古事記の原文『大長谷王子の狩り』

『大長谷王子の狩り』の原文

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原文の概要

天武天皇

オシハは日の出前に起きて、オオハツセの従者に早く狩りに行こうと伝える。従者は警戒するようオオハツセに言う。オオハツセはオシハを射殺す。オオハツセはオシハの遺体を平らに埋める。騒ぎを聞いたオシハの子、オケとヲケは逃げる。途中、オケとヲケは豚飼いに食べ物を奪われる。オケとヲケは播磨のシジムの家で、家畜の世話をしながら隠れ住む。

安万侶

やっぱりこうなるんですね･･･

天武天皇

これで皇位継承でオオハツセと対立しそうな皇子が、ほぼいなくなったわけだな。

原文＆読み下し文

大長谷王子の狩り

【原文】稗田阿礼

爾明旦、未日出之時、忍歯王、以平心随乗御馬、到立大長谷王仮宮之傍而、詔其大長谷王子之御伴人、

【読み下し文】藤原不比等

ここに明くる旦（あした）、未だ日出でざりし時、忍歯王、平（なぐ）しき心もちて、御馬に乗りし随（まにま）に、大長谷王の仮宮の傍（かたへ）に到り立たして、その大長谷王子の御伴人（みともびと）に詔りたまひしく、

【原文】稗田阿礼

未寤坐。早可白也。夜既曙訖。可幸獦庭。乃進馬出行。

【読み下し文】藤原不比等

「未だ寤めまさざるか。早く白すべし。夜は既に曙（あ）けぬ。獦庭（かりには）に幸（い）でますべし」とのりたまひて、すなはち馬を進めて出で行きたまひき。

【原文】稗田阿礼

爾侍其大長谷王之御所人等白、宇多弖物云王子。故、応慎。亦宜堅御身。

【読み下し文】藤原不比等

ここにその大長谷王の御所（みもと）に侍（さもら）ふ人等（ひとども）白ししく、「うたて物云ふ王子（みこ）ぞ。故、慎しみたまふべし。また御身を堅めたまふべし」とまをしき。

【原文】稗田阿礼

即衣中服甲、取佩弓矢、乗馬出行、倏忽之間、自馬往双、抜矢射落其忍歯王、乃亦切其身、入於馬樎、与土等埋。

【読み下し文】藤原不比等

すなはち衣（みそ）の中に甲（よろひ）を服（け）し、弓矢を取り佩（は）かして、馬に乗りて出で行きたまひて、倏忽（たちまち）の間に、馬より往き双（なら）びて、矢を抜きてその忍歯王を射落して、すなはちまたその身を切りて、馬樎（うまぶね）に入れて土（つち）と等しく埋みたまひき。

【原文】稗田阿礼

於是市辺王之王子等、意祁王、袁祁王（二柱）聞此乱而逃去。

【読み下し文】藤原不比等

ここに市辺王の王子等（みこたち）、意祁（おけの）王、袁祁（をけの）王（二柱）、この乱れを聞きて逃げ去りたまひき。

【原文】稗田阿礼

故、到山代苅羽井、食御糧之時、面黥老人来、奪其糧。爾其二王言、不惜糧。然汝者誰人、答曰、我者山代之猪甘也。

【読み下し文】藤原不比等

故、山代の苅羽井（かりばゐ）に到りて、御糧（みかれひ）食（を）す時、面黥（まさ）ける老人（おきな）来て、その糧を奪ひき。ここにその二（ふた）はしらの王（みこ）言（の）りたまひしく、「糧は惜（を）しまず。然れども汝（な）は誰人（たれ）ぞ」とのりたまへば、答へて曰ひしく、「我は山代の猪甘（ゐかひ）ぞ」といひき。