天皇記『聖帝 仁徳天皇』
聖帝 仁徳天皇
皇位を譲り合っていた弟のウジノワキを病気で亡くしたオオサザキは、
ウジノワキ
サザキ兄、頑張って!
仁徳天皇
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ せやなぁ〜。
仁徳の話になると、どうしても女好きの情報にばかり目が行ってしまうが、彼はとてもやり手の天皇だった。
・ ・ ・ いや、やり手ってそういう意味じゃなくて。
本当にちゃんとできる人だった。
例えば、国ならではの大規模事業をたくさん行った。土木工事によって河川の反乱を抑えたり、用水路を作って田地開拓を行い、作物の生産性を飛躍的に向上させた。
仁徳天皇
あとは ・ ・ ・ 難波の整備もはよ進めななぁ。難波港は国際ターミナルやもん。
仁徳天皇
やっぱ、日本の玄関口は最新設備を調えて、カッコよくキメなあかんやろ!
仁徳天皇
それと、落ち着いたら住吉大社に神功のばぁちゃんも祀りたいなぁ。
仁徳天皇
航海の神サマゆーたら、すみよっさんやけど。アレにばぁちゃんの濃ゆいキャラがプラスされたら、最強やん。
全っ然、船沈む気せーへん。
こうして外交面にも力を入れ、
・ ・ ・ と言うのも、実のところ仁徳は、皇位を譲り合っていた弟のウジノワキが、本当は病気ではなく自殺で死んだんじゃないかと疑っていた。
仁徳天皇
はぁ。ウジィやったら、やりかねへんもんなぁ ・ ・ ・
仁徳天皇
裏ではみんな知っとるくせに、オレだけ知らされとらんかたりして。
仁徳天皇
・ ・ ・ ・ ・ ・ はぁ。しんど。ほんま、嫌なタイミングで死ぬなアホ。
いずれにしろ弟の期待を裏切るような政治はしたくなかった。
そんな
仁徳は都のある難波が見渡せるように小高い山に登ることにした。ちょうど桜の季節で登山も心地よい。頂上からは大阪の街が一望できた。
そこには区画整備された綺麗な都があり、その周りを囲むように民家が建ち並んでいる。自分で指揮を取って作った都に、彼もご満悦だ。皇居からは煙が立ち登っていた。
仁徳天皇
おー。もう夕飯の支度の時間か。今日のご飯はなんやろなぁ〜♪♪
なんて考えていると、あることに気付く。
皇居以外の民家からはどこからも煙が上っていなかったのだ。
仁徳天皇
・ ・ ・ うそやん。
仁徳はゾッとした。民家の
仁徳天皇
炊くもんが無いんや ・ ・ ・
彼は国民がそんなに貧しい生活をしているなて、考えもしなかった。
仁徳天皇
・ ・ ・ ・ ・ ・ ほな、帰るで。
家臣
へ??陛下、まだ国見儀礼が終わってませんが ・ ・ ・
仁徳天皇
アホか。
仁徳天皇
いくら都を綺麗に取り繕ろうたて、こんなんや意味あらへんやろ。
仁徳はさっさと国見儀礼を切り上げ皇居に帰ると、すぐさま
『本日より3年間、国民の税の徴収と労役を取り止めることとする。』
仁徳天皇
その日の食事もままならん国民から、税なんてもらえへん。
仁徳天皇
今日からはオレらも節約生活や!
こうして仁徳は、 自分の生活もギリギリまで切り詰め、質素を心がけることにした。
とにかく食べ物は大切にして、若干酸っぱくなった汁物も
仁徳天皇
これはまだイケるやつやろ!
と飲み干した。
女中
えっ!?陛下、それ先週のっ!!!
仁徳天皇
んな大丈夫やて。捨てたらもったいないやろ〜。
女中
しかし ・ ・ ・ ・ ・ ・
仁徳天皇
(ギュルルル.........)
女中
・ ・ ・ ・ ・ ・ ?
仁徳天皇
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ゔっ!!
と、お陰様で何度か腹を下したこともあったが、数ヶ月もすると臭いだけでイケるやつとイケないやつを嗅ぎ分ける能力を身につけることができた。
また、雨の多い時期になると、皇居ではあちらこちらで雨漏りが発生したが、労役も取り止めたので誰も修理ができない。
仁徳天皇
んー。木の板、貼ってみたけどダメか。ココにもバケツ持ってこな。
と、仕方なく仁徳は朝廷中の
仁徳天皇
ま、夜は星空もよく見えるし風流でえぇか。
そして最終的には雨漏りする場所を完全に把握し、夜でも雨を避けながら部屋を移動する術を身につけ、
仁徳天皇
クックック。できたでっ!『雨の日用』と『晴れの日用』の夜這い先リストやっ!!
と、無駄なことに労力を使いつつ、妾には
妾
あれ??仁徳、最近、胴回りが痩せてスタイル良くなったんじゃない??
仁徳天皇
お?さよかー??
なんて誉められ、なんだかんだで極貧生活にも慣れて来た頃、3年が経った。
そしてこの日は皇后のイワノヒメも一緒に山を登って、町を見渡した。やっぱりこの国は美しい。
やがて夕刻になると次々と民家から煙が上がるのが見えた。
仁徳天皇
よっしゃ!
イワノヒメ
??
仁徳天皇
ほれ、イワノ見てみぃ!これで俺らも豊かになったな〜!!満足満足っ!!
仁徳が嬉しそうに笑うと、イワノの方はプクーっとほっぺを膨らましてこっちを睨んでくる。
イワノヒメ
はぁ??ウチらのどこが豊かになったってんだよ。
仁徳天皇
ん?見りゃわかるやろ。煙がめっちゃ上がっとるやん。みんなが豊かになった証拠や。
イワノヒメ
・ ・ ・ ったく。仁徳はとっことんバカだな。
イワノヒメ
皇居の屋根はあちこち穴だらけだし、服も湿気てカビ生えるし、ウチらは極貧生活のまんまだってのに。
仁徳天皇
はぁ〜。わかっとらんなぁ〜、イワノは。天皇がこーやって国を治めるんは、"おおみたから"のためなんやから。
仁徳天皇
せやから、天皇は"おおみたから"ありきなんや。
イワノヒメ
は?おおみたから??
仁徳天皇
お百姓さんとか、国民のこと。
イワノヒメ
ふぅーん。
仁徳天皇
初代の神武天皇が、国民のこと宝物みたいにそぉ呼んだんやて。
せやから天皇ってのは昔っから国民が一人でも飢えて凍えてたら自分を責めるもんなん。
イワノヒメ
ふーん。そうなんだ。
仁徳天皇
国民が貧しいってことは、オレが貧しいってことと同じやから。せやから、今そこで国民が豊かに暮らしてるってことは、オレも豊かってことと同じなん。
イワノヒメ
・ ・ ・ ・ ・ はいはい、わかったよ。
と言ってイワノはため息をついたが、しばらくするとなんだか誇らしそうにこちらを見上げて微笑んだ。
イワノヒメ
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
その後、仁徳がまた税の徴収と労役を課すと、国民がこぞって皇居に押し寄せて来る。
仁徳天皇
わわっっ!?どないしたんっっ???
そして頼まれてもいないのに、みんなで建物の修繕をしてくれ、皇居はあっという間に元の立派な姿に戻ってしまった。
イワノヒメ
わぁ ・ ・ ・ すごい。
仁徳天皇
ほれ、イワノぉ〜だからゆ〜たやぁ〜〜ん♪
新築のように綺麗になった皇居の歩き廊下から仁徳が得意げにイワノを見下ろす。
イワノヒメ
は?なにを??
仁徳天皇
この長い日本の歴史の中で、国民が豊かで天皇が貧しかったことなど、いまだかつてないと!!
イワノヒメ
・ ・ ・ ・ ・ ・ んなこと言ってたっけか?
このことから、仁徳は