古事記 -日本神話-

悲しいお話の後に、ひどいお話が付いてるんですね ･ ･ ･

天皇、その 弟 （ おと ） 速総別 （ はやぶさわけの ） 王を 媒 （ なかびと ） として、 庶妹 （ ままいも ） 女鳥 （ めどりの ） 王を乞ひたまひき。ここに女鳥王、速総別王に語りて 曰 （ い ） ひけらく、「大后の 強 （ おず ） きによりて、八田若郎女を 治 （ をさ ） めたまはず。故、仕へ奉らじと思ふ。 吾 （ あ ） は 汝命 （ いましみこと ） の 妻 （ め ） にならむ」といひて、すなはち 相婚 （ あ ） ひき。

ここをもちて速総別王、 復奏 （ かへりごとまを ） さざりき。ここに天皇、女鳥王の 坐 （ いま ） す所に 直 （ ただ ） に 幸 （ い ） でまして、その殿戸の 閾 （ しきみ ） の上に 坐 （ いま ） しき。ここに女鳥王、 機 （ はた ） に坐して 服織 （ みそお ） りたまへり。ここに天皇歌ひたまひしく、

女鳥 （ めどり ） の 我 （ わ ） が 王 （ おほきみ ） の
織 （ お ） ろす 機 （ はた ） 誰 （ た ） が 料 （ たね ） ろかも
とうたひたまひき。

女鳥王答へて歌ひたまひしく、

高行 （ たかゆ ） くや 速総別 （ はやぶさわけ ） の
御襲料 （ みおすひがね ）
とうたひたまひき。

故、天皇その 情 （ こころ ） を知りたまひて、宮に還り入りましき。この時、その 夫 （ ひこぢ ） 速総別王 到来 （ き ） ましし時、その 妻 （ め ） 女鳥王歌ひたまひしく、

雲雀 （ ひばり ） は 天 （ あめ ） に 翔 （ かけ ） る
高行くや 速総別 （ はやぶさわけ ）
鷦鷯 （ さざき ） 取らさね
とうたひたまひき。

天皇この歌を聞きたまひて、すなはち 軍 （ いくさ ） を 興 （ おこ ） して殺さむとしたまひき。ここに速総別王、女鳥王、共に逃げ 退 （ そ ） きて、 倉椅 （ くらはし ） 山に 騰 （ のぼ ） りき。ここに速総別王歌ひたまひしく、

梯立 （ はした ） ての 倉椅 （ くらはし ） 山を
険 （ さが ） しみと 岩かきかねて
我 （ わ ） が手取らすも
とうたひたまひき。

また歌ひたまひしく、

梯立 （ はした ） ての 倉椅山は
険 （ さが ） しけど 妹 （ いも ） と登れば
険 （ さが ） しくもあらず
とうたひたまひき。

故、 其地 （ そこ ） より逃げ 亡 （ う ） せて、 宇陀 （ うだ ） の 蘇迩 （ そに ） に到りし時、 御軍 （ みいくさ ） に追ひ到りて殺しき。

その 将軍 （ いくさのきみ ） 山部大楯連 （ やまべのおほたてのむらじ ） 、その女鳥王の御手に 纏 （ ま ） かせる 玉釧 （ たまくしろ ） を取りて、己が 妻 （ め ） に与へき。この 後 （ のち ） 、 豊楽 （ とよのあかり ） したまはむとする時、氏氏の 女等 （ をみなども ） 、皆 朝参 （ みかどまゐ ） りしき。ここに大楯連の妻、その 王 （ みこ ） の玉釧を、己が手に纏きて参り赴きき。

ここに大后石之日売命、 自 （ みづか ） ら大御酒の 柏 （ かしは ） を取りて、 諸 （ もろもろ ） の氏氏の 女等 （ をみなども ） に賜ひき。

ここに大后、その玉釧を見知りたまひて、御酒の柏を賜はずて、すなはち引き 退 （ そ ） けたまひて、その 夫 （ を ） 大楯連を召し 出 （ いだ ） して詔りたまひしく、

「その 王等 （ みこたち ） 、 礼無 （ ゐやな ） きによりて 退 （ しぞ ） けたまひき。こは 異 （ け ） しき事無くこそ。それの 奴 （ やつこ ） や、己が君の御手に纏かせる玉釧を、 膚 （ はだ ） も 煴 （ あたた ） けきに 剥 （ は ） ぎ持ち来て、すなはち己が 妻 （ め ） に与へつる」とのりたまひて、すなはち 死刑 （ ころすつみ ） を給ひき。

また 一時 （ あるとき ） 、天皇 豊楽 （ とよのあかり ） したまはむとして、 日女 （ ひめ ） 島に 幸行 （ い ） でましし時、その島に 雁 （ かり ） 卵 （ こ ） 生みき。ここに建内宿祢命を召して、歌をもちて雁の 卵 （ こ ） 生みし 状 （ さま ） を問ひたまひき。その歌に 曰 （ の ） りたまひしく、

たまきはる 内 （ うち ） の 朝臣 （ あそ ）
汝 （ な ） こそは 世 （ よ ） の 長人 （ ながひと ）
そらみつ 倭 （ やまと ） の国に
雁 （ かり ） 卵生 （ こむ ） と聞くや
とのりたまひき。

ここに建内宿祢、歌をもちて語りて白ししく、

高光る 日の御子
諾 （ うべ ） しこそ 問ひたまへ
まこそに 問ひたまへ
吾 （ あれ ） こそは 世の長人
そらみつ 倭の国に
雁 卵生 （ こむ ） と 未 （ いま ） だ聞かず
とまをしき。

かく白して、御琴を給はりて歌ひけらく、

汝 （ な ） が御子や 終 （ つひ ） に知らむと
雁 卵生 （ こむ ） らし
とうたひき。

こは 本岐 （ ほき ） 歌の 片 （ かた ） 歌なり。

この御世に免寸河の西に一つの高樹ありき。その樹の影、 旦日 （ あさひ ） に当たれば、 淡道 （ あはぢ ） 島に 逮 （ およ ） び、夕日に当たれば、 高安 （ たかやす ） 山を越えき。故、この樹を切りて船を作りしに、 甚 （ いと ） 捷 （ はや ） く行く船なりき。時にその船を 号 （ なづ ） けて 枯野 （ からの ） と謂ひき。

故、この船をもちて 旦夕 （ あさゆふ ） 淡道島の 寒泉 （ しみづ ） を 酌 （ く ） みて、 大御水 （ おほみもひ ） 献りき。この船、 破 （ や ） れ 壊 （ こぼ ） れて塩を焼き、その焼け 遺 （ のこ ） りし木を取りて琴に作りしに、その音 七里 （ ななさと ） に 響 （ とよ ） みき。ここに歌ひけらく、

枯野 （ からの ） を 塩に焼き
其 （ し ） が余り 琴に作り
かき 弾 （ ひ ） くや 由良 （ ゆら ） の 門 （ と ） の
門中 （ となか ） の 海石 （ いくり ） に 触れ立つ
浸漬 （ なづ ） の木の さやさや
とうたひき。

こは 志都 （ しつ ） 歌の 歌返 （ うたひかえ ） しなり。

この天皇の御年、 八十三歳 （ やそぢまりみとせ ） 。（丁卯の年の八月十五日に崩りましき。）御陵は 毛受 （ もず ） の 耳原 （ みみはら ） にあり。

媒（なかびと）は？？

強（おず）きって？？

治（をさ）めたまはずって？？

直（ただ）に幸（い）でましてって？？

閾（しきみ）は？？

織（お）ろすって？？

誰（た）が料（たね）ろかもって？？

高行（たかゆ）くやって？

御襲料（みおすひがね）は？？

天（あめ）に翔（かけ）るって？？

鷦鷯（さざき）は？？

取らさねって？？

倉椅（くらはし）山は？？

梯立（はした）てのって？？

険（さが）しみって？？

岩かきかねてって？？

宇陀（うだ）の蘇迩（そに）は？？

玉釧（たまくしろ）は？？

朝参（みかどまゐ）りは？？

引き退（そ）けって？？

礼無（ゐやな）きって？？

日女（ひめ）島は？？

たまきはるって？？

内（うち）の朝臣（あそ）は？？

世（よ）の長人（ながひと）は？？

そらみつって？？

諾（うべ）しこそ問ひたまへって？？

まこそに問ひたまへって？？

本岐（ほき）歌は？？

免寸河は？？

高安（たかやす）山は？？

大御水（おほみもひ）は？？

塩に焼きって？？

由良（ゆら）の門（と）は？？

海石（いくり）は？？

触れ立つって？？

浸漬（なづ）の木のって？？

毛受（もず）の耳原（みみはら）は？？