古事記の原文『タチバナヒメの入水』

アマゾンキャンペーン

『タチバナヒメの入水』の原文

現在、古事記の原文は最低限の情報のみでお届けしております。詳細は『古事記の原文更新お休みのお知らせ』をご確認ください。

古事記の原文をそのまま載せても眠くなってしまうので、天武天皇の時代の人たちのセリフと合わせてお届けしています。

原文を記載するにあたってのルールについては、プロローグ内『原文掲載のルール』をご確認ください。

原文の概要

天武天皇

天武天皇

ヤマトタケルたちは浦賀水道を渡ろうとするが、船が進まなくなる。后のオトタチバナヒメが入水すると、船が進むようになる。ヤマトタケルは東国を平定し、帰る途中に足柄山で白い鹿に化けた神を殺す。甲斐に着いたヤマトタケルは、火の番をしていた老人の歌を褒める。

安万侶

安万侶

オトタチバナヒメ様が命をなげうって、海神様の心を鎮められたんですね ・ ・ ・

天武天皇

天武天皇

そうだな ・ ・ ・

天武天皇

天武天皇

オトタチバナヒメがいつから旅についてきているかは、記されていないんだよな。

原文&読み下し文

オトタチバナヒメの入水

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

自其入幸、渡走水海之時、其渡神興浪、廻船不得進渡。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

それより入り でまして、 走水 はしりみづ の海を渡りたまひし時、その わたり の神浪を興して、船を めぐ らして 進み渡りたまはざりき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

爾其后、名弟橘比売命白之、妾易御子而入海中。御子者、所遣之政遂応覆奏。将入海時、以菅畳八重、皮畳八重、絁畳八重、敷于波上而、下坐其上。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

ここにその きさき 、名は 弟橘比売 おとたちばなひめの 命白したまひしく、「 あれ 、御子に かは りて海の中に入らむ。御子は遣はさえし まつりごと げて覆奏したまふべし」とまをして、海に入りたまはむとする時に、 菅畳 すがだたみ 八重 やへ 、皮畳八重、 きぬ 畳八重を波の上に敷きて、その上に りましき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

於是其暴浪自伏、御船得進。爾其后歌曰、

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

ここにその 暴浪 あらなみ おのづか ぎて、御船 進みき。ここにその后歌ひたまひしく、

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

佐泥佐斯 佐賀牟能袁怒迩
毛由流肥能 本那迦迩多知弖
斗比斯岐美波母

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

さねさし 相模 さがむ 小野 をの
ゆる火の 火中 ほなか に立ちて
問ひし君はも
とうたひたまひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

故、七日之後、其后御櫛依于海辺。乃取其櫛、作御陵而治置也。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

故、 七日 なぬか のち 、その后の 御櫛 みくし 海辺 うみべ に依りき。すなはちその櫛を取りて、御陵を作りて をさ め置きき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

自其入幸、悉言向荒夫琉蝦夷等、亦平和山河荒神等而、還上幸時、到足柄之坂本、於食御粮処、其坂神化白鹿而来立。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

それより入り でまして、悉に あら ぶる 蝦夷 えみし ども 言向 ことむ け、また山河の荒ぶる神 ども 和平 やは して、還り のぼ でます時、 足柄 あしがら 坂本 さかもと に到りて、 御粮 みかれひ す処に、その坂の神、白き 鹿 りて 来立 きた ちき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

爾即以其咋遺之蒜片端、待打者、中其目乃打殺也。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

ここにすなはちその のこ したまひし ひる 片端 かたはし をもちて、待ち打ちたまへば、その目に あた りてすなはち打ち殺したまひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

故、登立其坂、三歎詔云阿豆麻波夜。故、号其国謂阿豆麻也。即自其国越出甲斐、坐酒折宮之時、歌曰、

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

故、その坂に登り立ちて、 たび なげ かして、「 吾妻 あづま はや」と りたまひき。故、その国を号けて 阿豆麻 あづま を謂ふ。すなはちその国より越えて、 甲斐 かひ に出でまして、 酒折 さかをりの に坐しし時、歌ひたまひしく、

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

爾比婆理 都久波袁須疑弖
伊久用加泥都流

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

新治 にひばり 筑波 つくは を過ぎて
幾夜 いくよ つる
とうたひたまひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

爾其御火焼之老人、続御歌以歌曰、

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

ここにその 御火焼 みひたき 老人 おきな 、御歌に ぎて歌ひしく、

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

迦賀那倍弖 用迩波許許能用
比迩波登袁加袁

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

かがなべて には 九夜 ここのよ
には 十日 とをか
とうたひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

是以誉其老人、即給東国造也。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

ここをもちてその老人を めて、すなはち あづま の国造を給ひき。

用語解説

天武天皇

天武天皇

浦賀水道のこと。

天武天皇

天武天皇

神奈川県横須賀市走水には、ヤマトタケルとオトタチバナヒメを祀る走水神社があるぞ。

安万侶

安万侶

さねさしって??

天武天皇

天武天皇

相模にかかる枕詞だが、意味はよくわからないんだ。

安万侶

安万侶

問ひし君はもって??

天武天皇

天武天皇

『はも』は深い感動を表すから、私の心配をしてくれたあなたよ ・ ・ ・ ってとこかな。

安万侶

安万侶

オトタチバナヒメの御陵はどこに??

天武天皇

天武天皇

千葉県茂原市の橘樹たちばな神社本殿裏にある古墳とする伝承があるぞ。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

北関東より北に住んでいる朝廷に従わない人々のこと。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

神奈川と静岡の県境にある足柄峠を中心とする山地のこと。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

干したご飯のこと。

天武天皇

天武天皇

お湯や水でもどして食べる、旅の携行食だな。

安万侶

安万侶

ひるは??

天武天皇

天武天皇

のびるやにんにくなど、ユリ科の食用植物のこと。

天武天皇

天武天皇

三度ため息をついてってこと。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

『はや』も深い感動を表すから、私の妻よ ・ ・ ・ と嘆いたってこと。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

東国のこと。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

山梨県甲府市にある、ズバリ酒折宮という神社が伝承地とされているな。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

現在の茨城県筑西市から笠間市あたりにかけた地域のこと。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

現在の茨城県つくば市あたりのこと。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

夜に照明や警護のために火をたくこと。

安万侶

安万侶

ぎてって??

天武天皇

天武天皇

連ねてってこと。

天武天皇

天武天皇

この問答が、二人が交互に歌を詠む連歌れんがの起源ともいわれているな。

安万侶

安万侶

かがなべてって??

天武天皇

天武天皇

日々を並べてとか、日数を重ねてってこと。

原文で続きを読む

ラノベ訳に戻る

監修:春比等 Site:いまどき風土記
イラスト:駒碧 Site:わたり雪

ラノベ古事記がついに書籍化しました!!

サイトで読んでくださった方も楽しんでいただけるように、さらに愛を詰め込みました!!日本神話だけでかなり分厚くなっちゃいましたが、ポチっと応援していただけたら喜びます!!

 『ラノベ古事記』を購入 > 

アマゾンキャンペーン

スポンサードリンク

Amebaマンガは古事記関連の漫画が充実!また、U-NEXTからはラノベ古事記の購入が可能です。無料のおまけの方が豪華なので、よければご利用ください!

人気の記事


日本の神話「古事記」 おすすめ本

古事記(池澤 夏樹)

古事記

現代語訳がとにかく丁寧で美しくて読みやすい作品です。上段に現代語訳、下段に解説が書かれています。現代語訳だけであれば、1日でサラッと読めます。

現代語古事記(竹田 恒泰)

現代語古事記

明治天皇の曾孫にあたる、竹田 恒泰先生の作品です。現代語訳は少し固い印象ですが、解説が面白いのでスラスラ読めてしまいます。日本が好きになります。

愛と涙と勇気の神様ものがたり まんが古事記

まんが古事記

おそらく一番売れている古事記本です。ふわ先生の初版サイン付きの本を持っているのが自慢。優しいイラストとわかりやすい漫画でスイスイ読めてしまします!