古事記 -日本神話-

クチコさん、夫婦ゲンカに巻き込まれてかわいそう。

また歌ひたまひしく、

つぎねふ 山代女 （ やましろめ ） の
木鍬 （ きくは ） 持ち 打ちし 大根 （ おほね ）
根白 （ ねじろ ） の 白腕 （ しろただむき ）
枕 （ ま ） かずけばこそ 知らずとも言はめ
とうたひたまひき。

故、この口子臣、この御歌を白す時、 大 （ いた ） く雨ふりき。ここにその雨を 避 （ よ ） けず、前つ 殿戸 （ とのど ） に 参伏 （ まゐふ ） せば、 違 （ たが ） ひて 後 （ しり ） つ戸に出でたまひ、 後 （ しり ） つ殿戸に参伏せば、違ひて前つ戸に出でたまひき。ここに 匍匐 （ は ） ひ進み赴きて、 庭中 （ にはなか ） に 跪 （ ひざまづ ） きし時、 水潦 （ にはたづみ ） 腰に至りき。

その 臣 （ おみ ） 、 紅 （ あか ） き 紐 （ ひも ） 著けし 青摺 （ あをずり ） の 衣 （ きぬ ） を 服 （ き ） たり。故、水潦紅き紐に 払 （ ふ ） れて、青皆紅き色に 変 （ な ） りき。ここに口子臣の 妹 （ いも ） 、 口日売 （ くちひめ ） 、大后に仕へ奉れり。故、この口日売歌ひけらく、

山代の 筒木 （ つつき ） の宮に
物申 （ ものまを ） す 吾 （ あ ） が 兄 （ せ ） の君は
涙ぐましも
とうたひき。

ここに大后、その 所由 （ ゆゑ ） を問ひたまひし時、答へて白しけらく、「 僕 （ あ ） が 兄 （ せ ） 口子臣なり」とまをしき。

ここに口子臣、またその妹口比売、また奴理能美、 三人 （ みたり ） 議 （ はか ） りて、天皇に 奏 （ まを ） さしめて 云 （ い ） ひしく、

「大后の 幸行 （ い ） でましし 所以 （ ゆゑ ） は、奴理能美が 養 （ か ） へる虫、 一度 （ ひとたび ） は 匐 （ は ） ふ虫になり、一度は 鼓 （ つづみ ） になり、一度は飛ぶ鳥になりて、 三色 （ みくさ ） に 変 （ かは ） る 奇 （ あや ） しき虫あり。この虫を 看行 （ みそな ） はしに入りまししにこそ。更に 異心 （ ことごころ ） 無し」といひき。

かく 奏 （ まを ） す時に、天皇詔りたまひしく、「然らば 吾 （ あれ ） も 奇異 （ あや ） しと思ふ。故、見に行かむと 欲 （ おも ） ふ」とのりたまひて、

打ちし大根（おほね）は？？

根白（ねじろ）のって？？

枕（ま）かずけばこそって？？

水潦（にはたづみ）は？？

青摺（あをずり）の衣（きぬ）は？？

鼓（つづみ）は？？

三色（みくさ）に変（かは）る奇（あや）しき虫は？？