天皇記『仁徳天皇とヤタノワキ』
仁徳天皇とヤタノワキ
前回に引き続き、仁徳天皇の女性がらみのエピソードをお届けする。
2人目はヤタノワキという名の姫だ。
熱しやすく冷めやすい仁徳にとっては、クロヒメのようなパターンが多かったのだが、彼女の場合は少し違う事情があった。
仁徳と皇位を譲り合っていた弟のウジノワキにはヤタノワキとメドリという2人の妹がいて、
ウジノワキ
もし僕が死んじゃったら、妹たちこと、お願いしますね ・ ・ ・
と仁徳に遺言を残していたのだ。ヤタノワキは、そのうち上の妹だった。
仁徳天皇
ヤタを皇后にしようかとも考えたけど ・ ・ ・ ・ ・ 武内には、ばぁちゃんの代からずっと世話になっとるしなぁ。
天皇に娘を嫁がせることができれば、その家はしばらく安泰に暮らせる。この時代では、お世話になった人の娘や孫を貰うことは良くあることだった。
仁徳天皇
つーわけで、イワノちゃんのこと、皇后にしようかと思っとんのやけど。ええやろ??
武内宿禰
そんな ・ ・ ・ オオサザキ様!!まさか、武内の孫娘を皇后にしていただけるとはっ!!もったいない ・ ・ ・ ・ ・ ・
武内宿禰
はぁぁぁ!武内は嬉しゅうございます ・ ・ ・ ・ ・ !!
さらに皇后となれば、その子供が次の天皇になる可能性が高いので、家族は高い地位も手に入れることができる。武内にはそれだけたくさんお世話になっていた。
そんな事情もあり、皇后にはイワノを選んだ。ヤタノワキを側室にすることも考えたが、彼女は応神天皇の娘なので、イワノよりも位が高くなってしまう。
仁徳天皇
んなことしたら、イワノにシンドい思いさせてまうし ・ ・ ・ ・ ・ まぁ、しゃーないわな。
と、いろいろ大人の複雑な事情もあり、ヤタノワキと一緒になることは難しかった。なので天皇になってからは、ヤタノワキとメドリに対して経済的な支援だけはしていたものの、2人と一緒に過ごしたことは一度も無かった。
そんなある日。
イワノヒメ
あ、見つけた!
仁徳天皇
お??
イワノヒメ
仁徳っ!
仁徳を見つけたイワノがこちらに駆け寄り、嬉しそうに両腕を掴んできた。
仁徳天皇
宴会?急にどないしたん??
イワノヒメ
ふっふっふ。最近は『
イワノヒメ
たまにはみんなにも羽目を外してリフレッシュしてもらいたくって!!
仁徳天皇
おぉ、そりゃえぇなぁ〜!!そいや最近、飲み会あらへんかったな。さっすがオレの皇后!気ぃがきくぅ〜!!
ご機嫌のイワノの頭を仁徳がクシャクシャと撫でると、彼女は嬉しそうに顔を赤らめる。妬いていない時のイワノは小動物みたいでかわいい。
イワノヒメ
ふふっ!そうだろう??なんせ、ウチは仁徳の皇后だからなっ!!
仁徳天皇
おーおー。
イワノヒメ
そしたら酒と料理の盛り付けに
仁徳天皇
ん?イワノが紀伊まで行ってくれはるん??
イワノヒメ
そりゃ、ウチは仁徳の皇后だからなっ!!その方が、みんなも喜んでくれるだろう??
仁徳天皇
さよかー、おおきに!!したら頼むわー。
イワノヒメ
ふふっ!ウチに任せろっ!!!
仁徳天皇
おー、気ぃつけて行ってきーや。
こうしてイワノは朝廷主催の大宴会で使う柏の葉を採るために紀伊国(和歌山県)まで出かけることになった。
仁徳天皇
豊楽の宴か〜。親父の頃はなんやかんやて理由つけて、よーやっっとったもんなぁ。
カミナガヒメが来た時なんか、新嘗祭以上に盛り上がっとったし。懐かしいなぁ〜。
仁徳天皇
そーいや、あん時はヤタもまだちっこくて『私も大きくなったらサザキ兄のお嫁さんになるの!』とかゆーてくれたっけ ・ ・ ・
と、昔の記憶が蘇る。
仁徳天皇
・ ・ ・ ・ ・ ヤタか ・ ・ ・ 元気にしとるかな ・ ・ ・
紀伊国に向かったイワノの船を見送り、一人残された仁徳の脳内に、
仁徳天皇
今やったらヤタに会えるわな ・ ・ ・ ・ ・ ・
なんてマズイ考えが頭によぎってしまう。
バレたらシャレにならないくらいまずい。
仁徳天皇
まぁ、そーはゆーても ・ ・ ・ 自分の妹の顔くらい見に行ったって浮気にはならへんよなぁ ・ ・ ・ ・ ・ ・
そして気付けば、仁德は全力疾走でヤタノワキの家に押し掛けていた。
仁徳天皇
ヤタっっ!!!!
ヤタノワキ
うわっ!ビックリしたっ!!
彼の訪問を全く予想していなかったヤタノワキはポカンと仁徳を眺める。
ヤタノワキ
・ ・ ・ ・ ・ サザキ兄??
仁徳天皇
あんら。どないしよ。数年前より格段に可愛くなっとる。
つーか、そのぱいおつの成長率、この短期間に何があったん??
ヤタノワキ
久しぶり ・ ・ ・ 。てか、真っ昼間からどうしたの??
仁徳天皇
ヤタ ・ ・ ・ ・ ・ ・ オレは今、自由を手に入れた!!
ヤタノワキ
は?意味わかんないんだけど。天皇辞めたの??
仁徳天皇
よかった ・ ・ ・ 昔とノリも変わっとらん。
ヤタノワキ
それともクビ??
仁徳天皇
ちゃうわ。イワノが留守なんや。
ヤタノワキ
うわっ ・ ・ ・ サザキ兄の自由ちっちゃ。
ヤタノワキ
国民のみなさーん!!この聖帝、皇后の尻に敷かれてます~!!
仁徳天皇
あほか。オレの聖帝伝説は、デカ乳の姫が隣におらんと完成せぇへんのやっ!!
ヤタノワキ
はぁ?意味わかんないんだけど。
仁徳天皇
や ・ ・ ・ せやから、つまりよ??
イワノが留守にしとる短い間にはなるんやけど ・ ・ ・ ・ ・ ・ ちょっくら皇居に遊びに来ぃひんかなぁ〜 ・ ・ ・ なんて思ぉてみたり ・ ・ ・ ・
仁徳天皇
って ・ ・ ・ 何をゆーとるんやオレは ・ ・ ・ ・ ・ それはあかんやろ ・ ・ ・
ヤタノワキ
えっ? ・ ・ ・ うそっ ・ ・ ・ ・ ・
しかし彼女はその言葉を聞くと、急に涙を流して顔を両手で隠してしまう。
仁徳天皇
おぉっ!?ヤタ!?どないしたっっ!?
ヤタノワキ
ごめん ・ ・ ・ ・ ・ そんなこと言ってくれるなんて思ってもみなかったから、すごく嬉しくて。
仁徳天皇
ヤタ ・ ・ ・ ・ ・
ヤタノワキ
サザキ兄が天皇になてから、もう ・ ・ ・ サザキ兄のこと、遠くからしか見れないんだって思ってたから ・ ・ ・ ・ ・
ヤタノワキ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 夢みたい。
そしてヤタノワキは、パアッと涙交じりの笑顔を向けてきた。
仁徳天皇
あ ・ ・ ・ ・ ムリやわこれ。理性ブッ飛ぶ。
こうして片時もヤタノワキを離したくなくなってしまった仁徳は、そのまま彼女を皇居に連れて帰ってきてしまった。
そして、早速そのまま仕事部屋で彼女の服を脱がしにかかる。
ヤタノワキ
いや、ちょ ・ ・ ・ ・ サザキ兄、仕事は??
仁徳天皇
ん〜?ヤタ、知らへんの??イワノがおらん間は、朝廷ホリディ中やから、仕事せんでもえぇねん♡
ヤタノワキ
・ ・ ・ んなこと言ってると、帰るわよ?
仁徳天皇
はい。すんません ・ ・ ・ ・ ・ はよ終わらせます。
ヤタノワキ
はぁ、まったく。じゃあ、私は向こうの部屋で本でも読んでよっかな。
と、ヤタノワキが席を外そうとすると、仁徳は彼女の腕を掴んだ。
仁徳天皇
アホ。ヤタがおってもやれるから、ココにおれや。
ヤタノワキ
え、でも ・ ・ ・
仁徳天皇
今しか一緒におられへんのやもん。
ヤタノワキ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ うぅん。
そして、仁徳はイワノのいない皇居で昼夜問わず、ずぅぅーーーっとヤタノワキと一緒に過ごした。
周りには信頼できる家臣だけを置き、
仁徳天皇
コレ本当、ホンマのお願い!!イワノにはバラさんでっ!!
と、頼み込む。
しかし、こんな大スキャンダル、恋バナ好きの家臣たちが放っておく訳がない。仁徳の努力虚しく、噂はあっという間に国中に広まってしまった。