古事記 -日本神話-

オオヤマモリ様とウジノワキ様は皇位を争ったんですね ･ ･ ･

なんだかミュージカルみたい。

故、天皇 崩 （ かむあが ） りましし後、大雀命は天皇の 命 （ みこと ） に従ひて、天の下を 宇遅能和紀郎子 （ うぢのわきいらつこ ） に譲りたまひき。ここに大山守命は天皇の命に 違 （ たが ） ひて、なほ天の下を獲むと 欲 （ おも ） ひて、その 弟皇子 （ おとみこ ） を殺さむ 情 （ こころ ） ありて、 窃 （ ひそ ） かに 兵 （ つはもの ） を 設 （ ま ） けて攻めむとしき。

ここに大雀命、その兄の 兵 （ つはもの ） を備ふることを聞かして、すなはち 使者 （ つかひ ） を遣はして、宇遅能和紀郎子に 告 （ つ ） げしめたまひき。

故、聞き驚かして、 兵 （ いくさ ） びとを河の 辺 （ べ ） に 伏 （ ふ ） せ、またその山の上に、 絁垣 （ きぬがき ） を張り 帷幕 （ ひきまく ） を立てて、 詐 （ いつは ） りて 舎人 （ とねり ） を 王 （ みこ ） にして、 露 （ あら ） はに 呉床 （ あぐら ） に 坐 （ ま ） せ、 百官 （ もものつかさ ） 恭敬 （ ゐやま ） ひ往き来する 状 （ さま ） 、既に 王子 （ みこ ） の坐す所の如くして、

更にその 兄王 （ あにみこ ） の河を渡らむ時の 為 （ ため ） に、 船楫 （ ふねかぢ ） を 具 （ そな ） へ 飾 （ かざ ） り、さな 葛 （ かづら ） の根を 舂 （ つ ） き、その汁の 滑 （ なめ ） を取りて、その船の中の 簀椅 （ すばし ） に塗りて、 踏 （ ふ ） みて 仆 （ たふ ） るべく 設 （ ま ） けて、その 王子 （ みこ ） は、 布 （ ぬの ） の 衣褌 （ きぬはかま ） を 服 （ け ） して、既に 賎 （ いや ） しき人の 形 （ すがた ） になりて、 楫 （ かぢ ） を執りて船に立ちたまひき。

ここにその兄王、 兵士 （ いくさびと ） を 隠 （ かく ） し 伏 （ ふ ） せ、 衣 （ ころも ） の中に 鎧 （ よろひ ） を 服 （ き ） て、河の辺に到りて、船に乗らむとする時に、その 厳飾 （ よそひかざ ） りし処を 望 （ みさ ） けて、 弟王 （ おとみこ ） その 呉床 （ あぐら ） に坐すと 以為 （ おも ） ひ、 都 （ かつ ） て楫を執りて船に立ちませるを知らずて、すなはちその 執楫者 （ かぢとり ） に問ひて曰ひけらく、

「この山に 忿怒 （ いか ） れる大猪ありと 伝 （ つて ） に聞けり。 吾 （ われ ） その猪を取らむと 欲 （ おも ） ふ。もしその猪を獲むや」といひき。

ここに 執楫者 （ かぢとり ） 、「 能 （ あた ） はじ」と答へて曰ひき。また「 何由 （ なにしか ） も」と問へば、答へて曰ひしく、「 時時也 （ よりより ） 往往也 （ ところどころ ） に取らむとすれども得ざりき。ここをもちて能はじと白すなり」といひき。

河中に渡り到りし時、その船を 傾 （ かたぶ ） けしめて、水の中に 堕 （ おと ） し入れき。ここにすなはち浮かび出でて、水の 随 （ まにま ） に流れ 下 （ くだ ） りき。すなはち流れて歌ひけらく、

ちはやぶる 宇治 （ うぢ ） の 渡 （ わたり ） に
棹執 （ さをと ） りに 速 （ はや ） けむ人し
我 （ わ ） が 許 （ もこ ） に 来 （ こ ） む
とうたひき。

ここに河の辺に伏せ隠せし 兵 （ いくさ ） びと 彼廂 （ かなた ） 此廂 （ こなた ） 、 一時共 （ もろとも ） に興りて、矢刺して流しき。故、 訶和羅 （ かわら ） の 前 （ さき ） に到りて沈み入りき。故、 鉤 （ かぎ ） をもちてその沈みし処を探れば、その衣の中の 甲 （ よろひ ） に 繋 （ か ） かりて、かわらと鳴りき。故、 其地 （ そこ ） を 号 （ なづ ） けて訶和羅の 前 （ さき ） と謂ふ。

ここにその 骨 （ かばね ） を 掛 （ か ） き 出 （ いだ ） しし時、 弟王 （ おとみこ ） 歌ひたまひしく、

ちはやひと 宇治 （ うぢ ） の 渡 （ わたり ） に
渡り 瀬 （ ぜ ） に 立てる
梓弓 （ あづさゆみ ） 檀弓 （ まゆみ ）
い 伐 （ き ） らむと 心は 思 （ も ） へど
い取らむと 心は 思 （ も ） へど

本方 （ もとへ ） は 君を思ひ 出 （ で ）
末方 （ すゑへ ） は 妹 （ いも ） を思ひ 出 （ で ）
苛 （ いら ） なけく そこに思ひ 出 （ で ）
かなしけく ここに思ひ出
い伐らずぞ 来 （ く ） る 梓弓檀弓
とうたひたまひき。

故、その大山守命の 骨 （ かばね ） は、 那良 （ なら ） 山に 葬 （ はふ ） りき。この大山守命は、（土形君、幣岐君、榛原君等の祖。）

ここに大雀命と宇遅能和紀郎子二柱、各天の下を譲りたまひし間に、 海人 （ あま ） 大贄 （ おほにへ ） を貢りき。ここに兄は 辞 （ いな ） びて弟に貢らしめ、弟は 辞 （ いな ） びて兄に貢らしめて、相譲りたまひし間に、既に 多 （ あまた ） の日を経き。

かく相譲りたまふこと、 一二時 （ ひとときふたとき ） にあらざりき。故、海人既に 往 （ ゆ ） き 還 （ き ） に疲れて泣きき。故、諺に「 海人 （ あま ） や、己が物によりて泣く」と曰ふ。

然るに宇遅能和紀郎子は早く崩りましき。故、大雀命、天の下治らしめしき。

絁垣（きぬがき）を張りって？？

帷幕（ひきまく）は？？

舎人（とねり）は？？

呉床（あぐら）は？？

船楫（ふねかぢ）は？？

さな葛（かづら）は？？

簀椅（すばし）は？？

衣褌（きぬはかま）は？？

都（かつ）てって？？

執楫者（かぢとり）は？？

時時也（よりより）って？？

往往也（ところどころ）って？？

ちはやぶるって？？

棹執（さをと）りに速（はや）けむ人しって？？

我（わ）が許（もこ）に来（こ）むって？？

矢刺してって？？

訶和羅（かわら）の前（さき）は？？

骨（かばね）は？？

ちはやひとって？？

梓弓（あづさゆみ）は？？

檀弓（まゆみ）は？？

い伐（き）らむとって？？

本方（もとへ）はって？？

君って誰のこと？？

末方（すゑへ）はって？？

苛（いら）なけくって？？

那良（なら）山は？？

海人（あま）や、己が物によりて泣くって？？