天皇記『目弱王の仇討ち』
目弱王 の仇討ち
オオクサカの事件から、あっという間に3年が経った。
安康天皇
ねぇ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ナガタ??
長田大郞女
ん、何?
この日、
もちろん本来であれば、皇后であっても
安康天皇
なんでナガタは、自分の夫を殺した僕に付いてきてくれたんだろう ・ ・ ・ ・
安康天皇
あれからオオクサカさんのことを全く話さないから不安になる。
安康天皇
いや、そりゃ、気軽に話題にできることじゃないのは分かってるんだけど ・ ・ ・ ・
長田大郞女
・ ・ ・ ・ どうかしたの?
安康天皇
え、あぁ ・ ・ ・ えっと。
長田大郞女
??
安康天皇
ナガタってさ ・ ・ ・ 何か思ってるところとかないのかなって。
長田大郞女
は?思ってること??
安康天皇
だから、ほら ・ ・ ・ ここでの暮らしとか ・ ・ ・ ・ ・ ・ あと、僕のこととか ・ ・ ・
長田大郞女
あぁ。
何かを
長田大郞女
安康は、私たちを手厚く迎え入れてくれたじゃない。それに、こんなに愛されて恵まれた生活ができてるって言うのに、何か思うわけが無いでしょう??
安康天皇
でも ・ ・ ・ ・
長田大郞女
マヨワのことだって守ってくれたし、なんの不満もございません。
安康天皇
だってそれはっ ・ ・ ・ ・ ・ ・
安康天皇
それは、あの日 ・ ・ ・ ナガタが泣きながら息子を助けて欲しいって頼んできたからじゃないか。
長田大郞女
・ ・ ・ ・ ・ ・ うん。
安康天皇
あのさ、ナガタ ・ ・ ・ ・ ・ ・ オオクサカさんってさ、本当は ・ ・ ・ ・
長田大郞女
ねぇ、安康?
安康天皇
え?
長田大郞女
例えばね、誰かが影で安康のことを悪く言うことがあっても、私は安康のことを心から愛してるし、彼のことであなたを責める気は無いから。
安康天皇
ナガタ ・ ・ ・ ・ ・ ・
長田大郞女
はい。じゃ、この話はこれでおしまい。OK?
安康天皇
なんだよそれ ・ ・ ・ ・ ナガタ、かっこよすぎるんだけど ・ ・ ・ ・ ・ ・ 惚れ直す ・ ・ ・
長田大郞女
ふふっ、ありがと。
安康天皇
・ ・ ・ ・ ・ ・ どうしよ ・ ・ ・ 泣きそう。
長田大郞女
いや、泣いてんじゃん。ウケるんだけど。
安康天皇
へへ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ありがと。
長田大郞女
・ ・ ・ ・ ・ ・ うん。
安康天皇
最近、マヨワが僕にも
長田大郞女
ふふっ!当たり前でしょう??私の子だもの。
安康天皇
うん ・ ・ ・ ・ ・ ・ でもね、だから僕はいつも不安で不安でしょうがないんだ ・ ・ ・ ・
長田大郞女
何が。
安康天皇
何って ・ ・ ・ そりゃ、マヨワが大きくなった時のことだよ。
安康天皇
大人になってから、自分の父親を殺したのが僕だって知ったら ・ ・ ・ マヨワはなんて思うか ・ ・ ・ ・ ・ ・
長田大郞女
・ ・ ・ ・ ・
安康天皇
僕のことを裏切って
安康天皇
考えただけでも怖くて怖くて仕方がない。
長田大郞女
ん?
安康天皇
・ ・ ・ え?
長田大郞女
あ、ごめん。何でもない。
安康天皇
そう ・ ・ ・ ・ ごめんね、話が長くなっちゃった。
長田大郞女
うぅん。
安康天皇
聞いてくれてありがと。ちょっと楽になった。
長田大郞女
そう。なら、よかった ・ ・ ・
安康天皇
あとは、
長田大郞女
・ ・ ・ ・ そっか、分かった。じゃ、私は外すね。
安康天皇
うん、それじゃまた ・ ・ ・
目弱王
・ ・ ・ ・ ・ ・
この時、マヨワは7歳になっていた。
この日もマヨワは
安康天皇
自分の父親を殺したのが僕だって知ったら ・ ・ ・ マヨワはなんて思うか ・ ・ ・ ・ ・
安康はそうとも知らずに、マヨワの父親のことを話してしまったのだ。
目弱王
父親を ・ ・ ・ ・ ・ ・ 殺した?
1番聞いてはいけないところを、しっかり聞いてしまったマヨワは、その場で
確かに心当たりはある。
ここに来た頃、いつも1人で泣いていた母親。
『父上』と呼ぶと、なぜか視線を逸らす安康。
ここではない、どこか別の家の記憶。
そこで遊んでくれた優しい男の人 ・ ・ ・ ・
目弱王
・ ・ ・ ・ きっとあの人が本当の父上だったんだ。あいつはボクの父上じゃない。あの時、母上が泣いてたのも全部あいつのせいだったんだ。
マヨワの中で全ての
目弱王
ボクが父上の
マヨワは安康が眠るのを密かに
目弱王
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
安康天皇
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
安康は完全に寝入っている。
その
マヨワはその太刀を小さな手でギュッと握る。
目弱王
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
安康天皇
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
そして安康の首をめがけて思い切り振り落とした。
っと嫌な感覚が手に響き、安康の身体がビクッと動く。
辺りに血がびたびたと飛び散り、一瞬、安康と目が合ったような気がした。
目弱王
ひっ ・ ・ ・
マヨワは恐怖のあまり、太刀を投げ出し、その場から逃げ出す。
安康天皇
・ ・ ・ ・ ・ ・ マ ・ ・ ・ ヨ ・ ・ ワ?
安康はうまく状況を飲み込めないまま、亡くなってしまった。
目弱王
ツブラっっ!!
都夫良
えっ ・ ・ ・ ・ ・ マヨワ様?何故こちらに??
マヨワが走って走って
そして、ツブラの
目弱王
ツブラ!ボクを
都夫良
マヨワ様、すごい血じゃないですか!お怪我は ・ ・ ・
目弱王
大丈夫です。これはボクの血じゃないから ・ ・ ・
都夫良
えっ?
目弱王
お願いします ・ ・ ・ ・
都夫良
・ ・ ・ ・ ・ わかりました。まずは中にお入りください。
こうして、マヨワはツブラの家に
安康の享年は56歳。
(二倍年歴説を採用して、全力で28歳にしたいけど、とりあえずそれは置いておいて。)