古事記 -日本神話-

オオクニヌシ様、ご自分が苦労して造られた国を渡しちゃうんですね。

「誰ぞ我が国に来て、 忍 （ しの ） び忍びにかく物言ふ。然らば 力競 （ ちからくら ） べせむ。 故 （ かれ ） 、 我先 （ われさき ） にその御手を取らむ」と言ひき。 故 （ かれ ） 、その御手を取らしむれば、すなはち 立氷 （ たちひ ） に取り成し、また 剣刃 （ つるぎば ） に取り成しつ。

故ここに 惧 （ おそ ） りて 退 （ しぞ ） き 居 （ を ） りき。ここにその建御名方神の手を取らむと乞ひ 帰 （ かへ ） して取りたまへば、 若葦 （ わかあし ） を取るが 如 （ ごと ） 、 扼 （ つか ） み 批 （ ひし ） ぎて投げ離ちたまへば、すなはち逃げ 去 （ い ） にき。

故、追ひ往きて、 科野 （ しなのの ） 国の 州羽 （ すは ） の海に迫め到りて、殺さむとしたまひし時、建御名方神白ししく、「 恐 （ かしこ ） し。 我 （ あ ） をな殺したまひそ。この 地 （ ところ ） を 除 （ お ） きては、 他処 （ あだしところ ） に行かじ。

また我が父、大国主神の 命 （ みこと ） に 違 （ たが ） はじ。八重事代主神の 言 （ こと ） に違はじ。この葦原中国は、天つ神の御子の命の 随 （ まにま ） に献らむ」とまをしき。

故 （ かれ ） 、更にまた還り来て、その大国主神に問ひたまひしく、「 汝 （ いまし ） が 子等 （ こども ） 、事代主神、建御名方神の 二 （ ふた ） はしらの神は、天つ神の御子の命の 随 （ まにま ） に違はじと白しぬ。故、汝が心は 奈何 （ いか ） に」ととひたまひき。

ここに答へ白ししく、「 僕 （ あ ） が 子等 （ こども ） 、二はしらの神の白す 随 （ まにま ） に、 僕 （ あ ） は違はじ。この葦原中国は、命の随に既に献らむ。

ただ 僕 （ あ ） が 住所 （ すみか ） をば、天つ神の御子の 天津日継 （ あまつひつぎ ） 知らしめす、とだる 天 （ あめ ） の 御巣 （ みす ） 如 （ な ） して、 底 （ そこ ） つ 石根 （ いはね ） に 宮柱 （ みやばしら ） ふとしり、高天の原に 氷木 （ ひぎ ） たかしりて 治 （ をさ ） めたまはば、 僕 （ あ ） は 百足 （ ももた ） らず 八十垌手 （ やそくまで ） に 隠 （ かく ） りて 侍 （ さもら ） なむ。

また僕が 子等 （ こども ） 、 百八十神 （ ももやそがみ ） は、すなはち八重事代主神、神の 御尾前 （ みをさき ） となりて 仕 （ つか ） へ 奉 （ まつ ） らば、 違 （ たが ） ふ神はあらじ」とまをしき。

かく白して、出雲国の 多芸志 （ たぎし ） の 小浜 （ をばま ） に、 天 （ あめ ） の 御舎 （ みあらか ） を造りて、 水戸 （ みなとの ） 神の 孫 （ ひこ ） 、 櫛八玉 （ くしやたまの ） 神、 膳夫 （ かしはで ） となりて、天の 御饗 （ みあへ ） を献りし時に、

祷 （ ほ ） き白して、櫛八玉神、 鵜 （ う ） に 化 （ な ） りて、 海 （ うみ ） の底に入り、底の 赤土 （ はに ） を 咋 （ く ） ひ 出 （ い ） でて、天の 八十平盆 （ やそびらか ） を作りて、 海布 （ め ） の 柄 （ から ） を 鎌 （ か ） りて、 燧臼 （ ひきりうす ） に作り、 海蓴 （ こも ） の 柄 （ から ） をもちて 燧杵 （ ひきりぎね ） に作りて、火を 鑽 （ き ） り出でて云ひしく、

この我が 燧 （ き ） れる火は、高天の原には、 神産巣日 （ かみむすひ ） の 御祖 （ みおやの ） 命の、とだる 天 （ あめ ） の 新巣 （ にひす ） の 凝煙 （ すす ） の、 八拳 （ やつか ） 垂 （ た ） るまで 焼 （ た ） き挙げ、 地 （ つち ） の 下 （ した ） は、 底 （ そこ ） つ 石根 （ いはね ） に 焼 （ た ） き 凝 （ こ ） らして、

栲縄 （ たくなは ） の、 千尋縄 （ ちひろなは ） 打ち 延 （ は ） へ、 釣 （ つり ） せし 海人 （ あま ） の、 口大 （ くちおほ ） の、 尾翼鱸 （ をはたすずき ） 、さわさわに、 控 （ ひ ） き 依 （ よ ） せ 騰 （ あ ） げて、 打竹 （ さきたけ ） の、とををとををに、 天 （ あめ ） の 真魚咋 （ まなぐひ ） 、献る。
といひき。

故、建御雷神、返り 参上 （ まゐのぼ ） りて、葦原中国を 言向 （ ことむ ） け 和平 （ やは ） しつる 状 （ さま ） を、復奏したまひき。

忍（しの）び忍びにって？？

立氷（たちひ）は？？

乞ひ帰（かへ）してって？？

扼（つか）み批（ひし）ぎてって？？

科野（しなのの）国の州羽（すは）の海は？？

他処（あだしところ）は？？

天津日継（あまつひつぎ）は？？

とだるって？？

天（あめ）の御巣（みす）は？？

百足（ももた）らずって？？

八十垌手（やそくまで）は？？

侍（さもら）なむって？？

御尾前（みをさき）となりてって？？

出雲国の多芸志（たぎし）の小浜（をばま）はどこ？？

天（あめ）の御舎（みあらか）は？？

膳夫（かしはで）は？？

祷（ほ）き白してって？？

八十平盆（やそびらか）は？？

海布（め）の柄（から）は？？

燧臼（ひきりうす）は？？

栲縄（たくなは）のって？？

口大（くちおほ）のって？？

尾翼鱸（をはたすずき）は？？

打竹（さきたけ）のって？？

とををって？？

天（あめ）の真魚咋（まなぐひ）は？？