日本神話『コノハナサクヤヒメ』
コノハナサクヤヒメ
そんなある日、
そのついでに、ウズメが1人でサルタビコに声をかけた時の勇気を称えて、名前をあげた。
ニニギ
ウズメさん、これからは、サルタビコの名前をもらって、『
サルメノキミ
わぁい♪♪ありがと~~!!ウズメ ・ ・ ・ じゃないや、サルメ頑張る~!!
名前をもらうことは、その人の力も貰うことを意味している。サルメは華奢な身体にサルタビコの強靭な力を手に入れたのだ。
ニニギ
ある意味最強だなぁ~。
と思いながら、ニニギは2人を送り出した。
それから数週間後、サルメとサルタビコが結婚したと風の噂が届き、しばらくの間、
しかし、サルメが何事も無かったかのような顔で帰って来たので、ニニギは気になって、サルメにサルタビコの様子を聞いてみた。
ニニギ
サルメさん、サルタビコさんは無事、故郷に帰れました??
サルメノキミ
ん〜、たぶん大丈夫~。
ニニギ
えっ、故郷まで一緒じゃなかったんですか??
サルメノキミ
う〜ん、途中まで一緒だったんだけどね、なんか、おじさんが海で釣りしたいってゆうから、サルメ、待ってたんだけど・・・
ニニギ
・・・釣れなかったんですか?
サルメノキミ
ううん。おじさん、釣りの途中で手を貝に挟まれちゃってね、海の中から帰って来なかったから、サルメ帰ってきちゃった。
ニニギ
えっ!?サルタビコさん、大丈夫だったんですか!?
サルメノキミ
へへ、サルメ、わかんないっ☆
ニニギ
・・・・・・
その後のサルタビコの消息は不明だが、今でも伊勢神宮の近くの猿田彦神社に祀られており、サルタビコの子孫が宮司をしているので、たぶん生きてたんだと思う。
サルメノキミ
それで、帰りにサルメね、国造り頑張ってるニニギちゃんのお手伝いしようと思って、伊勢の近くで海の仲間たちに『ニニギちゃんのこと、よろしくー』って声かけて来たんだよっ!!
ニニギ
えっ、あ、ありがとうございます。
サルメノキミ
でもね、大きいお魚さんも、小さいお魚さんも、みんな『天つ神の御子だったら、仕えるよー』ってゆってくれたんだけど、ナマコだけ、黙ってたの。
ニニギ
うぅん、そりゃ、ナマコですもんねぇ・・・
サルメノキミ
だからね、サルメ怒って、答えない口はこうだぁー!!ってゆって、ナマコの口、裂いてきたんだっ!!
ニニギ
へっ!?
サルメノキミ
だから、海の仲間たちは、み〜んなニニギちゃんのゆうこと聞いてくれるからねっ!安心してねっ!!
サルメは、輝く笑顔をニニギに向けた。
ニニギ
あ・・・・・ありがとうございます。
この理不尽すぎる事件のせいで、今でもナマコの口は裂けているそうだ。
こうして、サルメとサルタビコの結婚の話については誰も突っ込めなくなり、真相は闇の中となった。
さて。
日々忙しく国造りに励んでいたニニギだが、久しぶりに休みが取れたので笠沙まで散歩に来ていた。
そして、しばらくフラフラ歩いていると、丘の上に女性の姿が見えた。
ニニギは吸い寄せられるかのように、彼女の元へ歩き、声をかけた。
ニニギ
あ ・ ・ ・ あの ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
コノハナサクヤヒメ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ はい?
そう言って、彼女が振り返る姿が、ニニギにはスローモーションに見えた。
ニニギ
『可憐』という言葉がこんなに似合う人がこの世にいたなんて ・ ・ ・ 。
アマテラス、千々姫、サルメなど、ドギツイ性格の女性に囲まれて育ったニニギにとって、彼女の存在は奇跡のように思えた。
ニニギ
あ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ えっと、遠くから、あなたのことが見えたから ・ ・ ・ ボクは、ニニギです。 ・ ・ ・ あなたは?
コノハナサクヤヒメ
私は ・ ・ ・ ・ ・ ・コノハナサクヤヒメと申します。
ニニギ
コノハナサクヤヒメ??名前まで可愛いんですけどっ!!え?うそ?どうしよう。可愛過ぎて困る。
ニニギ
でも、 なんか ・ ・ ・ なんか話さなくっちゃ!!スサノオ様も、オオクニヌシ様も一目惚れした相手をGETして来たって聞くし、ボクだって!!
ニニギ
あ、いや、でも、何を話したらいいかわからない ・ ・ ・ どうしよ。沈黙が続いちゃってる!!何かっ ・ ・ ・ なにか話題っっっ!!
ニニギ
・ ・ ・ ・ ・ ・ あのっ!!!!
コノハナサクヤヒメ
??
ニニギは目をつぶって頭を下げ、握手を求めるように右手を前に出した。
そして、大声で彼女へのまっすぐな想いをぶつけた。
ニニギ
ヤらしてくださいっっ!!!
コノハナサクヤヒメ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ はぁ?
彼女のビックリするほど冷たい『はぁ?』という声にニニギは戸惑った。
ニニギ
あれ?ボク何かまずいこと言った??
ニニギ
ていうか、今、ボクなんて言った??
ニニギ
ボク、今 ・ ・ ・ なんて ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
つい先ほどの回想と共に、ニニギの全身から血の気が引いた。
ニニギ
・ ・ ・ ・ ・ ・ はっ! ・ ・ ・ いやっ!!違っっ!!!!!
ニニギ
やっちまったぁぁーーー!!!!
頭を抱えて項垂れたニニギの姿を見ると、サクヤヒメは彼に悪意はなかったと判断したようで、くすくす笑いながら返事をくれた。
コノハナサクヤヒメ
えっと、ごめんなさい。父上に聞いてみないと ・ ・ ・ 私じゃ答えられません。
それは予想外の答えだった。
ニニギ
えっっ?聞いてもらえるんですか??父上って?
コノハナサクヤヒメ
山の神、オオヤマツミノ神です。ニニギ様はどちらの方なんですか?
オオヤマツミと言えば、イザナギとイザナミが、神産みの時に産んだ山の神だ。ニニギは運命を感じた。
ニニギ
そうでしたか!ボクは日向の宮殿から来ました。アマテラスの孫です。
コノハナサクヤヒメ
天照大神様の???
まぁ!それはきっと父上も喜ぶわ!!私、姉もいるんです。もしかしたら姉も一緒にって話しになるかも ・ ・ ・ まずは一度、帰らせていただいてもいいですか?
ニニギ
え?お姉さんもですか??わ ・ ・ ・ わかりました。宮殿でお待ちしています!!
ニニギ
やったー!!お姉ちゃんって ・ ・ ・ 絶対美人じゃんっ!!ちょー楽しみなんですけどっ!!アマテラちゃま!!!ネームバリューをありがとうっっ!!!
2人はそのまま別れ、ニニギはスキップをしながら宮殿に戻った。
それから数日後。
約束通りサクヤヒメは日向の宮殿まで足を運んでくれた。 しかし、お姉さんは来てくれなかったようだ。代わりに侍女らしき人が隣にいる。
いやしかし、人の顔をどうこう言うのは趣味じゃないけど、ものすんごくブサイクな侍女だ。
ニニギ
サクヤヒメが隣にいるからって言うのもあるんだろうけど ・ ・ ・ こんな笑っちゃうくらいのブスは初めて見たな。
ニニギは悪いなと思いながらも、くすっと吹いてしまった。
サクヤヒメはニニギの前まで来ると、三本指を付いて、おしとやかに頭を下げた。やはり彼女は本当に見惚れてしまう美しさだ。
コノハナサクヤヒメ
ニニギ様、父上に結婚の許しをもらって参りました。コノハナノサクヤヒメと ・ ・ ・ ・
イワナガヒメ
私が姉のイワナガヒメでございます。
ニニギは笑顔のまま固まった。
ニニギ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ え?
ニニギ
いや、ちょ、ごめん。 ・ ・ ・ どこの誰が姉って言いました?
イワナガヒメ
私でございます。
ニニギ
えっ!?あんた侍女じゃなかったのか!?
イワナガヒメ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ニニギ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
イワナガヒメ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ニニギ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
イワナガヒメ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ニニギ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ えっと。
ニニギ
あの、ごめんなさい。
ブスはいいです。お引き取りください。
ニニギも三本指を付いて丁重にお断りした。
イワナガヒメ
は??
ニニギ
いや、ブスはいいんです。てゆうか無理なんです。え?だってブスですよね?
イワナガヒメ
しかし、父上はニニギ様の事を思って ・ ・ ・ ・ ・ ・
ニニギ
いやいやいやいやいや ・ ・ ・ ・ ・ ・ ボクのためを思うなら、ブスは控えてください。 本当にごめんなさい。体質的に向かないんです。
イワナガヒメ
でも・・・
ニニギ
だって、君、ブスの限界を超えた究極のドブスじゃないかっっっ!!
イワナガヒメはニニギの暴言に耐えきれず、ブチ切れた。
イワナガヒメ
っっざけんなぁ!!
さっきからおとなしく聞いてやってりゃブスブスブスブスうるせぇなぁ!!!!
父上はな、アンタのためを思って私を嫁にやったんだよ!!!
ニニギ
うわっ、ブスがキレた ・ ・ ・ ・ ・ ・
イワナガヒメ
るせぇ!!コノハナサクヤヒメは、花のように繁栄をもたらすだろうが、散るのが定めなんだ。アンタは、神の子のくせに寿命が来るだろうよ!!
子供も孫も末裔までみーんなねっ!!
イワナガヒメ
私には岩のように永遠の命を守る力があったんだよ!!!
ばーかっ!!フンッ!!後悔したって遅いんだからっ!!ざまぁみやがれっっっ!!!!
ニニギ
えぇ!?そんな設定なんですか!?
イワナガヒメ
今更気付いたって、もう手遅れなんだよっっっ!!帰ってやる!!実家に帰らせていただきます!!! コンチクショウ!!!!
言いたいことだけ言うとイワナガヒメはズカズカと宮殿を出て行ってしまった。ニニギは一瞬慌てたが、彼女を追うことは無かった。
しかし、この事件がキッカケで、天皇家はアマテラスの血筋にも関わらず寿命ができてしまったのだった。