天皇記『オシクマとの皇位争い』
オシクマとの皇位争い
神功皇后
はぁ...都会もいいけれど、やっぱり子育ては緑の多いところが良いですわぁ~
そんなある4月の上旬のこと、神功はまだベビーの
神功皇后
あら、応神見てっ!お魚さんがたくさんいるわっ!!
神功の指さす方向を見ると、応神がキャッキャと嬉しそうに手を叩く。超かわいい。
彼女は自分の着物の糸を1本抜くと、米粒を先に付けて川の中にポトンと落としてみた。すると、すぐにアユがつれたではないか。応神がパァァっと嬉しそうに目を輝かせる。
愛息子に尊敬の眼差しを向けられ、神功はドヤ顔でそのアユを天に掲げた。
神功皇后
よろしくってよっ!!!
それ以降、玉島川では毎年4月の上旬になると、女性が自分の着物の糸を抜いて鮎釣りをするイベントが流行ったらしい。
やがて
しかし、応神は住吉三神から次期天皇に選ばれてしまったことから、産まれた時から暗殺計画の噂が絶えない。そこで神功は、息子のために罠を張って
一方、大和では噂の通り、応神の異母兄、カゴサカとオシクマが神功と応神を殺す計画を立てていた。
オシクマ
だって皇后が神がかりしたとか、めっちゃ怪しいじゃんか。
オシクマ
あの人ちょっと頭おかしいし。本当は父上のこと、あの人が殺したんじゃないの??
2人の意思は堅かった。そこでカゴサカとオシクマは神功と戦って勝てるかどうかを占うため、大阪の
しかし兄のカゴサカがクヌギの木の上に乗って周りの様子を見ていると、急に怒り狂ったイノシシが現れ、食い殺されてしまう。
占いの結果はどう考えたって大凶だ。
それでも弟のオシクマは自分の軍が負けるとは思えなかった。そこで、占いの結果を無視して軍を率いて難波に向かった。
難波に着くと、何隻もの船が連なり港に向かってきていた。しかし、こちらはホーム戦だ。兵の数では負けていない。それに一隻、黒い帆を上げた
兵
オシクマ様!あの喪船には、応神が入っているとのことです!!
オシクマ
え、嘘?
兵
国民の間では、既に応神が亡くなったという噂で持ち切りです!!
この時代は、一般人よりも栄養を取っている皇族や豪族であっても、赤子が病気などで死んでしまうことは、よくあることだ。
オシクマ
なんだよ。やっぱり、天は俺らに味方してるじゃないかっ!!
これなら勝てるとオシクマは確信した。
オシクマ
なら、殺るのはあと皇后だけだな。まずは人が少ない喪船を攻めて、占領してから次々に他の船を襲い皇后を討とう!!
兵
はっ!!
こうして開戦すると、オシクマ軍はすぐに
しかし、喪船からはゾロゾロと兵が湧き出し、返り討ちに遭ってしまう。
まぁ、そりゃあ、罠ですからね。うまく掛かってくれたわけだ。
オシクマ
クソッ!!卑怯だろっ!!!
出鼻をくじかれたオシクマだったが、両軍は激しい攻防戦を繰り広げる。
そして、オシクマが軍の優勢を感じたその時。神功側の将軍から大きな声を上がった。
神功の将軍
ああぁっ!!皇后様が亡くなってしまったぁぁぁ!!これ以上は戦う理由がないぃぃ!!!
そして、これ見よがしな高台の上で、降伏の印に弓の弦をオーバーリアクションで切ってしまう。
この朗報にオシクマ軍は次々に歓声をあげ、彼らも弓の弦を外して武器を収めた。
すると ・ ・ ・ ・ ・ ・
神功皇后
今ですわっ!!
という、どこかで聞いたことのある声が聞こえた。
しかし、その声の主を確認する前にオシクマ軍の上から一斉に矢の嵐が降り注ぐ。
ついさっきまで降伏姿勢を取っていた神功の将軍も、髪飾りの中に潜ませていた予備の弦を取り出し、弓に張って襲撃しまくっているではないか。
まぁ、これも、罠ですからね。すげー卑怯だけど。
オシクマ
まじかよ ・ ・ ・ ・
この攻撃でオシクマ軍は形勢不利になってしまい、
オシクマと将軍は命からがら琵琶湖まで逃げ、小舟で逃げ出した。
将軍と2人きりになったオシクマは、沈みきった顔でぽそりと歌を詠う。
オシクマ
なぁ ・ ・ ・ 俺らさ、このまま熊になぶり殺されるみたいに痛い思いをして死ぬよりは ・ ・ ・
オシクマ
水鳥みたいに淡海に潜って死んだ方がマシなのかな?
そして将軍と顔を見合わすと、覚悟を決めて2人で湖に身を投げた。
こうして応神は、神功の作戦で皇位継承の戦いに勝つことができた。
この戦いが落ち着くと、
近江までは、
武内宿禰
では坊ちゃま、参りましょうか。
応神
はいっ!
まぁ、間違ってはいないんだけど。
目的地に着くと早速、
応神
なんだか、スッキリサッパリしました!!
余談だが、この禊の文化が日本人を風呂好きにしたと言われている。
そして帰り道。
武内が敦賀の仮宮で寝ていると、夢の中にこの土地の神である、イザサワケノ大神という神が出てきた。
イザサワケ
あの、お休み中すみません。応神さまのお付きの方ですか?
そして、ニッコリと微笑みかけられる。
武内宿禰
へっ?あ、はぁ ・ ・ ・
武内宿禰
これは神託でしょうか?
武内が戸惑っていると、その神は武内の前で頭を下げてきた。
イザサワケ
もしよろしければ、僕、応神さまにお名前をいただきたいんです。ダメでしょうか??
武内宿禰
え?お名前ですか?おそらく大丈夫だと思いますが ・ ・ ・
イザサワケ
本当ですかっ!?
武内宿禰
はい、では明日早速、その旨を坊ちゃまにお伝えしましょう。
と、OKを出すと、その神はとても喜んだ。
イザサワケ
よかった!では、明日、日浜に来てください。お礼がしたいんです!
そしてニッコリ笑うと、すぐに消えてしまった。
翌日。
応神
わぁ!神様がボクにさくさんの『
応神は、無邪気にはしゃいで喜んだ。今でもイルカ漁は残っているが、当時のイルカは貴重な高級食材だったのだ。そして、約束通りに名前を考えてあげる。
応神
では、これからは彼を敬って『ミケツカミ様』って呼びましょう!
こうしてミケツカミは氣比神宮(福井県敦賀市)に祀られ、それ以来この地域からは、朝廷に塩や魚が届けられるようになった。
ちなみに、この時のイルカの血が臭ったので、その土地は
それから数日後、2人が大和に帰ると、神功が大喜びで出迎えた。
神功皇后
応神っ!!よく戻ったわねっ!!わらわが褒めて差し上げますわっ!!
応神は嬉しくなって、神功に抱きつく。
応神
母上~〜!!ボク、ちゃんとミソギできましたよっ!!
神功皇后
あらぁ~、さすが仲哀とわらわの愛の結晶ですわっ!
神功皇后
ささっ!ご褒美ですわ!!こちらをお飲みなさいっっ!!!
応神
???
神功は、応神に盃を持たせると、乳白色の飲み物をなみなみと次いだ。 武内は嫌な予感がして、それが何か聞く。
武内宿禰
神功様!まさかそれは ・ ・ ・
神功皇后
応神のために作らせ御酒ですわっ!!
武内宿禰
なっ!?
神功皇后
しかも、この御酒はわらわが醸したものではありませんのっ!常世の国で石神となったスクナビコナが祝い踊り狂って醸した酒ですのよっっ!!
神功皇后
さぁっ!全部飲みほしなさいっっ!!!さぁっ!!さぁっっっ!!!!
神功が上機嫌で歌を詠む。
武内宿禰
これはっっ!!このまま日本酒を坊ちゃまにガブ飲みさせる気ですねっっ!!
武内は慌てて歌を返す。
武内宿禰
神功様っ!!この御酒を醸した方は、鼓を臼のように立ててその周りを歌いながら踊りながら醸したのでしょう!
武内宿禰
この御酒は ・ ・ ・ えー、そうですね ・ ・ ・
武内宿禰
この御酒は、そう!
なんとも言えずに愉快で、それでいてとっても楽しい!!さぁさぁ!!!
そして武内は神功から酒を奪うと、自分でイッキに飲み干した。
武内宿禰
・ ・ ・ ・ ・ おぉ!これは確かに美酒っっ!!!
それから、なんだかんだで武内は気持ちよ〜く酔っぱらい、その晩は大宴会になった。
ちなみに、この歌は朝廷で宴会の席の定番コールになる。
神功は他にも各地で様々な伝説を残し、やがて応神が皇位を継ぐと100才で亡くなった。