日本神話『天孫降臨』
天孫降臨
オモヒカネ
・ ・ ・ あからさまに怪しいですね。ニニギを危険な目に遭わせる訳にはいかない。おじちゃんが、全力で守るっっ!!!
アマテラス
オモヒカネ ・ ・ ・ ・ ・ ・
どうやら、彼の中でオシホミミの件は脳内消去されたようだ。
アマテラス
人が精神的に追い詰められると記憶を無くすことがあるって聞いたことあるけど ・ ・ ・ どんだけ妹、好きなんだよ。
オモヒカネ
アメノウズメに様子を見てきてもらいましょう。彼女は、か弱そうに見えて物怖じしない性格ですし、どんな男でも油断させる不思議な力を持っている。
アマテラス
・ ・ ・ うん、そうね。
アマテラス
取り敢えず、いつもの調子に戻ったので良しとしよう。
2人は一度神殿に戻り、アマテラスを天岩戸から出す時にダンスで大活躍したウズメに、わざわざあのダンス衣装を着せて、光る人の様子を見てくるように頼んだ。
ウズメは、小走りで光る人に近づいて行った。光る人が、急にそわそわし出す。彼女の胸元から視線を逸らすのに必死の様子だ。
遠くから様子を覗いていたアマテラスとオモヒカネは、目を見合わせ『よしっ!』と頷いた。
アメノウズメ
こんにちわ。ねぇ、おじさん、だぁれ??そんなところで何してるの??
サルタビコ
はっっ ・ ・ ・ ・ ・ ・ !!おっぱ・・いや、えっと ・ ・ ・ ・ ・ ・ 私は、サルタビコと申しまして ・ ・ ・ えぇと ・ ・ ・ ・ ・ ・ あの、国つ神なんですが、その ・ ・ ・ 天つ神の御子がいらっしゃるって聞いて ・ ・ ・ ・ ・ ・ その ・ ・ ・ 道案内に ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
アメノウズメ
ふぅん?じゃあ、おじさん優しい人なんだ??
サルタビコ
は ・ ・ ・ はいっ、優しい人です!!
アメノウズメ
そっかぁ~~おっけー♪♪じゃあ、準備してくるから、ちょっと待っててね!
サルタビコ
は ・ ・ ・ はいっっ!!!
アメノウズメ
・ ・ ・ とゆうわけでございますたっ♪♪
ウズメは元気よくアマテラスに報告をした。
アマテラス
そっか。変な人じゃなくてよかった。じゃあ、いつまでも待たすのは申し訳ないし、こっちも早く準備しなくちゃね。
アマテラスは報告を受けると、天岩屋戸の時に活躍したコヤネ、フトダマ、ウズメ、イシコリドメ、タマノヤの5人に、ニニギと一緒に葦原の中つ国に降りるよう指示を出した。
また、オモヒカネ、タヂカラオ、アメノイワトワケには、ヤサカの勾玉、八咫鏡、草薙の剣を預け、ニニギのサポートを頼んだ。
メンバーが旅支度を済ませると、続々と、
アメノコヤネ
岩戸のメンツが久しぶりに勢ぞろいだな。
コヤネが懐かしそうに笑った。
フトダマ
うん、懐かしい!
フトダマが相づちを打つ。
アメノタヂカラオ
お前も大人になったよなぁ!!
タヂカラオはアマテラスの頭をポンポン叩いた。
アマテラス
うっ ・ ・ ・ うるさいわねっ!!私が一番信頼してるメンバーなんだからっっ!!!頼むわよ??
アメノウズメ
あいあいさぁー♪♪
ウズメが楽しそうに手を上げる。
アマテラス
それと ・ ・ ・ ・ ・ ・ ニニギ ・ ・ ・ これをあなたに授けるわ。
アマテラスはオモヒカネ、タヂカラオ、アメノイワトワケの3人を呼び、大切そうに3つの道具を渡した。
ニニギ
・ ・ ・ ・ ・ ・ これは?
アマテラス
"三種の神器"よ。
これは、八咫鏡と、八尺瓊の勾玉。私が挫けそうだった時に助けてくれたアイテム。で、これが草薙の剣。弟のスサノオが人生のドン底から這い上がった時に授かった剣。
特にこの"八咫鏡"は私の変わりだと思って、大切に祀ってね。
三種の神器を受け取ると、ニニギはずっしりと自分の責任の重みを感じた。
ニニギ
・ ・ ・ ありがとうございます。大切にします。
アマテラス
この国はね、イザナギとイザナミが産んで、オオクニヌシが育てて、私たちが譲ってもらった、大切な国なの。
だから、この国に住んでいる人たちのこと、宝物みたいに大事にしてね!
ニニギ
はい、わかりましたっ!
アマテラス
うん。ニニギなら大丈夫よ。だって、私の孫だもの!!!
ニニギ
はいっ!
アマテラスはニニギの純粋な笑顔を見て、『きっとこの子たちなら、オオクニヌシにも自慢できるような素敵な国にしてくれるだろう。』と確信を持つことができた。
そして、彼女は最後にオモヒカネに声をかけた。思えば彼には天岩屋戸事件からずっと世話になりっぱなしだ。
アマテラス
・ ・ ・ ・ ・ ・ それじゃあ、オモヒカネ。ニニギのこと、よろしくね。
オモヒカネ
アマテラス ・ ・ ・ ・ ・ ・ ニニギと天降りさせていただいて、ありがとうございます。
アマテラス
いいのよ。こっちは、もう落ち着いてるし。 ・ ・ ・ 政治のこと、サポートしてあげてね。今まで、本当にありがとう。
オモヒカネ
こちらこそ。ありがとうございました。
オモヒカネ
・ ・ ・ ・ ・ ・ 私がいなくても、こまめにお部屋の片付けしてくださいね。
アマテラス
ぶー。大丈夫よっ!!
アマテラスが頬をぷっくり膨らますと、周りのみんなにケタケタ笑われてしまった。
その笑い声が消えると急にシンと静かになる。
アマテラスは慌てて、言葉を続けた。
アマテラス
あ、えっと、 ・ ・ ・ ・ ・ ・ それじゃぁね、みんな。
そう言って、笑顔で軽く手を振った。
ニニギ
はい ・ ・ ・ ・ ・ ・ 行って参ります!
ニニギが大きく手を振り返すと、天降りメンバーはサルタビコの後に続いて一斉に葦原の中つ国に向かった。一行がどんどん小さくなっていく。
最後まで、高天原のトップらしく毅然とした態度を ・ ・ ・ と考えていたアマテラスだったが、気が付けば必死でニニギたちに手を降っていた。
そんな侍女に構わず、ニニギに向かって彼女は大声で叫ぶ。
アマテラス
ニニギぃ!!
・ ・ ・ ・ ・ ・ 私 ・ ・ ・ 私っ、いつでも見守ってるからね!!!
あなたのことも ・ ・ ・ あなたの子供も、孫も、子孫も、これから作り上げる国も、この国に住む人たちも ・ ・ ・ ・ ・ ・
みんなのこと、ずっと、ずっとぉ ・ ・ ・ ・ ・ ・ !!!
ニニギ
はぁいっ!!
ニニギが最後にもう一度振り返って大きく手を振ると、そのまま雲の向こうに見えなくなってしまった。
アマテラスは、涙をぽろぽろ流しながら、みんなが行ってしまった先をいつまでもいつまでも見つめていた。
アマテラス
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ はぅ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ぐすっ ・ ・ ・ ・ ・ ・ いや、泣いてないもん。
こうして舞台は地上へと移ってゆく。
一行が八重に重なり合う雲をかき分けかき分け行き着いた場所は、
すると、高天原から遅れて追ってきた、アメノオシヒとアマツクメの2人が、弓入れと、弓矢と、太刀を持って岬に立ち、ニニギに差し出した。どうやらアマテラスからの追加の贈り物らしい。
『都会に旅立つ孫へのお土産かよ!』とツッコミたくなる量の贈り物を見て、その場にいたメンバーは、『アマテラスももう、おばあちゃんなんだな。』と笑った。
こうして初めて葦原の中つ国に降り立ったニニギは目を輝かせた。
ニニギ
ここなら、海の向こうの韓国も望めるし、笠沙の岬から本島までまっすぐ道が続いています。朝日がよく見えて、夕日も綺麗に照らしてくれるでしょう。アマテラちゃまも見守りやすいとても素敵な場所ですねっ!!
オモヒカネも
オモヒカネ
そうですね ・ ・ ・ あれでいて寂しがり屋だから、きっと見えやすいところの方が喜ぶと思います。
ニニギ
えぇ、始まりの場所にピッタリですね!ここに宮殿を建てましょう。
ニニギたちは、少しでも高天原から見えやすいようにと、空高く柱を立て、宮殿を築いた。
こうして天つ神の葦原の中つ国生活が始まった。