天皇記『葛城山の猪』
葛城山の猪
ある日、雄略は狩りをして遊ぶため、お供と2人で

雄略天皇
この辺で手分けするか。

家臣
はい、わかりました。
山の

雄略天皇
ん?何かいる??
音のする方へ細心の注意を払いながら近づくと、茂みの奥に大きなイノシシがいた。狩り好きの雄略も、こんなに大きなイノシシを見るのは初めてだ。

イノシシ
ブフッ ・ ・ ・
まるで、例のあのジブリ映画に出てきた山の神みたい ・ ・ ・

雄略天皇
・ ・ ・ ・ っっかっけぇ!!殺すっ!!!
雄略はわざわざ、

雄略天皇
フンッ!!あの部下にも、この俺様のカッコイイ姿を拝ませてやろうっっ!!!
そして射った。
その矢は見事に、イノシシの脇腹に命中する。

家臣
おぉ!
と声をあげ、雄略もドヤ顔をする。

雄略天皇
フン!
・ ・ ・ ・ しかし、なんだか様子が変だ。
矢が深く刺さっているはずのイノシシは、倒れる様子がない。それどころか、

イノシシ
ブフンッッ!!!
っと、ものすごい迫力で鼻を鳴らし雄略を睨みつけてきた。

雄略天皇
あれっ??矢ぁ、刺さってんのに ・ ・ ・ ・ ・ ・ 全然効いてない???

イノシシ
グォッ グォッ ・ ・ ・ ・
イノシシは高い声で唸りながら、ゆっくりと雄略の方に近寄って来る。

雄略天皇
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
雄略はサアッと血の気が引くのを感じた。そしてイノシシから視線を逸らさないように、ズズズと徐々に後ろへ下がる。

家臣
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
お供もその様子を、

雄略天皇
落ち着けぇ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 落ち着け、俺ぇぇ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
そして、雄略は心の中で静かにカウントした。

雄略天皇
3 ・ ・ ・ 2 ・ ・ ・ 1 ・ ・ ・ ・ ・ ・
雄略が勢いよく踵を返すと、それを合図にイノシシも全速力で突進してくる。

家臣
陛下ああぁぁぁ!!!
後ろの方で、お供の叫ぶ声が聞こえる。
正直、こんな姿、自分の部下には見られたくなかった。
でも、今はそんなことどうだっていい。
だって、止まったら、死ぬんだもん。

雄略天皇
ギャァァァァア!!!!!
しかし、あっという間に追いつかれてしまい、今にも後ろからド突かれそうだ。しかも目の前に大きな

雄略天皇
クソッ!!!!
雄略は
その瞬間。
イノシシの激しい突きで、

雄略天皇
うわっ!!
雄略は手を滑らせたが、落ちたら死ぬ。

雄略天皇
クッ!
必死に枝にしがみつく。
そうしているうちに、イノシシは第二派のために助走をつけている。

雄略天皇
やばいやばいやばいやばい!!!!!
雄略はさらに木の上まで登り強くしがみついた。
定期的な間隔で
雄略は恐怖で半泣きになりながら、その場で歌を詠い出した。

雄略天皇
俺様、天下を治める天皇なのにっ!!!遊んで射ったイノシシが!!!しかも怪我して弱ったイノシシが!!!!!

雄略天皇
怖すぎてなんにもできねぇよっっっ!!!!
イノシシの攻撃はまだ続いている。

雄略天皇
えだっ ・ ・ ・ ・ ・ 枝 ・ ・ ・

雄略天皇
え?あれ、どうしよう。これって走馬灯??これが走馬灯なのかな????
イノシシは散々、
そして、

イノシシ
てめー、今度ふざけた真似しやがったらタダじゃおかねぇからな??
とでも言わんばかりに、鼻息を

イノシシ
ブフッッ!!!
と鳴らすと山の奥に帰って行った。

雄略天皇
ふぁ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ふあぁぁ ・ ・ ・ たすかった ・ ・ ・ ・ ・ のか??
イノシシが去るのを確認すると、お供が慌てて駆け寄ってくる。

家臣
陛下っっ!!!!大丈夫でしたかっっっ!?!?
榛木からズリ降りた雄略は、その場で体育座りをしてうずくまった。

雄略天皇
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ぐすっ。

家臣
お怪我はありませんでした??

雄略天皇
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ こわかった ・ ・ ・ ・ ・

家臣
ごめんなさい、すぐに助けに来れなくて ・ ・ ・ ・

雄略天皇
ころす ・ ・ ・ ・

家臣
すみません。

雄略天皇
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
お供が申し訳なさそうに、雄略の背中をさする。

雄略天皇
なっ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ なぁ、あのさ ・ ・ ・ ・ ・

家臣
はい?

雄略天皇
・ ・ ・ ・ ・ すぐに助けにこなかったこと ・ ・ ・ 責めて殺さないからさ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

家臣
はぁ。

雄略天皇
その ・ ・ ・ ・ ・

家臣
??

雄略天皇
あんたがイノシシに襲われたことにしろ。

家臣
へ??

雄略天皇
じゃなきゃ、殺す。

家臣
あっ、あぁ!全然いいですよっ!!

雄略天皇
え、いいのか ・ ・ ・ ?

家臣
お役に立てて、光栄です。とにかくご無事で何よりでした。

雄略天皇
バレたら殺すぞ?

家臣
ふふっ!大丈夫ですよ。絶対に口外しませんから。ご安心ください。

雄略天皇
そうか ・ ・ ・ よかった ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
こうして日本書紀の方には、家臣がイノシシに襲われ、
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※ストーリーの関係上、ラノベ訳と原文が前後している箇所があります。