古事記の原文『顕宗天皇』

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『顕宗天皇』の原文

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原文の概要

天武天皇

天武天皇

オケとヲケは皇位を譲り合っていたが、結局ヲケ(顕宗天皇)が即位する。顕宗は父オシハの遺骨を探す。近江の老女が場所を知っていたので、父の陵を作り埋葬する。顕宗は老女を宮中に呼び寄せる。老女が帰りたいと言うので、顕宗は見送る。顕宗は、苦難の時に食べ物を奪った豚飼いを見つけて殺す。

安万侶

安万侶

父上のご遺骨、見つかって良かった ・ ・ ・

天武天皇

天武天皇

雄略が墓を作らずに埋めたから、どこにあるのか長いこと分からなかっただろうからな。

原文&読み下し文

顕宗天皇

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

於是二柱王子等、各相譲天下。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

ここに二柱の 王子等 みこたち 、各天の下を相譲りたまひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

意祁命議其弟袁祁命曰、住於針間志自牟家時、汝命不顕名者、更非臨天下之君。是既汝命之功。故、吾雖兄猶汝命先治天下而、堅譲。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

意祁命、その いろと 袁祁命に議りて りたまひしく、「 針間 はりま 志自牟 しじむ の家に住みし時、 汝命 いましみこと 名を あらは したまはざらましかば、更に天の下 らす君にあらざらまし。これ既に汝命の いさを なり。故、 いろせ にはあれども、なほ汝命 さき に天の下治らしめせ」とのりたまひて、堅く譲りたまひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

故、不得辞而、袁祁命先治天下也。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

故、 得辞 えいな びたまはずて、袁祁命先に天の下治らしめしき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

伊奘本別王御子、市辺忍歯王御子、袁祁之石巣別命、坐近飛鳥宮、治天下捌歳也。天皇、娶石木王之女、難波王、無子也。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

伊奘本別 いざほわけの 王の御子、 市辺 いちのべ 忍歯 おしはの 王の御子、 袁祁 をけ 石巣別 いはすわけの 命、 近飛鳥 ちかつあすかの に坐しまして、天の下治らしめすこと 八歳 やとせ なり。天皇、 石木 いはきの 王の女、難波王を娶したまひ、 無かりき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

此天皇、求其父王市辺王之御骨時、在淡海国賤老媼、参出白、王子御骨所埋者、専吾能知。亦以其御歯可知(御歯者、如三枝押歯坐也)。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

この天皇、その 父王 ちちみこ 市辺王の 御骨 みかばね を求めたまふ時、 淡海 あふみの 国にある いや しき 老媼 おみな 参出 まゐで て白しけらく、「 王子 みこ 御骨 みかばね うづ みしは、 もは あれ よく知れり。またその御歯をもちて知るべし(御歯は三枝の如き押歯にましき)」とまをしき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

爾起民掘土、求其御骨。即獲其御骨而、於其蚊屋野之東山、作御陵葬、以韓袋之子等、令守其陵。然後持上其御骨也。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

ここに たみ を起こして土を掘りて、その御骨を求めき。すなはちその御骨を て、その 蚊屋野 かやの の東の山に、御陵を作りて はふ りたまひて、 韓袋 からぶくろ 子等 こども をもちてその陵を守らしめたまひき。 て後にその御骨を持ち のぼ りたまひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

故、還上坐而、召其老媼、誉其不失見置、知其地以、賜名号置目老媼。仍召入宮内、敦広慈賜。故、其老媼所住屋者、近作宮辺、毎日必召。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

故、還り上りまして、その 老媼 おみな を召して、その失はず見置きて、その ところ を知りしを めて、名を賜ひて 置目老媼 おきめのおみな なづ けたまひき。 りて宮の内に召し入れて、 あつ く広く めぐ びたまひき。故、その老媼の住める屋は、近く宮の辺に作りて、日毎に必ず召しき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

故、鐸懸大殿戸、欲召其老媼之時、必引鳴其鐸。爾作御歌。其歌曰、

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

故、 ぬりて を大殿の戸に懸けて、その老媼を召さむと おも ほす時は、必ずその ぬりて を引き鳴らしたまひき。ここに御歌を みたまひき。その歌に りたまひしく、

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

阿佐遅波良 袁陀爾袁須疑弖
毛毛豆多布 奴弖由良久母
淤岐米久良斯母

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

浅茅原 あさぢはら 小谷 をだに を過ぎて
百伝 ももづた ぬて ゆら くも
置目 おきめ らしも
とのりたまひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

於是置目老媼白、僕甚耆老。欲退本国。故、随白退時、天皇見送、歌曰、

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

ここに置目老媼白しけらく、「 いと 耆老いにき。 もと つ国に 退 まか らむと おも ふ」とまをしき。故、白しし まにま 退 まか る時、天皇見送りて歌ひたまひしく、

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

意岐米母夜 阿布美能淤岐米
阿須用理波 美夜麻賀久理弖
美延受加母阿良牟

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

置目もや 淡海 あふみ の置目
明日 あす よりは み山 がく りて
見えずかもあらむ
とうたひたまひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

初天皇、逢難逃時、求奪其御糧猪甘老人。是得求、喚上而、斬飛鳥河之河原、皆断其族之膝筋。是以至今其子孫、上於倭之日、必自跛也。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

初め天皇、 わざはひ に逢ひて逃げたまひし時、その 御糧 みかれひ を奪ひし 猪甘 ゐかひ 老人 おきな を求めたまひき。こを求め て、 喚上 めさ げて、飛鳥河の河原に斬りて、皆その うがら の膝の すじ ちたまひき。ここをもちて今に至るまで、その 子孫 うみのこ 、倭に のぼ る日は、必ず おのづか あしなへ くなり。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

故、能見志米岐其老所在。故、其地謂志米須也。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

故、よくその おきな の在る所を しめき。故、 其地 そこ 志米須 しめす と謂ふ。

用語解説

天武天皇

天武天皇

現在の奈良県高市郡明日香村八釣あたりとか、大阪府羽曳野市飛鳥あたりとかいわれているな。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

老婆のこと。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

ミツマタの枝のように先が分かれた八重歯のことかな。

天武天皇

天武天皇

見届けの老女とか、目を付けておいたおばあさんってとこかな。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

大きな鈴というか、ベルのこと。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

丈の低いチガヤが生えている原のこと。

安万侶

安万侶

ゆらくもって??

天武天皇

天武天皇

揺れて鳴っているよってこと。

安万侶

安万侶

しめきって??

天武天皇

天武天皇

見えるようにしるしを付けたってことかな。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

現在の京都府木津川市山城町綺田あたりとか、奈良県高市郡明日香村祝戸あたりとかいわれているが、よくわからないな。

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