天皇記『志毘と大魚』
志毘と大魚
オケとヲケが無事に播磨で見つかったので、なんとか跡継ぎ問題が解決し、そのうちどちらかが天下を治めよう、というアバウトな話になった。
飯豊王
つーことは、結局しばらくは私が天皇代理なんじゃないかーい!!
飯豊王
あれ?いやでも、彼氏作りは解禁??
オケ
イイトヨ姉、変わらないなぁ ・ ・ ・ ・
ヲケ
うん。なんか、帰ってきたって感じする。
それから数年後。2人はいい感じに成長し、
ちなみに『歌垣』とは、当時の『街コン』のようなものだ。
オケ
ヲケ、歌垣の初参加、頑張ってな!
オケ
オレは今回パス。
ヲケ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 薄情者。
オケ
え、何て?
ヲケ
いいえ、ごめんなさい。なんでもないです。行ってきます。
オケ
ふっ!いってら。
オケ
朝まで帰ってくんなよ??
ヲケ
ぐぅぅぅぅ。
なので逆に、早めに帰ると母親にやたら優しくされたり、父親に後ろから肩をポンと叩かれウンウンと頷かれたり、切ない思いをする羽目になるので、できる限り朝帰りしたいイベントだ。
ヲケ
ああ、ただでさえ初参加で緊張してるのに ・ ・ ・ ・ 本当、最悪だよ。
ヲケはブツブツ文句を言いながら、
そこには、お目当ての女の子『
ヲケ
でも、大魚 ・ ・ ・ ・ 本当に綺麗だったもんな ・ ・ ・ ・ ・
つい先日、ヲケはここら辺で一番美人と言われる
どうやらライバルも来るらしい。
ヲケ
はぁ。
普段から事あるごとに突っかかってくる、ヲケの天敵だ。
しかも、志毘の父親の
なので、「最近帰ってきた天皇の孫」と「国を支えてきた大臣の息子」、大魚はどっちを選ぶのか!?などという、スキャンダラスなネタが世間を騒がせてしまい、今日は多くの野次馬が予想されていた。
ヲケ
へへへ。なんでこうなっちゃったかなぁ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 相手は都会育ちの金持ちのボンボンでしょう??
ヲケ
それに比べてコッチは国が大変な時に田舎で馬&牛飼してた
ちなみに「
ヲケ
あ、でも、男でマグロか。僕が女だったら絶対に付き合いたくないし、案外楽勝??
ヲケ
それにぶっちゃけ、
ヲケがブツブツ独り言をつぶやきながらメイン会場に着くと、人だかりの向こうにすぐ
ヲケ
ふぁっ ・ ・ ・ 大魚だ ・ ・ ・ ・ やっぱ、めちゃめちゃ美人 ・ ・ ・ ・ ・ ・
にしても、すごい野次馬の数だ。手前の何人かがヲケに気付いて道を開ける。
ヲケが気まずそうにその人だかりに近付くと、その中心で大魚が誰かに手を取られ、恥ずかしそうに会話をしているのが見えた。
ヲケ
・ ・ ・ ・ げ。志毘じゃん。
なんと、すでにライバルの
ヲケ
最悪。
ヲケが
志毘
あれ?なんだ。
志毘は
なんだか、すっごく嫌な感じ。
しかも、
志毘
ふっ!そちらさんの宮殿は
なーんて、いきなり超失礼な歌を詠ってきた。要は「随分ゴタゴタしてるけど、天皇家って傾きかけてんじゃない??」って意味だ。
野次馬は『待ってました』と言わんばかりにヲケの反応を待つ。
ヲケ
は?いやいや。
ヲケは失礼な歌を軽く流した。訳さなくてもわかるけど、「家臣がシッカリしてないからでしょ??」って意味だ。
今度は
志毘
フンッ!よく言うよ。
志毘
天皇陛下は随分と心に緩みがあるようで。
家臣の子の家の
ヲケ
ん??いや、僕、天皇じゃないけど。この野次馬を八重垣に例えたの??
ヲケ
やっぱりムカつく。
ヲケは違和感に気付きながらも、目の前の挑発にガッツリ乗る。
ヲケ
え、何?八重垣??この波のこと??
確かに海で波が折り重なってるみたいだね。しかも
ヲケ
てか、そこのマグロのヒレに引っかかってるの、僕の奥さんになる人じゃない??ねぇ、大魚、大丈夫??そっちいると生臭くなるよ??
なんか、一応、これも歌なんだけど、ただの悪口の言い合いにしか聞こえない。2人の様子を大人しく見守っていた
その反応に志毘もキレた。
志毘
クソ、バカにしやがってっ!!!
志毘
そーいや、
志毘
むしろお前ん家の柴垣なんか焼けちまえ!!!
ヲケ
はぁ??何言ってんの??それ普通に
ヲケ
つーか、どう考えたって、志毘に大魚はもったいないでしょ。志毘は志毘らしくマグロ突いてりゃいいんだよっっ!!!!
ヲケ
志毘なんか漁師に突かれて散ってどっか行ってしまえ。遠くからコッチを恋しく思って心底
志毘
なんだとっっ!!!そっちのゴタゴタをどんだけ親父が尻拭いしてやってると思ってんだっ!!!!なぁにが
ヲケ
はーー!!!んなこと言っていいんですかー??
ジャ●アンが人権問題で叩かれたの知らないの???早めに謝っといた方がいいんでない????
ヲケ
ほらほら。今なら許してあげるから。Repeat after me!「ワガキミゴメンナサァーイ★」
志毘
あああぁぁ???言うわけねぇだろ、このバカっっ!!!!!
志毘
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ゼェ ・ ・ ・ ゼェ ・ ・ ・ ・
ヲケ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 疲れた ・ ・ ・
志毘
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ヲケ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
志毘
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 帰るか。
ヲケ
だね ・ ・ ・ ・
こうしてヲケは、
ヲケが全く意味の無い徹夜明けに、げんなりしながら廊下を歩いていると、誰かに後ろから声を掛けらる。
オケ
おーっっ!!ヲケ、おかえり!!あの大魚を口説いて朝帰りするなんて、やるじゃんか。
兄のオケだ。
ヲケ
!!
オケ
童貞卒業おめでとう。今晩は赤飯炊かないとなっ!!
彼の嬉しそうなテンションに、心がポッキリと折れたヲケは、泣きっ面でオケの足にすがりついた。
ヲケ
うわぁ~~ん!!聞いてよ兄ちゃーんっ!!!!
オケ
わっ!?どーしたんだよ。何かあったのか??
ヲケは、半べそをかきながら昨日の出来事を伝える。
オケ
・ ・ ・ ・ ・ ありゃりゃー。なるほどねぇ。
ヲケ
志毘のやつ、超上から目線で見下してくるんだもん、すげームカつく。
オケ
そうだなぁ ・ ・ ・ オレらの育ちもあるから、ナメられてるんだろう。
ヲケ
しかもさ、朝は朝廷で働いてる人たちが、昼になると志毘の家に集まってるの知ってるだろ??しかも、もろ『見張りです!』みたいな人が門の前いてさ。
ヲケ
あいつん家、絶対何か
オケは、腕を組んで
オケ
そうだな。
ヲケ
このまま黙ってらんないよっっ!!
オケ
ああ、そうだな。志毘は今、朝帰りで疲れて確実に寝てるだろうし。
ヲケ
うん。そう。だから明日にでも ・ ・ ・ ・
オケ
は?明日じゃ遅いでしょ。
ヲケ
えっ?
オケ
今なら朝だから、あの門にも人はいない。
ヲケ
あぁ、えっとー。今?門??
オケ
そ。つまり、今殺らないと次のチャンスはいつになるかわからない。
ヲケ
・ ・ ・ ・ ・ ・ チャンス?
オケ
行こうか。
ヲケ
え?
オケ
今から志毘を謀反の罪で処刑する。
ヲケ
えっ ・ ・ ・ ・ 処刑??
オケ
そ。当たり前だろ?謀反を企んでるんだから。
ヲケ
あっ、謀反 ・ ・ ・ そっか ・ ・ それはそうか ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
オケ
行くよ、ヲケ。
ヲケ
・ ・ ・ あ、うん ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
こうして2人はすぐに軍を起こし、
オケ
・ ・ ・ ・ ・ ちょうどいいのがいて良かった。
ヲケ
え??
オケ
うぅん。なんでもない。
オケとヲケは皇居の外で育ったため、皇族や朝廷ならではの細かいルールに
オケ
でもこれで、上下関係がはっきりできた。志毘の下に付いていた奴らが、掌返して頭を下げて来るのが今から楽しみだよ。
ヲケ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 兄ちゃん??
オケ
ヲケ?
ヲケ
え?
オケ
志毘みたいなヤツにこれ以上、変な気を起こさせないためにも、ここでの生活や伝統のこと、オレらもちゃんと勉強しような。
ヲケ
あっ、うん ・ ・ ・ わかった ・ ・ ・ ・ ・ ・
志毘が謀反の罪で処刑されたことを知った豪族たちは、オケの読み通り、この日から掌を返したように態度を改めた。