日本神話『スサノオとアマテラスの誓約』
スサノオとアマテラスの誓約
イザナギに日本を出て行くように言われたスサノオは、気が立っていた。
スサノオ
あームカつくムカつく ・ ・ ・ 俺はただ母ちゃんに会いたいって言っただけじゃねーか ・ ・ ・ ・ ・ ・
スサノオがイライラしながら歩くと、周りの木々は腐り、空からは雷が落ちた。
スサノオ
でも、国から出るように言われちまったしなぁ ・ ・ ・。
最後になるだろうから、アマテラスのネェちゃんに顔出してから行くか
そう思い、スサノオは
高天原の神殿にも雷のような轟音が響く。
アマテラス
な ・ ・ ・ ・ なによ、この音??地震???
尋常ではない音に、アマテラスは身を構えた。
すると、オモヒカネが慌てた様子でアマテラスの部屋に飛び込んで来た。オモヒカネはフワフワしているタカミムスビの息子で、とても頭の良いインテリな神だ。
オモヒカネ
アマテラス、大変です!スサノオがものすごい剣幕でこちらに向かって来ています!!
アマテラス
なんですってっ!?あのスサノオが来るなんて ・ ・ ・何か良くないことを考えてるに決まってる!!
アマテラス
まさか、私の国を攻めにっ!? ・ ・ ・ どうしよう ・ ・ ・ 高天原を守らなくちゃ ・ ・ ・ ・!!
アマテラスは慌てて武器庫に駆け込むと、髪を解き男性のようにミズラを結った。
そして、勾玉を連ねた長い髪飾りとブレスレットをお守りにつけ、さらに腕にも防具を装備すると、背には1000本、脇にも500本の矢を入れた。
日本初の男装だ。
アマテラス
よしっ!!
準備が整い表に出ると、スサノオはすぐそこまで来ていた。
アマテラスは威嚇して弓を振り、仁王立ちでスサノオを迎えた。雲が砂ぼこりのように舞い、なかなかの迫力だ。
アマテラス
スサノオ!それ以上、こっちに来ないで!!あんた、何しに高天原まで昇って来たのよっ!?
スサノオ
ネェちゃん ・ ・ ・ なんっちゅー格好を ・ ・ ・ ・ ・
アマテラス
お姉様って呼びなさいっっ!!
スサノオ
・ ・ ・ ・ ・ ・
アマテラス
あんた、あれだけ泣きじゃくってみんなに迷惑かけてたくせに!!今さら何しにきたわけっ!?
アマテラスの問いに、スサノオは不機嫌に答えた。
スサノオ
別にただ泣きじゃくってたわけじゃねーよ。俺は母ちゃんに会いたかっただけだ!
スサノオ
なのに父ちゃんがそんなことは許さないって ・ ・ ・ ・
アマテラス
その腹いせに高天原を奪いに来たってわけ??
スサノオ
違げぇよ!冷静になれよ ・ ・ ・ ・ ・ ・ オネエサマ。話になんねぇ。
アマテラス
私はあんたのことが信じられないの!悪意が無いなら証明してみせなさいよっ!!
スサノオ
っせーなぁ。わかったよ。そんなにいうなら、誓約しようじゃねぇか。
賭けに勝った方が正しいことになる。2人は、生んだ神の性別でどちらが正しいかを占うことにした。
アマテラス
良いわ。じゃあ ・ ・ ・ あんたの腰の剣をもらおうかしら。
スサノオ
あぁ、いいぜ。俺はその勾玉をもらおう。
早速、アマテラスはスサノオの剣を受け取ると、バキボキと素手で3つに折りにし、井戸水で清め、口に含んでバリボリと噛み砕いた。
女子と言っても、さすが神。
そして『ふーっ』と吹き出すと、霧のような吐息の中から3人の女神が生まれてきた。
また、スサノオもアマテラスの勾玉を井戸水で清め、口に含んでポリポリ砕いた。
そして『ふっっ!』と吹き出すと、今度はアメノオシホミミ、アメノホヒ、アマツヒコネ、イクツヒコネ、クマノクスビの5人の男神が生まれた。
このうち、長男のオシホミミは天皇家のご先祖様。次男のホヒは出雲国造家のご先祖様だ。
アマテラスは、生まれた神々を見ながらつぶやいた。
アマテラス
私の勾玉から生まれた5人の男神が私の子で、あんたの剣から生まれた3人の女神があんたの子 ・ ・ ・
スサノオ
フン!つまり、心優しい女子を生んだ俺に、高天原を攻める意思はなかったって証明できたわけだっ!!!!
スサノオ
ぃよっしゃぁーっっっ!!!!俺の勝ちぃーーっっっ!!!!
アマテラス
えっっ!?
アマテラスは、スサノオに言われるまで自分が負けたとは思っていなかった。
というのも普通、
しかし、スサノオのいう通り女子を生んだということは攻める気は無かったのだろうと納得した。
アマテラス
うぅん ・ ・ ・ そうね ・ ・ ・ ・ ・ ・ 疑って悪かったわよ。
スサノオ
だから言ったろ??俺、まだ行き先が決まってねーんだ。しばらくここで世話になるからなっ!!
アマテラス
わかったわよ ・ ・ ・ でも、みんなに迷惑をかけないでよね。
スサノオ
おぅっ!!
しかし、ここでアマテラスがスサノオを受け入れてしまったことが、あの有名な事件を起こす引き金となってしまう ・ ・ ・ ・ ・ ・