古事記の原文『山幸彦と海幸彦』

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『山幸彦と海幸彦』の原文

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原文の概要

天武天皇

天武天皇

ニニギとサクヤビメの三男ホオリは、長男ホデリから釣り道具を借りる。ホオリは釣り針を無くし、代わりに多くの針を償う。ホデリは元の針を返せと責める。困ったホオリはシオツチの助言を得て、海神ワダツミの宮殿へ行く。ホオリはワダツミの娘トヨタマビメと出会い、結婚する。

安万侶

安万侶

え?ホオリ様は針を探しに行ったんですよね??それが結婚???

天武天皇

天武天皇

そこはまぁ、神話だからな。

天武天皇

天武天皇

針を無くすっていう似たような民間伝承は、東南アジア周辺に多くあるんだ。インドネシアとかパラオとかな。

原文&読み下し文

山幸彦、海幸彦

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

故、火照命者、為海佐知毘古而、取鰭広物、鰭狭物、火遠理命者、為山佐知毘古而、取毛麁物、毛柔物。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

故、 火照 ほでりの 命は 海幸彦 うみさちびこ として、 はた 広物 ひろもの はた 狭物 さもの を取り、 火遠理 ほをりの 命は 山幸彦 やまさちびこ として、 麁物 あらもの 柔物 にこもの を取りたまひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

爾火遠理命、謂其兄火照命、各相易佐知欲用、三度雖乞、不許。然遂纔得相易。爾火遠理命、以海佐知釣魚、都不得一魚、亦其鉤失海。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

ここに火遠理命、その兄火照命に、「 おのおの さちを 相易 あひか へて用ゐむ」と謂ひて、 三度 みたび 乞ひたまへども、許さざりき。然れども遂に わづ かに 相易 あひか ふることを得たまひき。ここに火遠理命、 うみ さちをもちて魚釣らすに、 かつ 一つの魚も得たまはず、またその つりばり を海に失ひたまひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

於是其兄火照命、乞其鉤曰、山佐知母、己之佐知佐知、海佐知母、己之佐知佐知、今各謂返佐知之時、其弟火遠理命答曰、汝鉤者、釣魚不得一魚、遂失海。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

ここにその兄火照命、その鉤を乞ひて曰ひしく、「山さちも、 おの がさちさち、海さちも、己がさちさち。今は各さち返さむ」と謂ひし時に、その おと 火遠理命、答へて りたまひしく、「 いまし の鉤は、魚釣りしに一つの魚も得ずて、遂に海に失ひつ」とのりたまひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

然其兄強乞徴。故、其弟破御佩之十拳剣、作五百鉤、雖償不取。亦作一千鉤、雖償不受、云猶欲得其正本鉤。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

然れどもその兄 あなが ちに乞ひ はた りき。故、その弟、 御佩 みはかし 十拳剣 とつかつるぎ を破りて、 五百鉤 いほはり を作りて、 つぐの ひたまへども取らず。また 一千鉤 ちはり を作りて、償ひたまへども受けずて、「なほその 正本 もと の鉤を得む」と云ひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

於是其弟、泣患居海辺之時、塩椎神来、問曰、何虚空津日高之泣患所由。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

ここにその弟、泣き うれ ひて 海辺 うみべ ましし時に、 塩椎 しほつちの 来て、問ひて ひしく、「 いか にぞ 虚空津日高 そらつひこ の泣き患ひたまふ 所由 ゆゑ は」といへば、

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

答言、我与兄易鉤而、失其鉤。是乞其鉤故、雖償多鉤不受、云猶欲得其本鉤。故、泣患之。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

答へて りたまひしく、「我と兄と鉤を易へて、その鉤を失ひつ。ここにその鉤を乞ふ故に、多くの鉤を償へども受けずて、『なほその もと の鉤を得む』と云ひき。故、泣き患ふぞ」とのりたまひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

爾塩椎神、云我為汝命、作善議、即造無間勝間之小船、載其船以教曰、我押流其船者、差暫往。将有味御路。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

ここに塩椎神、「 あれ 汝命 いましみこと ため 善き ことはかり をなさむ」と云ひて、すなはち 無間勝間 まなしかつま 小船 をぶね を造り、その船に せて、教へて曰ひしく、「 あれ その船を押し流さば、 差暫 ややしま でませ。 うま 御路 みち あらむ。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

乃乗其道往者、如魚鱗所造之宮室、其綿津見神之宮者也。到其神御門者、傍之井上、有湯津香木。故、坐其木上者、其海神之女、見相議物也。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

すなはちその道に乗りて往でまさば 魚鱗 いろこ ごと 造れる 宮室 みや 、それ 綿津見 わたつみの 神の宮ぞ。その神の 御門 みかど に到りましなば、 かたへ 湯津香木 ゆつかつら あらむ。故、その木の上に さば、その わたの 神の むすめ 、見て 相議 あひはか らむぞ」といひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

故、随教少行、備如其言、即登其香木以坐。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

故、教への まにま に少し行きまししに、 つぶ さにその こと の如くなりしかば、すなはちその 香木 かつら に登りて しき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

爾海神之女、豊玉毘売之従婢、持玉器将酌水之時、於井有光。仰見者、有麗壮夫。以為甚異奇。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

ここに わたの 神の女、 豊玉毘売 とよたまびめ 従婢 まかだち 玉器 たまもひ を持ちて水を まむとする時に、井に かげ ありき。仰ぎ見れば、麗しき 壮夫 をとこ ありき。 いと 異奇 あや しと 以為 おも ひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

爾火遠理命、見其婢、乞欲得水。婢乃酌水、入玉器貢進。爾不飲水、解御頸之璵、含口唾入其玉器。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

ここに火遠理命、その まかだち を見て、水を得まく しと乞ひたまひき。婢すなはち水を酌みて、玉器に入れて 貢進 たてまつ りき。ここに水を飲まさずて、 御頸 みくび たま を解きて口に ふふ みて、その玉器に つば き入れたまひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

於是其璵著器、婢不得離璵。故、璵任著以進豊玉毘売命。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

ここにその璵、 もひ きて、婢璵を 得離 えはな たず。故、璵著ける まにま に豊玉毘売命に たてまつ りき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

爾見其璵、問婢曰、若人有門外哉。答曰、有人坐我井上香木之上。甚麗壮夫也。益我王而甚貴。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

ここにその璵を見て、婢に問ひて曰ひしく、「もし人、 かど にありや」といへば、答へて曰ひしく、「人ありて、我が井の 香木 かつら うへ いま す。 いと 麗しき 壮夫 をとこ ぞ。我が きみ して いと 貴し。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

故、其人乞水故、奉水者、不飲水、唾入此璵。是不得離。故、任入将来而献。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

故、その人水を乞はす故に、水を奉れば、水を飲まさずて、この璵を唾き入れたまひき。これ 得離 えはな たず。故、入れし まにま ち来て献りぬ」といひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

爾豊玉毘売命、思奇、出見、乃見感、目合而、白其父曰、吾門有麗人。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

ここに豊玉毘売命、 あや しと思ひて、出で見て、すなはち 見感 みめ でて 目合 まぐはひ して、その父に白ししく、「吾が かど に麗しき人あり」とまをしき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

爾海神自出見、云此人者、天津日高之御子、虚空津日高矣。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

ここに海神、自ら出で見て、「この人は、 天津日高 あまつひこ の御子、 虚空津日高 そらつひこ ぞ」と云ひて、

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

即於内率入而、美智皮之畳敷八重、亦絁畳八重敷其上、坐其上而、具百取机代物、為御饗、即令婚其女豊玉毘売。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

すなはち内に て入りて、 海驢 みち の皮の畳 八重 やへ を敷き、また 絁畳 きぬだたみ 八重をその上に敷き、その上に せて、 百取 ももとり 机代 つくゑしろ の物を そな へ、 御饗 みあへ して、すなはちその女豊玉毘売を まぐはひ せしめき。

用語解説

天武天皇

天武天皇

海の獲物を得る男、つまり漁夫のこと。

天武天皇

天武天皇

「さち」は漁や狩りで獲物が多いことや、獲物そのもののことを指すんだ。

天武天皇

天武天皇

狩人ってことだな。

安万侶

安万侶

麁物あらもの柔物にこものは??

天武天皇

天武天皇

毛の粗い獣や毛の柔らかい獣のこと。つまり色んな獣ってことな。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

「さち」にはもう一つ意味があって、獲物を捕る道具のこと。だからここは、道具を交換してってこと。

天武天皇

天武天皇

海さちは釣り針ってことになるし、山さちは弓矢ってことになるな。

安万侶

安万侶

かつって??

天武天皇

天武天皇

全然ってこと。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

無理にとか強引にってこと。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

潮を司る神かな。

天武天皇

天武天皇

空の男って意味かな。

天武天皇

天武天皇

天津日高はニニギ、虚空津日高はその子ホオリのことと、区別しているんだ。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

良い計画とか工夫のこと。

天武天皇

天武天皇

隙間なく目が詰まった竹カゴの小舟のこと。

天武天皇

天武天皇

良い海路のこと。

安万侶

安万侶

往でまさばって??

天武天皇

天武天皇

行くの尊敬語だからここは、お出かけになればってこと。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

魚のうろこのこと。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

貴人に付き添う女性のこと。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

美しい容器のこと。

安万侶

安万侶

かげって影なのに光??

天武天皇

天武天皇

ここでいうかげは、水や鏡なんかに映る姿のこと。

天武天皇

天武天皇

首飾りの玉を緒から外してってこと。

天武天皇

天武天皇

私がお仕えしている方よりもっと、ってこと。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

直訳すれば見て褒めてってことだけど、一目ボレしてってとこだな。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

アシカの皮の敷物のこと。

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監修:春比等 Site:いまどき風土記
イラスト:駒碧 Site:わたり雪

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