古事記の原文『サホビメとサホビコ』

『サホビメとサホビコ』の原文

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原文の概要

天武天皇

天武天皇

垂仁天皇の后のサホビメは、兄のサホビコからどちらを愛しているか問われる。兄と答えたサホビメは、天皇の暗殺を頼まれる。寝ている垂仁をサホビメは小刀で狙うが、悲しい気持ちから天皇の首を刺せずにいるうちに、垂仁が起きる。

安万侶

安万侶

えっ、兄と妹の禁断の愛ですか!?

天武天皇

天武天皇

ああ。

天武天皇

天武天皇

古代においては、兄妹でも母親が違っていれば普通に結婚もできたんだが、同父同母の男女の恋愛は、当時でもタブーとされていたんだ。

原文&読み下し文

垂仁天皇

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

伊久米伊理毘古伊佐知命、坐師木玉垣宮、治天下也。此天皇、娶沙本毘古命之妹、沙波遅比売命、生御子、品牟都和気命。(一柱)

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

伊久米伊理毘古伊佐知命、 師木 しき 玉垣 たまがきの に坐しまして、天の下治らしめしき。この天皇、 沙本 さほ 毘古命の いろも 沙波遅 さはぢ 比売命を娶して、生みませる御子、 品牟都和気 ほむつわけの 命。(一柱)

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

又娶旦波比古多多須美知宇斯王之女、氷羽州比売命、生御子、印色之入日子命。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

また 旦波比古多多須美知宇斯 たにはのひこたたすみちのうしの 王の女、 氷羽州 ひばす 比売命を娶して、生みませる御子、 印色入日子 いにしきのいりひこの 命。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

次大帯日子淤斯呂和気命。次大中津日子命。次倭比売命。次若木入日子命。(五柱)

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

次に 大帯日子淤斯呂和気 おほたらしひこおしろわけの 。次に 大中津日子 おほなかつひこの 命。次に 倭比売 やまとひめの 命。次に 若木 わかきの 入日子命。(五柱)

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

又娶其氷羽州比売命之弟、沼羽田之入毘売命、生御子、沼帯別命。次伊賀帯日子命。(二柱)

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

またその氷羽州比売命の いろと 沼羽田 ぬばた の入毘売命を娶して、生みませる御子、 沼帯別 ぬたらしわけの 命。次に 伊賀帯 いがたらし 日子命。(二柱)

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

又娶沼羽田之入日売命之弟、阿邪美能伊理毘売命、生御子、伊許婆夜和気命。次阿邪美都比売命。(二柱)

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

またその沼羽田の入日売命の いろと 阿邪美 あざみ 伊理毘売 いりびめの 命を娶して、生みませる御子、 伊許婆夜和気 いこばやわけの 命。次に 阿邪美都 あざみつ 比売命。(二柱)

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

又娶大筒木垂根王之女、迦具夜比売命、生御子、袁邪弁王。(一柱)

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

また 大筒木垂根 おほつつきたりねの 王の女、 迦具夜比売 かぐやひめの を娶して、生みませる御子、 袁邪弁 をざべの 王。(一柱)

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

又娶山代大国之淵之女、苅羽田刀弁、生御子、落別王。次五十日帯日子王。次伊登志別王。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

また山代の大国の ふち の女、 苅羽田刀弁 かりばたとべ を娶して、生みませる御子、 落別 おちわけの 王。次に 五十日帯 いかたらし 日子王。次に 伊登志別 いとしわけの 王。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

又娶其大国之淵之女、弟苅羽田刀弁、生御子、石衝別王。次石衝毘売命、亦名布多遅能伊理毘売命。(二柱)

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

またその大国の淵の女、 おと 苅羽田刀弁を娶して、生みませる御子、 石衝別 いはつくわけの 王。次に石衝毘売命、亦の名は 布多遅能伊理毘売 ふたぢのいりびめの 命。(二柱)

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

凡此天皇之御子等、十六王。(男王十三、女王三。)

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

おほよ そこの天皇の 御子等 みこたち 十六王 とをまりむはしら なり。(男王十三、女王三。)

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

故、大帯日子淤斯呂和気命者、治天下也。(御身長、一丈二寸、御脛長、四尺一寸也。)

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

故、大帯日子淤斯呂和気命は、天の下治らしめしき。(御身の長、一丈二寸、御脛の長さ、四尺一寸ましき。)

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

次印色入日子命者、作血沼池、又作狭山池、又作日下之高津池。又坐鳥取之河上宮、令作横刀壱仟口、是奉納石上神宮、即坐其宮、定河上部也。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

次に印色入日子命は、 血沼 ちぬの を作り、また 狭山 さやまの を作り、また 日下 くさか 高津 たかつの を作りたまひき。また 鳥取 ととり の河上宮に坐して、 横刀 たち 一千口 ちふり を作らしめ、これを 石上 いそのかみの 神宮に をさ まつ り、すなはちその宮に坐して、河上部を定めたまひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

次大中津日子命者、(山辺之別、三枝之別、稲木之別、阿太之別、尾張国之三野別、吉備之石無別、許呂母之別、高巣鹿之別、飛鳥君、牟礼之別等祖也。)

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

次に大中津日子命は、(山辺の別、三枝の別、稲木の別、阿太の別、尾張国の三野の別、吉備の石無の別、許呂母の別、高巣鹿の別、飛鳥の君、牟礼の別等の祖なり。)

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

次倭比売命者、(拝祭伊勢大神宮也。)次伊許婆夜和気王者、(沙本穴太部之別祖也。)次阿邪美都比売命者、(嫁稲瀬毘古王。)

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

次に倭比売命は、(伊勢の大神の宮を拝き祭りたまひき。)次に伊許婆夜和気王は、(沙本の穴太部の別の祖なり。)次に阿邪美都比売命は、(稲瀬毘古王に嫁ひたまひき。)

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

次落別王者、(小月之山君、三川之衣君之祖也。)次五十日帯日子王者、(春日山君、高志池君、春日部君之祖。)

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

次に落別王は、(小月の山君、三川の衣の君の祖なり。)次に五十日帯日子王は、(春日の山君、高志の池君、春日部の君の祖。)

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

次伊登志和気王者、(因無子而、為子代定伊登部。)次石衝別王者、(羽咋君、三尾君之祖。)次布多遅能伊理毘売命者、(為倭建命之后。)

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

次に伊登志和気王は、(子無きによりて、子代として伊登部を定めき。)次に石衝別王は、(羽咋の君、三尾の君の祖。)次に布多遅能伊理毘売命は、(倭建命の后となりたまひき。)

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

此天皇、以沙本毘売為后之時、沙本毘売命之兄、沙本毘古王、問其伊呂妹曰、孰愛夫与兄歟。答曰愛兄。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

この天皇、 沙本 さほ 毘売を きさき としたまひし時、沙本毘売命の いろせ 、沙本毘古王、その 同母妹 いろも に問ひて曰ひけらく、「 いろせ いづ れか しき」といへば、「 いろせ しき」と こた へたまひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

爾沙本毘古王謀曰、汝寔思愛我者、将吾与汝治天下而、即作八塩折之紐小刀、授其妹曰、以此小刀刺殺天皇之寝。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

ここに沙本毘古王 はか りて曰ひけらく、「 いまし まこと あれ しと思はば、吾と汝と天の下治らさむ」といひて、すなはち 八塩折 やしほをり 紐小刀 ひもがたな を作りて、その いろも に授けて曰ひけらく、「この 小刀 かたな をもちて、 天皇 すめらみこと の寝たまふを刺し殺せ」といひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

故、天皇不知其之謀而、枕其后御膝、為御寝坐也。爾其后、以紐小刀為刺其天皇之御頚、三度挙而、不忍哀情、不能刺頚而、泣涙落溢於御面。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

故、天皇、その はかりごと を知らしめさずて、その后の 御膝 みひざ きて 御寝 みね しましき。ここにその后、紐小刀をもちて、その天皇の 御頚 みくび を刺さむとして、 三度 みたび りたまひしかども、 かな しき こころ しの びずて、頚を刺すこと能はずして、泣く涙 御面 みおも に落ち あふ れき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

乃天皇驚起、問其后曰、吾見異夢。従沙本方暴雨零来、急沾吾面。又錦色小蛇纏繞我頚。如此之夢、是有何表也。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

すなはち天皇、驚き起きたまひて、その后に問ひて りたまひしく、「 しき いめ 見つ。沙本の方より 暴雨 はやさめ り来て、 には かに吾が おも そそ きつ。また 錦色 にしきいろ の小さき へみ 、我が頚に 纏繞 まつは りつ。かくの夢は、これ何の しるし にかあらむ」とのりたまひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

爾其后以為不応争、即白天皇言、妾兄沙本毘古王、問妾曰、孰愛夫与兄。是不勝面問故、妾答曰愛兄歟。爾誂妾曰、

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

ここにその后、争はえじ 以為 おも ほして、すなはち天皇に白して言ひしく、「 いろせ 沙本毘古王、 あれ に問ひて曰ひしく、『 と兄と いづ れか しき』といひき。この まのあたり ふに へざりし ゆゑ に、 あれ 、『兄ぞ愛しき』と こた へき。ここに妾に あとら へて曰ひけらく、

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

吾与汝共、治天下。故、当殺天皇云而、作八塩折之紐小刀授妾。是以欲刺御頚、雖三度挙、哀情忽起、不得刺頚而、泣涙落沾於御面。必有是表焉。

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

『吾と汝と共に天の下を治らさむ。故、天皇を殺すべし』と云ひて、八塩折の紐小刀を作りて妾に授けつ。ここをもちて御頚を刺さむと おも ひて、三度 りしかども、 かな しき こころ には かに起こりて、頚を 得刺 えさ さずて、泣く涙の 御面 みおも に落ち そそ き。必ずこの しるし にあらむ」とまをしたまひき。

【原文】稗田阿礼

【原文】稗田阿礼

爾天皇詔之吾殆見欺乎、乃興軍撃沙本毘古王之時、

【読み下し文】藤原不比等

【読み下し文】藤原不比等

ここに天皇、「 ほとほと 欺かえつるかも」と詔りたまひて、すなはち いくさ を興して沙本毘古王を ちたまひし時、

用語解説

天武天皇

天武天皇

日本書紀には珠城宮とあって、伝承地は奈良県桜井市巻野内とか同市穴師とかいわれているが、はっきりしないな。

天武天皇

天武天皇

後で出てくる沙本さほ毘売の別名よ。

天武天皇

天武天皇

第12代天皇で、諡は景行けいこう

安万侶

安万侶

迦具夜比売かぐやひめのって竹取物語のかぐや姫!?

天武天皇

天武天皇

そういう説もあることはあるが、時代が合わないしな~。

天武天皇

天武天皇

とはいえ、あれこれ想像してみるのも面白いぞ。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

大阪府泉佐野市あたりに作られた池。

天武天皇

天武天皇

道ノ池とか布池とする説があるな。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

大阪府大阪狭山市に、なんと今もあるんだ。

天武天皇

天武天皇

7世紀初頭の飛鳥時代に作られた日本最古のため池といわれているが、その元となった池は、もしかしたら垂仁天皇の時代に作られたのかもな。

天武天皇

天武天皇

日下は大阪府堺市西区草部あたり。

天武天皇

天武天皇

高津池は日本書紀にある高石池と対応するんじゃないかとする説があって、大阪府高石市が地名として残っている。

天武天皇

天武天皇

草部と高石は近いし、だいたいこの辺に作られた池だろうな。

天武天皇

天武天皇

大阪府阪南市の玉田山公園内に伝承地があるな。

安万侶

安万侶

伊勢の大神の宮がまた出てきた。

天武天皇

天武天皇

日本書紀によれば、豊耜入姫とよすきいりひめの命の後を継いで、倭姫やまとひめの命がアマテラスの鎮座する場所を探したんだ。

天武天皇

天武天皇

倭姫命を祀る倭姫宮が、伊勢神宮内宮の別宮として三重県伊勢市にあるな。

天武天皇

天武天皇

何度も繰り返し鍛えた、紐が付いている小刀のこと。

安万侶

安万侶

きてって??

天武天皇

天武天皇

まくらとしてってこと。

天武天皇

天武天皇

ここは膝枕ってことだな。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

耐えられなくてってこと。

天武天皇

天武天皇

怪しい夢とか変な夢のこと。

安万侶

安万侶

沙本は??

天武天皇

天武天皇

現在の奈良市佐保台あたりのことで、沙本毘古王の本拠地があるんだ。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

急に降る激しい雨のこと。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

絹織物の模様のこと。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

巻き付いたってこと。

天武天皇

天武天皇

沙本のほうから来て顔に降り注いだ雨も、首に巻き付いた錦模様の小さな蛇も、何かを暗示しているよな。

安万侶

安万侶

争はえじって??

天武天皇

天武天皇

言い争ってもダメだろうってこと。

天武天皇

天武天皇

面と向かっての問いに抵抗できなかったってこと。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

誘ってってこと。

安万侶

安万侶

天武天皇

天武天皇

もう少しのところでってこと。

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