天皇記『丸邇の袁杼比売』
丸邇の袁杼比売
そろそろ、家臣にも、国民にも、読者にも、『あ、なんだ。この人、暴君かと思いきや、ただのポンコツだ。』と気付かれはじめてしまった、今日この頃 ・ ・ ・ ・
でも、『大悪天皇』の異名は伊達じゃない。
ある日。
雄略天皇
なぁ、オドヒメってさ、名前からして可愛くね??ぜってー、オドオドしてると思うんだけど。
家臣
はぁ ・ ・ ・ ・ どうなんですかね?
そんなことを話しながら家臣たちと歩いていると、道の向こうから可愛い女性が歩いて来るのが見えた。
???
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
しかし、彼女は何か自信が無いのか、遠慮しがちにオドオドしている。
雄略天皇
あ、そうそう。ちょうど、あんな感じのイメージの女 ・ ・ ・ ・
???
ふぁ!?
雄略天皇
ん?
???
ひゃっっ!!!
雄略天皇
あぁ??
???
フアァァァァァァァ!!!!!!!
すると、彼女は慌てて丘の茂みに隠れてしまう。
雄略天皇
えっ?まさか、今のオドヒメっ!?!?
そう。偶然鉢合わせたオドヒメが雄略を怖がり、慌てて茂みに逃げ隠れたのだ。
袁杼比売
ひぃぃぃぃ ・ ・ ・ ・
雄略天皇
うーわ。今の見た??俺様の顔見て逃げちまったんだわけど。やべー。まじ可愛いくね??
しかし、
呑気に歌を詠い出す。
雄略天皇
丘に隠れた、あの女。
雄略天皇
あーぁ。手元に
雄略天皇
この丘の草、根こそぎ
袁杼比売
いやあぁぁぁぁ!!!!
オドヒメはその歌を聞くと、心の中で絶叫したが、雄略が勘違いしたまま帰ってくれたおかげで、草むらで押し倒されることだけは間逃れた。
その後、雄略の元にはオドヒメの父親から謝罪の連絡があり、彼女は後日、自分から嫁ぎに行くことになる。
袁杼比売
ぎゃあああぁぁぁぁ!!!
また、この事件のせいで、その丘は『
袁杼比売
ぴぎゃあぁぁぁぁぁ!!!!!!
さてさて、それから数ヶ月後。
秋になると、その年も
ま、平たく言えば、収穫祭を理由にした大宴会だ。
その日は、
雄略天皇
『
こうして、雄略のリクエストで、
そして当日。雄略は皇后のワカクサカと並んで自分の席に着いた。
雄略天皇
やべぇー。俺様、会場のチョイス、完璧じゃね??
ワカクサカ
くすっ、
雄略天皇
だな。
その仕上がりに雄略も満足げだ。
参加者もだいたい席に着くと、伊勢の三重から来た可愛らしい
三重の采女
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
しかし、
三重の采女
どうぞ。
雄略天皇
・ ・ ・ ・ ・ あ?
三重の采女
え?
雄略天皇
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
三重の采女
はっ、
三重の采女
痛っ!!
ワカクサカ
あなたっ!
雄略天皇
黙れ。
ワカクサカ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ワカクサカが制止にかかったが、雄略は聞かない。会場は静まり返り、全ての視線が2人に集まった。
三重の采女
ヒッ!!
その刃は
雄略天皇
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 興醒めだ。
雄略天皇
死ね。
そして切り下ろそうとした、その時。
三重の采女
陛下っ!私を殺すのは、少しお待ちください。これには理由があるんです ・ ・ ・
雄略天皇
あ??
三重の采女
それは
雄略天皇
なんだ?その歌。
雄略天皇
残念だが、あんたの言い逃れは失敗だ。死ね。
雄略がまた刀を構えると、
三重の采女
いえ、この歌にはまだ続きがあります。
三重の采女
そのような昔の歌と、今の状況が面白いくらい似ていたので、ぜひ聞いていただきたいのです。
雄略天皇
はぁ??クソみたいな歌だったら殺すぞ。
三重の采女
もとより殺される予定の命です。どうぞ、ご自由に。
雄略天皇
チッ!生意気な女。
雄略天皇
さっさと詠え。そして死ね。
三重の采女
では ・ ・ ・ ・
三重の采女
三重の采女
その一番上の枝先から葉が落ちると、葉は中の枝先に触れ、次は中の枝先の葉が落ちると、葉は下の枝先に触れる。
三重の采女
その『末の葉』は今にも落ちそうにひらひら揺れて、やがて三重の
雄略天皇
はーん?そうか。そりゃ、見事な偶然だな。三重の
三重の采女
えぇ。でも、陛下。あの盃を見てください。
雄略天皇
あ??
三重の采女
末の葉が油のように浮いて、ふよふよと漂っているこの様子は、まるで
雄略天皇
あー ・ ・ ・ ・
三重の采女
まるで、
雄略天皇
あぁ、あれか。
三重の采女
私はこの歌を縁起の良い歌として聞き覚えておりました。
雄略天皇
は?縁起がいい??
三重の采女
もちろん。日本の始まりの物語ですから。あの
雄略天皇
ほう?
三重の采女
その天高く輝く、
雄略天皇
・ ・ ・ ・ そうか。
三重の采女
あの、それで ・ ・ ・ ・ ・ ・ 以上です。
雄略天皇
わかった。真意はともかく、なかなか面白い話だった。
三重の采女
よかったです。でも ・ ・ ・ ・ 生意気な態度で極刑??
雄略天皇
はっ!いや、あんたの物言い、気に入った。許してやるよ。
三重の采女
ああっ!よかった ・ ・ ・ !!
こうして
ワカクサカ
ほっ ・ ・ ・ ・
安心した皇后のワカクサカは、仕切り直しに歌を詠う。
ワカクサカ
大和の
ワカクサカ
その周りには、葉の広い神聖な椿が生い茂っていて、葉が広がり照っている様子は、まるで心の広いあなたの姿みたいだわ。
ワカクサカ
さぁ、この
そして、
雄略天皇
宮中に住んでる人間は、ウズラみたいにヒレをかけ、セキレイみたいに腰振って、スズメみたいに群れながら、今日も酒浸りの贅沢な生活を送ってやがる。
雄略天皇
分かんだろ??天高く光る、この俺様の宮に住む、あんたらのことを歌ってんだ。
雄略天皇
今日は、全部、俺様の
三重の采女
はあぁ ・ ・ ・ ・ よかったよぉぉ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
無事に宴会が始まると、
雄略天皇
おい、あんた。
三重の采女
ヒィッ!!はいっ!!ごめんなさい!!!
雄略天皇
いや、もう怒ってねぇから。
三重の采女
すみません ・ ・ ・ ・ えっと、なんでしょうか??
雄略天皇
あの歌って、本当に全部、景行の時代の歌だったのか?
三重の采女
へっ??あぁ、それは ・ ・ ・ ・
雄略天皇
あ?
三重の采女
ふふっ、ご想像にお任せします。
雄略天皇
ハッ!面白れぇ。その度胸は褒めてやる。
三重の采女
わ。ありがとうございます。
雄略天皇
ついでに、
三重の采女
えぇっ!?本当ですかっ???
雄略天皇
ああ。この俺様を楽しませたんだ。弾むぜ??
三重の采女
うわーっ!!ありがとうございますっ!!!
こうして
進行が大幅に遅れたものの、当初の予定通り
袁杼比売
はぁぁぁ ・ ・ ・ ついにこの時が来てしまった ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ なぜ、よりによって、あんな事件のあとがオドの番なの ・ ・ ・ こわいよぉぉぉ ・ ・ ・ ・ ・
オドヒメの目の前には、儀式用の大きなトックリが用意される。
袁杼比売
え。な ・ ・ ・ ・ ・ なんか、このトックリ、注ぎ口が細長くて ・ ・ ・ ・ ・ 男の子の ・ ・ ・ アレっぽい。
袁杼比売
ああ ・ ・ ・ ・ ・ サイズ感もまさにじゃん。なんでこのデザインにしたんだろう。
緊張する上に、持つのも恥ずかしいし、注ぎづらそうだし ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ えっ?やだ。
袁杼比売
もし
オドヒメはあまり自分の手が触れないように、そっとトックリを持つと、マイナス思考が止まらないまま、恐る恐る雄略に近づいて行く。
袁杼比売
いやだいやだいやだこわいむりこわいこわいいやだこわいむりむりこわいいいい ・ ・ ・ ・ ・
雄略天皇
あ??
袁杼比売
ヒィッッッ!!!
その
袁杼比売
あああああ ・ ・ ・ ・ ・ むりだ ・ ・ ・ やっぱり、ちゃんと注げる自信ない ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ お父様、お母様、今まで育ててくださりありがとうございました ・ ・ ・ ・ ・ 今日、オドは黄泉に旅立ちます ・ ・ ・ ・
きっとこのあと、オドがお酒を注いだ瞬間、この無駄に大きいお●ん●んみたいなトックリのせいで、手元が狂って、こぼして、この人にかかって、殺されるんだ ・ ・ ・ ・ ・ んああああああああああ!!!!!!
雄略天皇
なんだ???
緊張のあまり震えている上に、何故かトックリをしっり持とうともせず、指先がフルフルしているオドヒメの姿を見ると、
雄略天皇
なあ、おい、あんた大丈夫か??酒を注ぐんだろ??そのトックリちゃんと持てよ。固く持てば大丈夫だから。
雄略天皇
もっと下の方、固く持った方がいいって。ほら、ちゃんとしっかり持てよ、そのトックリ。
袁杼比売
ひゃあぁぁぁぁ!!!!なんか、この人、みんなの前で急に
いやだ!!お下品っっっ!!!えっちいぃぃぃっっっっ!!!!!!
やがてこの歌は、雄略がオドヒメに手コキを強要したものなのではないかと、専門家の間で物議を
・ ・ ・ が、それはさておき。
やっとの思いで、雄略の目の前に座ったオドヒメは、オドオドしながら必死に考えてきた歌を詠う。
袁杼比売
あっっあのっっ!!!
雄略天皇
こいつ、たった数メートル移動するのに何分かかったんだ ・ ・ ・
袁杼比売
おっ、オドはっ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 雄略様が休む時に使ってる、朝には寄りかかる ・ ・ ・ あの、アレ。えっと、なんでしたっけ??
ほら、夕方にも寄りかかってる、ほら、よく、時代劇の殿様とかが使ってる、あの、
雄略天皇
袁杼比売
それですっっっ!!あのっ、オドは、普段から雄略様のことを支えてる、あの、
雄略天皇
木の板。
袁杼比売
そう、それでっっ、オドはっ、今日、嫁ぎに参りましたっっ!!!
雄略天皇
おっ ・ ・ ・ そ、そうか ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
そしてオドヒメは、ふるふるしながら雄略に酒を注ぐ。
雄略天皇
コイツ、Mなのか??
と考えながら、
こうしてオドヒメは、なんとか