に行っちゃうよーっ!!!

オオナムチ
はぁ。 ・ ・ ・ はいはい。僕も行きますよっ!!
オオナムチは重い腰をあげて歩き出す。しかし、この日も勝負がつかなかった。
そして、さらに翌朝。

オオナムチ
え ・ ・ ・ 嘘でしょ? こんなくだらない勝負、まだ続けるの??? 普通にトイレ行きたいんだけど。

スクナビコナ
ハイサイッ!!! オオナムチ、元気ー? わー、なんだか、埴持つの慣れてきたってば〜。早く降参したら〜?

オオナムチ
いやいやいや。まだ僕だって余裕ですから ・ ・ ・

スクナビコナ
じゃ! わーは先に行きましょーねーっ!!!!

オオナムチ
・ ・ ・ ・ ・ ・
スクナビコナに促され、オオナムチは昨日よりも更に重くなった腰をあげて歩き出す。しかし、この日も勝負がつかなかった。
そして、さらに数日が経ち ・ ・ ・

オオナムチ
・ ・ ・ ・ ・ ・

スクナビコナ
・ ・ ・ あり? オオナムチ? 大丈夫? 顔が真っ青だよ???

オオナムチ
っっ ・ ・ ・ ぼく ・ ・ ・ ・ ・ ・ もう ・ ・ ・ 無理 ・ ・ ・ これ以上 ・ ・ ・ 歩けない ・ ・ ・ ・ ・ ・

スクナビコナ
えぇっ!? オオナムチっっ?????

オオナムチ
いやぁぁ!! むりぃぃぃっっ!!!!!

スクナビコナ
ギャアァァァァ!!!!!!!!
・ ・ ・ こうしてオオナムチが粗相をした途端、スクナビコナは笑って言った。

スクナビコナ
あっはっは! くっさ!!!!
そーだよねっ! わーも、ずーっと苦しかったってば〜っ!!!!
そして、埴を投げ放ったんだとさ。
おしまい

スクナビコナ
・ ・ ・ ここで、わーが埴を投げたところが丘の形になったものだから、そこが『埴岡』って呼ばれるようになったわけさー。

スクナビコナ
それで、オオナムチのう●ちが笹の葉っぱに弾かれて飛び散った場所は『波自賀』って呼ばれるようになったんよね〜?

オオクニヌシ
・ ・ ・ ・ ・ ・

スクナビコナ
・ ・ ・ ??

オオクニヌシ
・ ・ ・ ・ ・ ・

スクナビコナ
ねーー???

オオクニヌシ
そんな神話、記憶にございません。

スクナビコナ
だからよ〜。

スクナビコナ
・ ・ ・ ・ ・ ・

スクナビコナ
・ ・ ・ ・ ・ ・

スクナビコナ
・ ・ ・ ・ ・ ・

スクナビコナ
でもまさか、あんなに出ると思わなかったね?

オオクニヌシ
だから覚えてないって言ってんだろうがあぁぁぁ!!!!!!

スクナビコナ
あっはっはっ!!!
参考:播磨国風土記