古事記 -日本神話-

歌の掛け合いで闘うって面白いですね。

故、天の下治らしめさむとせし間に、 平群 （ へぐりの ） 臣の祖、名は 志毘臣 （ しびのおみ ） 、 歌垣 （ うたがき ） に立ちて、その 袁祁 （ をけの ） 命の 婚 （ よば ） はむとしたまふ 美人 （ をとめ ） の手を取りき。その 嬢子 （ をとめ ） は、 菟田首 （ うだのおびと ） 等 （ ども ） の女、名は 大魚 （ おほうを ） なり。ここに袁祁命もまた歌垣に立ちたまひき。

ここに志毘臣歌ひけらく、

大宮 （ おほみや ） の 彼 （ をと ） つ 端手 （ はたで ）
隅 （ すみ ） 傾 （ かたぶ ） けり
とうたひき。

かく歌ひて、その歌の 末 （ すゑ ） を乞ひし時、袁祁命歌ひたまひしく、

大匠 （ おほたくみ ） 拙劣 （ をぢな ） みこそ
隅傾けれ
とうたひたまひき。

ここに志毘臣、また歌ひけらく、

王 （ おほきみ ） の 心を 緩 （ ゆら ） み
臣 （ おみ ） の子の 八重 （ やへ ） の 柴垣 （ しばがき ）
入り立たずあり
とうたひき。

ここに 王子 （ みこ ） 、また歌ひたまひしく、

潮瀬 （ しほせ ） の 波折 （ なを ） りを見れば
遊び 来 （ く ） る 鮪 （ しび ） が 端手 （ はたで ） に
妻立てり見ゆ
とうたひたまひき。

ここに志毘臣いよいよ 忿 （ いか ） りて歌ひけらく、

大君の 王子 （ みこ ） の 柴垣 （ しばがき ）
八節結 （ やふじま ） り 結 （ しま ） り 廻 （ もとほ ） し
切れむ柴垣 焼けむ柴垣
とうたひき。

ここに 王子 （ みこ ） 、また歌ひたまひしく、

大魚 （ おふを ） よし 鮪 （ しび ） 突 （ つ ） く 海人 （ あま ） よ
其 （ し ） があれば 心 （ うら ） 恋 （ こほ ） しけむ
鮪突く鮪
とうたひたまひき。

かく歌ひて、 闘 （ かが ） ひ 明 （ あか ） して、各 退 （ まか ） りき。

明くる 旦之時 （ あした ） 、 意祁 （ おけの ） 命、 袁祁 （ をけの ） 命二柱 議 （ はか ） りて 云 （ の ） りたまひしく、

「 凡 （ おほよ ） そ 朝廷 （ みかど ） の人 等 （ ども ） は、 旦 （ あした ） は 朝廷 （ みかど ） に 参赴 （ まゐおもむ ） き、昼は志毘の 門 （ かど ） に 集 （ つど ） へり。また今は志毘必ず 寝 （ いね ） つらむ。またその 門 （ かど ） に人無けむ。故、今にあらざれば 謀 （ はか ） るべきこと 難 （ かた ） けむ」とのりたまひて、すなはち 軍 （ いくさ ） を興して志毘臣の家を 囲 （ かく ） みて、すなはち殺したまひき。

歌垣（うたがき）は？？

袁祁（をけの）命は？？

彼（をと）つ端手（はたで）は？？

歌の末（すゑ）は？？

大匠（おほたくみ）拙劣（をぢな）みこそって？？

心を緩（ゆら）みって？？

潮瀬（しほせ）の波折（なを）りは？？

遊び来（く）るって？？

鮪（しび）は？？

八節結（やふじま）りって？？

結（しま）り廻（もとほ）してって？？

大魚（おふを）よしって？？

其（し）があればって？？

闘（かが）ひ明（あか）してって？？

意祁（おけの）命は？？