天皇記『大長谷王子の挙兵』
大長谷王子 の挙兵
オオハツセは皇居に戻ると、この短時間で
大長谷命
おい、テメェらっ!!今から天皇の
その場のノリで、兵士達はオオハツセの後に続いた。
こうしてついに自分の軍を
一方、ツブラの方も軍を
オオハツセの軍はその威圧感に足を止めた。
しかし、大将のオオハツセは物怖じしない。
大長谷命
ふぁぁぁ ・ ・ ・ っっ!!!
むしろ、なんだか楽しそう。
大長谷命
おいっ!!テメェら、行くぞっ!!!!俺様に続けっっ!!!!
オオハツセは
兵士達はオオハツセに
お互いに打ち合った矢が、まるで
これはイケるっっ!!!
兵士達の期待が高まる中、オオハツセは敵を
まるで、もう勝利したかのようだ。
大長谷命
オイッ!!ツブラっっ!!!聞こえるかっ!!!!
都夫良
はっ!!
その声を聞いたツブラが
オオハツセは立ち止まったまま、また叫ぶ。
大長谷命
この前、俺と言い交わしたの女が、その家にいるはずだ。このまま殺るには
都夫良
はっ!少々お待ちください。その件、直接お話いたしましょう!!
そう答えると、ツブラは屋敷の外に出て、自らオオハツセの前まで出向き、身につけていた武装を解いた。
そして、目の前で8回も
大長谷命
・ ・ ・ ・ ・
都夫良
オオハツセ様 ・ ・ ・ ・ ・ あなたが先ほど問われた乙女は、私の娘のカラヒメです。彼女はオオハツセ様に
大長谷命
そうか。
ツブラの軍は降参を覚悟しながら、複雑な想いで2人の会話を見守った。
都夫良
また、カラヒメと共に5箇所の
その言葉に、『これまでか』といった
大長谷命
フンッ!降参ってワケか。わかった。したら、さっさとマヨワも引き渡してもらおうか。
しかし、ツブラの答えは予想外のものだった。
都夫良
いえ、申し訳ございません。マヨワ様を引き渡し、私自身がそちらにはお仕えすることはできません。
大長谷命
ああ?
都夫良
理由を申しますと、私どもは
大長谷命
・ ・ ・ ・ ・
都夫良
このことから至った結論ですが 、私めはマヨワ様のために全力を尽くし、最後まで戦わせていただく所存です。
大長谷命
ほう?
都夫良
もちろん、オオハツセ様に勝つ見込みが無いことは、重々承知しております。
都夫良
しかしながら、私を頼ってくださり、今も私の家で待つマヨワ様のことは、この命に代えても見捨てるわけにはいかないのです。
大長谷命
・ ・ ・ ・ ・ そうか。
大長谷命
わかった。もういい、下がれ。
都夫良
はっ。失礼いたします。
そう言うと、ツブラはまた武具を取り自分の陣へと帰っていく。
大長谷命
・ ・ ・ ・ ・ ふっ、かっけぇな。
都夫良
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
大長谷命
おい、ツブラ。負けんのが分かってるからって手加減すんなよ?
都夫良
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ もちろんです。
大長谷命
はっ!そりゃ、いい。
都夫良
我が軍は、
大長谷命
はーん?
都夫良
数では
大長谷命
はっっ!!!いいな、そーゆう武士道っぽいやつ!俺、好きだぜ??
都夫良
ありがとうございます。では。
オオハツセはツブラを背後から攻めることも無く、黙って見送る。
大長谷命
殺るには、惜しいな ・ ・ ・
そしてツブラの戦闘態勢が整うと、また笑みを浮かべた。
大長谷命
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ でも殺す。
オオハツセは嬉しそうに戦闘再開の合図を掲げた。
大長谷命
行くぞっ!!!こっから一気に負かすっっ!!!!
勢いに乗ったオオハツセ軍が、武器を掲げて走り出す。しかし、ツブラの軍も負けてはいない。
都夫良
行けっ!!我々は、最期の時までマヨワ様をお守りする!!
戦闘は双方
やがてお互いの体力も無くなり、矢も底を尽きると、オオハツセ軍しか立っている兵士が見当たらなくなった。
オオハツセ軍の勝利だ。
大長谷命
はぁ ・ ・ はぁ ・ ・ ・ ・ ・ やったか。
家臣
はっ!
大長谷命
くっそ、コッチもだいぶ殺られたな ・ ・ ・ ・ ツブラはまだ生きてるか?
辺りを見渡すと、家に向かって歩くツブラと目が合った。どうやら、かなり深手を負っている様子だ。
都夫良
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ツブラはペコリとこちらに頭を下げると、家の中に入っていく。
家臣
・ ・ ・ ・ ・ ・ 追いますか?
大長谷命
いや、いい。
家臣
はぁ。
大長谷命
あとは任せた。生きてるのがいたら、ツブラの兵も拾っとけ。
大長谷命
俺は疲れた。帰って寝る。
家臣
え?あっ、はっ ・ ・ ・ ・ はい、わかりました。
勝ちが決まると、オオハツセはさっさとその場を引き上げた。
家に入ったツブラは、足を引き摺りながらマヨワの
扉を開くと、7才とは思えない大人びた表情でこちらを見られ、足が止まる。
都夫良
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
目弱王
ツブラ、ご苦労様です。
都夫良
ああ ・ ・ ・ ・ 目元がオオクサカ様によく似ていらっしゃる。
ツブラは、膝をついて
都夫良
マヨワ様、ご報告致します。我々の軍は
目弱王
そうですか。であれば、もうこれ以上できることはありませんね。
都夫良
はっ、申し訳ございません。
目弱王
いいえ。ツブラ、最後までありがとうございました。
そういうと、マヨワはツブラの元に駆け寄って抱きついてきた。
怖いのか、震えている。
都夫良
小さいな ・ ・ ・ ・ ・ ・ まだ7つか。
目弱王
ツブラ、ごめんなさい。ボクがここに来なければ、みんな死ななかったのに ・ ・ ・ ・ ・
都夫良
・ ・ ・ いいえ、マヨワ様が
目弱王
ごめんなさい ・ ・ ・ ・ ・ ・
マヨワはしばらく押し黙った。
都夫良
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
彼が何を言おうとしているのか分かったツブラは、黙って待つ。
目弱王
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ふー ・ ・ ・
深く深呼吸をすると、マヨワはツブラの耳元で静かに最期の指示を出した。
目弱王
ツブラ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ここでボクを殺してください。
都夫良
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ わかりました。
都夫良
私もすぐに参ります。ご安心ください。
ツブラは刀を持ってマヨワを刺し殺すと、すぐに自分も首を切って自害した。