古事記の原文『オオクニヌシの呪い』

『オオクニヌシの呪い』の原文

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原文の概要

天武天皇

垂仁とサホビメの子・ホムチワケは、大人になっても言葉を発しない。垂仁は夢と占いで、ホムチワケがしゃべれない原因が出雲の大神のせいだと知る。アケタツをお供に付けて、ホムチワケに出雲を参拝させることにする。

安万侶

また神様の呪いで、良くないことが起こるんですね。

天武天皇

自然と同じで、畏れ敬うべきものってことだろうな。

原文＆読み下し文

オオクニヌシの呪い

【原文】稗田阿礼

故、率遊其御子之状者、在於尾張之相津、二俣杉作二俣小舟而、持上来以浮倭之市師池、軽池、率遊其御子。

【読み下し文】藤原不比等

故、その御子を率（ゐ）て遊びし状（さま）は、尾張の相津にある二俣杉（ふたまたすぎ）を二俣小舟（ふたまたをぶね）に作りて、持ち上（のぼ）り来て、倭（やまと）の市師（いちしの）池、軽（かるの）池に浮かべて、その御子を率（ゐ）て遊びき。

【原文】稗田阿礼

然是御子、八拳鬚至于心前、真事登波受。故、今聞高往鵠之音、始為阿芸登比。爾遣山辺之大鶙、令取其鳥。

【読み下し文】藤原不比等

然るにこの御子、八拳鬚（やつかひげ）心（むね）の前（さき）に至るまで真事（まこと）とはず。故、今高往（たかゆ）く鵠（くくひ）の音（こゑ）を聞きて、始めてあぎとひしたまひき。ここに山辺の大鶙（おほたか）を遣はして、その鳥を取らしめたまひき。

【原文】稗田阿礼

故、是人追尋其鵠、自木国到針間国、亦追越稲羽国、即到旦波国、多遅麻国、追廻東方、到近淡海国、

【読み下し文】藤原不比等

故、この人その鵠を追ひ尋ねて、木（きの）国より針間（はりまの）国に到り、また追ひて稲羽（いなばの）国に越え、すなはち旦波（たにはの）国、多遅麻（たぢまの）国に到り、東の方に追ひ廻（めぐ）りて、近（ちか）つ淡海（あふみの）国に到り、

【原文】稗田阿礼

乃越三野国、自尾張国伝以追科野国、遂追到高志国而、於和那美之水門張網、取其鳥而、持上献。

【読み下し文】藤原不比等

すなはち三野（みのの）国に越え、尾張国より伝ひて科野（しなのの）国に追ひ、遂に高志（こしの）国に追ひ到りて、和那美（わなみ）の水門（みなと）に網（あみ）を張りて、その鳥を取りて持ち上（のぼ）りて献りき。

【原文】稗田阿礼

故、号其水門謂和那美之水門也。亦見其鳥者、於思物言而、如思爾勿言事。

【読み下し文】藤原不比等

故、その水門を号（なづ）けて和那美の水門と謂ふなり。またその鳥を見たまはば、物言はむと思ほせしに、思ほすが如くに言ひたまふ事なかりき。

【原文】稗田阿礼

於是天皇患賜而、御寝之時、覚于御夢曰、修理我宮如天皇之御舎者、御子必真事登波牟。

【読み下し文】藤原不比等

ここに天皇患（うれ）ひたまひて、御寝（みね）しませる時、御夢に覚（さと）して曰（の）りたまひけらく、「我が宮を天皇の御舎（みあらか）の如（ごと）修理（をさめつく）りたまはば、御子必ず真事（まこと）とはむ」とのりたまひき。

【原文】稗田阿礼

如此覚時、布斗摩迩迩占相而、求何神之心、爾祟、出雲大神之御心。故、其御子令拝其大神宮将遣之時、令副誰人者吉。爾曙立王食卜。

【読み下し文】藤原不比等

かく覚（さと）したまふ時、太占（ふとまに）に占相（うらな）ひて、何れの神の心ぞと求めしに、その祟（たた）りは出雲の大神の御心なりき。故、その御子をしてその大神の宮を拝（をろが）ましめに遣はさむとせし時、誰人（たれびと）を副へしめば吉（よ）けむとうらなひき。ここに曙立（あけたつの）王卜（うら）に食（あ）ひき。

【原文】稗田阿礼

故、科曙立王、令宇気比白、因拝此大神、誠有験者、住是鷺巣池之樹鷺乎、宇気比落。如此詔之時、宇気比其鷺堕地死。又詔之宇気比活爾者、更活。

【読み下し文】藤原不比等

故、曙立王に科（おふ）せて、誓（うけ）ひ白（まを）さしめつらく、「この大神を拝むによりて、誠に験（しるし）あらば、この鷺巣（さぎすの）池の樹（き）に住む鷺や、誓（うけ）ひ落ちよ」とまをさしめき。かく詔りたまひし時、誓（うけ）ひしその鷺、地（つち）に堕（お）ちて死にき。また「誓（うけ）ひ活（い）きよ」と詔りたまへば、更に活（い）きぬ。

【原文】稗田阿礼

又在甜白梼之前葉広熊白梼、令宇気比枯、亦令宇気比生。爾名賜曙立王、謂倭者師木登美豊朝倉曙立王。

【読み下し文】藤原不比等

また甜白梼（あまかし）の前（さき）にある葉広熊白梼（はびろくまかし）を、誓（うけ）ひ枯らし、また誓（うけ）ひ生かしき。ここに名を曙立王に賜ひて、倭者師木登美豊朝倉（やまとしきとみとよあさくらの）曙立王と謂ひき。

【原文】稗田阿礼

即曙立王、菟上王二王、副其御子遣時、自那良戸遇跛盲。自大坂戸亦遇跛盲。唯木戸是掖月之吉戸卜而、出行之時、毎到坐地、定品遅部也。

【読み下し文】藤原不比等

すなはち曙立王、菟上（うなかみの）王の二王（ふたはしら）をその御子に副へて遣はしし時、那良戸（ならと）よりは跛（あしなへ）盲（めしひ）遇（あ）はむ。大坂戸よりもまた跛盲遇はむ。ただ木戸ぞこれ掖月（わきど）の吉き戸（と）と卜（うらな）ひて出で行かしし時、到ります地毎（ところごと）に品遅部（ほむぢべ）を定めたまひき。