古事記の原文『イワレビコの東征』
『イワレビコの東征』の原文
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原文の概要
天武天皇
カムヤマトイワレビコとイツセは、天下を治めるのに相応しい地を求め、日向を出発して東へ向かう。船で大分、福岡、広島、岡山を経て、大阪に到着し、上陸する。待ち構えていたナガスネビコの軍勢と戦い、イツセは矢で射られて深手を負う。イワレビコは、日の昇る方角に向かって戦うのが良くないと言うイツセに従い、回り込むことにする。イツセはその傷がもとで死ぬ。
安万侶
東に向かうってずいぶん曖昧なんですね。
天武天皇
いわゆる
天武天皇
日本全体で見たとき、日向は西の端っこだから、中央のほうが平和に治めやすいと、兄弟は考えたんだろう。
安万侶
なんで日の昇る方角に向かうのが良くないんですか?
天武天皇
イワレビコたちは日の神の御子 ・ ・ ・ 太陽神アマテラスの子孫だろ?だから太陽に向かうんじゃなくて、むしろ背にして加護を受けたほうが良いってわけさ。
天武天皇
まだ先の話だけど、南に回ってからは負けなしになる。
原文&読み下し文
【原文】稗田阿礼
故、御毛沼命者、跳波穂、渡坐于常世国、稲氷命者、為妣国而、入坐海原也。
【読み下し文】藤原不比等
故、御毛沼命は、波の穂を
【原文】稗田阿礼
神倭伊波礼毘古命、与其伊呂兄五瀬命二柱、坐高千穂宮而議云、坐何地者、平聞看天下之政。猶思東行。即自日向発、幸行筑紫。
【読み下し文】藤原不比等
【原文】稗田阿礼
故、到豊国宇沙之時、其土人、名宇沙都比古、宇沙都比売二人、作足一騰宮而、献大御饗。
【原文】稗田阿礼
自其地遷移而、於竺紫之岡田宮一年坐。亦従其国上幸而、於阿岐国之多祁理宮七年坐。亦従其国遷上幸而、於吉備之高島宮八年坐。
【読み下し文】藤原不比等
【原文】稗田阿礼
故従其国上幸之時、乗亀甲為釣乍、打羽挙来人、遇于速吸門。爾喚帰、問之汝者誰也、答曰僕者国神。又問汝者知海道乎、答曰能知。
【読み下し文】藤原不比等
【原文】稗田阿礼
又問従而仕奉乎、答曰仕奉。故爾指渡槁機、引入其御船、即賜名号槁根津日子。(此者倭国造等之祖。)
【読み下し文】藤原不比等
また、「
【原文】稗田阿礼
故、従其国上行之時、経浪速之渡而、泊青雲之白肩津。此時、登美能那賀須泥毘古、興軍待向以戦。
【原文】稗田阿礼
爾取所入御船之楯而下立。故、号其地謂楯津。於今者云日下之蓼津也。
【読み下し文】藤原不比等
ここに御船に入れたる
【原文】稗田阿礼
於是与登美毘古戦之時、五瀬命、於御手負登美毘古之痛矢串。
【原文】稗田阿礼
故爾詔、吾者為日神之御子、向日而戦不良。故、負賎奴之痛手。自今者行廻而、背負日以撃期而、自南方廻幸之時、到血沼海洗其御手之血。
【読み下し文】藤原不比等
故ここに
【原文】稗田阿礼
故、謂血沼海也。
【読み下し文】藤原不比等
故、血沼海とは謂ふなり。
【原文】稗田阿礼
従其地廻幸、到紀国男之水門而詔、負賎奴之手乎死、男建而崩。故、号其水門謂男水門也。陵即在紀国之竈山也。
【読み下し文】藤原不比等
用語解説
天武天皇
現在の大分県宇佐市あたりね。宇佐神宮の頓宮に、ウサツヒコとウサツヒメが祀られているな。
天武天皇
土着の人のこと。
天武天皇
福岡県遠賀郡芦屋町の神武天皇社、福岡県北九州市八幡西区の岡田神社、その元宮という同区の一宮神社あたりが候補地。
天武天皇
どこか不明だけど、日本書紀には
天武天皇
岡山市南区の高島神社、同市中区の高島神社、岡山県笠岡市の高島神社、同市の神島神社、広島県福山市田尻町の八幡神社などなど、いくつも候補があってな、はっきりしないんだ。
天武天皇
羽をバタバタさせて来るってこと。
天武天皇
潮の流れの速い海峡のこと。
天武天皇
岡山を過ぎて難波に着くまでにあるから、明石海峡のことだろうな。
天武天皇
海路のこと。
天武天皇
現在の大阪湾は埋め立て地ばかりだが、当時は海岸線が複雑に入り組んでいたからな、案内がないと難しかったんだ。
天武天皇
船を進ませる竿のこと。
天武天皇
天武天皇
難波は大阪のことな。
天武天皇
現在の枚方市北部。
天武天皇
昔はこのあたりにラグーンがあったみたいだから、そこの港のことだろうな。
天武天皇
『青雲の』は『白』にかかる枕詞。
天武天皇
奈良市富雄元町あたりを支配していた豪族のリーダーよ。
天武天皇
天武天皇
矢が貫いて受けたひどいケガのこと。
天武天皇
ざっくりいえば大阪湾のこと。
天武天皇
もう少し範囲を限定するなら、泉大津市から岸和田市あたりだな。
天武天皇
大阪府泉南市を流れる男里川か、和歌山市の紀ノ川の河口のこと。
天武天皇
イツセを祀る神社が、泉南市には男神社、和歌山市には水門吹上神社があるぞ。
天武天皇
和歌山市にある竈山神社本殿の後ろにある円墳が、イツセの墓だとされているな。